2005/03/13 - 2019/11/28
29位(同エリア2810件中)
norio2boさん
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ブリューゲル(父)の絵を見に行く旅を2005年から2018年まで13年間続けてきました。
「ブリューゲルをたずねる旅」という32編の旅行記をアップしています。
お暇な時に覗いて頂けるとうれしいです。
この総集編は32編を制作順に再編集したものです。
取り上げた油彩作品は45枚です。
総集編は4部構成です。
この第3部は22枚目から33枚目までの12作品です。
今回はチョット旅行記の成分を増やしました。
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写真はベルギーのブリュッセルのグランプラスに数軒ある立喰のベルギーワッフル屋さんです。
苺とバナナの上にチョコかけです。
何とか完食しましたが若い人向けのものでした。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 航空会社
- ANA
PR
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22枚目からです。
ブリュッセルのベルギー王立美術館です。
ブリュッセルの観光アイテムといえば
ベルギービール
ベルギーチョコレート
ベルギーレース
ムール貝
アールヌーヴォー建築
その他にも盛り沢山です。
写真はグランプラスの脇にあるレース屋さんのショーウィンドウです。
ベルギーレースは安価な中国製に押されて苦戦しています。グランプラス 広場・公園
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ブリュッセルのレース屋さんから娘に送った写真です。
孫娘用の案を何枚か留守宅へ送ってどれを買ったら良いか判断して貰います。
(最近ではLINE動画を使っています)
このレース屋さんはおばあちゃんがベルギーレース教室をやっている老舗でしたが2018年末にはチョコレート屋さんに変わっていました。 -
ベルギー王立美術館にある22枚目は、
Winter Landscape with Bird-trap
Oil on Panel 38x56cm 1565
「鳥罠のある冬景色」
この絵が描かれた頃の北部ヨーロッパは酷寒の時代でした。
前年の1564年(長男が生まれた年)には続いた大飢饉の中で最大数の餓死者が出ています。
画面左側には凍りついた川が広がっています。
農地も凍結しましたが、奥に橋が描かれているのでそこは川だと分かります。
氷上にはスケートやアイスホッケーやこま遊びを楽しむ家族が描かれています。
画面の右側の木の下には鳥罠が仕掛けられています。
鳥は罠の下に置かれた餌を食べたり、罠の板の上に止まったりして警戒心が全くありません。
氷上の人たちの描写がないものとして見てください。
人気のない、火もない、煙も立たない死んだような村の構図です。
大寒波の被害が描かれているのがお分かり頂けると思います。ベルギー王立美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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この写真は日本の東京の上野の国立西洋美術館にあるブリューゲル(長男)作です。
長男は父の作品を模作した画家です。
まだカラー印刷技術はありませんから複製画は手描きで作られました。
現存する150枚ほどの「鳥罠のある冬景色」の模作のうち100枚ほどは長男作と言われてます。
上野の国立西洋美術館のはその中でよく出来た一枚です。
長男の祖母(ブリューゲル(父)の妻の母)マイケンヴェルフルスト(1518~1600)は細密画の名手です。早くに父を亡くした長男と次男ヤンに絵の手ほどきをしたのがこの祖母です。
長男作の優れたものは祖母マイケンヴェルフルストが「お手本」として描いたものではないかと考えられます。国立西洋美術館 美術館・博物館
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ベルギー王立美術館のブリューゲルルームで作品を模写する女性です。
驚くほど「そっくり」に模写していました。
キャンバスではなくて当時と同じ薄い木の板に描いています。
細密画は一般的に添え木棒を使って(手の震えを抑えるために)描くのが普通ですがこの人はフリーハンドで描いています。
ブリューゲル(長男)はこのように(父)の作品を直接見ながら模写することは出来ませんでした。
ブリューゲル(父)の作品は王侯貴族のコレクションとして秘蔵され限られた人しか見ることが出来ませんでした。
(今では当たり前の公共の美術館が始まるのは、ルーブル美術館が1793年、ウィーン美術史美術館が1891年、ベルギー王立美術館が1801年です)
長男は(父)の工房に残されていた習作や下絵や構想図や文章などを参考にして絵を再構成していたのです。
長男の作品で(父)の真筆とは違った構図のものがいくつかあります。
これを観察すると(父)は当初どのような構想だったのかを知ることが出来ます。 -
ブリュッセルのグランプラス周辺には観光客用のビール専門店があります。
賞を取った銘柄とか醸造所の話とか珍しい甘い味のものとか教えてくれます。
写真は修道院製のものです。
買うのはお安いスーパーやコンビニです。
ビールは缶よりも瓶です。
栓抜きは必携です。 -
グランプラスの一本奥にあるチョコレート博物館です。
素朴で面白い展示が並んでいます。
写真の実演ショーも見て下さい。
チョコレートの美味しさを再生する「テンパリング」のやり方
