2005/03/13 - 2018/11/28
40位(同エリア2810件中)
norio2boさん
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ブリューゲル(父)の作品を見に行く旅行を2005年から2018年までやってきました。
「ブリューゲルをたずねる旅」というタイトルの32の旅行記をアップしています。
18の美術館への旅行には素晴らしい思い出があります。
旅行記を制作年順に再編集し総集編としました。
取り上げる油彩画は45枚としました。
疑問や感想を書いています。
素人の個人的見解ですのでご理解を頂きたく思っております
総集版は第4部構成としました。
第2部は10枚目から21枚目までの12作品です。
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表紙の写真はロンドン市内の「11 Cadogan Garden」という小さなホテルの朝食です。
第2部の19枚目の作品「聖母マリアの死」があるUpton Houseへ行った時に宿泊しました。
薄い「かりかりトースト」とお皿の真ん中にある「真っ黒に焼いた椎茸」が美味しかったです。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 5.0
- グルメ
- 5.0
- ショッピング
- 5.0
- 交通
- 5.0
- 航空会社
- ANA
PR
-
第2部は10枚目から始まります。
ウィーンの美術史美術館のブリューゲルルームです。
iPhoneにはパノラマ撮影という便利な機能があります。
普通だったら入りきらない範囲を撮影出来ます。横に動かすと部屋の全体を撮影する事ができます。
ブルーのソファーに座ってブリューゲルルームの12枚の作品を見ることができます。美術史美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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10枚目です。
The Suicide of Soul
Oil on Panel 34x55cm 1562
「サウルの自殺」 ウィーン美術史美術館
聖書のサムエル記の上巻31章を主題にしています。
ペリシテ人とイスラエルの戦いの主人公はイスラエルの最初の王がサウルです。圧倒的な軍勢に敗北を悟ったサウルは敵のペリシテ人になぶりものされるよりも自害を選びます。
右側には敵軍の圧倒的な軍勢が細かく描かれ、左手には岩山の上で自害するサウルが描かれています。
川の奥に広がる切り立った岩山やその上にそびえる城郭は10年前のイタリア旅行の時のスケッチを使っていると思います。 -
版画の作業は下絵師、彫り師、摺師という分業で、画家の立場は下絵師です。
下絵を描いたブリューゲル (父)が自分でエッチングもした唯一の版画です。
Rabbit hunt
etching 222x299mm 1560
「兎狩り」
ロンドンのコートールド美術館にあります。
1561年には油彩作品は残されていません。
1561年はブリューゲル(父)の下絵で版画集「船」が発行されています。下絵の仕事が多くて油彩を描いている時間がなかったのでしょうか?
版画会社からの下絵の依頼は1551年に聖ルカ組合に親方登録されたばかりのブリューゲル(父)にとってありがたい収入源だったのかも知れません。 -
11枚目はスペインのマドリードです。
世界3大美術館のプラド美術館にはブリューゲル(父)の作品が2枚あります。
検査ゲートを入った所です。この奥にミュージアムカフェとミュージアムショップがあります。
ショップにはオンデマンドプリントのサービスがあります。
注文して10分くらいで出来上がります。
タッチパネルで作品を選び、キャンバス地かマット紙か選び、サイズを選びます。
マット紙大が51ユーロで、中21ユーロでした。
デジタルプリントですからポスターより階調が滑らかです。プラド美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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The Triumph of Death
Oil on Panel 117x162cm 1562
「死の勝利」
全体図です。
魑魅魍魎(ちみもうりょう)とか阿鼻叫喚(あびきょうかん)とかおどろおどろしいという言葉の「死の世界」が描かれています。
高い位置の水平線まで荒涼とした「死の世界」が細かく描きこまれています。 -
「死の勝利」の画面左下の部分です。
甲冑を着たまま倒れてしまった王の後ろには骸骨が砂時計を持って残された寿命を教えています。
王が左手で押し留めている骸骨は樽の大盛りの金貨を盗むのをやめようとしません。
