どこかにマイルで下関へ

2019/08/27 - 2019/08/29

マイレージ6000マイルで国内のどこかに往復できるJALの「どこかにマイル」。
前回は熊本に飛んで天草を訪れたが、今回は提示されたディスティネーションから北九州を選択し、下関に足を伸ばした。

下関では、以前から気になっていた白石正一郎の跡を辿ってみた。
廻船業として下関の豪商だった正一郎は、西郷隆盛、坂本龍馬、桂小五郎、高杉晋作、三条実美などの知遇を得て、千石船の交易で蓄えた富を勤皇の志士に注ぎ込み、特に奇兵隊の創設で大きな役割を果たした。
やがて財政負担に耐え切れず破産に追い込まれた。
その後正一郎は明治政府への出仕を勧める政府高官の誘いを固辞し赤間神宮の宮司として後半生を送る。

エリア 山口

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0
• ホテル: 4.5
• グルメ: 5.0

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: 高速・路線バス JALグループ
• 旅行の手配内容: 個別手配

11：57北九州空港到着。

北九州空港 空港

釜山とソウルに国際便が飛んでいるんだ。
たしかに戦前から門司や下関は韓半島への窓口だった。

北九州空港 空港

リムジンバスで小倉に出て、ランチは焼きそばの想夫恋。
日田焼きそばを提供するこの店は麺を炒めたり蒸したりせず、
ひたすら茹でた麺を焼くことにこだわり、カリカリした焦げ目と細めのもやしが美味しい焼きそばを食べさせてくれる。
一番人気の生卵付き焼きそばは900円。

想夫恋 小倉エキナカ店 グルメ・レストラン

小倉から下関。
荷物をホテルに預けたのち春帆楼を目指す。

春帆楼本店 宿・ホテル

この道は日清戦争の講和条約締結交渉において、清国全権の李鴻章が宿舎の引接寺から会場である春帆楼に通った道で、李鴻章道と呼ばれる。

春帆楼本店 宿・ホテル

下関を代表する料亭春帆楼。
わが国で初めてふぐをメニューに加えた店。
韓国出兵の際の秀吉による河豚飲食禁止令は、江戸期を通じ守られてきたが、伊藤博文が春帆楼にふぐ料理の提供を許した。

春帆楼本店 宿・ホテル

春帆楼の命名も伊藤博文。
壇ノ浦から関門海峡のあたりに浮かぶ船の帆をイメージした名前とされる。
春帆楼の建つ丘は赤間神宮（神仏分離令以前は阿弥陀寺）の境内だった。
奇兵隊の本部は、白石正一郎宅で発足したのち、ここにあった阿弥陀寺に置かれていた。
奇兵隊の支隊のひとつ力士隊を率いて名を挙げた伊藤俊輔にとっては青春の思い出の地だっただろう。

春帆楼本店 宿・ホテル

春帆楼本館の前の日清講和記念館には、会談会場の様子が復元され、下関条約関連の資料が展示されている。

日清講和記念館 美術館・博物館

下関講和条約の日本側全権ふたり。
奥に伊藤博文、手前は陸奥宗光。

日清講和記念館 美術館・博物館

赤間神宮は壇ノ浦に沈んだ幼帝安徳天皇を祀る神社。
明治年間の廃仏毀釈運動で阿弥陀寺から神社に代わった。

赤間神宮 寺・神社・教会

水天門は竜宮の楼門を模している。
安徳天皇とその母建礼門院、祖母で平清盛の妻の二位の尼は水天宮の祭神でもある。
その由来から水天門と名付けられた。

赤間神宮 寺・神社・教会

明治8年、破産に追い込まれた白石正一郎は、赤間神宮の二代目宮司を務め、明治13年69歳で死去する。
ひたすら維新の志士を財政面でサポートする一生だった。
墓所は赤間神宮の背後の山中にある。

赤間神宮 寺・神社・教会

境内の芳一堂
耳なし芳一の木像を安置する。

耳なし芳一まつり 祭り・イベント

小泉八雲の「怪談」で知られる耳なし芳一は、盲目の琵琶法師。
平家の怨霊の求めに応じて平家物語を弾き語る。
怨霊の祟りに会わぬため、阿弥陀寺の住職は芳一の体中に般若心経を写経し護った。
しかし、ただ一か所耳に写経することを忘れたため、怨霊に耳をもぎ取られたという。

