1933年2月27日～3月23日　国会議事堂炎上と全権委任法（砂布巾のLW　第２章９）

2018/11/23 - 2024/02/26

1933年2月27日～3月23日　国会議事堂炎上と全権委任法（ドイツ）

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　心からの感謝を込めて　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　砂布巾

2023年「砂布巾のLWほぼ完結の旅」で写真を追加するなどの改訂を行いました

エリア ベルリン(ドイツ)

　ヒトラー首相就任から１か月にも満たないこの日深夜、ブランデンブルク門近くの帝国議会‘Reichstag’（ライヒスターク）が炎に包まれた。翌28日に憲法48条に基づいた緊急令発効させるその前から、共産党員や好ましからざる人物を逮捕するなど、対応は素早かった。真相は未だ不明だが、少なくともナチスが最大限利用したのは間違いない。

ドイツ連邦議会議事堂 現代・近代建築

　ナチスは３月５日に迫っていた総選挙に向けて事件を利用し、まれにみる不正選挙が行われた。これほどの選挙妨害を行いながら、288議席（44％）しか取ることはできず、他政党との連立で辛うじて過半数を確保した。同じ年、ゲーリングによって国家秘密警察（いわゆるゲシュタポ）が設立された。最初ゲシュタポは反体制派逮捕のために利用されたが、それらが姿を消した後も、ドイツ社会全体に服従を強要した。

　３月23日に開かれた議会では、全権委任法が討議された。憲法改正のためには３分の２以上の議員が出席し、更に３分の２以上の賛成が必要だった。逮捕されていた共産党議員は議員数から除かれ、無断欠席議員は出席とみなすという、全く都合の良い理屈（これぞ屁理屈！）が採用され、441対94でナチスにフリーハンドを与える法律が成立した。

　４月１日には初めてユダヤ人への組織的なボイコットが行われ、

テロのトポグラフィー 博物館・美術館・ギャラリー

　５月10日には、アインシュタイン、フロイトなどユダヤ人の著作物や共産主義の本など、ナチスにとって有害な本を焼く焚書が行われた。ユダヤ系の血を引く詩人ハイネは、１世紀前に「本が焼かれたなら、次に焼かれるのは人間である」と語った。予言通り８年後には人間が焼かれる。

テロのトポグラフィー 博物館・美術館・ギャラリー

＊ベーベル広場　人々が覗き込んでいるのは

ベーベル広場 広場・公園

＊反射して見えにくいですが「空っぽの本棚」

ベーベル広場 広場・公園

　全権委任法では、「大統領の権限は従来通りとする」とされていたが、翌年８月２日にヒンデンブルク大統領が死去し、ヒトラーが大統領と首相を兼ねた総統に就任したことによって、ワイマール体制は完全な終焉を迎えた。選挙で44％しか取れなかったナチスは、強引に百％にしたと言える。

＊ドイツ統一の日

　翌年６月から７月にかけて、ヒトラーは古くからの同志レームをはじめとする突撃隊幹部を粛清し、その存在を快く思っていなかった国防軍の支持を一層強固にした。

　この頃の国民の声を、「映像の世紀④ヒトラーの野望」から紹介する。

　「ナチスには神秘的な力で我々を魅惑し、熱狂させる何か違ったものがあったのです。それは旗をなびかせ、じっと前方を見つめ、太鼓を打ちならしながら進む若者たちの一糸乱れぬ行進でした。この共同体には、何か心を揺さぶる圧倒的なものがありました。しかし私の父がナチスについて語る時、その言葉には感激や誇りがなく、それどころかひどく不機嫌な響きがあるのが理解できませんでした。父は『連中の言うことを信じるな。連中は狼だ。ナチスはドイツ国民を恐ろしい形で誘惑しようとしている』。しかし父の言葉は、興奮した私たち若者の耳には入りませんでした」。

　本項目は、山下公子著「ヒトラー暗殺計画と抵抗運動」（講談社選書メチエ）ほかを参考にした。（2023年10月５日ほか訪問）

＊ジーゲスゾイレ

＊ブランデンブルク門

＊テレビ塔と横にドームの頭の部分が見える

＊やっぱり当時の建物を出来るだけ忠実に再現していると思われるこの写真により惹かれる　撮影は多分1982年

＊1990年