開封したチョコレートは冷蔵庫保管すると庫内の臭いを吸着し風味が落ちるので早く食べること
高価なカカオオイルを使ったチョコレートは口の中でアットいう間にトロける(一流ブランド品でもココナッツオイルを使っている)
ショップではタブレットを6種類(産地とチョコ比率)販売しています。
重いお土産になりますが美味しいガトーショコラが作れます。
カレーに隠し味で入れても好評です。チョコレート博物館 博物館・美術館・ギャラリー
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グランプラスのLes Chapeliers
お気に入りのムール貝屋さんです。
出て来るまで待たされるメニューです。
期待に満ちた時間です。
注文の時にガーリックは?と聞いて来ます。
僕はガーリック味の方がうまいと思います。 -
23枚目はウィーンの美術史美術館です。
(23から27枚目までは月齢画の連作です)
The Hunters in the Snow
Oil on Panel 117x162cm 1565
「雪中の狩人」
冬を描いています。
狩の成果は痩せた獲物一匹です。
背中を丸めて村に帰る狩人3人と猟犬13匹。
丘の下には腹をすかせた家族が待つ村が奥まで広がっています。
この月齢画をブリューゲル(父)に注文したのは金融の中心として急成長していたアントワープで貿易業で富を築いたニコラスヨンゲリンク(Nicolas Jonghelinck 1517~1570)です。
ブリューゲルのコレクターとして有名です。
主題やテーマを画家に提示して描かせるディレクター的なコレクターでした。
彼のアントワープ郊外の広大な別荘はお金持ちの知識人たちが集まるサロンでした。
客人たちを喜ばす為(会話が盛り上がる為)に二人はあーだこーだ推敲を重ね1年間を6枚の季節画に仕上げました。
ブリューゲル(父)もニコラスヨンゲリンクのサロンのメンバーでした。
サロンで絵を称賛された(父)は画家としての大きな達成感があったと思います。
ヨンゲリンクはブリューゲル(父)の死の翌年1570年に亡くなっています。
死後の財産目録にはこの月齢画6枚と傑作「ゴルゴダへの道行き」1564、「バベルの塔(大)」1563など合計16枚ものブリューゲル(父)を代表する作品がありました。
ヨンゲリンクとブリューゲル (父)は密接な影響関係がありました。
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ブリューゲル(父)がサロンメンバー(体制派)であったこと、当時の権力者から特別に愛され庇護される立場にあった画家であったことはブリューゲル(父)作品の理解にあたって注意したいポイントです。美術史美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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「雪中の狩人」画面左側の中央の部分の居酒屋の描写です。
冬の時期に行われる屠殺した豚の毛焼き(ソーセージにする前に硬い毛を焼き加熱消毒する)が描かれています。
左に伸びた炎の描写で村から吹き上がって来る冷たい風の強さが、
周りの人物の「着ぐるみ状態」から大寒波の厳しさが伝わってきます。 -
「雪中の狩人」画面右側の中央の部分です。
大寒波で凍結した池の上ではスケート、カーリング、コマ廻しなどを楽しむ農民の点描があります。
どんなに苦しく悲惨な状況でも人々は「楽しむこと」を忘れません。
左手の道には荷車が馬に引かれて雪に閉ざされた村の中へ向かっています。 -
24枚目もウィーンの美術史美術館です。
これは早春を描いています。
The Gloomy Day
Oil on Panel 118x163cm 1565
「陰鬱な日」
6枚の連作のうち5枚が現存しています。そのうち3枚は美術史美術館のブリューゲルルームに展示されています。美術史美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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早春を描いた「陰鬱な日」の右下の部分です。
右に描かれた3人の家族が食べているのはワッフルです。
今では年中食べられていますがワッフルは本来謝肉祭の時期(3月~4月)に食べられるお菓子でした。 -
「陰鬱な日」の画面上部に描かれた遠景には嵐で川が氾濫しています。
難破して半分水没した船がいくつも打ち上げられています。
蛇行した川の向こう岸には水が畑に入って来ています。 -
25枚目はチェコのプラハです。
写真はプラハのロブコビッツ宮殿のミュージアムショップで購入したカタログ「ロブコビッツコレクション」です。
ブリューゲル (父)の「干草作り」が表紙に使われています。
ご覧の通り日本語版です。
オーディオガイド(無料)も日本語があります。
このロブコビッツ宮殿にはベートーヴェンの手書きの楽譜とか当時の楽器や貴族にふさわしい武器や甲冑などのコレクションがあります。
中庭ではコンサートがあるようです。
時間をとってもう一度行ってみたい所です。 -
チェコのプラハ空港の歓迎サインです。
英語とチェコ語です。
チェコ語は各国の言語のうちで文法も発音も難しい言語です。
カレル橋(チャールス橋)の入り口に「工事中注意」の6つの掲示がありました。
Pozor:チェコ語
Caution:英語
Vorsicht:ドイツ語
Attention:フランス語
Внимание:ロシア語
Attenzione:イタリア語ヴァーツラフ ハヴェル プラハ国際空港(PRG) 空港
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25枚目は
