2021/05/31 - 2021/05/31
4位(同エリア308件中)
旅猫さん
8回目の高崎線沿線ぶらり旅は、再び桶川駅界隈を散策。
今回は、桶川市の北西に位置する加納界隈を歩いてみることにした。
加納地区は、縄文の遺跡や戦国時代の城跡などがある歴史の息吹を感じる土地である。
駅からバスで5分ほどの場所だが、とても長閑な景色が残り、心が癒された。
(2021.06.04 投稿)
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 高速・路線バス 徒歩
PR
-
桶川駅東口から、10時25分発の菖蒲車庫行の朝日バスに乗車。
バスは、前回歩いた旧中山道の街並みを抜けていく。
そして、5分ほどで着いた県道12号線沿いの細谷バス停で下車した。
県道12号線は、桶川市内で4車線化が進められ、今年1月にこの辺りも完成し、コンクリートとアスファルトの殺風景な景観となってしまった。 -
バス停近くの八雲神社も、区画整理された新しい場所に遷座し、コンクリートで囲われた土地の上に載せられていた。
渋滞緩和のための4車線化と言うが、便利にすればずるほど交通量が増えるだけで、失うものの方が多いのになぜ気付かないのであろう。 -
八雲神社の先にある坂田交番から脇道へと入る。
表通りは大きく街並みも変わってしまったが、一歩道を入れば、丁字路や曲道がある、人の住む町らしい景観が残っている。
そんな町の一角で、柏葉紫陽花が咲いていた。
今年は、紫陽花が咲くのも早い。 -
近くでは、もうタチアオイも満開だった。
日差しも強く、もう夏のような気配が漂っていた。 -
丁字路に出ると、その突き当りに馬頭観音が祀られていた。
大きな民家の塀が、そこだけ凹んでいる。
先人たちが拠り所としたものを大切にするのは良いことだ。 -
その丁字路を右へと進む。
しばらく歩くと、手入れされた広い庭があった。
個人の家のようだが、かなりの敷地である。 -
道は、その先で壁のようなものに遮られていいる。
その壁は、県道12号線と圏央道の桶川加納ICを結ぶ道路の一部だ。
手前に小さな社が建ち、鳥居の傍らに石標があった。
嘉永2年(1849)に、下加納村の名主本木勘太夫と桶川宿の八百屋宗吉により、加納天満宮への道標として建てられたものだそうだ。
以来、平成24年(2012)まではそのままだったが、圏央道の敷設に伴い、現在地へ移転されてしまい、道標としての役割を終えてしまった。 -
境内の片隅には、立派な石標も保存されていた。
そこには、本木勘大夫春房と刻まれ花押も彫られていた。
本木氏は、岩槻城主太田氏に仕えた鴻巣七騎の一人で、ここ加納の土豪だったらしく、徳川家康の関東入府後に帰農したと云われている。
今でも、この辺りには本木と言う家が多く、立派な屋敷もあった。 -
来た道を丁字路まで戻り、今度は左へと向かう。
すぐのところには、桶川市べに花ふるさと館があった。
急ぐ旅でもないので、立ち寄ってみることにする。
入ってすぐの場所には、小さな梅林があり、ちょうど実が生っていた。 -
立派な長屋門を潜ると、正面に大きな母屋が建っていた。
長屋門も含め、元は明治期に建てられた資産家の住宅だったそうだ。
今は、市の施設となり、食事処として利用されていた。
入口の体温検査器の前に立ったところ、突然の警報音。
見れば、38.2度と表示され、係員が飛んできた。
他の検査器で図ると36.2度だったのだが、初めて警報音を聴いて驚いた。
手打ちうどんが名物だそうだが、まだ時間が早いので止めておいた。桶川市べに花ふるさと館 グルメ・レストラン
-
長屋門から続く道には、蕎麦の花が咲いていた。
うどんが名物の施設なのに、おかしなものである。 -
ふるさと館のすぐ隣には、畑と森が広がっていた。
すぐ近くに、平成25年に完成した圏央道の桶川加納ICの巨大な施設があるとは思えないほど長閑な風景だ。 -
脇道へと入ると、右手の林の中に御堂と墓が見えた。
