４年越しの夢叶う。神様が作るフレンチを食べに芦屋へ。翌日は台風前に摩耶山登山。

2022/09/16 - 2022/09/17

それは確か、コロナのコの字も知らなかった2018年のこと。

とあるレストランで人生100年時代やら老後やら終の棲家なんていう、決して明るくはない話をしながらワインを舐めていたのだけれど、
その話が耳に入ったのか他の客がいなくなった頃、旧知のシェフが厨房から出て来て我々にこう言った。

“ジローさんが芦屋に店を出したよ”

と。

ジローさんと聞いて思いつくのは、坂上、浅田、白洲、佐藤あたり。あぁ、谷川さんもいたな。

もっともこれらの人であるわけはなく、

神戸ポートピアホテルのフランス料理店アラン・シャペルで料理長を20年務めた小久江次郎という人のことらしい。

アラン・シャペルはフランスのリヨン郊外のレストランのオーナーで、36歳の時史上最年少でミシュランの三つ星を獲得したフランスを代表する料理人。
1981年の神戸ポートピアホテルの開業と同時に、神戸に支店を開設した。
小久江次郎という人はそこで20年間シェフを務めた人らしい。
その後、アラン・シャペルが亡くなり、神戸支店も2012年3月に閉店した。


店の名は、“芦屋・次郎”というらしい。
銀座の寿司屋みたいだ。

教えてくれた小久江氏の後輩にあたる当シェフによれば、小久江氏は雲の上の人、神様なのだそうだ。
その後輩シェフとて雑誌やテレビで時々顔を見かけるそれなりの有名人だ。

いくら美味しくても、緊張を強いられる店やサロン的な店は好きじゃない。
常連がこの年のメルローはどうのこうの、とうんちくを垂れながらグラスをクルクルさせているような店はご免こうむりたい。

最初は、へぇーっと一つのお話として聞いていたのだが早く行っておいたほうが良いよ、といたずらっぽく笑う当シェフの目を見て気が付いた。
なるほど、それは早く行かねばならない。

日本でアラン・シャペルの味を継承する唯一の料理人という点も気にはなったが、一番興味を引いたのがシェフの年齢。
店を出したときはなんと70歳越えである。

通常引退する年齢であえて店を出すそのエネルギーに触れたくてこの数年間チャンスを狙っていたのだけれど、10席に満たないカウンターのみの店(後で個室があると判明)の予約がそうそう取れるはずもなく数年経過。

今回やっと予約が取れ、神戸へ向かった。

エリア 御影・灘(兵庫)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0
• ホテル: 4.0
• グルメ: 5.0