「死」、「感染症」が人類をもてあそぶ様子が描き込まれています。
身分や階級に関係なく訪れる死の脅威、それは時代を超える主題です。
ヨーロッパの感染症の歴史は、
ペスト(黒死病)が北ヨーロッパへ伝染したのは1347年で、人口の3割が死亡しました。
1377年には感染症の流入防止のために海上検疫という対抗策がベネチアで始まっています。
14世紀には「死の恐怖」や「死は平等に誰にでも来るんだ」という無常観(死生観)を主題に描かれた作品が出てきます。
それらは「死の舞踏」と呼ばれています。木版画化されたものは一般庶民にも販売されています。
ブリューゲル(父)の「死の勝利」の主題はその延長線上にあります。 -
プラドの途中入退場です。
写真のように入場券の裏面にSEGURIDAD(セキュリティ)のスタンプを押して貰います。
再入場にはこれを見せて下さい。 -
プラド美術館を抜け出して昼食を食べに行ったMuseo del Jamon(ハム博物館)です。
2階では地元のおばあさんが一人で食事していました。
それと同じものをと注文しました。
日替わりランチです。
パエリア、鳥の唐揚げにポテトフライ添え、デザート(プリン、メロンの生ハムかけからチョイス)、赤ワインか炭酸水をチョイスで合計8.9ユーロでした。ムセオ デル ハモン (サン ヘロニモ通り店) 地元の料理
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12枚目はベルギーのアントワープのマイヤーヴァンデン ベルグ美術館です。
ブリュッセル中央駅からICでアントワープまでは40分です。
マイヤーヴァンデン ベルグ美術館までは徒歩20分です。
世界で一番美しい駅舎アントワープ駅の構内の写真です。アントワープ中央駅 駅
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この美術館にはブリューゲル(父)の作品が2枚あります。
写真はマイヤー ヴァン デン ベルグ美術館の入り口左側にあるショーウインドウです、
「狂女フリート」が使われています。マイヤー ヴァン デン ベルグ美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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12枚目です。
Dulle Griet (Mad Mag)
Oil on Panel 117x162cm 1562
「狂女フリート」
結婚する前年に描いた作品です。
相手は師匠ピーテルクックファンアールスト(1502~1550)の娘マイケンクック(1545~1578)18歳です。
アントワープ時代のブリューゲル(父)37歳には同棲していた彼女がいたと伝えられています。
ブリュッセルへの引越しには義母マイケンベルフルスト(1518~1600)の配慮があったようです。距離を置く事で前の彼女と別れさせました。
義母マイケンベルフルストは1560年にブリューゲル(父)が亡くなったあと長男と次男ヤンの2人の遺児に絵の技術を教えています。
夫のピーテルクックファンアールスト(ブリューゲル(父)の師匠)に負けないくらい義母マイケンベルフルストには絵の才能(特に細密画の技術)がありました。
この義母の存在(絵の才能と絵を指導する力)がなければ「画家ブリューゲル一族」は無かったと思います。 -
「狂女フリート」の画面中央部分の拡大写真です。
美術館のカタログにこの作品を入手した時のことが書かれています。
当時はブリューゲル(父)は人気画家ではありませんでした。
主題が趣味が悪いと評価されていたというのです。
コレクションにはすでに、ブリューゲル(父)の下絵による版画が22枚と息子のヤンとピーターの作品がありました。
1894年のケルンのオークションでは「その他大勢の扱い」で梯子に登らないと見えない場所に展示されていました。競り合うこともなく488フランで値段(破格の安さ)で購入しています。
美術館にとって「狂女フリート」はコレクターの鑑定の確かさを自慢できるコレクションなのです。 -
13枚目です
ベルギー王立美術館です。
The Fall of the Rebel Angels
Oil on Panel 117x162cm 1562
「堕天使の墜落」
ブリューゲル(父)にはヒエロニムスボッシュ(1450~1515)の影響がある作品を描いていた時期があります。
この「堕天使の墜落」やミュンヘンにある「怠け者の天国」やアントワープにある「狂女フリート」などです。
ブリューゲル(父)が生まれたのは1525年でボッシュが亡くなったのは1515年ですから直接的な関係はありません。
1545年ブリューゲル(父)が20歳の頃、(ボッシュの死後30年頃に)ボッシュの人気がリバイバルした時期があります。
