アルザスと黒い森、ホーエンツォレルン城の旅（１１）　トリベルクとシルタッハ

2019/12/13 - 2019/12/20

２０１９年１２月。クリスマスマーケットを巡る１１回目の旅です。
ドイツ・フランクフルトから始まり、西に進んでルクセンブルク、
南下してフランス・アルザス地方、東に向かってドイツに戻ります。
シュバルツヴァルト（黒い森）地方を周って北上し、
フランクフルトから帰国します。
　１１回目は、ドイツ南西部のトリベルクとシルタッハを訪れます。
シュバルツヴァルトの南部に位置する山間部の町で、
トリベルクは「かっこう時計」でも有名です。
山道のカーブに沿って建物が並び、その背後はドイツ人の愛する
ハイキング天国の山が迫ります。その斜面に段々に整然と並んだ家並み。
これまで見て来たドイツの町とは全く違う風景がおもしろいです。
　シルタッハは、「急坂の町」の一言に尽きます。
広場までもが恐ろしい角度で傾斜しています。
この町を散策しろと言われても、あまり嬉しくないなあと思う程の
傾斜の町。川沿いだけは平地なので、気持ちよく散歩できました。
通常のドイツ観光とは一味違った「黒い森」の一日です。

エリア シュヴァルツヴァルト(ドイツ)

• 旅行の満足度: 4.0
• 観光: 4.0

• 交通手段: 観光バス 徒歩
• 旅行の手配内容: ツアー（添乗員同行あり）
• 利用旅行会社: クラブツーリズム

ドイツ南西部に広がるシュヴァルツヴァルト地方は、密集して生える
トウヒの木によって黒く見えることから、黒い森地方と呼ばれています。
シュヴァルツヴァルトは、北はバーデンバーデン、東はシュトゥット
ガルト、南はフライブルク、西はフランスとの国境である
ライン川に囲まれた地域です。
　午前中に訪れたゲンゲンバッハがシュヴァルツヴァルトの中央で、
そこから更に南下して行きます。
車窓では山間の町や村が時折現れたり、
こんな風に羊が寝そべっていたりします。

水量の多いグータッハ川に面した家。その後ろに漂う低い霧。
なんとも幻想的な風景で、移動の間に休むという訳には行きません。

「1000の時計の家」という仕掛け時計屋さんです。
山道をうねうねと走っていると突然現れました。
この店は、トリベルクの町にもあります。

トリベルクの町は山の上にあるので、もっと鄙びた感じなのかと思ったら、なんとまるで新興住宅地のように、整然と大きな家が並んでいます。

山の上にまで、ぎっしりと大きな家が立ち並んでいます。
別荘にしては大き過ぎるし、こんなに人が住んでいるの？？？
かなり想像とは違うトリベルクの町の様子です。

駐車場でバスを降りて、今来た道を下って行きます。
沿道の建物の壁に蒸気機関車が描かれていました。
え？こんなところに鉄道があったの？いや～愚かな観光客でした。
トリベルクには鉄道駅があります。バーデンバーデンやボーデン湖畔の
コンスタンツ、カールスルーエからの便が走っています。
そして駅前には大きな蒸気機関車が保存されています。
バスの座席が反対側だったので、鉄道に気が付きませんでした。
ああ、失敗。

伝統の木組みの家ではないけれど、木材を多用した森の中の建物です。
仕掛け時計や木彫の店が目に付きます。

シュヴァルツヴァルト博物館です。
仕掛け時計の町なのに、時計が合っていません。
この町には時計が多くあるのですが、何故か正確な時計が少なくて、
さっき見たのは、13：50と15：49でした。

シュヴァルツヴァルト博物館の入口には,
かつてのハイキングの格好をした女性の像があります。

トリベルクには、壁に絵を描く建物が多いようです。
右側の建物の２階に描かれているのは、博物館の入口の女性と同じです。

土産物店がずらっと並ぶエリア。「かっこう時計」を買うために、
こんな山の中まで観光客が来るの？と不思議な気分になります。
真ん中の緑色の店が「1000の時計の家」です。

店の前では、水量豊かなグータッハ川が激しく流れ落ちて行きます。
傾斜があるにしても、かなりの急流です。その勢いに圧倒されます。

実は、この道路が大きくカーブしている奥に「トリベルクの滝（Triberger Wasserfalle）」があるのです。
ドイツ有数の高低差があり、ハイキングトレイルで見に行かれます。
ちょっと見に行くには距離があるので断念しましたが、
数多の名滝に慣れている日本人が見ると、物足りないようです。