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: 新幹線 JRローカル

いきなりうどんの写真からスタートするけれど、フレンチだけのために関西入りするのもナンなんで、大阪で一仕事と摩耶山登山を組み入れて入れておいた。

ということで大阪でランチ。
うどん棒　大阪本店

人気NO.1だという名物ちく玉ひや天　1,080円

ちく玉の“ちく”は竹輪天の“ちく”だと思われるが、メニューに名こそあれ主役にはなれないようで、えび天や大葉天の下にあり引き立て役にされているのがちょっと切ない。

うどん棒 大阪本店 グルメ・レストラン

大阪で人気のうどん店。

箸袋の裏には、本店高松と。
大阪のうどん、讃岐うどんに駆逐されとるな。

百名店に、ミシュラン。

凄いな。

まあ、大阪人は粉もんはすべて大阪のモノと思っているフシがあるからねえ。
讃岐うどんの当店も大阪が育てたくらいは思っているだろう。

JR神戸駅。

三ノ宮あたりにホテルを取るのがセオリーだけれど今回は気分を変えてＪＲ神戸駅駅前に宿を取ってみた。

神戸駅 (兵庫県) 駅

ホテルクラウンパレス神戸
こちらのホテルを選択したのは部屋が比較的広いこととサウナがあったから。

ホテルクラウンパレス神戸 宿・ホテル

一昔前のシティホテルってヤツですかね。

LANケーブルは置いてあるし、ネット接続の説明書にはWindowsXPがどうのこうのって書いてあるし。

浴室は判で押したようなビジネスホテルのそれ。

大浴場とサウナ（800円別料金）
は割とよかった。

コロナであろうがなかろうが、ここ数年毎月関西入りして京都・大阪・神戸のホテルに泊まっていたのだけれど、この三連休の宿泊費の高騰は凄いな。

ということで明日の宿がまだ決まっていない。
台風が近づいていることもあるし、どうしますかね。

マンションの向こうにかすかに海が見える。

もう少し良い景観を期待したんだんだけれど。

さてと良い時間になりました。神様に会いに行きますかね。

JR芦屋駅。

芦屋駅 (JR) 駅

白いタイル張りの壁に目立たない丸い看板。

全く気が付かず一度通り過ぎた。
初めて訪れる客の多くは同じ行動を取るに違いない。

芦屋・次郎 グルメ・レストラン

本当にドアか？

と思うような扉を押し開けると暗い廊下が現れた。
扉を開けた何割かの人が、間違えたかとここで一度ドアを閉めることになるだろう。
暗い廊下を恐る恐る進み、階段を登ると想像していたものと全く異なる空間が現れた。

料理は一部希望を言って後はお任せ。

今日はいろいろなものを少しずつお出ししますと。
楽しみ楽しみ。

デギュスタシオンなんて言わない点も良いし、箸もセットされておりなんとなく店の方向性がが分かるような気がした。
意外なことに日本酒まで用意されていてびっくり。

芦屋の神様のフトコロは相当に広いらしい。

メニューもワインリストも仏語一辺倒、という事態を恐れていたのだが杞憂でありました。

泡でスタート。

ビーフコンソメときのこの冷たいクリーム

ゼリーで固めたコンソメにキノコクリームソース。
この日は結構暑かったので、上々の滑り出し。

プティサザエのエスカルゴ仕立て。

写真を撮って良いかと尋ねると、撮るような料理が出せると良いんですがなんて言葉が返ってきた。

前菜プレート

明石のタコに自家製ハム、鱒にあれこれ。

これはお箸でどうぞ、と。

この一皿でワイン1本飲めそうだ。

ワインはフレンチワインしかないのかと思っていたがなんとチリワインまで用意されていたので二杯目はチリのリースリングで。

パンはビゴのパンだとどこかで読んだが真偽不明。

ダイコンのコンフィにフォアグラ。

大根をコンフィにするのかと驚いたが、この料理はアラン・シャペルのスペシャリテであるらしい。同じような料理を食べたことがあるが、こちらが本家なんだ。

本来はもっとフォアグラの量が多い皿らしいが、フォアグラはもうこれくらいの量で十分だな。

鮑のムニエル

凡庸なレストランなら、どこどこ産の鮑に何とかのトリュフを添えてどーしたこーしたと、呪文みたいな料理名にするのだろうけれど、神様は質実剛健、単純明快。

メニューにはただ、鮑のムニエルと。

鮑と木の芽って合うんだ。知らなかった。

北海道産キンキのグリル

脂の乗ったキンキ、白身の美味しさはもとよりパリッと焼かれた皮目がめっぽう美味しい。
添えられたアスパラも味が濃い。
どの皿もおいしかったが、個人的な今日イチがこのお皿。

口に運ぶ度に口角が上がる。

伊勢海老のメダイヨン

ここで伊勢海老来ますか・・・

ぷりっぷりで美味いのなんの。

仙台牛フィレ肉のポアレ

仙台牛の良いものが手に入ったので、とのことだったがこれがまたまあ、実に美味しい。
仙台でもこんなうまい肉食べたことなかったぞ。

デザート:イチジクのタルト

とだけメニューに書かれていたが、アイスクリームにパンナコッタも。

小菓子とコーヒーでfin

素晴らしい皿の数々。
料理が美味しいのは当然だが、何よりも小久江シェフの人柄が素晴らしい。
こんな上司の下で働けた人はさぞかし幸せでありましょう。

また、色々話をさせていただき70を超えて店を開くそのエネルギーのミナモトにも触れさせていただきました。

シェフの家にお邪魔しているような空間で堅苦しさ一切なし。
ドレスコードがど－のこーのや、ワインの選び方が云々なんてめんどくさいこともなし。
肩の凝らない素晴らしいフレンチレストラン。

