2020/10/18 - 2020/10/19
1700位(同エリア2543件中)
ミズ旅撮る人さん
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小樽運河に面した場所にある「小樽芸術村」。
小樽の町に散在する昭和初期の石造りの銀行だった建物と、
運河沿いに見られる倉庫が、それぞれ特色のある美術館になっています。
「似鳥美術館(旧北海道拓殖銀行小樽支店)」「旧三井銀行小樽支店」
「ステンドグラス美術館」これら3館で構成される「小樽芸術村」。
4回目は、「旧三井銀行小樽支店」を見て、「似鳥美術館」で最後です。
「旧三井銀行小樽支店」では、重厚な銀行の内部と金庫室を見学し、
素敵なプロジェクションマッピングを楽しみました。
美しいレリーフのある天井いっぱいに繰り広げられる
プロジェクションマッピングは最高です。
「似鳥美術館」は、近代・現代の日本人画家の作品を中心に
日本画・洋画・彫刻を展示しています。
いずれも誰もが知っている大家ばかりがずらっと揃っていて、見応えがあります。
残念ながら、撮影禁止のため、写真がありません。
但し、ステンドグラスとガラス製品は撮影可能なので、そちらをたっぷり載せます。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 交通手段
- 高速・路線バス JALグループ JRローカル 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
「旧三井銀行小樽支店」です。
小樽は、明治末期から昭和初期にかけて、
最盛期には25の銀行があったという金融の町でした。
現在でも小樽の町の中には、石造りの立派な建物が多く見られます。
その中で「旧三井銀行小樽支店」は
「小樽芸術村」の一員となっています。旧三井銀行 小樽支店 名所・史跡
-
一歩中に入ると、広い銀行のロビーがあります。
2階までの広い吹き抜けで、まるで舞踏会場のような大きさと
優雅さを感じます。 -
そのロビーの一角に巨大なステンドグラスが展示されています。
「キリストの生涯」「聖母マリアの生涯」と題したもので、1865~1870年頃のフランスの作品です。
「この作品は、カトリック女子修道院「聖心会」の創立者
マドレーヌ=ソフィーバラ(聖マグダレナ・ソフィア・バラ、1779~1865)を讃えて献堂された
ベルギーのソフィーバラ教会の窓を飾っていました。
しかし、1994年、その聖堂は取り壊されることになり、
取り外された本作が日本へやって来ました。」 -
受胎告知
-
キリストの誕生
-
ピエタ
このステンドグラスは、「何でも鑑定団」に
出品されたことがあるそうです。
鑑定結果を聞けば良かったなあ。 -
2階に上がってみました。
-
会議室のアンティークな電燈。
そもそもが「銀行」なので、ホテルのような華美な装飾は見られません。
新築当時には、25種類138個の照明器具が使われていました。
すべてこの建物のために特別に作られたもので、
この二灯用シャンデリヤは植物の形を取り入れたデザインが特徴です。 -
地下の金庫室です。
出入り口の横に、窓のような物があります。
これは「人孔(人口)」です。
「従業員が内部で作業を行う大金庫には
必ず非常用の出入り口が作られています。
大きくて厚い金属製の扉は、堅牢な鍵やダイヤル錠によって
管理されています。
しかし、故障した時、若しくは災害によって扉にひずみが生じた場合、
開閉が困難になります。
また、ミスにより内部に人を閉じ込めてしまうケースも考えられます。
そのような時に、出入りが可能となるように作られたのが、人孔です。」 -
「貸金庫を利用する顧客は、まず手持ちの鍵を銀行員に渡します。
銀行員は受け取った鍵と、銀行で保管している鍵の2つで
貸金庫から桐箱を取り出し、顧客に渡します。
顧客は、桐箱を持って、金庫の前にある4つの個室のいずれかに入り、
中身の出し入れをおこなっていました。」 -
「貸金庫回廊
貸金庫室は埋立地の地下にあり、湿気が多いので、
中が濡れないように、壁と地中の間に空間を作りました。
地下は、壁が冷えて夏は結露が発生します。
そこで、結露を受けるためにタイル張りの回廊が設置されました。
但し、回廊の造りだと死角が出来てしまうため、
防犯のための合わせ鏡が設置されています。」 -
結露対策のタイル壁ですが、小樽の冬は寒かったんじゃないかな?
