デモ下の香港でトランジット&街歩き

2019/09/22 - 2019/09/22

思えば半年前、トランジットついでに観光できる～♪とご機嫌で予約した香港乗換便。
ところが2019年秋、香港は民主化デモの嵐が吹き荒れ、ニュースは連日「当局との衝突で学生が負傷」「今日も大規模デモ予定」など報ずるようになってしまいました。
ネットで見ても、「この時期に香港観光なんて甘い」とか「空港の外に出るのは愚の骨頂」とか書かれています。
まいったなあ……トランジット14時間を空港カンヅメで過ごすのか～(~_~)；；
せめて空港グルメを楽しんで、あとは映画館とかマッサージ店に行くしかないかな～と思っていました…が………(^^;ゝ

エリア 香港(香港)

• 旅行の満足度: 2.5

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: 鉄道 徒歩
• 旅行の手配内容: 個別手配

なわけで、モチベーションゼロで香港空港に降り立った私。
これから14時間空港にカンヅメ、の後13時間のフライトか～( ﾉД`)。

バスに乗って着いた巨大なホールがマップのどこにあたるのかも全然わからず、とりあえず坐って途方に暮れます。
後でわかったけど「接機大堂＝arrival」らしいので、マップＬ５左の三角のホールがあそこだったんでしょう。

目的地のはるか手前なのに、すでに挫折気分。
遠くに「イミグレーション」って書いたカウンタと「トランジット」って書いたドアが見えるけど、ううーん、どっち？！
着いてからのことは万端調べてきたのに、トランジットについては、旅慣れてないからそんなこともわからない。

30分ほど座り込んで無力感にうちひしがれた後、のろのろスマホを繰って、「短時間でも、空港グルメするなら入国」と書いてあるページをみつけてやっと解りました。

イミグレーションを通り、地上階の明るいキレイなフロアに出てようやく一息。よーし、次のミッションは空港グルメだ！

広いホールに面した「crystal jade　翡翠拉麺小籠包」というお店に入ってのんびりすることにしました。
メニューの写真を見ると麺はボリューム過多だったので、小籠包と、

ところてんの上にバンバンジーが乗ってるみたいな謎の一品を注文。小籠包は普通。ところてんは謎すぎでしたが、バンバンジーはゴマの味が濃厚でたいへんに美味しい。

ゆったりできて、眺めもいいし、なかなか満足！と思ったのち、ふたたびなにやら不安な気分に……。

そうか、私が一人寂しく食べ進む間、左右のテーブルは家族連れ。ずっとテンポのいい中国語と笑い声が聞こえてきているんです。

なるほど、これが一人旅なんだなあ……家族や友だちと来ていたら、私自身もいつものようにガハガハ笑って騒いでしまい、この感じは味わえない。確かに少し寂しいけど、それでいてじんわり満足感もある…ような気がして腹がすわってきました。

さて、１時間後、家族や友だちにひとしきりＬＩＮＥし終えたところで店を出て、腹ごなしに第１ターミナルをひとまわり。

わあすごい～、綺麗だし、成田よりずっと大きい！　だんだん気分がアガってきて、搭乗手続きまでまだ12時間もあるけど、なんだか余裕で過ごせるような気がしてきました。
バス発着所へのドアは厳重に警備されているけど、その他にはデモをうかがわせるところなんか何もない。

それに、やっぱりアジア……あまり外国っぽくなくて、リラックスできます。なによりやっぱり漢字があるのがいいな！

まずはひととおり店を外から眺め、面白い漢字表記を楽しむ余裕も出てきました。
最后狂減＝final sale、８折＝20% off、自由配搭＝any combination…
「膠樽：にかわだる？＝plastic bottles」なるほど！　これはゴミ箱の表記。
「小心地滑＝caution: easy to slip」これはトイレの入り口立て看板。人が滑ってる絵もついていて面白い。

などと見物し歩き回っているうち、少し疲れて荷物が重く感じてきました……。
まだ10時間もあるし、本気で荷物預かり所を探そう、と、「行李寄存＝baggage storage」の表示を見つけ歩いていくと、ターミナル２（二号客運大楼！）への通路の途中（右側）にカウンターが。