Haymaking
Oil on Panel 117x161cm
「干草作り」
この作品は1990年に来日しています。
上野の国立西洋美術館で「プラハ国立美術館所蔵 ブリューゲルとネーデルランド風景画」という展示でした。
今はプラハ国立美術館ではなくプラハ城の右端にあるロブコビッツ宮殿で見ることが出来ます。ロブコヴィッツ宮殿 城・宮殿
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夏を描いた「干草作り」の中央部の下部に描かれた3人の農村の女の部分の拡大です。
今回の総集編の45枚の中で一番気に入っている作品です。
画面全体にブリューゲル(父)としては珍しく明るさがあります。
特に、三人の農婦の真ん中の若い希望に満ちた笑顔が印象的です。
画面の水平線から上に描きこまれた箱庭のように広がる農村風景も「のどかさ」を表現していてこの作品には「隠された危険ポイント」は見当たりません。
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この「干草作り」は第二次世界大戦中にナチスが計画していた「ヒットラー総統美術館」を飾る1枚として強制収容されています。
戦後に返却されプラハの国立美術館で展示されていました(来日したのはこの時期)
今はロブコビッツ宮殿に戻されています。 -
26枚目があるのは写真のニューヨークのメトロポリタン美術館です。
ニューヨークはいつも元気で新しい発見のある街です。
食事のおすすめ(安くて、早くて、美味しい)を3つご紹介しておきます。メトロポリタン美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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ニューヨークのタクシードライバーは先週来たばかりなのに運転してたりします。
碁盤目の街です。
右(東)から始まる縦のアベニューと
下(南)から数えるストリートと、
中央の長方形のセントラルパークを理解すればOKです。
だから、ニューヨークのマンハッタンの観光は「自分の足で歩く」がベストです。
写真は温室のようなレストラン「タバーンオンザグリーン」です。
セントラルパークウエスト(西側の道)のダコタハウス(ジョンレノンが撃たれた)72ストリートとセントラルパークの西南端のコロンバスサークルの中間の67ストリートのセントラパーク側にあります。
リニューアル後モダンになってしまいましたが、ロマンチックな作りでカップルで使えるレストランです。タバーン オン ザ グリーン アメリカ料理
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カーネギーデリ
ニューヨークを代表する大衆的な店です。
セントラルパークから7thアヴェニューを南に行くと左手にカーネギーホール、更に2ブロック歩くと55ストリートの右側にあります。
壁一面に貼られた有名人の来客写真が歴史と人気を伝えています。カーネギー デリ デリ
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注文するのはパストラミサンド
ピックルスは無料サービスです。
女性や食の細い高齢者には「はんぶんこ」で充分です(写真が「はんぶんこ」です) -
メトロポリタン美術館の作品の前で鑑賞する2人。
右の男性はリュックサックと野球帽から米国中西部から来た観光客、
左の女性は黒いスーツからするとキュレーターと思われます。
個人で頼んだガイドかも知れません。
26枚目は
The Corn Harvest
Oil on Panel 118x161cm 1565
「穀物の収穫」 -
「穀物の収穫」全体図です。
6枚の月齢画は当たり前ですが同じサイズで描かれています。メトロポリタン美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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秋を描いた「穀物の収穫」
農作業が一段落したら木陰でみんな揃ってお弁当です。
満腹の後は木の根っこを枕に昼寝です。(「怠け者たちの天国」1567ではだらしなく寝ていますがこちらでは疲れ果てて寝ています。 -
「穀物の収穫」の画面の中央の遠景に細かく描かれた農村風景です。
ゲートボールに興じる農民たちの動きの描写は見事で見あきません。 -
ニューヨークのおすすめの3番目です。
Ess-A-Bage
エッサベーグル
余計なコメントですが。
右側の傘をさした男性の歩き方
日本人では真似できない歩き方だと思います。エッサベーグル パン屋
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サーモンベーグル
15.15ドル
テイクアウトが良いと思います。 -
27枚目は
The Return of the Herd
Oil on Panel 114x159cm 1565
「牛群の戻り」
晩秋の季節を描いています。美術史美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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晩春を描いた「牛群の戻り」の画面中央から広がる遠景です。
川の手前の赤い部分には葡萄の収穫の様子が描かれています。
対岸にも農作業が描かれ、切り立った岩山に続いています。
以上で5枚の月齢画を終わります。
ニコラスヨンゲリンクの別荘での作品展示はどんなだったんでしょうか?
