芭蕉達は塩釜に入った翌朝、ここでも荷物を旅籠に預け身軽になって、裏参道を伝い鹽竈神社に向かう。<br /><br />我々は202段の急な石段のある表参道に挑戦。<br /><br />石段の両脇には夜光塔が並び、さらにその両脇には祭りの際、石段を駆け下りる神輿の見物客用の石段が配置されている。<br /><br />石段の上には桃山造りの華麗な楼門（随身門）が待ち受ける。<br /><br />楼門の下の一帯は流鏑馬の行事に使われる馬場があり、裏参道沿いに緩やかな坂を登ってきた芭蕉達とはここで落ち合う。<br /><br />私自身2008年塩竃神社を旅した際はこの道を辿っている。<br /><br />楼門の奥に唐門があり、唐門を抜けると正面に”左・右宮拝殿”が鎮座し、後部に萱葺きの本殿が覗く。<br /><br />右手に”別宮拝殿”が控え、これらの周囲を回廊が取り巻く。<br /><br />平安の昔から国家の保護を享けていた鹽竈神社は、江戸時代に奥州一ノ宮と呼ばれるようになり、伊達政宗が再興して都に劣らない壮大な寺社を建設。<br /><br />”左・右宮拝殿”の前庭には伊達九代藩主周宗公寄進の華麗な銅鉄合製灯篭が立ち、”左・右宮拝殿”の右前には対照的な素朴な南部鉄製の燈篭、左手に多羅葉の木が配置されている。<br /><br />案内板によると南部鉄製の燈篭は「文治灯篭」と名付けられ、「文治三年和泉三郎寄進」と刻まれている。<br /><br />この奉納者和泉三郎は藤原秀衡（義経を匿った奥州藤原家の三代目）の三男忠衡。<br /><br />忠衡も義経に味方したとして、兄に殺される。享年23歳。<br /><br />芭蕉は刻まれた文字に500年前の悲劇を思い起こし、胸を打たれ、奥の細道に「誠人能道を勤め、義を守るべし、名もまた是にしたがうと云うなり」と記す。<br /><br />何かの式事でも行われたのであろうか、朱の拝殿が美しい巫女の紅白の衣装を一層惹きたてる。

奥の細道を訪ねて第9回②伊達政宗が再興した奥州一ノ宮・鹽竈神社 in 塩釜

7いいね！

2012/06/13 - 2012/06/13

338位(同エリア502件中)

#歴史・芸術

旅行記グループ奥の細道を訪ねて第9回陸奥の国、塩釜より松島・登米まで　（目次）

WT信さん

フォローする

WT信さんTOP
旅行記2005冊
クチコミ0件
Q＆A回答10件
1,345,569アクセス
フォロワー16人

芭蕉達は塩釜に入った翌朝、ここでも荷物を旅籠に預け身軽になって、裏参道を伝い鹽竈神社に向かう。

我々は202段の急な石段のある表参道に挑戦。

石段の両脇には夜光塔が並び、さらにその両脇には祭りの際、石段を駆け下りる神輿の見物客用の石段が配置されている。

石段の上には桃山造りの華麗な楼門（随身門）が待ち受ける。

楼門の下の一帯は流鏑馬の行事に使われる馬場があり、裏参道沿いに緩やかな坂を登ってきた芭蕉達とはここで落ち合う。

私自身2008年塩竃神社を旅した際はこの道を辿っている。

楼門の奥に唐門があり、唐門を抜けると正面に”左・右宮拝殿”が鎮座し、後部に萱葺きの本殿が覗く。

右手に”別宮拝殿”が控え、これらの周囲を回廊が取り巻く。

平安の昔から国家の保護を享けていた鹽竈神社は、江戸時代に奥州一ノ宮と呼ばれるようになり、伊達政宗が再興して都に劣らない壮大な寺社を建設。

”左・右宮拝殿”の前庭には伊達九代藩主周宗公寄進の華麗な銅鉄合製灯篭が立ち、”左・右宮拝殿”の右前には対照的な素朴な南部鉄製の燈篭、左手に多羅葉の木が配置されている。

案内板によると南部鉄製の燈篭は「文治灯篭」と名付けられ、「文治三年和泉三郎寄進」と刻まれている。

この奉納者和泉三郎は藤原秀衡（義経を匿った奥州藤原家の三代目）の三男忠衡。

忠衡も義経に味方したとして、兄に殺される。享年23歳。

芭蕉は刻まれた文字に500年前の悲劇を思い起こし、胸を打たれ、奥の細道に「誠人能道を勤め、義を守るべし、名もまた是にしたがうと云うなり」と記す。

何かの式事でも行われたのであろうか、朱の拝殿が美しい巫女の紅白の衣装を一層惹きたてる。