それで、この水量なんですね。
水の力に引き込まれて、ずっと見ていたいと思いました。

土産物店の前の坂を下って行きます。
ドイツ観光では、どうしても旧市街を見ることが多いので、
こうしたカラフルな街並みを見るのは珍しくて、おもしろいです。

手前から２軒目の歴史ある建物には「Tresor」という
レストランが入っています。
その向こうの塔のある建物は、市庁舎です。

市庁舎の中に入ってみました。

階段の踊り場にあった少し古い写真。中央に市庁舎があります。

山とホルンの紋章。これがトリベルクの紋章です。

市庁舎の説明がありました。
１８２６年７月の火事で失われた建物を、１８２８年に再建して
現在に至ります。
１階にある評議会室は、１９２６年にトリベルクの彫刻家カール・
ヨーゼフ・フォートワングラーによる「フォレスト・スタイル」として、松材で彫り込まれたレリーフや彫刻がびっしり壁を埋めています。
しまった、覗いてみれば良かった。下調べが足りませんでしたね。
かなりすごい代物です。

市庁舎を出て、裏側に回ってみました。
「Tresor」というレストランが入っていた建物の真裏に、
かなり厳しい坂道がありました。

市庁舎はこちらです。
市庁舎から少し下って、シュール通りを右に曲がり、少し上って行くと、右手にアムトハウス通りがありました。
かなりきつい坂道ですが、ここはトリベルクです。
坂道を恐れてはどこへも行かれません。

アムトハウス通りをわざわざ上って来たのには訳があります。
聖クレメンス教会が山の上に建っているのです。
地図ではここまで高低差があるとはわからなかったので、
ちょっと後悔しましたが、道中の眺めは良かったので良しとします。
玄関の上の普通なら彫刻が置かれる部分にスケッチのような絵が
描かれています。かなり新しい教会のようです。

確かに新しいわ、これ。自分が入ったのが教会だとは、
ちょっと信じられませんでした。集会場か何かかと思いました。
そういえば、ドイツ人って伝統的な物は大好きだけど、
意外に真反対の現代建築も好きなのよね。

宗教者っぽいキリスト？
「求めよ、さらば与えられん」という感じかな？

かなり抽象化されているステンドグラス。
明かり取りの窓にも色ガラスが入っています。

パイプオルガンは、やはりそこですね。あら？信者の人かな？
邪魔しないように出て行きます。

可愛らしい家が建っているなと思ったら、歴史的価値のある建物でした。

１６９４年にトリベルクで大火事があり、３５棟の建物が焼失しました。
再建された建物は、行政府によって長年使われ、
１８２６年の火事では残りました。
１９５４年からは、林野庁の事務所となっています。
説明文より建物の見取り図の方が興味深いです。
右側が表通りで、今は左側から建物を見ています。

教会の隣にはクアパークがあります。
ここが一番高い場所で、今入った教会の塔が見えます。

５階建ての家が足下に見えます。どれだけ高低差があるのでしょう。

だから、下って行く道もこの通りの急坂です。
だいぶ坂道だらけのトリベルクに慣れて来ました。

これだけの家が建っているトリベルクの人口は、かなり減少していて、2020年は4,656人でした。
かつては、仕掛け時計の製作が主要産業となっていましたが、
それも衰退しています。
やはりこの高低差は、生活するには辛いのでしょう。

クアパークから降りて来て、別の教会に向かいます。
バスの窓からチラッと見えたので、ついでに見に来ました。

グーグルマップに「Evang. Trinitatis-Gemeinde」と書かれている教会
です。せっかく来たのに、この教会には入れませんでした。

１８９８年に建てられたプロテスタント教会です。教会の窓には、
宗教改革を行ったルターとツヴィングリが描かれています。

車道を下って来て、観光の出発点に戻って来ました。
今回の表紙です。

トリベルクは、海抜600～1038ｍで、黒い森の真ん中にあります。
その森林をハイキングする３コースです。左下に赤い丸印のある門から
入り、川に架かる２つの橋の周囲にトリベルクの滝があります。
トリベルクの滝は１つの滝ではなくいくつかの集合帯で、全体の高低差は
151ｍ。ドイツ最大の滝Rothbachfallより少し短いようです。

この川を見ながらのハイキングは楽しそうですね。
※この写真は、シャッタースピードを遅くしてあります。
実際には川はこのようには見えません。

「1000の時計の家」という仕掛け時計屋さんのトリベルク店です。
この店の正面には、仕掛け時計を製作中の熊の模型と、
仕掛け時計の下に伸びる紐を伝って本当に上り下りする熊がいます。

「かっこう時計」がたくさん並んでいます。
４００ユーロから５００ユーロ以上するものもあります。
さすがに、出来心で買えるものではなかったです。

この店で一番高い仕掛け時計です。いくらだったのかなあ？
トリベルクには世界最大の仕掛け時計があります。
この辺りでは見られなかったけれど、家の２階部分が全部時計だという
くらいの大きさだそうです。