全部まとめて1部屋にか?
別々か?
僕は別々だったと思っています。
ウィーンの美術史美術館での没後450年展の時にそう思いました。 -
次はイギリスのロンドンです。
羽田からヒースロー迄ANAのNH211便です。
マイルで乗ったファーストクラスです。
ヒースローの入国手続きはファーストクラス専用レーンで瞬時に通過出来ました。 -
2018年9月からの改修工事直前のロンドンのコートールド美術館の写真です。
これまで壁面展示でしたが、ガラスのショーケースに収められていました。
2021年春のリニューアルオープンはコロナ禍で遅れそうです。 -
28枚目は
Christ and the Woman taken in Aultrery
Oil on Canvas 24x34cm 1565
「姦通女とキリスト」
モノクロに見えるこの画法は19枚目の「聖母マリアの死」1564と同じグリサイユ画法です。
立体感を表現出来る画法です。
色をなくしたことで精神性が演出出来ています。
ロンドンのナショナルギャラリーにはレンブラントの描いた同じ主題があります。
「キリストと姦淫女」1644年(ブリューゲルの約100年後です)コートールド美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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「姦通女とキリスト」
「あなたがたの中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい」
8:8 そしてまた身をかがめて、地面に物を書きつづけられた。 (ヨハネ福音書第8章) -
レンブラント(1609~1669)の作品を参考のためにアップしておきます。
この頃のレンブラントは妻が結核でなくなり、4人の子供のうち3人がなくなるという苦しい時期でした。
画面半分から上は「レンブラントのひかり」で建物の荘厳な空間を描写しています。
劇的な瞬間の表現を意図した構図です。
レンブラントの構図では泣きながらひざまずく女性の左側でイエスは凛とした姿勢で説教しています。
ブリューゲル(父)では首を傾げて振り返る女性の足下でイエスはひざまずき、その文字を書いています。
構図の決定には「主題」についての「認識の深さとか価値観、優先順位」とかが影響すると思います。
レンブラント、ブリューゲルがそれぞれ作り手として何を考えていたのか感じることが出来る例だと思います。
同じロンドンです。
時間があったらくらべる楽しみを味わって見てください。ナショナルギャラリー 博物館・美術館・ギャラリー
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29枚目は
The Massacre of the Innocents
「嬰児虐殺」
この写真はウィーンの美術史美術館にある長男作です。
Oil on Panel 116x160cm 1610
1980年までは(父)の作品とされていました。
パネルの年輪を分析した結果、真筆ではないことが証明されました。美術史美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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長男作のウィーンの「嬰児虐殺」の部分です。
赤ん坊を虐殺する惨たらしい場面が描かれています。 -
ブリューゲル(父)の真筆です。
The Massacre of the Innocents
Oil on Panel 109x155cm 1565
「嬰児虐殺」
(1565年は長女のマリアが生まれた年です)
イギリスの王室コレクションです。
今はこれがブリューゲル(父)の真筆とされています。
1662年にイングランド王チャールス2世(1630~1685)が購入しています。
注意しなくてはならないポイントは、、、、
幼児虐殺の残虐な場面が国王の指示で子供を荷物や犬や鳥に描きなおされてしまっていることです。ウィンザー城 城・宮殿
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長男作と同じ部分をクローズアップしています。
幼児の部分の上に動物が描き加えられています。 -
「嬰児虐殺」
これはロンドン近郊のUpton Houseにあった長男作です。
この絵の場合は画面の右下にブルーのワンピースを着た女の子を誰かが描きくわえています。
家族で鑑賞する時には真筆の惨たらしい描写はふさわしくなかったのでしょう。
子供の目に触れない場所に一時避難すれば良いので何も作品を改ざんする必要はなかったと思います。
