2022/03/19 - 2022/03/19
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春の足音は桜の開花と共にやってきます。
淡い桜色の花が咲き始めると、
木々をとりかこむ空気そのものの
気温が上がったかの様に感じられ、
気分もなんだか明るくなります。
今年の春の一番桜は、
幻の桜との別名を持つ沖田桜。
満開を迎えた沖田桜に会いに行ってきました。
- 旅行の満足度
- 5.0
-
沖田桜が咲くのは、埼玉県の川口市安行(あんぎょう)地区。
南北に長い日本の中でも、沖田桜が咲くのはこのエリアだけで、春の一時、安行は沖田桜の桜色に包まれる。
その安行の中でも沖田桜がことさら美しく咲くのは、真言宗のおてらである密蔵(みつぞう)院。
沖田桜が満開になったという知らせを耳にし、密蔵院へと足を伸ばしてみた。 -
以前に密蔵院へと参拝したときには山門前の不動明王像は、降り注ぐ桜吹雪を浴びていたのだが、どうやら不動明王さまの周囲には雨風を防ぐ小さなお堂が設けられたみたい。
確かにお堂がある方が彫像の傷みは少ないが、せっかくの力強く睨みをきかせる不動明王の迫力が半減かな。 -
早咲きの安行桜は、咲き始めてから満開までの期間がソメイヨシノと比べると短く、開花したという知らせを耳にしたら、あとは毎日の気温とにらめっこ。
例年、開花から1週間程度で満開となるのだが、今年は3月上旬の気温の暖かさの影響もあり、満開となるまでの日数はなんと4日間。
過去いち、満開までの期間が短かかったのではないだろうか。 -
桜が咲くと私たち人間もウキウキしてしまうが、私たちよりも更に春の喜びを全身で表しているのは、木々を渡り飛ぶ小鳥たち。
-
イチオシ
ヒヨドリはよく回る首をくるりと捻り、その顔を花の中へ。
彼らの目的は、小さな花芯の中央にある蜜。 -
少し甲高いピィーという鳴き声を頭上で響かせながら、沖田桜の枝から枝へと移っていく。
-
日常では歩道を歩いているときなど、電線の上に鴉や鳩が止まっていると糞を落とされるのを警戒してその架線の下を避けて歩いたりもするのだが、桜の木の下では、逆。
賑やかな春の調べを奏でる鳥たちの姿を見たくって、敢えて木の下へと近づいてしまう。 -
密蔵院で花開く沖田桜は、庭師の沖田雄司さんが昭和20年代に接木で育てた桜で、その桜が当時のお寺の住職さんの目にとまり、寺の境内に植えられたのがその始まり。
プライベートで接ぎ木し栽培していた桜だったこともあり、最初の頃は正式な名も無く通称として【沖田桜】と呼ばれ、安行でしか見ることができないことから【幻の桜】とも云われていた。
後に桜図鑑に品種改良種として掲載されることが決またった時につけられた名が【安行緋寒(ヒカン)桜】だそうで、今では【安行桜】としても知られている。 -
沖田桜(安行桜)の特徴は、小ぶりの花ながら桜色の発色が良く花弁が密集していることで、ソメイヨシノ等と比べると、切り枝にしたときに花の日持ちが良く、更に切られた木も病気になりにくい性質を持つ。
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更に路地の沖田桜の場合、満開の花の状態が1週間ほど続くということで、近年、その知名度が上がってきているそうだ。
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沖田桜が舞う参道を歩いて行くとたどり着くのが、水掛け地蔵尊。
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イチオシ
密蔵院の参道から続く沖田桜は、本堂前の地蔵尊の桜が一番の見所。
密蔵院 寺・神社・教会
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幼くして亡くなった子供達を導くお地蔵さまによりそう桜色の花弁が、柔らかな雰囲気だ。
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境内には沖田桜以外にも幾種類かの桜があり、墓地の入口に植えられているのは2月末から花開く寒桜(カンザクラ)の一種。
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早咲きの寒桜は交雑種がたくさんあるため園芸種だけでも種類が多く、私には見分けがつかないが、大島桜にも似たこの木の花は比較的花色が淡く、可愛らしい。
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境内にはしだれ梅もあり、こちらも満開。
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ゴージャスな雰囲気の桜と呼応する清楚な梅花だ。
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鮮やかな紅の花はどちら様?