ボッシュの作風と主題の着眼点に魅力を感じ共鳴し尊敬していたのは事実ですが、ボッシュ風な絵画を欲しがる顧客(注文主)が多くいたのです。
ベルギー王立美術館にはボッシュの2つの作品「キリスト磔刑」「聖アントニウスの誘惑」が常設展示されています。
ブリューゲル(父)とボッシュの2人の作風を比較してご鑑賞されると面白いと思います。ベルギー王立美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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「堕天使の墜落」の画面の中央部分です。
旧約聖書のイザヤ書の14章12-15の堕天使について記述を主題にしています。
ベルギー王立美術館がブリューゲル没後450年にあわせて作った「堕天使の墜落」の動画があります。
VRで画面の登場人物が動きまわるという面白い動画です。
PCの場合左上の白い丸をクリック、iPhoneなら本体を動かします。
お楽しみ下さい。
https://youtu.be/bXR9EEmb-JU
この動画は日本でも一般公開されています。
4Tのコミニュティ「ブリューゲル大好き」のメンバーでもあるDaisyさんが六本木の森ビルで公開された詳細を旅行記にされていますのでご覧ください。
https://4travel.jp/travelogue/11542362
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絵画の保存活動はデジタル化が進んでいます。
https://artsandculture.google.com/exhibit/bruegel-for-children/yALyz2b9OP6tLQ
自宅で高精細画像の作品を楽しめる時代になると思います。 -
写真は「ブリューゲルの家」と呼ばれる建物です。
住所はブリュッセルのRue Haute 132です。
ブリューゲルの住居だったのかアトリエだったのか詳しくされていません。
結婚したブリューゲル(父)夫婦が住んだのは「義母マイケンベルフルストが所有するいくつかの不動産のうちの一つで小便小僧像のそばの建物だった」という記録があります。
この写真のブリューゲルの家は最高裁判所から西北に下ったところです。小便小僧のそばとは言えません。
いつ行っても閉まっている建物です。
復元し公開すればブリュッセルの人気観光スポットに間違いなくなると思うのですが、、、
ブリュッセル駐在が長い人にこの話しをしたらブリュッセル人の気質はいつもそうなんだと言われましたがどうなんでしょうか? -
14枚目はベルリンの国立絵画館です。
Two Chained Monkeys
Oil on Panel 20x23cm 1562年
「二匹の猿」
絵画館では修復中で見らませんでした。
2018年のウィーン美術史美術館の没後450年の回顧展でようやく見る事が出来ました。
展示では修復の作業工程が細かく解説されていました。ゲメールデガレリー (絵画館) 博物館・美術館・ギャラリー
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アントワープのお金持ちたちはこの尾長猿をペットとして珍重したと言われています。
小窓の奥に広がっているのは世界の商業の中心地として急成長していたアントワープの港です。
1520年5万人だったアントワープの人口は30年後には10万人に倍増しています。
聖ルカ組合の工房は300もありました。
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ブリューゲル関連の著作に中野孝次氏が1976年に日本エッセイストクラブ賞を受賞した「ブリューゲルへの旅」があります。
「二匹の猿」について、学徒出陣の陸軍二等兵としての苦々しい経験を書いています。
書評では私小説であり、絵画を解説ではないとするコメントが多いようですが、優れた鑑賞ガイドだと思います。「絵を見る」ことの意味や本質を教えてくれていると思います。
日本エッセイストクラブ賞は毎年2作品に与えられます。もう一つの受賞は女優の高峰秀子氏の「わたしの渡世日記」でした。 -
15枚目は1563年の作品です。
ロンドンのコートールド美術館にあります。写真は入り口です。
ロンドンの美術館は無料です。
唯一このコートールドだけは有料です。
10時開館6時閉館
大人8ポンド
シニア7ポンド
学生は無料
2018年から大改造のため休館しています。再開は2021年春の予定です。
下記をタップすれば館内のバーチャルツアーを楽しめます。
https://courtauld-website-static-hosting.s3.eu-west-2.amazonaws.com/vr_tour/indexv2.html?xml=room_03-2.xml -
Landscape with the Flight into Egypt