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ローヤルコレクションの真筆は元の状態への修復は不可能と言われています。
当時の英国の絵画に対する認識は低かったのです。
英国の絵画のレベルが改善されるのはルーベンスの一番弟子のヴァンダイク(1599~1641)がチャールズ1世の宮廷画家として招かれ活躍する以降のことです。アプトンハウス アンド ガーデン 観光名所
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30枚目はベルギーのブリュッセルに戻ります。
The Census at Bethlehem
Oil on Panel 116x164cm 1565
「ベツレヘムの人口調査」
この頃の厳しい寒さに加えて人々を苦しめていたものに重税とプロテスタントへの弾圧があります。
人口調査は税の徴収の基本です。
初期の税金は収入や能力に関係なく1人につき定額を徴収していました。
人頭税です。
画面左側にある建物(臨時の税務所)の左側のカウンターには金を支払い徴収帳に記入する様子が描きこまれています。
右側のカウンターでは物納(ニワトリ)を受け付けています。
行列が出来ています、なにやら相談しているグループもいます。ベルギー王立美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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「ベツレヘムの人口調査」
暴れる豚を押さえ込んで屠殺している男とフライパンを差し出す女(血のソーセジを作るのでしょう)、左側にはそれを見守る2人の子供です。
「子供の遊び」1560 に描かれているように豚の骨や膀胱は子供のおもちゃでした。 -
「ベツレヘムの人口調査」中央右下に描かれた聖母マリアとロバを引くヨセフです。
これからエジプトへ逃げ出すところです。
幼な子イエスは聖母マリアの青いマントの中です。
(2年前の1563年に描いた「エジプト行きの風景」ではマリアは赤いマント姿です) -
「ベツレヘムの人口調査」中央部分の奥にある建物の前の広場です。
ベルギー王立美術館のブリューゲルルームには(父)の真筆と長男の模作が展示されています。
親子の違い探しを楽しんでください。 -
ブタペストの英雄広場の写真です。
左側の赤と白の垂れ幕が見える建物が西洋美術館(Szepmuveszeti Muzeum)です。
6大巨匠の特別展をやっていてレオナルドダヴィンチの「白貂を抱く女」がポーランドのクラクフの美術館から来ていました。
最寄りの駅は地下鉄のM1.Hosokawa tere 駅です。英雄広場 広場・公園
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31枚目は
The Sermon of St. John the Baptist
Oil on Panel 95x161cm 1566
「洗礼者ヨハネの説教」
福音書を著したヨハネと別のヨハネです。
イエスキリストに洗礼を行った「洗礼者ヨハネ」です。
ガランとした常設展示エリアで作品を探しました。西洋美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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「洗礼者ヨハネの説教」の部分です。
聴衆に囲まれた茶色の単衣が洗礼者ヨハネ、ヨハネが左手で示している腕組みして薄青い単衣を着ているのがイエスキリストです。
ルカによる福音書第3章です。
3:16 そこでヨハネはみんなの者にむかって言った、「わたしは水でおまえたちにバプテスマ(洗礼)を授けるが、わたしよりも力のあるかたが、おいでになる。
この絵の描かれた1566年はドイツからプロテスタントのルター派、カルバン派がカソリック聖像を破壊する暴動が起きています。 -
「洗礼者ヨハネの説教」の右端の部分です。
画面右端の大きな木の上から説教をみるグループがいます。
このグループはブリューゲルの家族で、赤いドレスは義母マイケンヴェルフルストで、青緑のドレスは妻マイケンクックで、長い髭の男はブリューゲル(父)本人ではないかと言われています。
画面の細部に「何かを探してみること」ができるのがブリューゲル(父)の鑑賞の楽しみです。
見るたびに新しいものが見つかる絵
何度見ても飽きが来ない絵なのです。 -
ドナウ川を見下ろすブタペストのゲッレールトの丘にある建物です。
何でもない壁には無数のおびただしい銃弾痕がありました。
ナチスの銃弾
ソ連の銃弾
ハンガリーの歴史を思いました。 -
