鎌倉・永福寺二階堂（釈迦堂）は？

2010/01/10 - 2019/12/09

　永福寺の本堂は二階堂と呼ばれていたが、これは釈迦堂であった。永福寺は薬師堂、釈迦堂、阿弥陀堂の三堂が並ぶ過去・現世・未来の三世仏をそれぞれのお堂の本尊としていたと考えられる（https://4travel.jp/travelogue/11576050）。
　しかし、中央の釈迦堂は二階堂と呼ばれ、釈迦堂の名が忘れ去られてしまったようだ。では、何故二階堂と呼ばれたのか？それはその釈迦堂が一番の大伽藍でしかも高さも飛び抜けて高く、裳腰が一層目ではなく、裳腰が付いた本当に二階建ての伽藍だった可能性もある。少なくても、誰が見ても驚くような二層の屋根を持つ二階建ての大伽藍だったはずだ。これは湘南工科大学（コンピュータ応用学科・長澤可也教授研究室）のCG復元図からは伝わってはこないことである。実はこれと良く似た復元を担当した宮大工の棟梁がいた。西岡常一（明治41年（1908年）9月4日~平成7年（1995年）4月11日））である。奈良・薬師寺の金堂（https://4travel.jp/travelogue/10396385）がそれである。なお、薬師寺金堂の基本設計は大岡實博士（明治33年（1900年）9月29日~昭和62年（1987年）12月7日））が担当した（http://www.ohoka-inst.com/yakushijikondou.html）。この間口を5間に狭めると永福寺の二階堂（釈迦堂）に近づくのではないか？また、同じ面積の基壇を持つ薬師堂、阿弥陀堂もこれとほぼ同じ大きさの宇治・平等院鳳凰堂（阿弥陀堂）（https://4travel.jp/travelogue/10440558）に近い姿の伽藍を思い起したら良いのではないか？それはむしろCG復元図にある二階堂（釈迦堂）に近い（、裳腰付き）姿ではなかったのか？
　永福寺のCG復元図は宇治・平等院鳳凰堂（阿弥陀堂）と類似している。あるいは、平泉・無量光院跡阿弥陀堂復元CGは平等院鳳凰堂（阿弥陀堂）と見間違うかのようだ。あるいは、鎌倉・永福寺のモデルの1つである毛越寺復原模型でも屋根が高いがとても二階建てのお堂には見えない。では源頼朝が見た中尊寺の二階大堂（大長寿院）の姿は？残念ながら、CG復元図は見付からなかった。
　奈良・薬師寺の金堂も鎌倉市内・龍宝寺本堂も同じ大岡實博士の基本設計による。龍宝寺本堂と永福寺二階堂（釈迦堂）のCG復元図とは類似していないか？こうした寺院の中で永福寺の二階堂（釈迦堂）と中尊寺の二階大堂（大長寿院）だけが二階建ての伽藍と伝わっている。しかし、鎌倉時代初期にあった大型伽藍には奈良・薬師寺の金堂も現存していた。平泉の藤原清衡（、あるいは頼朝も）は奈良・薬師寺の金堂を見ている可能性はある。誰が見ても驚くような二層の屋根を持つ二階建ての大伽藍と言ったら、復原された奈良・薬師寺の金堂しか思い浮かばないのが現状である。
（表紙写真は復原された奈良・薬師寺の金堂）

エリア 鎌倉(神奈川)

鎌倉・永福寺二階堂のCG復元図。
どう見ても一階建て（一層裳階付き）の伽藍である。

無量光院跡阿弥陀堂復元CG（平泉町のパンフレットより）。

毛越寺復原模型（http://morioka-kankou.com/index-iwate.html）。

宇治・平等院鳳凰堂（阿弥陀堂）（https://4travel.jp/travelogue/10440558）。

宇治・平等院鳳凰堂（阿弥陀堂）（https://4travel.jp/travelogue/10440558）。

奈良・薬師寺の金堂（https://4travel.jp/travelogue/10396385）。

奈良・薬師寺の金堂図面（http://www.ohoka-inst.com/yakushijikondou.html）。

龍宝寺本堂（https://4travel.jp/travelogue/10451128）。
奈良・薬師寺の金堂が二階建てであるのに対し、龍宝寺本堂はその一階部分だけの一階建て（いわゆる平屋建て）であることが分かる。一階建てのお堂（一層裳階付き）の上にもう一階分（一層裳階付き）を組み上げないと二階建てのお堂（二階堂や二階大堂）にはならないことが理解できる。
したがって、龍宝寺本堂と永福寺二階堂（釈迦堂）のCG復元図はいずれも一階建てのお堂（一層裳階付き）であり、誰が見ても二階建ての大伽藍だとは思わない。