Oil on Panel 37x57cm 1563
「エジプト行きの風景」
他の画家の「エジプト行きの風景」と比べてみてください。
ブリューゲル(父)の着眼点と構図の独創性に驚かされます。
この1563年にブリューゲル(父)は結婚しています。
妻のマイケンはブリューゲル(父)が1545年に弟子入りした師匠ピータークックの娘です。
その年に生まれています。
赤ん坊のマイケンをブリューゲル(父)があやしたこともあったようです。
婚約をアントワープの聖母マリア大聖堂(フランダースの犬の舞台の教会、ルーベンスのキリストの昇架と降架の絵がある)でおこなっています。
結婚式は引越してからブリュッセルで挙げています。コートールド美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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コートールド美術館にはルーベンス(1577~1640)が描いた「ヤンブリューゲルと家族の肖像」があります。
1613~1615 板に油彩 125x95cm
父の作品の模作に終始した長男(1564~1665)よりも次男(1568~1625)の方が絵の才能はあったと思います。
当時、次男ヤンの描く静物画は人気が高く長男の父の模作作品の3倍の値段で取引されたといわれています。
ルーベンスは「聖ルカ組合」の47年先輩のブリューゲル(父)を尊敬し、コートールドの「エジプトへの逃避の途上の風景」やアプトンハウスの「聖母の死」を所有していました。
ヤンは才能を認めらルーベンス工房で弟子というより共同作業者として働いています。
この絵は、ルーベンスが全て一人で描いたと思います。
画面左上のヤンはあとから描き加えられたようです。スペースが足りなかったのか無理に顔を傾けて描かれています。 -
コートールドはサマセットハウス内にあります。
クリスマスシーズンになると建物の小部屋ではクリスマスギフトが販売され、内庭はスケートリンクになり若い人たちの歓声で賑わいます。サマーセット ハウス 現代・近代建築
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コートールドはロンドン大学の附属機関ですから来場者への対応もアカデミックです。
保護のため常設展示出来ないブリューゲル(父)のペン画作品に「ホボーケンの祭り」「うさぎ狩り」があります。
事前に申し込めば研究室で見ることができます。
バックライト付きの書見台に作品が置かれ貸してくれた大型ルーペでじっくり楽しむことができました。
世話してくれた女性キュレーターはアメリカのシカゴから来ている留学生でした。
コートールドの卒業生たちは各国の美術館で館長職とかで活躍し、コートルドネットワークとでも呼ぶべき人脈があるようです。
写真はその女性キュレーターの著作「ブリューゲルからフロイドまで」です。コートールド美術館所蔵の版画の解説しています。ミュージアムショップで販売されています。
フロイド?というと、精神分析のフロイドの孫のルシアンフロイドと説明してくれました。 -
イギリスはガーデニングの聖地です。
2018年5月の「ブリューゲルをたずねる旅」ではチェルシーフラワーショウ、キューガーデン、チェルシー薬草園などにも行きました。
王室の植物園であるキューガーデンのパームハウス(世界最古の温室)の奥にはバラ園があります。屋外劇「不思議の国のアリス」のアリス役の女優さんがチラシを配ってました。
日本でも宣伝してね!とポーズをとってくれました。キュー ガーデンズ 自然・景勝地
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16枚目はウィーンです。
2018年のブリューゲル没後450年のブリューゲル展の時に4泊したホテルです。
ウィーン国際空港からUberで30分(35ユーロ)でした。Uberスポットは上の階の出発フロアにあります(到着階ではありません)
小さなホテルで居心地最高でした。ホテルから美術史美術館までは歩いて10分(1km)です。
建屋は古いですが内装はリニューアルされていて各部屋毎に違ったデザインの趣向が凝らされています。スモール ラグジュアリー ホテル アルトシュタット ウィーン ホテル
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ホテルの朝食です。
卵料理はお好みで作ってくれます。
シャンパンがあります。 -
16枚目はブリューゲル(父)の代表作品です。
ウィーン美術史美術館蔵「バベルの塔」1563年 板に油彩 114x155cm美術史美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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課外授業している先生と小学生たちです。
