隠里稲荷と伝阿仏尼墓やぐら－2011年春

2011/04/09 - 2011/04/09

　英勝寺が管理する隠里稲荷（智岸寺稲荷とも言われている。智岸寺は英勝寺境内にあった。）が新しくなっていた。
　隠里稲荷の英勝寺側に伝阿仏尼墓やぐらがあり、「阿仏尼を偲ぶ会」の旗があった。 阿仏尼の夫藤原為家（定家の嫡男）の没後、為家の正嫡為氏（二条家の祖）と側室（出家後阿仏尼）の実子為相（冷泉家の祖）との藤原定家の孫同士の遺産相続争いが起こり、北条時宗に正当性を訴える訴訟のため鎌倉に下った。その道中記が「十六夜日記」の前半であり、鎌倉滞在日記が後半である。子の冷泉為相の墓は向かいの浄光明寺にある。
　阿仏尼邸跡は江ノ電極楽寺駅を左へ下った右手奥にあり、線路端に鎌倉町青年会が建てた「阿仏邸旧蹟」（大正9年(1934年)3月建之）の史跡碑が立っている。
　また、為相は阿仏尼の死後、鎌倉に下り、藤ケ谷(扇ガ谷二丁目所在)の辺りに為相の亭が在ったことから「藤ガ谷殿」と称された。藤ケ谷は扇ケ谷(亀ケ谷)の支谷であり、浄光明寺のある泉ケ谷の北西隣、亀ケ谷切通の南の谷をさす。浄光明寺門前には鎌倉町青年団が建てた「藤谷黄門遺蹟」（昭和4年（1929年）3月建之）の史跡碑が立っている。
（表紙写真は隠里稲荷）

エリア 鎌倉(神奈川)

英勝寺の塀。

隠里稲荷鳥居。

隠里稲荷の「お稲荷様」由緒。新しくなっている。

隠里稲荷祠。新しくなっている。英勝寺では山門の移築工事が行われており、隠里稲荷祠も新しくしたのであろう。

隣の伝阿仏尼墓やぐらの六重石塔。五重石塔にしては1層多い。上の2層が下の4層よりもつぇまつぇましており、五重石塔の5層目を付け替えたものか？

極楽寺駅下、踏切を渡ったところに建つ「阿仏邸旧蹟」（大正9年(1934年)3月、鎌倉町青年会）。

「阿仏邸旧蹟

阿仏ハ藤原定家ノ子為家ノ室ニシテ　和歌ノ師範家冷泉家ノ祖　為相ノ母ナリ　為相ノ異母兄為氏　為相ニ属スベキ和歌所ノ所領　播磨細川ノ庄ヲ横領セルヲ以テ之ヲ執権時宗ニ訴ヘ其ノ裁決ヲ乞ハントシ　建治三年京ヲ出デテ東ニ下リ　居ヲ月影ガ谷ニ卜ス　即チ此ノ地ナリ　其ノ折ノ日記ヲ十六夜日記　ト云ヒテ世ニ知ラル　係争久シキニ弥リテ決セズ　弘安四年遂ニ此ニ歿ス
　大正九年三月建之　　　　　　鎌倉町青年会」

浄光明寺門前に建つ「藤谷黄門遺蹟」（昭和4年（1929年）3月、鎌倉町青年団）。

「藤谷黄門遺蹟

冷泉為相卿ハ為家ノ子ナリ　従二位中納言トナル　和歌所ノ事ニ由リ　兄為氏ト争論ノ末　ソノ母阿仏尼ト共ニ鎌倉ニ来リ幕府ニ訴フ　遂ニ藤谷ニ寓シ　藤谷殿ト称セラル　藤谷百首　ト呼ビ世ニ伝承セラルゝ和歌ハ　此地ニテ詠出セラレシ者ナリ　網引地蔵ハ其ノ建立ニ係ルト云フ　卿ノ墓ハ其ノ後山ノ頂ニ在リ　五輪塔ニシテ　月巌寺殿玄国昌久ノ八字ヲ刻セシト謂フモ　今ハ漫滅シテ字休ヲサゼズ 昭和四年三月　鎌倉町青年団」（休は体の横棒がないように見える）