一見客を断るような店では無いですが、訪れる際は誰かの紹介を受けるか一度行ったことがある人に連れて行ってもらったほうが良いと思う。
駅からは近いものの、なんせ場所がわかりづらいし。

予約は電話のみ(多分)
尚、８名程度で利用できる個室があるようですが、小久江シェフの話が聞けるカウンターでの利用を勧めます。

https://www.instagram.com/ashiyajiro/

特に確かめたわけではないけれど、この店を紹介してくれたシェフからこちらの好みや(酒ばっかり飲むとか)アバウトな年齢情報が行っていたんじゃないかな。
個人的にはホスピタリティ溢れる皿の数々でした。

料金はあえて書きませんが、銀座や六本木辺りの家賃食べてるのか人件費食べているのかわからないレストランの半額くらい。
これだけ飲んで(泡・白・赤とボトル１本分くらいは飲んだ)神様と呼ばれる料理人の料理をカウンターでかぶりつきで楽しめることを考えると、満足度は非常に高い。

また是非行きたい。

最後の客だったこともあってか店を出て最初の角を曲がるまで、神様が頭を下げてのお見送り。
まるで京都の旅館の女将のように。

シェフに比べると当方まだまだひよっこ。いやいや老後の話なんてしている場合じゃないな。
すっかりファンになってしまった。

さてと、翌朝。

本日は新神戸駅で知人と待ち合わせて摩耶山登山。
昨日のフォアグラのカロリーを消費しないとな。

湊川神社 寺・神社・教会

駅へ向かう途中に湊川神社にお参り。

集合は新神戸駅、朝7時。

昨晩は枕が合わなくてよく眠ることが出来なかった。
土砂降りになって登山が中止にならんかな、と思わなかったかというとウソになる。

am7:30

布引の滝経由で摩耶山へ
新神戸駅の裏から登り始める。

朝イチにこの階段はきついぞ。

am7:40

布引の滝

女滝

布引の滝 自然・景勝地

布引の滝

男滝

六甲のおいしい水～

新神戸駅のANAクラウンプラザホテル越しに三ノ宮あたりを見下ろす。

am7:50

猿の葛橋

am8:00

五本松堰提と読める。

神戸市民の水がめらしい。

am8:15

紅葉の茶屋

でんわ・でんぽう・・・・
懐かしい看板。

電報って今もあるんですかね？

最近各地でイノシシの出没がニュースになるが、このあたりじゃ当たり前すぎてニュースにもならないと思われる。

登山道は案内が各地にあり迷うことはない。

摩耶山 自然・景勝地

タマゴタケ

凄い色だが食べられるキノコだ。

am10:00

掬星台到着

夜景の名所。

掬星台 名所・史跡

どなたかは存じ上げませんがモデルになっていただきましょう。

台風の影響で空が低いな。

あれが関空、あっちが淡路島と確認が済んだらさっさと下山開始。

am10:20

摩耶山旧天上寺跡

摩耶山天上寺は摩耶山真言宗の大本山の寺院。

山号は佛母摩耶山。

釈迦の生母である摩耶夫人を本尊とする日本唯一の寺だそうな。

それで摩耶山というなんて今日の今日まで知らなんだ。

am11:00

こんな道をうねうねと。

年に何人か六甲山系で遭難する人が居るらしいが、さもありなん。

am1１:20

砲台跡。

ここからB29を狙っていたらしい。

am12:00

山を下って向かったのはそば切り 山親爺

そば切り 山親爺 グルメ・レストラン

何はなくともビール。

赤星！

もりそば1枚半。

昨晩のフレンチも美味かったが蕎麦も美味いな。

きも煮が気になる・・・

山に登って昨日のフォアグラ分のカロリーはたぶん消費できたしな・・・

日本酒行っちゃいますか。

新神戸駅からもほど近い神戸の湯で汗を流して。

友人とはここで別れて、大阪へ移動。

六甲布引温泉　神戸の湯　ほてるISAGO神戸 宿・ホテル

