2021/06/26 - 2021/06/27
4位(同エリア283件中)
旅猫さん
予てから訪れてみたいと思っていた場所のひとつに、川原毛地獄がある。
公共交通機関が無かったため、これまで行くことが叶わなかった。
ところが、6月初旬、ふとしたことで、乗り合いタクシーが運行されていることを知り、狂喜して予約をすぐに入れた。
そして、6月の終わり、ついに念願の川原毛地獄へと向かうことになった。
今回は、路線バスが廃止されてしまった秋の宮温泉郷と、岩手側からの路線バスが使いづらい須川温泉に宿を確保し、併せて小安峡を巡る旅程とした。
温泉と火山の生み出す景色、そして自然を堪能する二泊三日の湯旅である。
(2021.07.07 投稿)
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- ホテル
- 3.5
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 5万円 - 10万円
- 交通手段
- タクシー 新幹線 JRローカル 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
7時57分発の『こまち5号』で大宮駅を出る。
緊急事態宣言が解除されたとあり、車内は混み合っている。
列車は微妙な天気の中、北へと走って行く。
そして、田沢湖線を西へと進み、大曲駅には10時50分に到着した。 -
大曲駅で25分待ち、11時15分発の奥羽本線の普通列車に乗車。
車内は思いの外空いていて、4人掛けの席に座ることが出来た。
田植えの終わった田圃が広がる中を走り、懐かしい横手駅を過ぎ、11時53分に、今回の旅の起点となる湯沢駅に着いた。 -
駅の一階にあった観光案内所で見どころを尋ねる。
すると、徒歩10分ほどの所に、力水と言う湧水があると言うので、行ってみることにした。
そして、駅前から続く道を歩いて行くと、右手に、昔は多くの人たちで賑わったであろう飲食店の入った建物があった。
店が半分ほどに減り、名店街の文字も消えかかっているのが物悲しい。 -
さらに歩いて行くと、歩道に鮮やかなマンホールがあった。
描かれているのは、湯沢三大祭りである「七夕絵どうろう祭り」、「犬っこまつり」、「大名行列」だそうだ。 -
市役所の近くまで来ると、目指す力水があった。
この水は、佐竹南家の居城であった湯沢城の麓に湧き、現在市役所が建つ場所にあった佐竹南家の館の御膳水だったそうだ。
飲んでみると、まろやかで優しい味わいだった。力水 名所・史跡
-
市役所で湯沢城の模型を観た後、すぐ近くにあった旧雄勝郡会議事堂に立ち寄ることにした。
その建物は、明治25年(1892)に建てられたもので、議事堂としての役割を終えた後は、市役所や図書館として使用されていたそうだ。
各地で明治期に建てられた洋風建築を観て来たが、この建物はその中でもかなり簡素な造りで、無駄な装飾などはほとんどない。雄勝郡会議事堂記念館 名所・史跡
-
中へ入ると、館内は薄暗く、二階は真っ暗だった。
入口まで戻って来ると、係の人が気付き、電気を付けてくれたので、もう一度館内を見学する。
その二階には、湯沢三大祭りのひとつ『七夕絵どうろうまつり』で使われる、美人画の絵どうろうが展示されていた。 -
もう少し街歩きを楽しみたかったが、あまりにも日差しが強く、暑さも厳しいので、散策を止めて、駅へ戻ることにする。
途中、細い路地の何気ない風景が印象的だった。
人の住む街の温かみは、道の幅がとても大事だと思う。 -
昼時だったので、どこかで食事を思ったが、これと言った店が無い。
しかも、駅近くにあった店は旅行者お断り。
仕方が無いので、弁当屋で弁当を買い込み、駅前に腰掛けて食べる。
駅前には空地が広がり、空が大きく見えた。 -
駅前で、予約していた13時50分発の『こまちシャトル』を待つが、時間を過ぎてもやってくる気配がない。
