巨椋池（大池）。ほんの８５年前までは京の都の南にあった巨大な池の跡を歩く。

2023/09/17 - 2023/09/17

昔、京都の伏見の南側には大きな池（巨椋池）がありました。

昔といっても、その池がなくなったのは昭和１６年のこと。ほんの８５年ほど前までは大きな大きな池が京都の南に広がっていたなんて信じられませんが、池で漁をしたり、船に乗って蓮を愛でる写真なども残っています。

そんな幻の池の歴史と名残を巡る街歩きに参加しました。
巨椋池の存在は知っていましたが、その網元の家が今も残っているなど、自分にとっては新しいことばかりでとても楽しかったです。

古代より京都の伏見の南側は島々が浮かぶ大きな池が広がっていて、平安貴族たちがその風景を愛でて別荘を建てました。宇治とは池・川を通じて京の都とつながっており、平等院もその別荘が現代までに伝わったものと言えます。宇治が平安時代京の貴族の別荘地だったというのがピンとこなかったのが、水を通じで京の都とつながっていたというのを知って腑に落ちました。

エリア 八幡・城陽(京都)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0

• 交通手段: 高速・路線バス 私鉄 徒歩

豊臣秀吉は伏見に城を構え、城下町を造るにあたって、川の流れを変え、巨椋池も大規模な治水工事を行って、池を縦断する太閤堤という堤兼街道を築きました。

太閤堤は池の東側にありましたが、西側にあった堤が大池堤で、その堤=街道は現在も残っており、今回その大池堤を歩きました。両側には家が並んでいます。

古い家や古い家をリノベした家も見受けられました。

街道から下へと下りる階段。街道は堤上なので、周囲より高い場所となっています。階段を降りて、昔池だったところに立ってみると・・

街道沿いの家を裏側（昔、池だったところ）から見るとこのようになっています。

昔は船などが停められていたであろう場所は、今ではガレージや倉庫になっていました。

そして、堤街道に沿って建つこの立派な長屋門が旧山田家です。

旧山田家住宅 名所・史跡

旧山田家は江戸時代に巨椋池の漁業のとりまとめを務めていた家で、現在もその長屋門や住宅の一部が残っていて、国登録有形文化財となっています

旧山田家住宅 名所・史跡

旧山田家の塀と長屋門。

旧山田家住宅 名所・史跡

長屋門には昔の船や漁具が展示されています。

旧山田家住宅 名所・史跡

明治時代になると、近代的な治水工事が行われ、池は淀川と切り離され、その結果、池に生活排水などがたまり、水質が悪化し、漁業にも大ダメージとなりました。そしてとうとう昭和８年からは干拓が行われ、池はなくなってしまい、漁業もおこなわれることはなくなってしまいました。

旧山田家住宅 名所・史跡

山田家は名字帯刀が許されて、家紋は「丸に五つ引き」で、玄関の門に家紋が彫られています。

旧山田家住宅 名所・史跡

旧山田家住宅の主屋。

旧山田家住宅 名所・史跡

三間がつらなった主屋。部屋は外から見学する形です。

旧山田家住宅 名所・史跡

網元の家らしく、欄間が網代の細工になっています。

旧山田家住宅 名所・史跡

波間に鯉の模様の欄間も。

旧山田家住宅 名所・史跡

鶴の釘隠し

旧山田家住宅 名所・史跡

旧山田家の庭園。

旧山田家住宅 名所・史跡

巨椋池は宇治川、桂川、木津川とつながっていたので豊かな漁場であった半面、洪水にも悩まされました。

家は石垣の上の一段高いところに建てられています。これは水害対策だと言われています。

この街道一帯は東一口（いもあらいと読むそうです）は道の両側に家が並ぶ形式ですが、旧山田家のある付近は少し面積が広くて「集落」のような形になっており、大きな家やお寺などもあります。かつての村の中心地だったのかなと思われます。

