2019/06/05 - 2019/06/15
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タヌキを連れた布袋(ほてい)さん
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「 第三幕
『ヴィリアの歌』の『間奏曲』が流れて,幕があがる。
前幕の夜半近く。ポンテヴェドロ大使館の庭園は,ハンナが大使に約束したようにダニロ向けの趣向が凝らされている。すべてがパリ風。すなわち,キャバレー・マキシムを模した華やかな舞台が作られ,国王生誕祝賀の夜会はいよいよクライマックスを迎える。
ニェーグスがこの夜の余興の司会。『さあてフィナーレはパリの名物マキシムの”浮気鼠(グリゼッテン)”によります,フレンチカンカン,大使夫人ヴァランシェンヌも特別出演いたします。題して”レ・グリゼッテン・ドゥ・パリ!!”』
と,ヴァランシェンヌを先頭に踊り子たちが喚声をあげて踊り込んでくる。『ヤァ,あたいたち,パリのキャバレーに巣食う”浮気鼠”ロロ,ドド,ジュジュ,クロクロ,マルゴ,フルフル,それに新入りヴァランシェンヌ,大通りに宵闇せまれば,トリッペル,トリッペル,トリッペル,トラップ,”浮気鼠”の御出勤,色目を使って行ったり来たり――』と歌って踊れば,踊りはとど,ガロップのカンカンに変り,バレエ団が踊り込んで来てカンカンの元祖,オッフェンバックの『天国と地獄』のカンカンとなって華やかなフィナーレを飾る。」
「ダニロはカンカンの途中で姿を現し目を丸くしている。『マキシムへ行けば開店休業。浮気鼠はグラヴァリ夫人の投網にかかり一網打尽に攫われたとか――』」
「ハンナが現れる。騎兵中尉ダニロは靴音高く敬礼しハンナを坐らせる。『ざっくばらんに申しましょう。ロッション氏との結婚を禁止いたします』冷たく装っているハンナは当惑顔。『結婚を禁止する?』『祖国と個人の名において――』『何故?』『祖国は破産寸前,しかし,あなたの二千万がとどまる限り祖国は安泰なのです』『分りました。私はロッション氏とは結婚いたしません』。
と,『メリー・ウィドウ・ワルツ』が泉のように湧き出る。『ではあの四阿でのランデヴーは?』『あれはさる人妻が危機に瀕したのでレスキュー隊員になってあげただけよ』『どうしてそれを早くいってくれないんです,僕はもう無性に腹がたって――』『あら,どうして?』『どうしてですって,なぜって僕は――』『あなたってすごく男っぽい方なのね』『えっ?何ですって,ハンナ,僕は――』。言葉より先に音楽がハンナに愛の言葉を伝える。
『メリー・ウィドウ・ワルツ』
ダニロ
とざした唇に愛
夢見る足どりに愛
にぎりしめた手と手にも
あなたの愛がささやく
ハンナ
ワルツにのり胸もはずみ
あなたの愛を求め ときめく
何もいわないで,ひとすじの愛を
あなたに捧げる
夢のようなワルツ。二人は少年と少女のように心をときめかせて――
二人
にぎりしめた手と手にも
あなたの愛がささやく
<滝 弘太郎訳>」
「1905年12月29日,一夜あけてレハールは一躍,ウィンナ・オペレッタの寵児となった。ウィーンのレハールは瞬く間に世界のレハールになっていく。」
寺崎裕則著「魅惑のウィンナ・オペレッタ」(音楽之友社1983)より
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- ホテル
- 4.0
- グルメ
- 3.0
- ショッピング
- 3.0
- 交通
- 3.5
- 同行者
- その他
- 一人あたり費用
- 25万円 - 30万円
- 交通手段
- レンタカー 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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-
バールを出た後は,ブドヴァを経てツェティニェへ向かう。今夜はツェティニェ泊だ。
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しばらくの間,モンテネグロらしい景色が続く。
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車を止めて,ふと見ると,
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きれいな野の花が咲いている。
-
やがてブドヴァへ着いた。かなり大きな観光都市だ。
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現代的な建物が立ち並ぶ,