電燈がレトロな形ですね。 -
1階の金庫室。
旧三井銀行小樽支店の金庫は、金庫室・書庫・地下貸金庫すべて、
米国モスラー・セーフ・カンパニー社製の大金庫が設置されています。
旧三井銀行広島支店に設置されていたモスラー社製の大金庫は、
原爆にも耐え、保管されていた証券類は無事だったそうです。 -
帝国銀行小樽支店
太平洋戦争中、多くの銀行が戦時統合により合併しました。
三井銀行も1943(昭和18)年に第一銀行と統合し、
帝国銀行となります。
1949(昭和24)年に第一銀行と分離した後も、この名称は継続し、
1954(昭和29)年に三井銀行へ再び改称します。
1990(平成2)年に太陽神戸銀行を統合し、
太陽神戸三井銀行となります。
1992(平成4)年に「さくら銀行」へと改称します。
2001(平成13)年に更に「三井住友銀行」と改称しますが、
翌年、小樽支店は閉鎖されました。
三井住友銀行小樽支店は、小樽最後の都市銀行でした。 -
1階の一角に、ドームなどの電燈が展示されています。
-
新しく展示されたアージー・ルソーの電燈。
-
ドーム「睡蓮と陽光文ランプ」
-
「旧三井銀行小樽支店」で見るものは、それほど多くはありません。
ですが、この広い空間を利用して、素晴らしいイベントが行われるので、
椅子に座って待っています。 -
10~15時の毎30分に、プロジェクションマッピングが行われます。
天井の漆喰装飾を利用して、美しい模様が浮き上がります。 -
天井には、中央に円形の装飾があり、
そこを利用してマッピングが行われます。 -
円盤が広がって行きます。
-
天井全体に広がり、花びらが飛んで来ます。
-
画面が変わり、今度は青い模様が列を成しています。
-
青の帯は、ずんずんと波のように押し寄せて来ます。
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複雑な織物のような、綺麗に揃った模様が、頭の上を流れて行きます。
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青から緑に変化しました。
-
ピンクは丸、青は帯、緑は格子です。
-
ここからは、目まぐるしく変化するハイライトに入って行きます。
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どのコマも素敵なので、連続で掲載します。
-
中心の丸い模様が次々と展開して行きます。
-
外側の青い部分も細かく変化しています。
-
この美しい変遷に、瞬きする間が惜しいくらいです。
-
細長い天井の全体で、このマッピングは行われているのですが、
カメラで全体は撮れないので、肉眼で見るのとは違うものになります。 -
また赤い円が出現しました。
-
最初のピンクの円は、レース編みのように繊細な感じでしたが、
-
この赤は「芸術は爆発だ」といったところでしょうか。
-
うわ~、うわ~、うわ~、心の中で叫びます。
あまりにも華やかで圧倒的な展開に声も出ません。 -
今度は紅葉が乱れ飛んで行きました。
どうやら、春夏秋冬の展開になっているようです。 -
さあ、「冬」です。
-
氷の彫刻のようなキリッとした雰囲気が展開します。
-
天井の長さを存分に利用したマッピングが、左右に流れ続けます。
-
どんな風に撮れば、この感動的な映像を写し取れるのだろうか。
もう、ほとんど諦めの境地です。 -
光の帯が左右に流れて行った後の青い画面に、
制作者のサインが現れました。
ああ、終わりなんだ。なんて贅沢な時間だったことだろう。
「旧三井銀行小樽支店」で、プロジェクションマッピングを
やっているなんて知らなくて来たけれど、
たまたま上映時間に合ったので、見られて良かったです。 -
「似鳥美術館」に来ました。
受付を済ませて売店の先にある入り口を入ると、
このステンドグラスの間があります。
ここは撮影が出来ます。奥に行くとエレベーターで4階に上がって、
絵画や彫刻を見ながら降りて来るようになっています。似鳥美術館 美術館・博物館
-