ミュージアムショップで買ったブリューゲル関連の書籍の中に子ども向けの一冊があります。
Prestelという出版社のAdventures in Artシリーズ一冊で「Pieter Bruegel’s Tower of Babel The Builder with the Red Hat」という絵本です。
作品の左側下の部分には建築作業の進捗が遅いのでやって来たニムロデ王とその家臣たちが描かれています。その一団の更に左側にエプロンをして赤い帽子の男が描かれています。この赤い帽子の男が作品の情景を解説するという構成で作られている絵本です。
この写真の正座している先生も赤い帽子の男と同じような話~当時のアントワープの生活とかを生徒たちとしているようでした。 -
写真はその時の入り口です。
「バベルの塔」に描かれた人物を鑑賞者と同じ背丈まで拡大したパネルを展示していました。
ブリューゲル(父)の細密技法の素晴らしさがひと目で分かる展示です。
iPhoneで撮影した動画です。
https://youtu.be/TH3p87Gzn00
展示の前を通り過ぎる人物と作品の人物が同じ大きさに拡大されています。 -
作者不明ですが1200年頃のローマのコロッセオの絵です。
使われなくなったコロッセオにはホームレスが住みつき牛などの家畜も飼われていたそうです。
1551年の「聖ルカ組合」へ登録後ブリューゲル(父)はイタリアへ研修旅行に出発しています。
ローマに滞在したのは1553年です。
コロッセオのスケッチが10年後の1563年の「バベルの塔」の建築構造の構図に引用されています。
2017年5月にiPhoneで撮影したコロッセオの動画です。
https://youtu.be/UGMZd6ckp40
ブリューゲル(父)は南部のナポリにも足を伸ばしています。
アントワープに戻ったのは1554年でした。 -
17枚目は1564年の「バベルの塔(小)」です。
写真はウィーンの美術史美術館の没後450年
の時のものです。
ロッテルダムのボイマンス ファン ベーニンゲン美術館にあります。
2017年には上野の東京都美術館に来ています。
ブリューゲル(父)は3枚の「バベルの塔」を描いたといいます。
現存しているのはウィーンとロッテルダムとの2つの作品です。 -
人気コミック「AKIRA」の大友克洋氏が描いた作品「Inside Babel」です。
上野の都美術館の入り口に展示されていました。
「バベルの塔」の内部はどうなっているのか想像してカットモデルにした作品です。
デジタル処理を用いた制作のプロセスはNHKの日曜美術館で放映されました。
参考です
https://www.neol.jp/culture/58003/国立西洋美術館 美術館・博物館
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もう一つの併設展示です。
都美術館を出て鶯谷方向へ北に進むと東京芸術大学があります。
都美術館のバベルの塔の展示に合わせて「Study of BABEL」という展示をやっていました。
1/150縮尺の三次元立体再現モデルと110/100の複製画です。
写真は立体再現モデルです。
ブリューゲルの描いた人間の身長を170cmと計算すると、塔の高さは510mとなったそうです。
それを1/150の縮尺で立体モデルを作成したと解説していました。
110%拡大の超高精細複製画の方は写真を撮るのを忘れる程の素晴らしさでした。
オーク材の板や使用した絵の具を化学分析し再現したと解説がされていました。
110%縮尺は本物と見分けができないので模造品であることを明らかにするため少し大きめにしたとの解説でした。東京芸術大学 名所・史跡
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18枚目はイギリスのロンドンに飛びます。
ロンドンのナショナルギャラリーです。
大きな美術館です。
お目当ての作品があるなら入り口で場所を確認された方が良いです。
The Adoration of the King 1564
Oil on Panel 111x84cm
東方三博士の礼拝
修復されて新品のようなツヤツヤした状態です。
2013年4月は撮影不可でしたが2014年12月は撮影が許可されていました。ナショナルギャラリー 博物館・美術館・ギャラリー
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聖母マリアと幼子イエスの部分です。
オーディオガイドの日本語版ではこの作品の解説はありません。英語版にはあります。
黒服の監視員が言語を切り替てくれます。 -
画面の右上部分です
聖母マリアの後ろに描かれているこの2人は何を話してるのでしょうか?