耳なし芳一まつり 祭り・イベント

平家の公達の墓だろうか。

安徳天皇阿弥陀寺御陵 名所・史跡

長州藩36万石の藩庁は萩か山口。
下関の長府には支藩である長府毛利藩があった。
長府の街にやってくると長府藩侍屋敷長屋が残っており、
その一角に坂本龍馬の盟友三吉慎蔵の屋敷跡があった。
龍馬の死後、妻のおりょうは一時三吉のもとに身を寄せている。

三吉慎蔵生家跡 名所・史跡

長府毛利家の菩提寺の功山寺。
文久3年8月18日の政変で薩摩と会津の結託により三条実美を筆頭とする七卿と長州藩は京都から排除される。
その七卿のうちの5人は功山寺に滞在している。

功山寺山門 寺・神社・教会

京都から排除された長州藩は翌年、武装兵力を京に入れ京都守護職松平容保の会津藩を中心とした幕府軍と闘い一敗地にまみえる。いわゆる禁門の変である。
これをきっかけに幕府による長州征伐が始まる。
長州藩は、京都出兵の責任者の三家老に切腹を命じ、恭順の意を示そうとする。
これに反発したのが高杉晋作である。

功山寺 寺・神社・教会

既に奇兵隊を創設していたが、奔放な行動から総監を罷免されていた高杉晋作は、
伊藤俊輔（のちの博文）の力士隊などの諸隊を率いて、功山寺で挙兵。
僅か84人で起こしたこのクーデターはたちまちのうちに長州藩の保守派政権を打ち破り藩政の実権を握った。維新回天の大きな節目である。
この挙兵時の高杉の姿を映した騎馬像が功山寺境内に据えられている。

功山寺 寺・神社・教会

挙兵にあたり死を覚悟した高杉は遺書をしたため、白石正一郎の20歳離れた実弟である大庭伝七に託している。
伝七は長府の大年寄り大庭家の養子に入り、後日長府藩士に取り立てられている。
伝七の三男に、明治大正期の高名なジャーナリストでロシア語をよくし、朝日や読売で健筆をふるい、スパイの嫌疑を受けてロシアで消息を絶った大庭柯公がいる。白石正一郎の甥にあたるわけだ。