おじさんに、預けたいんですけど、と言ってバックパックを置くと、１ナワーとか２アワーとか、～で切り上げ…とか、ペラペラ説明しはじめてしまいました。

うわあ、いまいち言ってることが聞き取れない……私の英語力のせいもあるけど、おじさんの発音が独特なせいもある。
もういいや……わかったフリをして、ＯＫ！８時間か９時間くらい預けたい！と言い切って荷物を置くと、パスポート、と言われ、提示すると票を出してくれて、すぐに預かってくれました。

身も心も軽く、ターミナル２へ行って見物。
ここにもよさげなレストランがあります。それから、スーパーにあるようなフードコートらしきところも。

おや！　探していたタピオカミルクティー売ってる♪　恥ずかしいが実を言うと私、日本でもまだ一度も飲んだことない(T_T)
メニューにはたくさんの商品が書いてあり、「夢幻粒粒茘枝（夢幻つぶつぶライチ？）」とかすごく気になりますが、やっぱりタピオカミルクティーを注文。

タピオカミルクティーは熱々で、おや？こういうものだったっけ？と娘にＬＩＮＥで写真を送ると、「ええ～～香港じゃホットなの？！」と驚いてたので、やっぱ普通はアイスなのね、と納得。私としてはホットは悪くなかったです。

ご機嫌になり、さらにターミナル２の奥を探検。キッザニアみたいな施設と、例の映画館を発見！　だが映画館は10月〇日まで閉館、と書いてある。ガーン……まだ９時間もあるのに……それに私、レストラン・ショッピングエリアの大半をすでに見切っちゃった気がする。

ああ、８時間以上の、何～～もできない時間が私の前に……。
まだ乗換時間の半分もたってないのか……。

ずっとゲームしてようかとも考えたけど、いろいろ歩きまわっている間に、他の考えも頭をもたげてきました。だって、１階ホールの正面にエアポート急行の入り口があるんだけど、ほとんどの人はさっさとそっちの方向に消えていくのよ……。

本当に本当に、町に出ちゃいけないのだろうか？
観光客らしきグループも、迷わず切符を買ってホームのほうへ消えていきます。

ついに意を決して、受付のキレイなお姉さんに、
「あのー、電車が止まることはありませんか？　デモの影響でここへ帰れなくなったりしませんか？」

と聞くと彼女、笑って地図を出し、「ノープロブレムですよ。なぜなら私たちはこの駅からこの駅までを完全封鎖しています。開いているのは香港駅とここだけで、香港駅は厳重警戒されていますから。」

それはそれで心配な情報だと思ったんだけど、女性の言い方が笑い飛ばす感じだったので、大きく心が揺らいできました。

本当かなあ？　頭の中に「自己責任」という言葉が点滅します。ここでトランジット便に乗りそこなったらマヌケすぎる……でも……あと９時間。うう、(-"-)９時間……
10分ウロウロした後、ついに私は切符を買ってしまいました。自販機の使い方がわからなかったので、さっきのお姉さんから買いました。

ホームの様子。このときはあまり人がいなかったけど、だんだん増えて、15分後に電車が来たときには、車内の席はほぼいっぱいになりました。
ついにやってしまった……
不安&ドキドキmaxの私を乗せて、電車は出発。

終点の香港駅まで、途中駅は２つあるのですが、封鎖されて、そこからは人は乗れないようになっているようです。まずは青衣という駅に止まりました……。
そのまま、発車しません。

どうなってるの？！ドキドキしてくるけど誰も慌てていません。「列車は遅れています。次のnoticeをお待ちください」と言われたまま10分以上止まりました。

心配で具合が悪くなってきたころ、ようやく発車。
次の九龍駅では止まらなかった！と思ったら、香港駅手前の何もないところでまた停車。今度は15分くらい止まり、空港から出たのを心から後悔しはじめたころ、ようやく動きました。

１時間近くかかって、ようやく香港駅到着。この駅から歩いて中環（セントラル）に行けるようです。観光をあきらめていたので、見どころをほとんどチェックしていない。
尖沙咀とか行きたかったけど、帰れなかったら大変なので、セントラルから上環まで歩いて文武廟だけ見て、さっさと帰ることにしました。もはやかなりビビっており、いつものガッツリ観光気分はすっかり窄んでいます。