ルイス・C・ティファニー(1848~1933)は、高級宝飾店ティファニー社創業者の跡取りとして生まれながら、新興国だった19世紀アメリカでガラス産業を芸術にまで高めて人気を得ました。
多才で、若き日は油彩画家として、また室内装飾家として成功し、
大統領執務室の内装を任されたほどでした。
インテリア素材に精通するにつれ、ガラスに魅了された彼は
研究や開発に打ち込み、虹色に輝くファヴリル・ガラスをはじめ、
多彩な新技法を完成しました。
いくつかは、現在でも再現不能と言われています。
斬新で美しい花器やランプがブームを呼び、
1900年のパリ万博では金メダルを獲得しました。
今も世界中にそれらの愛好家がいますが、
ルイスがメイフラワー号でアメリカへ渡った
ピューリタンの子孫であるためか、ガラス産業に於いて
先ず着手し成功を収めたのは、教会用ステンドグラスでした。
その光の絵画をお楽しみください。 -
「百合の装飾パネル」
当ギャラリーに展示してある作品の中で、最も初期の作品。
聖母マリアの純潔を表す白い百合を中心に、
細かい装飾模様で構成されています。
百合の花びらに使われているオパールセントガラス(乳白ガラス)は、
大きく波打っていて厚さもあり、立体的な表現を可能にしています。
背後には淡い黄色のガラスが重ねられていて、
自然の花が持つ柔らかな白をガラスによって再現しています。 -
「聖パウロのアテネでの説教」 1900~1905年頃
使徒言行録17章には、使徒聖パウロがアテネのアレオパゴスの丘(
パルテノン神殿の手前)で、民衆を前に説教した場面が描かれています。
当時アテネでは町の至る所に祭壇が設えられて、
多くの神が祀られていました。
しまいには「知られざる神に」などと書かれた祭壇すらあり、
それに憤慨したパウロは
「あなた方が知らずに拝んでいるもの、それを私はお知らせしましょう」と話し始めたのです。 -
「メモリアル ウィンドー 希望」 1900~1905年頃
教会の祭壇背後に設置されていた最も重要な作品。中心の大きなパネルは
「善き羊飼い」を描いていますが、これはキリストを表しています。
キリストの背景には「希望」をイメージさせる明るく輝く空があり、
周囲の暗い茂みと対照的な印象を与えています。
向かって左のパネルは大天使聖ガブリエルによる、マリアへのお告げ
「受胎告知」があります。マリアは寝室でイザヤ書を開いています。
その反対右側のパネルは、マリアとヨセフそして幼子イエスの
「聖家族」が主題となっています。
救い主が生まれたことを知らせる星が、粗末な厩の上に輝いています。 -
「聖霊と祝福の天使」 1900~1905年頃
この美しい2人の天使は、アメリカのニュージャージー州
ジャージーシティにある、セント・ジョーンズ・エピスコパル教会の
ファサード(正面入口)上部に設置されていたステンドグラスです。
天から舞い降りる聖霊は、光によって暗雲を切り裂くように
描かれています。
白い衣装は布が波打つように綺麗なドレープを描き、
立体的に飛び出しています。
乳白のオパールセントガラスの背後には、ブルーのガラスが
重ねられていて、強い光を通すと深い青色に発色します。
これらの作品は、1997年に教会の窓から外されて
日本へやって来ました。 -
左側の天使です。
衣装が螺鈿細工のように、色が変化しています。 -
「聖母マリア」
ここでは聖母マリアが二羽の鳩を懐に抱いている姿で描かれています。
ユダヤ教の律法に従い、出産後清めの時期を過ぎたマリアが、エルサレムの神殿に鳩を1つがい捧げる「神殿への奉献」の場面と思われます。
上部にゴシックリバイバル様式の古典的な飾りを表現していながら、
その中に描かれているのは、アシンメトリーなどんぐりの
装飾模様であり、アール・ヌーヴォーの要素が色濃く表れています。 -
1871年に建築家レムセン・オンデルドングにより、ゴシック
リバイバル様式で建てられたセント・ジョーンズ・エピスコパル教会は、
フランスのシャルトル大聖堂の三連ファサードを模した荘厳な外観を
持ち、内部には豪華な祭壇や装飾、そして全米一美しいと言われた
ルイス・C・ティファニーのステンドグラスが嵌められていました。