白髪の老人はマリアの夫のヨセフです。
ヨセフの右の若者はヨセフの左の耳に口を近づかせ巷の噂話をヒソヒソと囁いています。
「この赤ん坊の父親はどこの誰だか分からないと町のみんなが騒いていますぜ」
というのが一般的な解説です。
白い鉢巻きをしてこちらを向き直った黒人はエチオピアのガスパール王です。手には貢物の金の船を掲げています。 -
ロンドンのコートールドギャラリーのテームズ川対岸にあるレストラン
OXO Tower Restaurant - Bar & Brasserieのディナーです。
岩盤プレートを皿にしています。和食の盛り付けの影響があります。
店の照明が暗いので黒いプレートへの盛り付けは美味しそうに見えませんでした。
グラスワインとチップ入れて一人で60ポンドでした。
接客はフランクで親切でした。
テームズ川の夜景が綺麗です。
煉瓦造りの古い建物を改修してショッピングセンターにしています。最上階がレストランになっています。オクソ タワー レストラン バー
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19枚目もイギリスです
この作品「聖母の死」はアップトンハウスという個人コレクションにあります。
ロンドン市内から北西に85マイル、車だと90分くらいのところです。
ブリューゲル(父)の作品がなかったら行く機会がなかった場所だと思います。
住所はnear Banbury, Warwickshire, OX15 6HTです
HPは
https://www.nationaltrust.org.uk/upton-house-and-gardens
です。
シェル石油の創業者が1927年に購入し所有していた大邸宅です。
第二次世界大戦後の1948年には、ナショナルトラストに寄贈されています。アプトンハウス アンド ガーデン 観光名所
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シェル石油の創業者サミュエル夫妻が蒐集した3000近い美術品を収蔵しています。
ブリューゲル(父)の作品が1枚があるのです。
ブリューゲル(父)の「聖母の死」の前で話し合う女性たちです。 -
The Death of the Virgin
Oil on Panel 36x55cm 1564 Upton House
「聖母マリアの死」
アップトンハウスへはロンドン市内のホテルからUberで行きました。
創業者夫妻の美術の造詣の深さを感じさせるレベルの高い作品が揃っています。夫のウォルターはロンドンのナショナルギャラリーの基金のチェアマンとして活躍しています。 -
暖炉の部分です。
水彩に見える無彩色に近いこの油彩画はグリサイユと呼ばれる古い油彩技法です。
線描で描くのではなく明度差で表現しますから立体や奥行きを表現出来ます。 -
聖母マリアの部分です
臨終の時を迎えた聖母マリアは上半身をベッドの背もたれに預けています。
聖ペテロが火のついた細長い蝋燭をマリアに手渡ししています。 -
聖母の足元の枕には十字架が置かれています。
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版画版の聖母マリアの部分の写真です。
この油彩画の注文主はアントワープ時代からの友人であるアブラハムオルテリウス(1527~1598)です。
彼は大航海の時代の新しい世界地図を印刷し大成功をおさめた人物です。
「聖母の死」はアントワープの上流社会で評判を呼びます。
オルテリウスによって印刷されたこの版画は一般庶民にも販売されました。
「聖母マリアの死」について聖書には書かれていません。「聖書のその後の物語」として13世紀にヤコブスデウォラギネによって書かれた「黄金伝説」の内容です。
イエスの昇天のあと、数十年が過ます。
年老いた聖母マリアは、息子に会いたいと願います。
すると(受胎告知の時と同じように)天使が来て、3日後に死ぬと預言します。
聖母マリアは臨終の前に、懐かしい使徒たちに会いたいと願います。
すると、天使が使徒たちを雲にのせて運んで来ます。
と言う物語です。 -
