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綴喜(つづき)郡青谷(あおだに)村は城陽市の南東端、JR奈良線の山城青谷駅の周辺にあった村で、1951年に久世(くせ)郡の久津川(くつかわ)村、富野荘(とのしょう)村、寺田村と合併して久世郡城陽町(その後1972年に市制移行)となり廃止された。発足は1889年で、綴喜郡奈島村、市辺村と久世郡中村の区域をまとめたもの。東側は丘陵地帯で、その他は北の長谷川、西の木津川、南の青谷川に囲まれている。<br /><br />村の名前は、中村の丘陵にある青谷梅林から取られたものと思われる。青谷梅林は鎌倉幕府を滅亡させた後醍醐天皇の皇子宗良親王の歌に「風かよふ綴喜の里の梅が香を 空にへだつる中垣ぞなき」と詠まれており、鎌倉末期頃にはすでに梅林があったことが知られており、現在は50軒余りの農家が、20haほどの面積に約1万本の梅を栽培している。<br /><br />1926年に青谷梅林仮停留場として開業、1933年に正式な駅となり現在の駅名に改称された山城青谷駅(下の写真1)の北の踏切から300mほど西に賀茂神社がある。旧奈島村の氏神で、平安時代の後期、1092年に上賀茂神社から勧請された神社。御祭神は賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)。<br /><br />社伝によるとこの翌年から始まった上賀茂神社の旧暦皐月の行事、賀茂の競べ馬に奈島村からも参加しており、上賀茂神社と深い繋がりがあったようだ。拝殿内や境内には何枚か馬が図案の絵馬が飾られている(下の写真2)。この競べ馬の行事は今も5月5日の午前中に行われているが、兼好法師の徒然草に「5月5日、賀茂の競べ馬を見に行ったが、牛車の前に人が立ち並んで見えない。やむなく牛車を下りて、馬場の柵に近づこうとしたが、大勢の人が混み合って分け入ることもさえもできない」と書かれている。<br /><br />室町時代には奈良の興福寺配下だったようで、1462年に春日若宮祭に進物を納めたことが史料で分かっている。例祭は10月16日と遅い。9月1日には、風雨をしずめ豊作を願う八朔祭も行なわれており、境内で盆踊りが行われ、昔は近郷・近在より多数の人が集まり賑わったと云う。<br /><br />東西に走る道から木造の一の鳥居を抜け、長い築地塀の参道を北に進む。玉砂利がひかれた参道の両サイドに石燈籠が並ぶが、その一つには延宝3年(1675年)8月と刻されている。石造りの二の鳥居を抜けると、左側に含漱盥と刻まれた手水舎があり、元は奥の獅子像の口から水が出ていたようだが、今は使われていない。<br /><br />境内に入ると左手はブランコなどが置かれ、子供たちが遊べるスペースになっているが、大きな木が立っており、そのうちの1本の樹高20m、幹周3.2mのムクノキはムクノキ特有の樹形をなし、地域を代表する木として城陽市の名木・古木に選ばれている。<br /><br />境内正面には切妻造・平入りの大きな拝殿。中央に馬道を通す割拝殿で、江戸時代後期の建立。向かって左の妻の高いところには花頭窓が設けられている。奥の本殿は一間社隅木入春日造。檜皮葺で、江戸時代の建物。京都市内の神社の本殿は上賀茂神社や下鴨神社を始めとして流造なのだが、上賀茂神社から祭神を勧請したこの神社の本殿は春日造。これは室町時代に興福寺配下にあったことから来ているようで、南山城地域では、城陽を境に北は流造、南が春日造に二分されている。本殿の階段と正面の縁の部分の高欄はない。階段の上、左右に置かれた狛犬が右側は角がなく金色で、左側は角があり、木肌のまま(下の写真3)で面白い<br /><br />本殿の左右には小さな摂社がそれぞれあるが、詳細は不明。<br />https://www.facebook.com/chifuyu.kuribayashi/media_set?set=a.4147500401986619&amp;type=1&amp;l=223fe1adec<br /><br />賀茂神社のすぐ西に深廣寺。浄土宗のお寺で、山号は宝池山、ご本尊は阿弥陀如来。戦国時代の終わり、1589年に廣譽(こうよ)上人により開山されたと伝わる。境内には市の指定文化財となっている鎌倉時代の建立と推定される宝篋印塔5基がある。<br />https://www.facebook.com/chifuyu.kuribayashi/media_set?set=a.4147507491985910&amp;type=1&amp;l=223fe1adec<br /><br /><br />奈島地区散歩に続く

京都 城陽 賀茂神社・深廣寺(Kamo Shrine & Jinkoji Temple, Joyo, Kyoto, JP)