この教会はかつて、聖公会教会としてニュージャージー州一の
規模を誇り、「大富豪の聖堂」と言われたほど豪奢な建物でした。
しかし時代と共に教会を取り巻く環境は変化し、
1960年代から1970年に掛けて、急進的な黒人民族主義運動の
拠点の一つとして、政治的な活動に傾倒して行きます。
教会は1994年には閉鎖され、内部の装飾品や祭壇、ルイス制作の
素晴らしいステンドグラスも1997年に教会から外されて、
その後日本へとやって来ました。 -
「ガラスを重ねる事で表現するステンドグラスの複雑な色彩」
ルイスは様々なガラスを自由に創り出すことが出来るように
なりましたが、それでも満足はしていませんでした。
「メモリアルウィンドー希望」でイエスが着ている衣服には
オパールセント・ドレパリーガラスが使われています。
一枚では淡い乳白色のガラスですが、その後ろに青や新緑、紫などを重ねることにより、背後から差し込む光の強さで様々な表情に変化します。
制作当時ルイスは、完成した作品を強い光の前に立てて、
何枚ものガラスを背後に足しながら
全体のバランスを整えていたようです。
部分的に7枚ものガラスが重なった作品の存在が記録にあります。 -
「ルイスとイギリス・ヴィクトリア朝ステンドグラスの違い」
ルイスは可能な限り、ガラスの素材感と色彩のみで
作品を創り出そうとしました。
ルイスの技法では、布の部分には立体的なドレパリーガラス、
天使の羽根には矢羽型の模様が浮き出るオパールセント・
ヘリンボンガラスに、淡いピンクや青のガラスを重ねて
柔らかい表情を創り出しています。
一方、当時イギリスを中心とした西ヨーロッパでは、グリザイユ
(顔料)による焼き付け技法が教会ステンドグラスの主流でした。
右の作品は、もしも同じ原画を元にヴィクトリア調の絵付けで
製作されたならば、このようになるだろうと想像して再現したものです。
確かに全然別物になりますね。
このように、技法の異なるステンドグラスを明確に分けて、
2つの美術館で見ることが出来るというのが、「小樽芸術村」の
すごいところです。 -
「絵付けにも強いこだわり」
ルイスは可能な限り、ガラスそのものの素材で
すべてを表現しようとしましたが、細かい表情を描き出すために、
顔や手足だけには古典的な絵付けを施しています。
そのため熟練した技術を持つ職人をヨーロッパから招いていました。
左から2番目に見られる様に多くのグリザイユ(顔料)を駆使して
細密な絵付けを行いましたが、その前面には、
乳白色のガラスに淡い輪郭線のみを絵付けした物(左端)を重ね、
更に後ろにも凸凹のマチエールのある多色ガラス(右から2番目)を
重ねています。
これにより薄いベールの向こうに、神秘的な表情の天使が存在している、
不思議で神聖なステンドグラスが作られたのです。 -
「十字架の天使」
両手を広げて、すべての人々を受け入れるような姿で描かれている
天使の背後には、輝く大きな十字架があります。
希望を表す教会のシンボル的作品であったと思われるパネルで、
羽根の部分に使われているヘリンボンガラスは
その発色・質感ともに圧巻です。
一枚一枚の羽根の動きに合わせて、ガラスの中心から矢羽状に伸びる
ラインを合わせるための、多くのガラスが使われたと思われます。
光が強くなれば強くなるほど赤みが増して、衣装のオパールセントガラスとともに神秘的な輝きを放ちます。 -
「キリストの洗礼」
キリストがヨルダン川で、洗礼者聖ヨハネから受洗している場面。
福音書には、神の霊が鳩のように降って「これは、私の愛する子、
私の心に適う者」という声が聞こえたとあります。
洗礼者聖ヨハネは、野性味あふれる姿で描かれています。
水に浸かっているキリストの足や、水辺の植物の表現が美しく、
舞い降りる聖霊が放つ光でキリストだけが輝くように、
あえて周囲には暗いガラスを多用しているのがわかります。
キリストの背後に描かれている蒲の穂は、
キリストが捕らえられて連行される際に、
兵士たちが手に持たせ嘲笑した事を暗示しています。 -
「幼子よ我に来たれ」
福音書には、キリストに触れて祝福してもらうために、