この街も1979年のモンテネグロ地震で壊滅したが,復興を遂げた。 -
現在は,陽光あふれる保養地という風情の街だ。
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ロシア人に人気があることでも知られている。
-
せっかくのレンタカー旅行なのだから,こういう大きな街に時間をとるのはよそう。
できるだけ「車でないと行きづらいところ,効率が悪いところ」に時間を費やすようにしたい。 -
ブドヴァからの道程は内陸へ向かう。どんどん標高が上がっていく。
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モンテネグロの岩山を一気に駆け上がっていく。
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やがて,ツェティニェへ到着した。
この街は,モンテネグロの旧都である。スターリ(旧市街)と称せられるような近代以前の古い街ではなく,19世紀後半から20世紀前半(明治~昭和戦前期)にこの国の首都であったところだ。 -
午前中に国境を越えてから,いくつかモンテネグロの街を見てきたが,
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このツェティニェというところは,
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ほかの街と全然違う感じがする。
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街がとても落ち着いており,歩いていて倦むところがない。
約百年というそんなに遠くない時代に一国の首府であり,それがとても小さな国の首府であり,そして現在は首府ではないという歴史的条件が,この街独特の大人びた雰囲気を作り出しているのかもしれない。 -
この街の建物を眺めていると,屋根裏部屋の採光窓(ドーマー)がよく目立つ。
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こんなビルヂングでも,てっぺんには屋根裏部屋を作っているようだ。
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日本のような気候では,人が生活するような屋根裏部屋を作ることはできない。
ヨーロッパの安い宿に泊まると,時として屋根裏部屋をあてがわれることがあり,なかなか面白い体験になる。 -
ツェティニェの宿は,とてもいいところだった。
-
部屋は決して広くはないのだが,開放的なテラスがあり,
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キッチン,電気コンロ,キッチンカウンター,冷蔵庫などが,トレーラーハウスのようにコンパクトにまとまっている。一泊20EUR。(1EUR=約125円)
こういう宿に滞在して,地元の食材を少しずつ買ってきて,あれやこれや料理しながら毎日散歩して過ごすと楽しいことだろう。 -
今回,この街とこの宿を一泊だけで出て行くのは,本当に後ろ髪を引かれる思いだった。
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翌日,バルカンドライブ3日目は長駆の一日になる。モンテネグロのツェティニェから,クロアチアを経て,ボスニア・ヘルツェゴビナのメジュゴリエまで300km近くを走る予定だ。
先は長いので,朝8時には宿を出た。 -
さて,まずはコトルを目指す。
二通りのルートが考えられるが,ロブチェン国立公園を走り抜ける南回りルートのほうが面白いかと思い,そちらに道を定める。
そしてツェティニェの街から山道を上がって行ったのだが,思ったより道が険しい。このままだと,かなり平均速度が落ちそうだ。
決断するなら最初にしなければならない。思いきってルートを北回りのP1に変えることにした。 -
北回りルートは,一部を除けばそこまで険しくはなかった。
-
モンテネグロの美しい山岳風景が続く。
-
ニェグシNjegušiという集落に入る。
ここは生ハム(プルシュトPršut)やチーズの名産地で,他のバルカンの街でも,わざわざ「ニェグシ産」を使用していることを謳うメニューを見かけた。 -
小さな集落だが,洒落たレストランや,生ハム・チーズ・蜂蜜・ワインなどの直売所がいくつかあった。残念ながら,まだ開いている時間ではない。
-
やがて,高原地帯を走っていた道路が急に標高を下げ始めた。
-
妙な看板が現れた。ジップライン?
-
こんな山奥でジップラインなんかするか,普通?