しばらく地下街で迷った後、ようやくここと思う道に出て歩きだしました。
ここまで足踏みが続いただけに、自由を感じて幸せに浸ります。

夕暮れの街に、２階建てバスが次々行きかう様子が、とてもエキゾチック。「街馬」って面白すぎませんか？　漢字わかる国民で良かった～
薬局やレストランが続く普通の通りですが、急に旅気分を取り戻し、足取り軽く上環をめざします。

途中の心惹かれる通り――。

わくわくして、あてもなくちょっと登り、また降りてきました。
坂が多いのが独特な雰囲気ですね。通り自体も、なにやら怪しげな狭い店が並んでいて、イイ感じです。西洋人が求めてるアジアって、こんなんじゃないかなー。
勇気だして来てみてよかった！

見物を楽しみながらだいぶ歩いて、文武廟と思われるところまでやってきました。あれ？　ない……ガイドによるとまだギリギリ開いてるはずだけど………。
よく見ると、どうやらこれ！

どうやら、改修中のよう。
ここだけを目当てにきたのに……。
ガックリしましたが、まあいいか、そもそも見れないはずの街が見れたんだし……と、さほど落ち込む気分にはならず、中環駅へ戻りました。

ところでこれは心霊写真じゃなくて、シャッタースピードが遅かったせいです。

帰りも、香港駅への行き方また迷いました。なんとか着いて改札へ向かうと、あたりには軍服の集団がずらり。改札を入る人たちの切符をひとりひとりチェックしているようです（すいません、怖くて写真は撮れなかった。これは一歩手前の通路の様子です）。

ふむふむ、これが例の厳重警戒か～。まあ私はエアポート急行の往復券を持っているから問題ないよね～。
チケットを見せて余裕で通り過ぎようとしたら、思いがけず怖い顔で前へ立たれ、阻まれてしまいました。えっ、なんですかと言ったら、通すことはできません、と。

えっ、そんなばかな！だってこれは空港で買った往復券なんですよ！と抗議したのですが、若い軍服は全く聞く耳もたない様子で、私を押し戻すようにして阻んできます。
頭が真っ白になってしまって、冷静に考えられなくなってしまいました。改札を通っていく他の人をみると、どうも、スマホを見せて通り過ぎている人が多い。なにかカードのようなものを見せている人もいます。あれはいったい何だろう……！

しかし、ここで引き下がったらホントにヨーロッパへ行きそこなってしまいます。必死で空港往復券を見せ、「今夜のフライトに乗らなきゃならないんです！スタッフがこれで空港へ戻れると言ったので往復券で来たんですよ！」と猛抗議。
若い軍服はやれやれ、といったふうに顔をしかめて声をあげ誰かを呼びました。すると、向こうからちょっと偉そうな制服を着た人がやってきて、どうしたのかと聞いているようです。

それからすぐ私のところへやってきて、「パスポートは？」
あっそうか、それがあったと思って見せました。「エアチケットは？」
それも見せると彼は急に笑顔になり、ＯＫ、通っていいよ、といいます。そればかりか私のエアチケットを見て、「チューリッヒかー。いいですね～～。」とニコニコ。
なんだ、最初からエアチケットって言ってくれれば良かったのに！　電車に乗ると思って電車のチケットのことしか思いつかなかった！
安心してガックリ力が抜けました。帰りの急行も行きと同じようにダラダラ止まりつつ、なんとか空港に到着！
乗り継ぎ便出発まで３時間弱でした。

まったくのところ実りのない観光でしたが、無事に帰れた喜びで心晴れ晴れ。
まだ３時間あるし、夕飯の時刻になったので、第２ターミナルに寿司屋があったのを思い出して行ってみました。

なんてショボい……まずそうなサーモンロールしか回ってません。それでも値段はさほど高くなさそうだったので、とりあえず入りました。
メニューからマグロを注文すると、アウトオブストックとのこと……。仕方ないのでサーモンとハマチとシマアジを２つずつ食べたかな。意外と美味しかったです。それにしてもサーモンが三文魚とは面白い。

こうして香港到着からついに14時間。とうとうトランジット便に乗って香港を後にしました。ヒヤ汗かきましたが、なんとか無事、目的地のスイスに向かえそうです。

ここからようやくヨーロッパ６ヶ国の旅が始まりますが、もう疲れた……少しずつ記録予定。
https://4travel.jp/travelogue/11610442