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イチオシ
木瓜(ぼけ)だと思う。
深紅の花弁の中のひときわ鮮やかな黄色の蘂が、なんとなく扇情的と感じてしまう。
バラ科の木瓜は、花の雰囲気から近年の外来種かと思っていたのだが、実は平安時代には日本に定着していた植物で、織田信長が家紋にも使っていた花として有名だ。 -
本堂の裏側の通路へと向かう。
お堂の裏側なんていわゆるバックヤードでしょ...と思いがちだが、ここに私の会いたい方がいるのだ。
そのお方の名は、見返り地蔵。
見返り地蔵尊は本堂裏の小窓の内側にいらっしゃるのだが、初めてお会いしたときに憂いを帯びたそのお顔に一目惚れ。
なんて素敵なお顔・・・と、前に密蔵院を訪れた時に思ったのだが、その時はイケメンなお顔に見とれ、お地蔵様が振り返っているその視線の先に一体何があるのかを見極め損ねた。
そこで、今回は、わざわざ振り返ってまで彼は何を見ているのか・・・を確かめることに。 -
見返り地蔵さまが振り返って見つめていたのは、蓮の花。
白い花弁の蓮だ。
仏教において蓮の花は<蓮華の五徳(れんげのごとく)>と云われ、輪廻で再生する心を表しているのは有名な話だが、見返り地蔵が見つめるのは白い蓮。
実は蓮の花色にもそれぞれ意味があるそうで、白い蓮は清浄な心を代弁するそうだ。
・・・ということは、見返り地蔵さまが振り返って視線を投げかけているのは、清浄(無垢)な心を持つ魂、つまり、幼子の姿なのじゃないかな。
この白い蓮の花は、沖田桜が降り注ぐ水掛け地蔵尊が率いる子供達・・・を意味しているのかもしれない。 -
境内には竹の小道もあり、石畳沿いに咲くのはパフスリーブのような小さな花。
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鈴なりに咲くのは馬酔木(あせび)。
カワイイ花だがその毒があり、大きな体を持つ馬でさえ、馬酔木の毒でふらふらと千鳥足にしてしまう有毒植物なので、室内に飾るときは小動物や子供の誤飲にご注意を。 -
夕方の柔らかな光を透かす密蔵院の桜の下での滞在時間は20分ほど。
花粉症の季節の外出はツライのだが、桜の満開の時期だけは別。
くしゃみと目の痒みよりも、桜の魅力(魔力)の方が勝ってくる。 -
せっかく安行までやって来たので、もう1箇所、別のお寺へと足を伸ばしてみる。
向かったのは興禅院で、沖田桜の密蔵院からは徒歩20分強の距離。
こちらも植物で有名なお寺で、3月は白木蓮の大木が純白の花を大空に向けて花開いている。 -
もちろん、興禅院でも安行桜(沖田桜)が満開。
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境内の片隅にはリュウキンカやクリスマスローズが咲く花畑があり春爛漫の光景が広がっていた。
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でも、興禅院で有名な植物は桜でも木蓮でもリュウキンカでもなく、墓地の中にあるスダジイの巨木。
このスダジイの木は、石仏を抱く木。
抱き仏の木として知られている。 -
スダジイが抱くお地蔵様は元禄時代(約300年前)に彫られた彫像で、長い時間をかけ成長したスダジイの樹がゆっくりとお地蔵様を包み込んでいる。
私が初めてこの抱き仏のスダジイに出会ったのは2015年秋。
あれからたった7年しか経過していないのだが、その時に記した旅行記と比べても、スダジイの根の瘤は大きく成長し、お地蔵様の左半身をぐるっと囲み込み始めていた。
小さな石仏のお地蔵様がスダジイの樹の中にすっぽりと取り込まれてしまう日も遠くはないのかもしれない。興禅院 寺・神社・教会
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沖田桜をテーマに外出したはずが、水かけ地蔵尊、見返り地蔵、抱き地蔵・・・となぜかお地蔵様がメインの旅行記に。
まぁ、旅というのはテーマがあるようで実は何かを求めて旅をしたりするモノで、仕事だって人生だって大差は無い。
決まり事だけではなく、イレギュラーがあるから全てが面白い。
さて、もう少ししたら杉花粉のシーズンから脱却!
春のお出かけを愉しまなくっちゃね。
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