32枚目「屋外の結婚式の踊り」はアメリカのミシガン州のデトロイト市美術館にあります。
財政破綻後のデトロイト市はアメリカで一番あぶない街と言われています。
初めての空港から重い荷物を持ってホテルへの移動は危険かも知れません。
ワシントンから明るいうちの到着便(UA6274)を選びました。
デトロイト空港(DTW)には小さなウエルカムクリスマスツリーがありました。
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海外旅行で危ないのは空港からホテルから空港です。
安全はお金で買えます。
タクシーだったら事前にホテル名と住所を書いた紙を準備します。
今ではUberです。デトロイト メトロポリタン ウェイン カウンティ空港 (DTW) 空港
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デトロイトにはブリューゲルがなかったら行かなかったと思います。
写真はデトロイト市美術館に一番近いホテル「The Inn on Ferry Street」(直線距離で200m)です。
空港からは30kmでタクシーで50ドル。
宿泊代は朝食付きで3泊で580ドル。
ホテルはデトロイトが自動車産業で繁栄していた頃の「古き良き時代」をしのばせる煉瓦造りの建物でした。ジ イン オン フェリー ストリート ホテル
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The Wedding Dance in the Open Air
Oil on Panel 119x157cm 1566
「屋外の結婚式の踊り」
巨額の負債を減らすために市の資産を売り払らっていますが、この絵は残っていました。デトロイト美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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「屋外の結婚式の踊り」の中央部分です。
この絵でもブリューゲル (父)はメインの人間、主人公の新郎新婦がどこにいるか分からない構図を作っています。
出来ることなら探してご覧!?という構図です。
画面中央の茶色の髪で黒いドレスの女性が新婦です。
新婦以外の女性は白い布を頭につけています。
新婦は白い布をつけていません。
新婦はブライダルクラウン(花嫁の冠)をかぶるのです。
翌年の1567年に描かれた「農民の結婚式」では画面中央に座る新婦の後ろの白い垂れ幕にブライダルクラウンが飾られています。
美術館の資料によるとデトロイト市が1930年(ニューヨーク市場大暴落の翌年)に購入したとなっています。
第二次世界大戦中にデトロイトの自動車工場は改造され軍用大型機を生産しています。
戦争特需の時代です。 -
画面中央部分の天幕とその前の円卓の部分の拡大写真です。
円卓の上には黄色い大皿が置かれておばあさんたちが真面目に話し合っています。
天幕にはブライダルクラウン(花嫁がかぶるかんむり)が飾られています。 -
2018年に来日し上野の都美術館で展示された長男作の「屋外の結婚式の踊り」です。
ブリューゲル(父)の作品では画面中央で花嫁は踊っています。
長男の模索では花嫁は奥のブライダルクラウンが飾られた天幕の前で座っています。
カソリックと異教徒(特にプロテスタント)との婚姻は禁じられた時代です。
その他に、
結婚の儀式はカソリックの司祭が執り行う。
司祭に対して礼金(献金)が必要。
などの取り決めがありました。
画面のテーブルの上に置かれた皿には少ないコインが置かれています。
献金に必要な額に対してとても足りません、
どうしたものか?という場面です。
カソリックの教令に背くことは出来ません。
長男の作品の父との構図との違いが父の当初の意図や構想を考えるヒントを教えてくれます。東京都美術館 美術館・博物館
-
(父)の「屋外の結婚式の踊り」に戻ります。
画面の額縁ギリギリの右端に描かれた男です。
若い男のようです。
膝から下の靴まで描かれています。
ブリューゲル(父)が意図して表現しているのは明らかです。 -
拡大してよく見て見ると何か言いたそうな表情です。
デトロイト市美術館の作品の前でこの男と目を合わせた時は背中に寒気を感じました、
この男は何をしていると思われますか? -
2013年の180億ドルの巨額な財政破綻。
人口190万人は70万人に減少。
社会サービス(警察官も含めて)の大幅な削減。
結果、強盗と殺人が米国で一番という危険な街です。
その状況の中でデトロイト市美術館は市民の交流の場所として機能していると思いました。
ミュージアムカフェはシャッター街化してしまった商店街に代わって食事提供場所として大勢の市民で賑わっていました。カフェテリア方式で好きなものを選んでドリンク込みで6ドルでした。