しばらくして観光案内所で訊いてもらったところ、一日間違えていたとの呑気な答えがあり、結局、30分以上遅れての出発となった。
そして、今宵の宿である秋の宮山荘には、14時50分に着いた。 -
通された部屋は、10畳の和室。
布団はすでに敷いてあった。
『スパ&リゾートホテル』とあったが、かなり年季が入った感じで、普通の温泉旅館と変わらない感じだった。秋の宮温泉郷に建つ大きな宿 by 旅猫さん秋の宮山荘 宿・ホテル
-
とりあえず、部屋に荷物を置き、外を歩くことにする。
宿の敷地内では、紫陽花がまだ蕾だった。
やはり、ここは山間なのだ。 -
秋の宮温泉郷は、思いのほか静かだった。
廃業した宿もあり、どこか寂しい。
街並みも、廃屋があり人気があまり感じられなかった。秋の宮温泉郷 温泉
-
少し歩くと、鷹の巣温泉の看板が見えて来た。
実は、今回、泊りたかったのは鷹の巣温泉だったのだ。
しかし、一人旅は受け付けておらず、立ち寄り湯だけでもと思ったのだが、何と日帰り入浴も駄目だと書いてありがっかり。
仕方が無く、外観だけ見て我慢することにした。 -
宿に戻り、温泉で汗を流す。
宿の大浴場は、日帰り入浴施設ののようで趣は全くなかった。
しばらく部屋で休んだ後、夕食の時間となった。
期待はしていなかったが、やはり大したものはなかった。 -
秋田の地酒の飲み比べがあったので、迷わず注文。
その中に、お気に入りの『やまとしずく』があったのは嬉しい。
日本酒大国秋田だけあり、どれも美味しかった。 -
以前、鹿角の居酒屋で呑んだ『福小町』もあった。
『福小町』を醸す木村酒造は湯沢市にあるのだ。
その酒は、木村家当主の名を冠した少量手作り生産の『角右衛門』の特別純米だった。
ワイングラスで出て来たのは興醒めだったが、美味しい酒だった。 -
締めは素麺だと言うのでお願いしたが、待てども出て来ない。
他の席には出いたので声を掛けてみると、どうも忘れていたようだ。
しかも、運ばれて来た素麺はすっかりのびていた。
料理はいまひとつだったが、酒は美味しかったので良しとしよう。 -
翌朝、天気は良かったが、食欲がいまひとつ。
朝食は、結局、魚と海苔をおかずにご飯を一杯だけいただいた。
そして、8時15分発の『こまちシャトル』秘湯線に乗車。
とは言え、路線バスではないので、実際には8時過ぎには出発した。 -
ゆっくり走るとのことだったが、それでも予定よりかなり早くに、川原毛地獄に到着してしまった。
その地獄地帯は、降りてすぐの所に広がっていた。
硫化水素臭が漂う荒涼とした風景は、火山好きには堪らない。
ただ、遊歩道が有毒ガス発生のため通行止めだったのが残念である。川原毛地獄 名所・史跡
-
川原毛地獄から、どんどん降りて行く。
周囲は緑に包まれているのに、そこだけが、酸化した白い細かい石で覆われた殺風景な景色なのがとても不思議な感じがする。 -
次に目指す川原毛大湯滝は、谷底にある。
降りた場所からは、かなり下って行かなければならない。
景色は素晴らしいのだが、帰りのことを考えると少し気が滅入る。 -
しばらく歩くと、小さな祠と東屋が見えて来た。
ここがちょうど中間辺りで、駐車場もあるようだ。 -
その祠にご挨拶。
賽銭は、強い酸性の影響で、黒く変色してしまっている。 -
駐車場の脇からは、温泉が流れる川が見えた。
湯気が立ち昇り、かなりの湯温がありそうだ。
川原毛地獄は、恐山、立山と並ぶ日本三大霊地と云われ、以前、ここには霊通山前湯寺と言う寺もあったそうだが、今はその痕跡も無い。 -
駐車場からさらに下ると、先ほど眺めた温泉の流れる川を橋で渡る。
この辺りは危険なので遊歩道以外は立入禁止なのだが、川原で食事をしながら川で湯浴みをしている二人組の柄の悪い男性がいた。
しかも、火気厳禁なのに煙草まで吸っている。
こういう輩は、自然と触れ合う資格は無い。 -
道はさらに下って行く。
緑が増え、日差しが遮られるのは良いが、蒸し暑い。
これは、帰りが思いやられる。 -
そして、下ること40分ほどでようやく大湯滝が見えて来た。