多くの親が子供を連れて来たことが書かれています。
弟子たちがそれをとがめると、キリストは「神の国は子供たちのように
受け入れる者のためにある」と言い、
子供の頭に手を置いて祝福したとあります。
アメリカやイギリスでは多くの教会で日曜学校が開かれ、
子供の教育にも大きな影響を与えていました。
そのような教会からこの主題を描いたステンドグラスの注文が
多かった為、ティファニー・スタジオでも
同じテーマで多くの作品が制作されました。 -
「ラッパを吹く天使」
このステンドグラスはイタリアのフィレンツェにある、
サン・マルコ修道院所蔵のリナイウォーリ祭壇画
(1433年フラ・アンジェリコ作)で聖母子の周りを囲む
奏楽の天使のうちの一人を原画として作られています。
とても小さなサイズの絵ですが、衣服の裾や襟などに描かれた、
細かい図柄も忠実に再現しようとしていた様子がわかります。
ここでは、ルイスが他の作品で衣服に使っている
乳白のドレパリーガラスではなく、
深紅で透明度の高いドレパリーガラスが使われています。
温度や成分の微妙な変化で赤の色合いは劇的に変化してしまうので、
布のびだを正確に作り出すことが大変難しいガラスと言えます。 -
「世の光 ドアをたたくキリスト」
19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したイギリス人画家
ウィリアム・ホルマン・ハントの絵を原画として製作された作品です。
ティファニー・スタジオでは、この原画を元に数枚の作品を
制作していますが、中でもこの作品は後期の完成された名作と言えます。
多くのガラスを重ねて表現するルイスの作品の中でも、
ここで見られる様に、暗闇で光るカンテラや、
その照り返しでぼんやりと見えるキリストの顔などは、
それまでのステンドグラスには見られない表現方法と言えます。
ドアのすぐ前まで来ているキリストの救いを受けるには、
自分からドアを開けなくてはいけないという意味で、
外側には取っ手が描かれていません。 -
「人物の居る風景」
ここではイスラエルの衣装を身に着けた、力強い男を中心に
3人の人物が描かれています。
ガラスによる光の通過度で明暗をハッキリとさせた作品は、
強い印象を与えます。
旅の途中のようにも見られますが、この作品の人物は皆逆光で表現され、背後で鮮やかに光る空が、約束の地をイメージさせます。
この光は一日のはじめに教会を訪れた人には朝日に、
仕事を終えた人には夕日に見えていたかもしれません。
逆光で暗い部分にも細かい部分の描写がされており、
中央に佇む男性のたくましい足には、
血管が浮き出ているのが見られます。 -
「平和」 1910年頃
春を伝える花々を掴んだ手が、鳥のように飛んで来る様子を
象徴的に描いた作品。
画面の中央には平和を表す婦人像が、
美しい花々に囲まれて立っています。
この図像はキリスト教的な要素よりも、神話からイメージされる
擬人化された象徴として「平和」を表したものです。
顔や手の部分の絵付け技法が、他の展示作品と少し違っていますが、
この作品は他の展示作品よりも少し後に製作されたものと思われます。 -
「復活」
キリストが十字架に架けられて埋葬された3日目の朝、
マグダラのマリアや婦人たちが墓を訪れると、
そこにはもうキリストの遺体は有りませんでした。
「復活」と題される作品には4つの福音書の、
どの部分を図像化したかによって大きな違いがありますが、
マグダラのマリア達が訪れたこと、その時、空の墓に現れた輝く若者
(天使で表わされる)がキリストの復活を告げたことが共通しています。
このステンドグラスには、後ろ向きで香油壺を手にする
マグダラのマリアと二人の女性(ヤコブの母マリアとサロメ)が
描かれているので、マルコによる福音書を原典にしていると思われます。 -
「天使の窓」
「十字架の天使」と同じ教会で、同様のガラスが使われていることから、一連の天使作品と考えられます。
頭上に輝く大きな星は、黙示録にあるように、
キリストを明けの明星に例えたもので、キリストの誕生を
マギ(東方の三博士)に知らせた導きの星でもあります。