写真は美術館が主催するコミニュティアートグループの活動の成果発表です。 -
「ブリューゲルをたずねる旅」は単一目的の旅です。
時々珍しいものにめぐりあう事があります。
デトロイト市美術館ではメキシコの英雄的画家ディエゴリベラの大壁画に出会えました。
ご関心のある方は
https://ssl.4travel.jp/tcs/t/editalbum/edit/11227918/ -
次はスペインのマドリードです。
写真はギネス登録1725年創業の最古のレストラン「ボティン」です。
人気のメニュー子豚の丸焼き料理です。
丸焼きを割れた皿でカットするパフォーマンスがあります。ボティン 地元の料理
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33枚目はスペインです。
新しく発見された絵です。
The Wine of Saint Martin's Day
Oil on Canvas 148x271cm 1566
「聖マルタン祭のワイン」
ブリューゲル(父)の真筆として鑑定されたのは制作後444年の2010年です。
普通の環境で長い間放置されていた為劣化が激しいです。
プラド美術館の専門家が総力を上げて修復しましたがこの状況です。プラド美術館 博物館・美術館・ギャラリー
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「聖マルタン祭のワイン」の画面の右端の馬に乗った聖マルタンの部分です。
目をころして細部を見ればブリューゲル(父)の精細な生き生きとした描写があるのが分かります。
聖マルタン(主人公)を中心から外すのもブリューゲル(父)がいつも選ぶ構図です。
聖マルタン(St.Martin 316~397)はカソリックの聖人です。
聖マルタン祭は11月11日に設定されている聖名祝日です。
マルタンは自分の赤いマントを裂き、寒さに凍える乞食に与えます。
後から、乞食は実はイエスキリストだったという逸話です。 -
マドリードPuerta del Sol デルソル広場です。
写真の右側にVodafoneと左手奥にOrangeがあります。
プリペイドSIMカードは海外旅行の必須アイテムです。
SIMカードが欲しい場合には賑やかな所に行けばお店が必ずあります。
(空港にもありますが本格ショップでないせいかアクチベートまでやってくれなかったり、値段が高かったりします)
マドリードの賑やかなデルソル広場の店ではパスポートの本紙の提示を要求されました。プエルタ デル ソル 広場・公園
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海外旅行で避けたい事に盗難と事故と病気があります。
盗難を防ぐには「平常心」が必要だと思います。
突然に被害に遭うことはまずありません。
目を付けられていないか周囲に目を向けてください。
同じくデルソル広場の写真です。
このマリオ
どう思いますか?
スペインにもマリオがいるんだ!などと近づいてはいけません。
特にひとり旅では自己責任の感覚が必要です。
旅行の病気について思い出すのは
松尾芭蕉の「旅に病んで夢は枯野をかけめぐる」です。
この時、芭蕉は「なおかけまわる夢心」とどちらが良いか弟子にたずねたと伝えられています。
芭蕉の辞世の句と思われていますが
「旅に病んでなおかけまわる夢心」が選ばれたかも知れない状況で作られた句なのです。
この感染症の時代は「あーだこーだ」を考える余裕がある時代です。
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旅行記グループ
続〜ブリューゲルをたずねる旅
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ブリューゲルをたずねる旅~総集編第1部
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この旅行記へのコメント (6)
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- papagenaさん 2021/10/04 10:09:30
- レンブラントとブリューゲル
- どちらも大好きです。
一度だけブリュッセルの美術館でブリューゲルを観ました
レンブラントはアムステルダムで「夜警」エルミタージュで「ダナエ」「イサクの犠牲」「放蕩息子の帰還」が忘れられません。
「姦通女とキリスト」いいですねぇ
本物を観てみたかったです。
ブリューゲルはなんだか登場人物が多くてマンガチックなところが好きでしたが、この作品は違いますね?