-
と呆れていたら,
-
はるか眼下に,コトル湾の入江が姿を現わしていた。
この景観を楽しむためのジップラインだったわけだ。納得。 -
そこからしばらく下っていくと,
-
やや道幅に余裕のあるカーブがあり,そこに車を停めた。
小さな土産物店まで出ていて,ちょっと驚く。 -
そこからは,コトル湾を一望することができた。絶景である。
コトル湾 海岸・海
-
目を転じれば,ティヴァト空港(TIV)が見える。
長い滑走路が,すっぽりカメラのフレームに収まってしまう。
折よく,旅客機が着陸するのが見えたが,大きな機体は点のようにしか見えない。
ここでしばらく景観を楽しんだ。
再び発進して,つづら折りのヘアピンカーブを下りて行く。
コトルの街は眼下に見えているものの,つづら折りゆえに,走行距離は思うよりはるかに長い。 -
やっとコトルの境界に入った。
-
風景は一気に都市化するが,ブドヴァほどではない。
道路が渋滞し始める。 -
コトルの街歩きはレンタカーではないときに譲ることとし,今回はコトル湾沿いの道をぐるりと走ってみることにしよう。
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中心部の渋滞からやっとのことで逃れて,湾岸の道路を走り始める。
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コトル湾の,かの有名な風景だ。
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美しい水面(みなも)。
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魚が泳いでいるのが見える。
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コトル湾岸は,コトル中心部の混雑に較べると不思議なくらい静かだ。
入江沿いの道路に面して,いくつも民宿(Sobe)の看板が出ている。
コトルに泊まるときは,(車なら)こういう宿を選択するのもいいのかもしれない。 -
コトル湾の渡船(フェリー)の乗り場。
これを使えば,湾岸の道路をぐるりと回らずとも,ティヴァトからヘルツェグ・ノヴィ方面へショートカットすることができる。 -
まだシーズン前なので,乗船する車はほとんどいなかった。
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ヘルツェグ・ノヴィの手前で,カフェテリア式の食堂を見つけた。
すべての料理にグラム当たりの値段が表示されていて,種類は非常に多い。地元の人たちで賑わっている。 -
バルカンの旅なので,基本食のチキン・パプリカをここで食べておこう(米飯添えで3.2EUR)。
(1EUR=約125円) -
野菜補給に,味つきのきざみキャベツ(0.66UER)。
(1EUR=約125円) -
そしてティラミス。
普段はドルチェには手を出さないのだが,ティラミスとは思えないようなデカさで値段が1EUR(正確には0.95EUR)というのが面白くて取ってしまった。
中にスポンジケーキを入れて上手に嵩増ししてあり,素直な味で,庶民的な好ましい一品。
(1EUR=約125円) -
パンは0.3EURだったが,実質取り放題。しめて5.5EURだった。
(1EUR=約125円) -
さて,ヘルツェグ・ノヴィはモンテネグロ最後の街になる。
幹線道路に平行してヘルツェグ・ノヴィの旧市街を通り抜ける旧道があったので,それを走ってみる。しかし,ヨーロッパの街でよくあるとおり,駐車するのに適当な場所がまったく見当たらない(あっても満車)。
オンシーズン前でこれなのだから,シーズン中にレンタカーで訪れるのは無謀だろう。
ヘルツェグ・ノヴィを抜けると,次はクロアチアとの国境だ。
地図↑を見ると,国境ゲートはふたつある。せっかくレンタカーなので,マイナーそうなほうの国境へ行ってみよう。 -
幹線道路(E65)を外れて南へ。
-
道中は,ちょうどヘルツェグ・ノヴィの対岸にあたるため,街を一望することができた。
このエリア(Njivice)には小さなパブリックビーチもあるようで,民宿などがそこそこ集まっている。 -
今ふうの撮影スポットも作られていた。
-
やがて小さな国境ゲートが現れたが,
-
この国境は閉鎖されてしまっていた。モンテネグロから出られない…。
(つづく)
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