長年憧れ続けて来た場所が目の前にあり、感無量である。
ただ、思ったよりも小さな滝だった。
以前、北海道知床のカムイワッカの湯滝も体験したことがあるが、あの豪快さに比べると、かなり小規模である。 -
滝の近くまで来ると、流れは大きく二つある。
向かて左側は優し気に、右側は豪快に落ちている。
この滝全体が、温泉なのだと思うと感動以外は何もない。川原毛大湯滝 自然・景勝地
-
早速、滝の飛沫が少ない左側の滝つぼで湯を味わう。
入口に、水量が多いので入浴には適さないとあったが、実際にはまさに絶妙な湯加減で、極上と言ってよいものだった。
湧出点では泉温94.5度、PH1.41の強酸性の湯だが、この辺りではちょうど良い湯温になるそうだ。 -
右側の滝壺は、修験道の滝行になりそうだ。
実際、この地は修験道の行場だったので、滝行が行われていたのだろう。
ただ、冷たい水では無く、温泉に打たれるというのは修行なのだろうか。 -
川原毛大湯滝を堪能した後、元来た道を戻る。
帰りは登り一辺倒である。
次の便まで時間もあるので、途中の駐車場でしばらく休憩。
その後、川原毛地獄まで戻り、道の脇から立入禁止となっている賽の河原を眺めながら待つことにした。 -
そして、11時35分発の『こまちシャトル』に乗り、小安峡を目指す。
30分足らずで到着した小安峡温泉の観光物産館前で下車。
そこから小安峡温泉の最大の見所である大噴湯を観に行く。
大噴湯は、皆瀬川が造り出した深い渓谷の底にあり、今度は急な階段を60mも降りた先にあった。小安峡 紅葉
-
そこは、地熱貯留層の亀裂が露出しているという世界的にも珍しい場所で、91.3度と言う高温の熱水が岩の割れ目から噴き出している。
遊歩道から間近に観ることが出来るので、なかなかの迫力である。 -
中には、轟音と共に横に噴き出している場所もあり、遊歩道まで届きそうで、通行禁止になることもあるそうだ。
江戸時代の紀行家菅江真澄も訪れたことがあり、轟音や熱水のことを紀行文に書き残している。
鬼首の地獄谷遊歩道も良かったが、ここも気に入った。 -
遊歩道の先には、渓谷を流れ落ちる滝も眺められた。
小安峡は、かなり深い谷なので落差もあるが、流れは細く優し気だ。 -
遊歩道は谷底にあるので、最後はやはり登りである。
この日二度目の急登で、運動不足の身にはきつい。
途中で振り返ると、美しい渓谷の景色と、そこを跨ぐ朱色の河原湯橋が眺められた。 -
温泉街へ戻り、下から眺めた河原湯橋へと向かう。
橋から見下ろすと、小安峡の深さが実感できる。
水の力と言うのは凄い。
紅葉の季節、この橋からの小安峡の眺めは絶景となる。 -
そして、橋のほぼ真下に、先ほど観に行った大噴湯が見えた。
地球の息吹が体感できる場所と言うのは、やはり良い。
火山が多く、地震も多い国だが、温泉と言う大地の恵がある。
この国に生まれて良かったと、つくづく思う。 -
橋から、『こまちシャトル』の待つ物産館前へと戻る。
途中、道の脇にオカトラノオがたくさん咲いていた。
12時25分発の『こまちシャトル』栗駒線に乗り、この日の宿がある須川温泉へと向かう。
須川温泉は、お気に入りの温泉なので、楽しみである。
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この旅行記へのコメント (6)
-
- hot chocolateさん 2021/08/09 00:02:18
- 川原毛地獄と小安峡
- 旅猫さま
こんばんは。
ご無沙汰しています。
「川原毛地獄と小安峡」の旅行記にお邪魔しています。
旅行者お断りとか、一人旅は受け入れない、日帰り入浴もお断りとは、
コロナの故なのでしょうが、何かさびしいですね。
「川原毛地獄」は、初めて聞きましたが、恐山、立山と並ぶ日本三大霊地なんですね。
酸化した白い石で覆われた殺風景な景色は、やはりおどろおどろしく感じます。
滝全体が温泉!
滝つぼが湯船で湯温も絶妙な、まさに最高の野天風呂ですね。
あまりに大自然の中過ぎて、落ち着かなかったのでは?