立入禁止となっていたが、入口には石造りの仁王像が建っている。
荒れているようだが、地元の方が管理しているようだ。 -
その先へ歩いて行くと、また圏央道の防音壁に行く手を阻まれた。
この辺りは畑が広がっていたようだが、圏央道の敷地となり、今は利用されていないようだ。
それでも、土の中に残っていたジャガイモが芽を出していた。 -
防音壁沿いに歩いて行くと、小さな祠が見えて来た。
そこは丁字路だったのだが、圏央道により、左手に続いていた道が断ち切られ、防音壁沿いに迂回するように新しい道が出来ている。
圏央道に断ち切られた道は、加納村の鎮守である氷川天満神社への参拝道で、天満道と呼ばれていた道だが、圏央道により南側が失われている。 -
断ち切られた天満道は、現在、歩道橋により圏央道を越えている。
江戸時代以前より続く道も、これでは台無しである。
区画整理や大規模道路により、地形や道筋が大きく変わってしまい、歴史的なものが失われていくのは残念である。 -
迂回している車道沿いに歩いてみると、真新しい御堂があった。
足立坂東三十三観音霊場のひとつである上品上生観音で、やはり、ICの建設により元の地を追われてしまったそうだ。
境内に建っていた記念碑には、『不承不承この地に移る』と刻まれ、先祖の霊が安らかに眠ることを願うという文で締められていた。
走行車両の騒音が聴こえるこの地では、安らかに眠れないことだろう。 -
丁字路跡まで戻り、歩道橋を渡る。
歩道橋からは、加納の街並みが見渡せた。
真っすぐに続く道が天満道である。 -
歩道橋を降りたところには、花がたくさん咲いていた。
もう百合の花が、蕾を大きく膨らませていた。 -
天満道を歩いて、氷川天満神社へと向かう。
道沿いには田んぼや畑が点在し、長閑な風景が観られる。
どこからともなく、蛙の鳴き声が聞こえて来た。 -
神社が近付いて来ると、右手に大きな枇杷の木が見えた。
枝一杯に橙色の実が生り、枇杷好きとしては涎が出そうだ。
枇杷は路地で栽培されるので、その実も食べられるのだろうか。 -
その先に、鳥居が見えて来た。
手前の空地には、色々な花が咲いている。 -
鳥居を潜ると参道脇には、茶店か土産物屋だったであろう平屋の建物があり、その向かいには、寂びたコカ・コーラの看板が掲げられている民家もあった。
-
氷川天満神社の境内は思ったよりも狭かった。
それでも、拝殿や本殿はなかなか立派で、風格もある。
この神社は、元は上加納村の鎮守として菅原道真公を祀った加納天満宮であったが、下加納村と合併した際、その鎮守であった氷川神社を合祀したため、氷川天満神社となったそうだ。 -
拝殿で参拝し、旅の無事を祈願。
その拝殿には、立派な木製の額が奉納されていた。 -
拝殿の近くには、深い井戸があった。
底に溜まった水の中では、鯉が泳いでいる。
江戸時代には、この水を沸かした湯が薬湯として知られ、多くの参拝客で賑わったそうだ。 -
祭神の一柱が菅原道真公なので、絵馬は合格祈願が多い。
いつの時代になっても、最後は神頼みなのである。 -
朱色の鳥居を出ると、可愛い紫陽花が咲いていた。
それは、装飾花も小さくて繊細な紫陽花だった。
個人的には、ガクアジサイよりも好きである。 -
氷川天満神社より、光照寺へと歩いて行く。
途中にあった市内循環バスのバス停には、今にも朽ちそうなコカ・コーラの印が入った木製の長椅子が置かれていた。
後ろには畑があり、何とも長閑な光景である。 -
よく見ると、その畑の中ほどに、花が咲いていた。
耕した後に芽吹いたのであろうか。 -
そして、光照寺に立ち寄る。
この寺の境内には、樹齢550年ほどの高野槙があるのだ。
本堂と比べてもかなり大きな樹だが、落雷に遭い、三つに分かれていた枝のひとつが枯れてしまったそうだ。
樹勢が弱っている感じに見えたので、長生きして欲しいものだ。 -
光照寺からさらに歩いて行くと、十字路の東側に公園があった。
後谷公園とあり、縄文時代後期から晩期にかけての遺跡の発掘が行われた場所だそうだが、今はその多くが工業団地となってしまっている。