大阪か奈良でもう一泊して、と考えていたけれどホテルはバカ高いし台風も気になるし551を買って帰ります。

三連休初日の東京方面への新幹線、思いのほか空いているなと思ったものの、京都で満席。

東京・横浜のガイドブックを見ながら、どこへ行こうか相談しているカップルに口をはさみたいのをグッと我慢しながら東へ。
台風が来ているけれど、良い旅を。

551蓬莱 エキマルシェ新大阪店 グルメ・レストラン

この旅行記へのコメント （5）

• Antonioさん 2023/07/17 10:11:11

  小久江シェフ

  おはようございます。昨日レジェンドのお店でようやく食事をしてきましたが、書かれいたとおりでシェフの人柄は素晴らしいですね。ソフトな人あたりは居心地がよかったです。
  
  料理の味と気の利かせたは流石だと感じました。JRの時間や乗り継ぎの時間もスタッフに確認させて、無事最終便を乗り過ごさず、東京に戻ることが出来ました。

  y_0236さん からの返信 2023/07/18 07:47:00

  RE: 小久江シェフ

  Antonioさんおはようございます。
  
  それはそれは。
  当方も幾度となく機会を狙っているんですが未だお邪魔することができません。
  いつ店を閉めちゃうかわからないですしねえ。
  
  閉店と言えば横浜綱島の八十港、閉店の様です。
  こちらももう一度行っておきたかった・・・
  
  y_0236
  
  
  
  
  > おはようございます。昨日レジェンドのお店でようやく食事をしてきましたが、書かれいたとおりでシェフの人柄は素晴らしいですね。ソフトな人あたりは居心地がよかったです。
  >
  > 料理の味と気の利かせたは流石だと感じました。JRの時間や乗り継ぎの時間もスタッフに確認させて、無事最終便を乗り過ごさず、東京に戻ることが出来ました。

  Antonioさん からの返信 2023/07/18 20:19:21

  八十港

  こんばんは。
  
  横浜綱島の八十港は去年何度か利用しました。いつも人の入りが少なかったので大丈夫なのかと心配していましたが閉店ですか。場所があまりよくないように思いました。
  
  人の出入りが多いのは、駅の反対側で場所で損しているように感じたのと、一般の日本人に茶餐廳は馴染みがなく、飲茶でさえ本当に広まりだしたのはここ数年のように思うので、中華街や東京都心でないと集客に苦労したのではと感じました。私が利用した際は、いつも香港人の人ばかりが客でした。
  
  飲茶をメインに推した方がビジネスになるかもしれませんが、こだわりのある人は納得しないのでしょうね。
  

• Antonioさん 2022/09/23 05:17:37

  アラン・シャベル

  おはようございます。次郎さんのお店は、食べログの口コミ数が少ない、穴場ですね。神戸に「アラン・シャベル」の支店がかつてあったのは知っていましたが、シェフがまだ活躍しているとは知りませんでした。このお店はぜひ利用してみたいですね。

  y_0236さん からの返信 2022/09/23 07:51:19

  RE: アラン・シャベル

  Antonioさんおはようございます。
  
  アラン・シャペル閉店後代官山のバブリーな店を経て数々の名誉職を断って開業されたようです。
  ポートピアホテルの時の店とのギャップが凄く、非常に楽しめました。
  予約が取れなくなっても困るので、旅行記にすべきか悩んだんですが、是非一度。
  
  
  y_0236
  
  
  
  
  
  
  > おはようございます。次郎さんのお店は、食べログの口コミ数が少ない、穴場ですね。神戸に「アラン・シャベル」の支店がかつてあったのは知っていましたが、シェフがまだ活躍しているとは知りませんでした。このお店はぜひ利用してみたいですね。