紅葉の季節の小安峡の眺めは、まさに絶景でしょうね。
hot choco
- 旅猫さん からの返信 2021/08/09 18:45:38
- RE: 川原毛地獄と小安峡
- hot chocoさん、こんにちは。
書き込みありがとうございます。
今はコロナ禍なので、色々と観光地も制限があるのは仕方が無いですね。
とは言え、ちょっと寂しいですけど。
川原毛地獄は、ずっと行きたかった場所ですが、ようやく訪れることが出来ました。
遊歩道が立入禁止だったのは残念でしたが、恐山とはまた違う雰囲気で良かったです。
そして、大湯滝も最高でした。
いつもなら混んでいる場所なのですが、訪れた時は貸切でした。
開放感抜群で、素晴らしい野天風呂でしたよ。
確かに大自然すぎますが、のんびりできました。
小安峡の紅葉は有名なので、人の少ない今の内に行っておこうと思っています。
今年の秋辺りを狙っています。
旅猫
-
- 前日光さん 2021/07/08 23:44:01
- 懐かしい!
- こんばんは、旅猫さん。
小安峡、大噴湯、行かれましたね!(^^)!
行きはよいよいの下り、下りながら、ここをまた上るんだなぁとため息が出ました。
ツアーだったので、マイペースというわけにもいかず、けっこうメンバーに合わせた行動をしていました。
今からずいぶん前なので、他人に合わせることもなんとかできましたが、運動不足の現在は絶対に無理だと思います。
でも大噴湯を直に見たときの興奮は、何ものにも変えられません。
ホント!地球上にはまだまだ見たことのない風景があるものだと、実感しましたよ。
河原湯橋にも行かれたようですね。
下から見上げると、何人かの人がこちらを見下ろしていました。
橋まで行く時間はなかったので、旅猫さんのこの旅行記で、上から覗いた風景が分かりました。
確かに紅葉の季節は、また違った感じになるのでしょうね。
川原毛大湯滝の滝壺に入ったなんて、すごいですね!
湯温も水深もちょうど良い感じなのですね?
川原毛地獄は、恐山や登別の地獄谷にも似ていますね。
荒涼とした感じがハンパないです。
次は須川温泉ですか?
ここもいいですよね?
前日光
- 旅猫さん からの返信 2021/07/11 10:37:52
- RE: 懐かしい!
- 前日光さん、こんにちは。
書き込みありがとうございます。
ようやく川原毛と小安峡に行くことが出来ました。
どちらも良い所ですね。
小安峡の階段はきついですね。
ツアーだと時間を気にするので、余計つらそうです。
途中で、景色を見るふりをして、2,3回立ち止まりました(笑)
でも、あの大噴湯は、やはり感動しますね!
鬼首も凄かったですが、ここも良かったです。
河原湯橋からの景色も良かったですよ。
紅葉の写真が良く掲載されるので、一度は観てみたいものです。
川原毛大湯滝は、絶妙な湯舟です。
自然に出来たとは思えないほど、完璧な野天風呂ですよ。
川原毛地獄は、そこだけ気が全く生えてなく、白い石で覆われています。
遊歩道が閉鎖されていたのが残念でした。
須川温泉も良い所ですよね。
昨日、続きを投稿しました。
良い湯でした。
旅猫
-
- チーママ散歩さん 2021/07/07 12:41:28
- こんにちは
- 旅猫さん こんにちは
川原毛地獄。
酸化した白い石が、この世のものではない景色。
秘境ですね。
滝壺の温泉なんてすごいですね。
修行というより、打たせ湯♪みたい。
気持ちよさそう♪
小安峡も風情があっていいですね
岩から吹き出すお湯。
ゆっくり散歩しながら楽しめて
私も好きそうな場所だわ。 行きたいな~。
でも観光客を受け入れないなんて あからさまですね。
コロナから身を守るのはわかるのですが。 お食事も入浴も( ;∀;
ちょっと世知辛い世の中ですね。
- 旅猫さん からの返信 2021/07/11 10:29:16
- RE: こんにちは
- チーママ散歩さん、こんにちは。
書き込みありがとうございます。
川毛地獄は、ずっと行きたかった場所です。
荒涼とした景色がとても良かったです。
大湯滝も、ようやく行けました。
まさに野天風呂です。
小安峡も行ってみたかったのですが、やはり良かったです。
谷底から豪快に湯が湧き出ているのは一見の価値がありますよ。
食事処で入れなかったのは残念でしたが、温泉の方は元から地元用の様です。
コロナ禍で、よそ者お断りを経験したのは初めてでした。
まあ、怖いですからね。
都会から持ち込まれたら、それこそ一大事。
仕方が無いですね。
旅猫
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