アプトンハウスのコレクションにあったブリューゲル長男作の「嬰児虐殺」です。
右下の扉を蹴り開ける兵士の部分です。
青いワンピースの女の子が描き加えられています。
この絵は美術史美術館450年展のときにウィーンに来ていました。
ウィーンにある長男作よりひとまわり小さいサイズです。 -
20枚目はウィーンです。
2016年2月のウィーンのホテルはダスチロルでした。
美術史美術館までは徒歩5分です。Boutiquehotel Das Tyrol ホテル
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20枚目
ウィーンの美術史美術館です。
The Procession to Calvary
Oil on Panel 124x170cm 1564
「ゴルゴダへの道行き」
死刑判決を受けたイエスキリストが総督ピラトの官邸から自ら十字架を背負い処刑場のゴルゴダの丘へ進む時の情景です。
この写真では見つけられないと思いますが
ちょうど真ん中に重い十字架に耐え切れず倒れ込んだイエスキリストが描かれています。美術史美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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画面の右下の部分です。
聖母マリア、ヨハネ、グラナダのマリアたちが祈りを捧げています。
この部分には「イエスキリストの処刑」という重要な場面を認識した人たちがいます。
ルネッサンス絵画の均整の取れたプロポーションで描かれています。
この絵をテーマにしたポーランドのレフマイエフスキ監督の「ブリューゲルの動く絵」という映画があります。
日本での映画批評家のコメントはあまり良くありません。大変良く出来た映画だと思うのですが、、、、、
YouTubeに予告編がありました。
https://youtu.be/3ZrFtewCKts -
画面中央部分には十字架の重さに耐えかねて倒れ込んだイエスキリストが描かれています。
十字架の重さに耐えかねてイエスは第3留と第5留で倒れます。
これはクレネ人のシモンがイエスを助ける第5留です。
自画像は描いていませんが自分自身を画面のなかの登場人物として描き込んでいる作品が2枚あります。
この「ゴルゴダへの道行き」の場合は画面の右の木の下です。
左後ろからの姿です。
探してみてください。 -
エルサレムのヴィアドローサ(Via Dolorosa=苦難の道)はキリスト教信徒の聖地です。
今でも全長1kmの苦難の道を歩くことが出来ます。
2014年3月に巡礼専門の旅行会社主催で司祭がアテンドするツアーに参加しました。
重たい木製の十字架がレンタルされて、代わる代わる(信徒の)参加者が担いで進みます。留(ステーション)ごとに聖書の対応する部分を読み上げて進みます。仏教徒の僕も最後の方の留で担いで歩かせて貰いました。
写真で見ると聖墳墓教会の手前だと思います。ヴィア ドロローサ 散歩・街歩き
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21枚目はミュンヘンです。
Head of Peasant Woman
Oil on Panel 22x17cm 1564
「農民の女の肖像」
ミュンヘンアルテピナコテーク
アルテピナコテーク(Alte Pinakothek)にはブリューゲル(父)の作品が2枚あります。
2015年12月の時はもう1枚の「怠け者の天国」だけが展示されていました。「農民の女の肖像」は修復中でした。
2017年6月の時は1階全体が工事中でした。
(どうしても見たい作品ならば航空券を買う前に問い合わせするべきとは分かっているのですが、、、、、)
2018年のウィーンの美術史美術館で見ることができました。アルテ ピナコテーク 博物館・美術館・ギャラリー
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美術史美術館での写真です。
この作品を描いた1564年には長男が生まれています。
この絵の注文主は誰か?何のために描いたのか?