目を皿のようにしてみさせていただきました。
- norio2boさん からの返信 2021/10/04 13:13:29
- Re: レンブラントとブリューゲル
- papagenaさん
メッセージを送って頂きありがとうございます。
1部、2部と少しずつ読んで頂けるように改良してきました。
メッセージのお礼の前に難解な旅行記お読み頂きありがとうございますというのが本音です。
台北 おいしいもの巡り
拝読しました。
ご指摘の通り
親切でいい人が多いですね。
大使館のない国なのに不思議です。きれいな日本語も思い出します。
台湾は海軍が統治
韓国は陸軍が統治
が原因と聞いた記憶があります。
台湾文化の独立が残されて欲しいと願っています。
落ち着いたら一度行ってみます。
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- mistralさん 2021/09/19 09:34:39
- 色々なことを思い出して。
- norio2boさん
おはようございます。
永らくご無沙汰しておりました。
このコロナ禍と厳しい暑さから、やっと朝晩は過ごしやすくなってまいりました。
スペイン風邪が終息する迄でも数年を要したとのことですから
今回のコロナウィルスはもっとしぶとそうで、私の体力、気力は
その折までは持ちこたえそうもない、などと悲観的になります。
13年間に及ぶブリューゲルを訪ねる旅の総集編を4篇にまとめられる作業は
大変だったことと想像しますが、この旅行記が最終章!
お疲れさまでした。
一編一編が完成度が高くて、どこを削るか、とても悩まれたことでしょう。
旅先でお孫さん用のドレスをあれこれ迷われて購入された、優しいおじいちゃまのお姿、
ご自身が腕利きのお料理人でもあられるので、お勧めのお味はとっても信頼ができる、
などなどは数々の旅行記を拝見して、そうなのね~と段々にわかってきました。
そして一枚の絵の描かれた時代背景、画家をめぐる王家との関係、
絵の技法、絵の具についてなど細部にわたるまでの解説が盛り込まれた旅行記を
拝見しますと、キュレーターの説明を受けながら美術館を回ったかのように
思ったことでした。
いえいえ、それ以上の体験でした。
「デトロイト市美術館で出会われた男」の目をご覧になった折、
背中に寒気を感じられたというnorio 2boさん、
その折の旅行記のURLをお教え下さいませ。
拝見しているのかもしれませんが、記憶に残らず、復習したく思いました。
ニューヨークの通りを傘をさして颯爽と歩く男性へのコメント、
日本人には真似のできない歩き方、とのコメントに共感!
膝裏がきっちりと伸びていて、瞬間を切り取った写真でも美しいと
思える歩き方をされていますね。
日本の男性の皆さんにも是非とも見習って欲しいと思いました。
mistral
- norio2boさん からの返信 2021/09/19 15:20:26
- Re: 色々なことを思い出して。
- mistralさん
メッセージありがとうございました。
旅行記楽しく拝見しています。
ブリューゲル総集編は第4部で終わります。
添削中です。
もう暫くでアップ致します。
ご意見聞かせて頂けると嬉しいです。
お尋ねのデトロイト旅行記のアドレスです。
https://4travel.jp/travelogue/11227918
コメント頂いており恐縮です。
同じものと遭遇しても感じること、思うことは百人百様です。
自分が行ったところを
4Tの検索で
地名を検索して
みなさんの旅行記のリストを拝見すると結構興味深いです。
その中でも、ひとり旅の旅行記には適度の緊張感があって引き込まれます。
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- pedaruさん 2021/01/10 06:49:35
- 時代、歴史、風俗、暮らし、経済、人情等を紐解いていく絵画
- norio2boさん おはようございます。
人々の集団を描いたブリューゲルの絵は、汲めども尽きぬ泉のごとく、いろんなものを
内包しているのですね。かといって、誰でもがそういう見方をするわけでなく、また出来るわけでもありません。
ブリューゲルにかけた愛、執着、恐れ入りました。専門家の域に達しているというよりは、この域を超えていると思います。たいへん感心いたしました。
しばしブリューゲルの世界を体験した思いです。ありがとうございました。
pedaru
- norio2boさん からの返信 2021/01/10 10:51:30
- Re: 時代、歴史、風俗、暮らし、経済、人情等を紐解いていく絵画
- pedaruさん
あけましておめでとうございます!
コメントありがとうございます。
移動の自由が制限される毎日です。
旅好きの我々には試練の時期ですね。
先日、スペイン風邪の歴史を読んでみたら3年くらいかかっていつのまにか収束しているのを知りました。
これからが第二波の本格感染の段階になるようにも思えます。
昔に戻ることは当分期待出来そうもありません。
体力が落ちないよう近場の散歩1万歩を目標にしています。
厳しい時期ですが、時間が充分与えられているのを実感しています。
みなさんの旅行記を拝見して楽しませて頂いています。
今後とも旅行記のアップをお待ちしております。
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