石垣の上に建てられた建物。

旧家らしい規模の大きな屋敷も残っています。

いずれも、立派な石垣が組まれています。

とても立派な石垣です。上部は近年になって造られたものかと思われます。

大池堤街道から見える大きな建物は巨椋池排水機場です。
低地であることにかわりはないので、今も稼働しています。

実際干拓後の昭和２８年にも大洪水があったようです。

巨椋池排水機場には巨椋池まるごと格納庫という資料館が併設されていて、無料で見学できます。

巨椋池や排水機場の歴史が展示してあります。

風光明媚な場所として人気で、貴族の別荘が建てられた奈良・平安時代の様子を描いた絵。

漁業や蓮見が盛んだった江戸時代の様子。

宇治川の堤に上がってみます。周辺は高い建物がないので、開放的で気持ちがよいです。

宇治川の対岸に見える横長の建物は京都競馬場です。昔はこの付近に渡しがあったそうですが、今は渡しはもちろん橋もありません。
京都競馬場に行くにはバスで京阪・中書島まで行って京阪電車で淀駅まで行くというぐるっと回る道のりになります。

街歩きのツアーの記録はここまでです。後は個人で回った記録になります。

宇治川 自然・景勝地

京阪電車淀駅で降りて、京都競馬場にやってきました。

京都競馬場 名所・史跡

最近改装したみたいで、無茶苦茶巨大できれいでした。

京都競馬場 名所・史跡

競馬場に来るのは初めてです。この中央の観覧席（スマートシート）、普段は有料らしいですが、この日は一般に解放されていました。

京都競馬場 名所・史跡

なぜ競馬場にやってきたかというと、競馬場の中に見える池、これが巨椋池の名残
だということをきいていたからです。

今は噴水もあって形もきれいに整えられていますが、競馬場ができたころはもっと自然ぽい池だったんでしょうか。

京都競馬場 名所・史跡

巨椋池の名残と言われている池。干拓されてなくなった池がこんな形で残っているなんて！！

京都競馬場 名所・史跡

９月とはいえ、すごく熱い日でしたが、この観覧席の上は大屋根が張り出していて風が吹いて、気持ちよかったです。
ず～っとここに座っていたいと思うほど。

京都競馬場 名所・史跡

でも、せっかく淀まできたので、まだ見たいものが・・。

後ろ髪をひかれる思いで京都競馬場を後にしました。

京都競馬場 名所・史跡

京阪電車の線路下をくぐる地下道を通って、競馬場と反対側に行きます。

見たかったひとつめ、「淀堤千両松の戦慰霊碑」です。

淀堤千両松の戦い慰霊碑 名所・史跡

戊辰戦争の鳥羽伏見の戦いでの戦死者の遺骨をおさめた地を示す碑で、新撰組の

井上源三郎もこの戦いで亡くなっているので、こちらに葬られていると思われます。

合掌。

淀堤千両松の戦い慰霊碑 名所・史跡

炎天下を歩いて淀城までやってきました。見たかったふたつめは淀城跡です。今は淀城跡公園となって、石垣も残っていますが、あまり保存状態はよくないのか・・という印象がしました。
文化財とかにも指定はされていないようです。

淀城跡公園 公園・植物園

天守台が残っていますが、現在のぼることはできません。

淀城跡公園 公園・植物園

公園内にあった昔の淀城の絵図です。淀城は今日巡ってきた巨椋池ともつながっている水城でした。

淀城跡公園 公園・植物園

淀城の城主稲葉家は春日局の実家で譜代大名であるにもかかわらず。幕末、鳥羽伏見の戦いで敗走する幕府軍を城内に入れませんでした。

淀城には堀も一部残っていますが、今日はあまりの暑さにそこまで行くのは断念しました。

淀城跡公園 公園・植物園

淀城址は現在、與杼神社、稲葉神社、淀城跡公園となっていますが、どこまでが神社で、どこからが公園か判然としません。
與杼神社は歴史ある産土神社です。

與杼神社 寺・神社・教会

１９０２年に桂川右岸から淀城跡に遷座してきた與杼神社ですが、本殿、拝殿は当初の様式をよく残し国の重要文化財に指定されていたものの、子供の花火で本殿は焼失、現在は拝殿（写真）だけが残っています。

與杼神社 寺・神社・教会

稲葉神社は稲葉正成を祭神とする神社で、旧淀藩士によって１８８５年に建立されました。明治時代の初期には藩士たちが藩祖や藩主を祭神として神社を建立するということがけっこうあったみたいですね。国内を旅行していると時々そういった神社に出くわします。

稲葉神社 寺・神社・教会