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2020/06/08 - 2020/06/08

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ちふゆ

ちふゆさん

綴喜(つづき)郡青谷(あおだに)村は城陽市の南東端、JR奈良線の山城青谷駅の周辺にあった村で、1951年に久世(くせ)郡の久津川(くつかわ)村、富野荘(とのしょう)村、寺田村と合併して久世郡城陽町(その後1972年に市制移行)となり廃止された。発足は1889年で、綴喜郡奈島村、市辺村と久世郡中村の区域をまとめたもの。東側は丘陵地帯で、その他は北の長谷川、西の木津川、南の青谷川に囲まれている。

村の名前は、中村の丘陵にある青谷梅林から取られたものと思われる。青谷梅林は鎌倉幕府を滅亡させた後醍醐天皇の皇子宗良親王の歌に「風かよふ綴喜の里の梅が香を 空にへだつる中垣ぞなき」と詠まれており、鎌倉末期頃にはすでに梅林があったことが知られており、現在は50軒余りの農家が、20haほどの面積に約1万本の梅を栽培している。

1926年に青谷梅林仮停留場として開業、1933年に正式な駅となり現在の駅名に改称された山城青谷駅(下の写真1)の北の踏切から300mほど西に賀茂神社がある。旧奈島村の氏神で、平安時代の後期、1092年に上賀茂神社から勧請された神社。御祭神は賀茂別雷大神(かもわけいかづちのおおかみ)。

社伝によるとこの翌年から始まった上賀茂神社の旧暦皐月の行事、賀茂の競べ馬に奈島村からも参加しており、上賀茂神社と深い繋がりがあったようだ。拝殿内や境内には何枚か馬が図案の絵馬が飾られている(下の写真2)。この競べ馬の行事は今も5月5日の午前中に行われているが、兼好法師の徒然草に「5月5日、賀茂の競べ馬を見に行ったが、牛車の前に人が立ち並んで見えない。やむなく牛車を下りて、馬場の柵に近づこうとしたが、大勢の人が混み合って分け入ることもさえもできない」と書かれている。

室町時代には奈良の興福寺配下だったようで、1462年に春日若宮祭に進物を納めたことが史料で分かっている。例祭は10月16日と遅い。9月1日には、風雨をしずめ豊作を願う八朔祭も行なわれており、境内で盆踊りが行われ、昔は近郷・近在より多数の人が集まり賑わったと云う。

東西に走る道から木造の一の鳥居を抜け、長い築地塀の参道を北に進む。玉砂利がひかれた参道の両サイドに石燈籠が並ぶが、その一つには延宝3年(1675年)8月と刻されている。石造りの二の鳥居を抜けると、左側に含漱盥と刻まれた手水舎があり、元は奥の獅子像の口から水が出ていたようだが、今は使われていない。

境内に入ると左手はブランコなどが置かれ、子供たちが遊べるスペースになっているが、大きな木が立っており、そのうちの1本の樹高20m、幹周3.2mのムクノキはムクノキ特有の樹形をなし、地域を代表する木として城陽市の名木・古木に選ばれている。

境内正面には切妻造・平入りの大きな拝殿。中央に馬道を通す割拝殿で、江戸時代後期の建立。向かって左の妻の高いところには花頭窓が設けられている。奥の本殿は一間社隅木入春日造。檜皮葺で、江戸時代の建物。京都市内の神社の本殿は上賀茂神社や下鴨神社を始めとして流造なのだが、上賀茂神社から祭神を勧請したこの神社の本殿は春日造。これは室町時代に興福寺配下にあったことから来ているようで、南山城地域では、城陽を境に北は流造、南が春日造に二分されている。本殿の階段と正面の縁の部分の高欄はない。階段の上、左右に置かれた狛犬が右側は角がなく金色で、左側は角があり、木肌のまま(下の写真3)で面白い

本殿の左右には小さな摂社がそれぞれあるが、詳細は不明。
https://www.facebook.com/chifuyu.kuribayashi/media_set?set=a.4147500401986619&type=1&l=223fe1adec

賀茂神社のすぐ西に深廣寺。浄土宗のお寺で、山号は宝池山、ご本尊は阿弥陀如来。戦国時代の終わり、1589年に廣譽(こうよ)上人により開山されたと伝わる。境内には市の指定文化財となっている鎌倉時代の建立と推定される宝篋印塔5基がある。
https://www.facebook.com/chifuyu.kuribayashi/media_set?set=a.4147507491985910&type=1&l=223fe1adec


奈島地区散歩に続く

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  • 写真1 JR奈良線 山城青谷駅

    写真1 JR奈良線 山城青谷駅

  • 写真2 賀茂神社拝殿の絵馬

    写真2 賀茂神社拝殿の絵馬

  • 写真3 賀茂神社本殿の狛犬

    写真3 賀茂神社本殿の狛犬

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