この後谷遺跡からは、多くの資料が発掘されたらしく、市内の郷土資料館にも展示されているそうなので、次回訪れてみようと思う。 -
公園から、畑の点在する住宅地の中を歩いて行く。
この辺りは、細い道ばかりで、車も入ってこない。
町割りや道筋は、江戸時代からほとんど変わっていないのではないか。
道の脇には、宝篋印塔も建ち、歴史を感じさせてくれた。 -
そんな道沿いには、畑や田んぼもある。
埼玉県随一の大都市大宮から近いと言うのに、里の風情が感じられる。 -
蛙や雲雀が鳴き、蝶が舞う。
道端には野の花が咲き、とても気持ちが良い。
人にも会わず、静かそのものだ。 -
分かれ道には、小さな祠が建ち、石仏が祀られていた。
辻仏も、最近はほとんど見かけなくなった。 -
長閑な加納地区だが、一角に住宅が密集する場所がある。
そこは、戦国時代まで、この一帯を領有していた本木氏の居館とされる加納城があった場所だが、宅地開発により遺構はほとんど失われている。 -
それでも、奇跡的に内郭南西側の土塁と空堀が残っている。
宅地開発される前は、内郭と外郭の土塁や堀が良好に残っていたそうだ。
なお、桶川市出身の本木雅弘さんは、この本木氏の分家筋らしい。 -
近くには、小さな祠も建ってた。
住宅街の中に取り残されたような感じである。 -
城跡の南側に出る。
そこは市道が東西に走ってるが、その下に、加納城の堀跡があるそうだ。
歩いていると、玉ねぎの無人販売所があった。
一袋100円である。 -
その先に、道が変に折れ曲がっている場所があった。
これは、外堀の南西隅にあった『おりひずみ』と言うものの遺構である。
このような遺構も、区画整理による道の直線化で、いつかは失われてしまうのだろうが、歴史好きとしては寂しいものである。 -
加納地区の散策を終え、近くの宮の脇バス停へと向かう。
途中で、城跡北側の堀跡の写真を取り忘れたことに気付いたが、暑さと疲れで諦め、13時33分発のバスで駅東口へ戻ることにした。
駅からバスで5分ほどの場所にある加納地区。
思いの外長閑で、こんな街中で蛙の声も聴けて嬉しかった。
歴史にも触れられた、なかなか楽しい旅であった。
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この旅行記へのコメント (2)
-
- hot chocolateさん 2021/06/10 00:57:53
- 桶川駅界隈
- 旅猫さま
こんばんは。
紫陽花の美しい季節になりましたね。
高崎線の桶川駅周辺、といっても、そもそも多分高崎線には乗ったことがないかも?
あ、でも、高崎名物、赤いプラスチックのダルマ弁当を買ったことはあるのです。
桶川駅からバスで5分と都会でありながら、歴史もありのどかな里山といった雰囲気ですね。
蛙の鳴き声も懐かしいです。
体温検査器の突然の警報音は、心臓に悪いです。
hot choco
- 旅猫さん からの返信 2021/06/12 16:04:54
- RE: 桶川駅界隈
- hot chocoさん、こんにちは。
書き込みありがとうございます。
今年は、コロナのおかげで、大好きな紫陽花を観に行くことができません。
それでも、散歩道で、そこかしこに咲いているのを見かけると嬉しくなります。
高崎線は地味ですが、今は深谷界隈が大河ドラマの影響で賑わっています。
あとは、高崎のダルマ弁当ととりめしが有名ですかね。
桶川は、中山道の宿場町として繁栄しました。
手前の上尾宿までは再開発が進み宿場の風情が無くなっていますが、桶川宿は、本陣残り、旅籠の建物などもあるので、風情はあります。
まだ宅地化が市内全域までは進んでいないので、まだまだ長閑です。
蛙が鳴く田んぼがあるのは、とても嬉しいです。
初めて体温検査器の警報音を聴きましたが、あれは嫌ですね。
周りに人が居なかったのが幸いでした。
旅猫
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