バスに乗って昼食のレストランに向かいます。
と言っても夏ならショートカットして、歩ける距離なのですが。
標高が1,000ｍ近いので、雪が残っていました。
「Bergseestuble」という釣り堀の池に面したレストランです。
その建物の後ろに、玉ねぎ頭のピンクの塔が見えます。
「Maria in der Tanne」という教会です。
外観は素っ気ないのですが、中に設置されている祭壇などは、
素晴らしく、トリベルクで訪れるべき教会は、ここでした。
18世紀に建てられたバロック様式の巡礼教会だそうです。

このビールは、300mlで2.7ユーロでした。

メインのソーセージ。

シュヴァルツヴァルトに来たら、必ず出て来るのが
「黒い森ケーキ」と呼ばれるこれ。サクランボのキルシュトルテです。
フォークがケーキに突き刺さっているのは、ドイツ（だけじゃないけど）の習慣です。

雪が残っているというのに、沈丁花のような花が咲いていました。

トリベルクから下って来ています。
沿道の家の屋根には、太陽光発電システムが多く見られます。
ドイツは環境問題に積極的に取り組んでいるので、
太陽光発電や風力発電の装置をよく見掛けます。

やった！トリベルクに向かう列車と遭遇しました。
ローカル線なので、１時間に１本程度の本数です。

次の観光地シルタッハ（SCHILTACH）に到着しました。
トリベルクから北東に35ｋｍです。
地図で左右に流れているのが、ゲンゲンバッハの横を流れていた
キンツィヒ川です。途中で、シルタッハ川が合流します。
ビットが立っている所から右側が旧市街で、マルクト広場があります。
バスはこの坂を上って行くのは無理なので、川岸で降りて歩きます。

下から見ると、上の家が聳え立つように見えます。

マルクト広場が見えて来ました。
画面が歪んでいるように見えますが、こういう地形なのです。

後ろを見ると、こんな感じです。
ここから一気に傾斜がきつくなるのです。

広場に面した道路は、この下でハウプト通り（Hauptstrase）に
合流します。下の家の向こう側にキンツィヒ川が流れています。

広場が見えると、ここを散策するの？冗談でしょと、
心がすっかり後ろ向きになりました。

平らな所がどこにもない広場を歩く猫。
尻尾をピンと立てて、バランスを取りながら歩いているみたいです。

広場があまりに急傾斜なので階段が付いています。
信じられない場所です。

市庁舎の壁には、シルタッハの歴史が描かれています。
市庁舎は１５９３年にルネサンス様式で建てられました。
１９０６年に改装され、ネオゴシック様式の破風が取り付けられました。
壁に描かれている絵は１９４２年に描かれたものです。
現在では、観光案内所を兼ねています。

これ程の傾斜のある町は見た事が無いので、広場でしばらく観察します。
下の家の２階が、上の家の１階。それがずっと続いて行くのです。

「Apothekenmuseum」薬局博物館です。
１８３７年にマルクト広場に評議会の薬局が開店しました。
１９８５年に閉鎖され、１９８９年に博物館として再出発しました。
入場料は３ユーロで、金・土・日曜の14：30～16：30だけ
開館しています。

薬局博物館の先にも隣とは高さの違う家が連なっています。
自分の家が傾いていてもわからないでしょうねえ。

広場にこんなに傾斜があったら、催し物などは大変でしょうね。
普通なら旧市街の広場ではクリスマスマーケットが開かれますが、
さすがに気配もないです。

せっかくなので、この坂を上ってみます。それにしてもすごい所だなあ。
ここで路駐なんだから、すごいよねえ。よく無事なもんだわ。
ヨーロッパではまだまだマニュアル車が多いのに、
この坂で運転できるなんて尊敬～！（マニュアル大好き）

目立つ紅白の木組みの壁に、何か書いてあります。
１８７５年築で、１９８３年と２０１８年に改装かな？

雪が降ったら、橇で降りられるね。
止まれるかと言ったら保証はないけど。

高台になったので、シルタッハの町が見渡せます。

別の方向です。う～ん、ここも標高が高いわ。「黒い森」とは
言うものの、実際には山なのでこういう風景になるんですね。

眺めがいいだけで、特に何がある訳でもないので、
マルクト広場に降りて来ました。
広場にポツンとある木は、若干クリスマスツリーっぽいです。

一応、電飾が付いています。七夕飾りのようではありますが。

広場の下側から伸びるシェンケンツェラー通り（Schenkenzeller Str.）を歩いてみます。

こちらの道は、比較的なだらかですが、やはり坂道ではあります。

山側の家の上には、先程のシュロスベルク通りの家が見えます。
手前の家の右脇に階段があるので、広場に行かずに上ることが
出来るようです。同じようにして、シェンケンツェラー通りから、
下のハウプト通りへも階段で降りられる場所があります。