不思議な絵です。
習作だったとすればどれかの作品に使われているはずだと思います。
農民に変装して村に潜り込み村の生活、農民の姿をスケッチしたと伝えられています。
どんな注文が入っても対応できるように下絵を準備していました。
1564年の冬は大寒波で作物がとれず大飢饉がおこっています。 -
ミュンヘンの宿泊はプラッツホテルにしています。
2015年12月から気に入ってリピートしています。
バイエルンの衣装の従業員が素敵です。
ミュンヘン空港からSバーンでマリエンプラッツまでS8線なら38分、S1線なら50分です。どちらに乗るかは待ち時間+乗車時間=合計時間で決めてください。料金はどちらでも同じです。
駅から5分歩いてホテル到着です。プラッツル ホテル ホテル
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朝食はバイキング形式です。
卵料理はお好みです。
白ウィーンナがあります。 -
コーヒーは苦手なので紅茶です。
プラッツホテルには自分でブレンド出来る葉っぱが沢山揃っているのが気に入っています。 -
プラッツホテルの1階にはバイエルン衣装の店が入っています。
グレーとグリーンの組み合わせがバイエルンカラーです。
鹿の角のボタンの手編みのベストを自分と妻へのお土産に買いました。
写真の子供用も揃っています。
孫娘用にどうか?とLINEで画像を送りましたが着る場面がないだろうということで却下されました。
オクトーバーフェストでは正装なんですが、、
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続〜ブリューゲルをたずねる旅
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2005/03/13~
ブリュッセル
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この旅行記へのコメント (4)
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- ドロミティさん 2020/09/27 10:56:54
- 総集編第二弾☆彡
- norio2boさん、おはようございます。
総集編第二部、今か今かとお待ちしておりました。
第一部の構成もブリューゲルの作品を丁寧に解説してくださって
とても読み応えがありましたが、第二部は明瞭簡潔なコメントで
ブリューゲルに更に親しみが湧きました。
プラド美術館の「死の勝利」、コロナ禍に見舞われている今の状況
が重なり、当時の死に対する恐怖や絶望などを新たな目線で捉える
ことが出来ました。
第三部も楽しみにお待ちしております。
ドロミティ
- norio2boさん からの返信 2020/09/27 12:45:01
- Re: 総集編第二弾☆彡
- ドロミティさん
コメントありがとうございます。
最近は旅行記をアップされていないので気になっていました。
お元気なご様子うれしく思います。
第1部を自分で読み返して見ると
冗長で
旅行記なのに旅行情報が少ない
という反省に至りました。
第2部は文章を削って
同じことの繰り返しは削除して
気の散るようなわき道の話はやめて
旅行情報を増やして
再編集しました。
ーーーーーーー
コロナは持久戦ですね
ヨーロッパ(特にフランス南郡)は再発していますね。
傷んだ社会インフラ、経済インフラが立ち直れるか心配です。
一般観光客の往来は
PCR検査の証明書
移動後の2週間の隔離
がルールになりそうです。
ーーーーーーーー
コロナで時間が出来て身の回り整理を出来ています。
この総集編もコロナのおかげかも知れません。
ーーーーーーーー
今後ともよろしくお願いします。
-
- tadさん 2020/09/25 17:01:33
- 素晴らしい総集編!
- norio2bo様、
ブリューゲルは絵画では最高峰の一人だと昔から思っていますが、これだけ入れ込んで追及していくエネルギーと熱愛には、感服します。完結まで楽しみが続きます!
プラドでは、写真がだめだったという記憶がありますが、今は大丈夫でしょうか?そうそう、アプトン家の絵は意識の中にありませんでした。いやーー驚きも満載です。どもかく写真撮影が丁寧で質が非常に高いので、情報量が多く、そこらへんのブリューゲル本よりよく見える作品が多いのも嬉しいです。
tad
- norio2boさん からの返信 2020/09/25 19:04:12
- Re: 素晴らしい総集編!
- tadさん
昔の写真をスキャニングした旅行記シリーズ拝見拝読させて頂いています。スキャニング、画質補正とご苦労がしのばれる力作ですね。
僕は1988年の中国旅行が初めての海外旅行ですので感服しております。
ブリューゲル総集編第1部は旅行記としては失敗だったと反省しています。
第2部は
文字を少なくする
旅行情報比率を多くする
という目標で再編集しました。
ブリューゲルの愛好者、理解者が一人でも増えて頂ければ嬉しいです。そのためにはまず読み進めて頂ける最後まで読んで頂ける構成が必要だと考えました。
お褒めのコメントありがとうございます。
何かご指摘、ご批判を頂ければ嬉しいです。
プラドの展示は
2005年11月OK,2017年2月不可でした。
掲載した画像はショップでデジタルプリントしたものです。
撮影機材はiPhoneです。
今年2020年は5月イタリアのレッジョエミリア、7月メキシコのオアハカ、12月ミュンヘン~ブリュッセルと3つの航空券を購入していましたがコロナで全てキャンセルしました。
家の雑用とか、断捨離とか身の回りの整理の時間ができました。ブリューゲル総集編の作成もコロナのおかげだと思っています。
第3部も作成中です。
今後ともよろしくお願い致します。
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