当ギャラリーに展示されている「聖家族」の上部にも、
輝く明けの明星が描かれています。
この作品と「復活」は、19世紀のドイツ人画家ベルンハルト・
プロックホルストの絵を原画として制作されたものと思われます。 -
「天使ケルビム」
セント・ジョーンズ・エピスコパル教会の壁面上部に
設置されていたと思われます。
一回り小さなサイズですが、全体に3~4枚のガラスを重ねて、
複雑な色彩を表現しているため、その重さは大変なものです。
渦巻く光の雲から舞い降りて来るケルビムの姿が描かれています。
セラフィム(熾天使)とともに、
上級天使とされるケルビム(智天使)は、
完全なる知恵と理解を表すものとされます。 -
「三天使の窓」
十字架と三人の天使が描かれたこのパネルには、
ティファニー・スタジオ制作の他の作品と異なる部分が
多く見られるため、完成後大きな修復、
若しくはガラスの入れ換えが行われた可能性があります。
天使の顔の絵付けや上部の装飾、複層構造の十字架などはオリジナルの
部分と思われますが、半分より下のガラスは少し新しい時代のガラスが
使われています。
三天使は三位一体を表し、6枚羽の上級天使として
十字架を囲むように描かれています。 -
「天使」
肖像画のように描かれた二人の天使。
一人の天使の手には純潔を表す白百合が、
もう一人は殉教を象徴する棕櫚の葉を持って描かれています。
羽の部分には、表面に波打つような質感があるヘリンボンガラスが
使われています。
天使の羽は、鳥の羽と同じく中心に芯の部分があり、
そこから細い線状の模様が伸びています。
これを絵付けではなく、ガラスの質感で表現しているのです。
熱く溶けたガラスに、狙ったように流れを作るのは大変難しい技術です。
たくさんのガラスから、羽の動きに合った部分を選び出して使うため、
大量のガラスが必要だったことがわかります。 -
「天使ケルビム」
セント・ジョーンズ・エピスコパル教会ファサード上部に
設置されていたステンドグラスです。
「聖霊と祝福の天使」の更に上に展示されていました。
上級天使ケルビムは、通常6枚羽根で描かれることが多いのですが、
ここでは顔に直接2枚の羽根が生えている姿で描かれています。
羽根の部分には、細かいひだが鳥の羽のように並んだ
ヘリンボンガラスが使われています。
中心で幻想的な表情をしている天使の顔は、
3枚のガラスが重ねられていて、1枚目には淡い輪郭線が、
2枚目には多くの顔料を駆使した写実的な絵付けがなされています。
背後には赤や青の混じったストリーキーガラスが嵌められているため、
色彩も表情も複雑さを増しています。 -
「十字架と王冠のパネル」
十字架と王冠を中心に配置した2枚のパネルは、
美しい葡萄の装飾に囲まれています。
葡萄はキリストを表しています。王冠の装飾や葡萄の実の部分には、
カボション型の立体ガラスが使われていて、
赤紫や青の微妙なグラデーションは、背後に重ねられている
ガラスの色合いが反映されています。
十字架の部分には厚いガラスの塊から削り出した宝石のような
ガラス片が使われていて、
その表面はエッジが立ち、輝きを増す効果が得られます。 -
「四福音書の窓」
当ギャラリー最大の窓。
中央の円形窓の中心には開いた本が描かれています。
これは聖書で、そこから発せられた光が周囲に広がっていく様が
表現されています。
左右の3つの葉型の装飾パネルには葡萄と時計草が描かれていますが、
ともにキリストと、その受難を表現する植物です。
下部には4枚の大きなパネルがあり、それぞれの中央には聖書の
四福音書を記した福音史家、左からマタイ(人)、マルコ(獅子)、
ルカ(牛)、ヨハネ(鷲)の象徴が描かれています。
現在左端のマタイはオリジナルの美しい絵付けが残っていますが、
他の3点は簡単で稚拙な線描きで作られていて、
後世に入れ替えられてしまったと考えられます。 -
アール・ヌーヴォー装飾パネル
葡萄や花など、自然の形態を装飾的要素に取り入れて制作された作品は、
教会においては象徴的な窓として、
またそれ以外の場所では室内装飾の一つとして多く取り入れられました。