この辺りの家は、1軒1軒が別々に建っています。
右側の木組みの家は、かつての税金対策で（1階の面積に課税された）、
上の階に行くほど競り出しています。

ここにも、苔むした階段がずっと上まで続いています。
古（いにしえ）の生活を語っているようで、しばし佇んでいました。

左側の鎧戸がなくて窓枠が緑色の家は、とても居心地が良さそうです。
ホテルだったらいいのにな。

この家には、東側に長崎のグラバー邸のような
細工のある庇付きバルコニーがあります。
1階は、シェンケンツェラー通りに面した部分から後ろに行くに従って
坂に埋まって行きます。奥の窓の小さなこと。

シルタッハの旧市街は、規模は小さいけれど、ドイツらしい、
とても整然とした綺麗な町です。スケッチ旅行などに良さそうです。

ほら、こんな感じで如何ですか？
文字通り「絵に描いたような」風景です。
古そうな泉ですが、こういう所の水なので、飲むことが出来そうですね。
スイスにも泉が多くて、あちこちで飲んでみました。
コップを持参するといいですよ。

それにしても、特筆すべきはマルクト広場ですね。
シルタッハと言えば、ここを思い出します。

一番下のハウプト通りに降りて来ました。
見上げる家々の張り出しは、それぞれ個性豊かでおもしろいですね。

キンツィヒ川を渡ります。

渡った先は、普通の町が広がっています。
道路の先に紅白のバーが立っています。踏切です。
シルタッハの駅は、もう少し左（西）に行った所にあります。

橋を渡ったら、川沿いに遊歩道があるので、
西に向かって歩いて行きます。

対岸に大きな教会が見えます。帰りに寄ってみようかな。

鴨がいっぱい。のどかで、観光というより散歩の気分です。

左右がキンツィヒ川で、正面からシルタッハ川が合流して来ています。
細い川ですが意外に長くて、トリベルクの近くから流れて来ます。

堰があります。この木の棒は何に使ったのでしょうか。

振り仰ぐと、山の上にシルタッハ城址の展望台が見えます。
東屋の隣に屋根付きの橋が見えます。
よくぞ、あんな橋を架けたものです。行ってみたかったな。

バーンホーフ通りの橋を渡ると、真正面に教会が見えます。
バーンホーフは、鉄道駅の事です。川を渡らずに真っ直ぐ行けば
駅だったのに、教会に気を取られて渡ってしまいました。

福音教会（Evangelische Stadtkirche）は、
バーデン ヴュルテンベルク州で最大のプロテスタント教会だそうです。

回り込んで正面玄関に来ましたが、礼拝の時以外は
開放されていませんでした。
この教会はかなり新しいもので、内装もプロテスタントらしく簡素です。
主祭壇の背後に、ピカピカに光るパイプオルガンが設置されているのが
珍しいです。

ハウプト通りをマルクト広場に向かって歩いて行きます。
この辺りの店は、一般的な店舗です。雑貨や文房具を扱う店では、
可愛い紙ナフキンを安価で販売していたので、ツアーの女性たちが
こぞって買い占めてしまいました。店の主人もびっくりですね。

マルクト広場に戻ると、件（くだん）の猫がお出迎えしてくれました。
君は広場の主なの？ここで集合してバスに向かいます。

フィッシャーバッハ（Fischerbach）の町と教会が見えます。
バスは来た道を引き返して、今夜の宿のあるカールスルーエに
向かいます。

ハスラッハ・イム・キンツィクタール（Haslach im Kinzigtal ）の
ハスラッハ駅です。ちょうど列車が発車しました。
コンスタンツ～カールスルーエ間を走る列車です。

シルタッハからカールスルーエまでは125㎞、約2時間です。
日が暮れてから到着です。
エウロパ広場（Europaplatz）の前にある「Postgalerie」という
ショッピングセンター。夕食のレストランへ歩いて行っています。

ああ、また都会にやって来たなと思います。

いかついフォルムのトラムが行き交います。
今回のツアーでは、ここカールスルーエに連泊しますが、
観光はありません。

このイルミネーションが呼んでいるんだけど、ホテルに戻ります。
カールスルーエには、18世紀にカール・ヴィルヘルムが都市計画をしたカールスルーエ城があります。
城を中心に放射状に道が出来ていて、地図を見るとびっくりします。
トラムに乗って遊びに行きたかったな。

それでは、次回はいよいよ「ホーエンツォレルン城」に行きます。