ここに展示されている装飾パネルはそれぞれ800~1000枚の
細かいガラスで組み立てられています。 -
立体的で小さなガラス片や、半球型のガラス、オパールセントガラスにファブリルガラスなど、ティファニー・スタジオが得意とする
多くの手造りガラスが使われています。
これらの作品では自然界の様々な物、植物や動物、昆虫などの形から
多くのヒントを得ていたと思われます。 -
このようにアール・ヌーヴォーの装飾パネルは
ずらっと展示されています。
これで1階のステンドグラスの展示は終了です。
奥のエレベーターで4階へ行きます。
4階には、「近代・現代の日本画」が展示されています。
撮影禁止なので、画家の名前だけ列挙します。
谷文晁・岸駒・伊藤若冲・横山大観・川合玉堂・村上華岳・上村松園・
鏑木清方・伊藤深水・横山操・杉山寧・加山又造・片岡球子・高山辰雄・
平山郁夫・東山魁夷・千住博
これだけ有名どころが揃っているのが「似鳥美術館」のすごいところ。
それぞれの画家の作品は1~4枚くらいですが、全部で33点、
粒ぞろいなのは間違いなし。 -
更に3階には、「近代・現代の洋画・彫刻」があります。
岡本太郎・森本草介・黒田清輝・岡田三郎助・佐伯祐三・小出楢重・
梅原龍三郎・安井曾太郎・中川一政・林武・小島善三郎・荻須高徳・
佐伯祐三・佐藤忠良・柳原義達・高村光太郎・小磯良平・
ベルナール ビュッフェ・藤田嗣治・シャガール・ユトリロ・
ヴラマンク・ルノワール・岸田劉生、計40点。
そして2階には棟方志功の見事な彫刻。
それらを鑑賞した後、地下1階に降りて来ました。
アールヌーヴォー・アールデコ グラスギャラリーです。
ここは撮影が出来ます。 -
小樽が外国貿易港として栄えていた19世紀末、
フランスではエッフェル塔が建設され、
アール・ヌーヴォーがヨーロッパを席巻しました。
アールヌーヴォー・アールデコ グラスギャラリーでは、
その時代に活躍した作家のミール・ガレ、ドーム兄弟、
ルネ・ラリック、ガブリエル・アージー・ルソー、
ヴィクトール・アマルリック・ワルターらの作品を
鑑賞することが出来ます。 -
ラリック「アリカンテ」 1927年 型吹きガラス
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<新コレクション> ラリック「DEUX COLOMBES」
-
アールデコ調の部屋を再現しています。
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なんて洗練された家具なんでしょう。椅子の形もモダン。
-
まるで宝物のような家具ばかり。手が震えそう。
-
こうした家具の美術館があると嬉しいな。
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あまりに多くの作品が並んでいるので、
もう、1つ1つじっくりとなんて出来ません。 -
ドーム「冬景色文ランプ」 1900~1910年
カメオ彫、エナメル彩 -
<新コレクション> ミューラー「白樺風景文ランプ」
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<新コレクション> ミューラー「アネモネ文テーブルランプ」
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左:ガレ「シャクナゲ文ランプ」 1918~1931年
被せガラス、スフレ、カメオ彫
右:<新コレクション>ドーム「藤文ランプ」 -
ガレ「木瓜(ぼけ)文ランプ」 1900~1931年
被せガラス、カメオ彫
なんてキュートな木瓜!これ、あると嬉しいな。 -
<新コレクション>ガレ「オンベル文ランプ」
まるで日本の行燈を模したような形です。 -
アージー・ルソー「蝶文パフュームランプ」
どんな花の香りを焚いたのかしら? -
中央:ドーム「湖水風景文ランプ」 1900~1910年
被せガラス、カメオ彫
右:ガレ「クレマチス文ランプ」 1900~1910年
被せガラス、カメオ彫
左:ガレ「シャクナゲ文ランプ」 1918~1931年
被せガラス、スフレ、カメオ彫 先程の作品と色違いです。 -
ドーム「夏景色文ランプ」 1900~1910年
エナメル彩、カメオ彫 -
ドーム「スミレ文花器」
-
いったい何点あるの?既に挫折しているけど、いや~まいった。
こんなにすごい美術館なのに、各階に数人しかいません。
外には、たくさんの観光客が買い物をしているのに、もったいないなあ。 -
ドーム「チューリップ文花器」
被せガラス、カメオ、マルトレ -
<新コレクション> ドーム「羅紗掻文草花器」
-
ドーム「カラー文花器」 1900~1910年
被せガラス、カメオ彫、マルトレ(鎚目) -
<新コレクション> ドーム「マーガレット文花器」
「ナンシー派の双璧 ガレとドーム」
時にガレの追随と評されるドームですが、
両者が得意な技法やモチーフは異なっています。
「アンテルカレール技法」はドームが1899年に特許を取得しており、この技法が用いられる事の多い風景シリーズには、
習作が多いと言われています。
また、枯れの重厚で哲学的な世界観に対し、
ドームは明快でわかりやすい美を、高水準な技術によって提示しました。
二者には制作理念や方向性に明確な違いがあるのです。 -
左:ドーム「蘭と蜂と蜘蛛の巣文トレイ」 1895~1900年
中央:ドーム「蜘蛛の巣と蘭文花器」 1895~1900年
右:<新コレクション> ドーム「ミツバチ文花器」
いずれも、金・エナメル彩・カメオ彫 -
<新コレクション> ドーム「茨に秋景色文花器」
-
ドーム「アネモネ文花器」 1892~1900年
金・エナメル彩、グリザイユ、ジブレ、カメオ彫 -
ドーム「大鷲文花器」 1892年
金・エナメル彩、被せガラス、カメオ彫、エモー・ビジュー
「ドーム社の伝統と革新」
ガレの活躍に刺激を受け、装飾ガラスの製作に着手したドーム。
1900年のパリ万博では、ガレと共にグランプリを受賞する快挙を
成し遂げています。
成功の秘訣は、分業体制と柔軟な社風にありました。
兄が経営、弟が製造を監督し、優れた作家たちと協力体制を築きました。
また、大衆の好みを読み取る能力にも長け、
柔軟に作風を変えることで時流に対応できたのです。
ドームはナンシー派の中で唯一、今も会社が残っています。 -
<新コレクション> ドーム「蘭文花器」
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ガレ「ルピナス文花器」 1900年頃
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ガレ「カマキリ文トレイ」 1878~1889年
金・エナメル彩 -
夢のような場所に私一人。贅沢ではあるけれど、もったいない。
後ろ髪を引かれる思いで、ここを後にします。 -
うわ~ん、まだある。嬉しい悲鳴です。
-
ルイ・エルネスト・バリアス「科学の前にヴェールを脱ぐ自然」
この像は1889年にボルドー大学に新しく設立される医学部を
飾るために制作されました。
現在はパリのオルセー美術館に、大理石像が展示されています。 -
ドゥメトル・シバリュス「フレンズ・フォーエバー」 1927年頃
ブロンズ、象牙。
女性の身体は象牙で出来ているんですね。 -
左:クレール・コリネ「コリントの踊り子」 1930年頃
右:ポール・フィリップ「ロシアの踊り子」 1925年頃
いずれも、ブロンズ、象牙 -
「似鳥美術館」最後の作品は作者不詳。
アール・ヌーヴォー ブロンズレリーフ。
実に中身の濃い展覧会を見て来た気分です。
ここは、美味しいところだけを、ぎゅーっと絞り込んで集めた
正に「似鳥コレクション」です。
社会人なら知っておいて欲しい抑えどころを集約した感じで、
教科書のような美術館です。
ほとんど知っている画家ばかりなので、
鑑賞するのは気が楽だと思います。 -
外に出ると、青空に真っ赤な蔦が照り輝いていました。
「小樽芸術村」の3館、すべて堪能しました。
このためだけに、はるばる来たけれど、しっかり満足です。
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