長府毛利邸 名所・史跡

長府藩主の邸宅。
大正天皇を皮切りに、皇室や皇族の滞在所として利用されている。

長府毛利邸 名所・史跡

長府から下関駅にバスで戻り、食べログであたりをつけた居酒屋「三枡」へ。

三枡 グルメ・レストラン

さすがに海の幸が豊富。
大洋漁業の本拠地だけにしっかりクジラのメニューもある。

三枡 グルメ・レストラン

サザエを焼いてもらい、

三枡 グルメ・レストラン

ふぐは唐揚げで。

三枡 グルメ・レストラン

昔ながらの風情を残した居心地のいい居酒屋だ。

三枡 グルメ・レストラン

下関駅前の丘に鎮座するのは大歳神社。
壇ノ浦の戦いに先立ち、源義経が必勝の祈りをささげたことがこの神社の創建の由来と伝えられている。

大歳神社(山口県下関市) 寺・神社・教会

階段下の大鳥居は、文久2年に攘夷を祈願して奉納されたもの。

大歳神社(山口県下関市) 寺・神社・教会

寄進者は白石正一郎。
当時の白石家の財力を示している。

大歳神社(山口県下関市) 寺・神社・教会

大歳神社からJRの線路を挟んですぐのところに白石正一郎宅跡がある。
現在は中国電力の敷地になっているようだ。

白石正一郎旧邸跡 名所・史跡

奇兵隊はこの地で結成され、白石正一郎は52歳にして奇兵隊の隊士となり会計を受け持つ。

白石正一郎旧邸跡 名所・史跡

長州藩の支藩長府藩のさらに支藩である清末藩出入りの御用商人に過ぎなかった正一郎は、高杉の推輓により、本体である長州藩の士分に取り立てられた。

白石正一郎旧邸跡 名所・史跡

今夜の泊りはドーミーイン。

天然温泉関門の湯　ドーミーインPREMIUM下関 宿・ホテル

このホテルチェーンは温泉があるというのが売り物の一つ。

天然温泉関門の湯　ドーミーインPREMIUM下関 宿・ホテル

もう一つのセールスポイントが、夜食として夜泣きそばが出ること。

天然温泉関門の湯　ドーミーインPREMIUM下関 宿・ホテル

無料のサービスだが、素直な味わいのラーメンだ。

天然温泉関門の湯　ドーミーインPREMIUM下関 宿・ホテル

翌朝は雨模様。
平家滅亡の地、壇ノ浦。
義経と平知盛の像がある。
これは教経の追撃を八艘飛びで躱す義経。

壇之浦古戦場跡(みもすそ川公園) 自然・景勝地

8歳の安徳天皇はじめ平家勢の入水を見届けた清盛の４男平知盛は、重りとして碇を担ぎ、壇ノ浦の海中に身を躍らせる。

壇之浦古戦場跡(みもすそ川公園) 自然・景勝地

孝明天皇にせっつかれ、幕府はいやいや名目だけの攘夷令を発する。
幕府を追い詰めようとする長州藩は、攘夷令を受け文久3年5月、関門海峡を通ろうとする外国船に砲撃を加える。
米仏はこれの報復として壇ノ浦砲台や前田砲台を攻撃し、制圧する。

みもすそ川公園 公園・植物園

この敗戦を受けて高杉晋作は奇兵隊を創設、軍備を整えたが外国船の攻撃に対抗することはできなかった。

みもすそ川公園 公園・植物園

翌年、英仏蘭米の４国は17隻から成る連合艦隊で下関沿岸を一斉に攻撃。
奇兵隊が守る壇ノ浦砲台も応戦したが火力の差に圧倒され、砲台はことごとく破壊された。
高杉晋作は名を偽り、家老を名乗って伊藤博文と井上馨を通訳に講和会談に臨み、彦島租借の申し入れを峻拒しつつ、講和をまとめた。

みもすそ川公園 公園・植物園

雨が激しくなってきた。
関門トンネルに潜れば雨を避けられるだろう。

関門トンネル 名所・史跡

トンネルの入り口にはボランティアの紙芝居おばさん。
出し物は耳なし芳一。
ごめんなさい、聞いている時間がありません。

関門プラザ 美術館・博物館

エレベータで地下に潜る。
人道は自動車道の下を通っている。

関門トンネル 名所・史跡

このトンネルも国道2号線。

関門トンネル 名所・史跡

距離はわずか780メートル。
深さは海面下44メートル。

関門トンネル 名所・史跡

九州側に到着。

関門トンネル人道 (福岡門司側) 名所・史跡

地上に出た。
いつの間にか雨は気にならなくなった。

関門トンネル人道 (福岡門司側) 名所・史跡

和布刈神社は九州最北の神社。
神功皇后の創建と伝えられている。

和布刈神社 寺・神社・教会

関門海峡に面しており、潮の満ち干を司る神が祀られている。

和布刈神社 寺・神社・教会

旧暦の大みそかから元旦にかけ3人の神職が干潮時にワカメを刈る和布刈の神事で知られる。松本清張の「時間の習俗」は和布刈の神事をアリバイ工作に利用している。

和布刈神社 寺・神社・教会

門司の関は平安の昔には京都と太宰府を結ぶ街道の要衝だった。

門司関址 名所・史跡

今はその近くをノスタルジックな列車が通っている。

ノーフォーク広場駅 駅

門司の街に入ってきた、趣のあるこの建物は大連あかしあという中華料理店。
その後ろに見える高層ビルらしき影は門司港レトロ展望台。

中国料理大連あかしあ グルメ・レストラン

これがその門司港レトロ展望台。

門司港レトロ展望室 名所・史跡

その門司港レトロ展望台から見下ろしたところ。

門司港レトロ展望室 名所・史跡

港には大型船が通るときに開く跳ね橋があった。

ブルーウィングもじ 名所・史跡

この界隈には明治期の重厚な建物が残っている。

北九州市旧大阪商船 美術館・博物館

さて、連絡船でひとまず下関に戻ろう。

関門納涼船 乗り物

唐戸市場近くの桟橋に戻ると巌流島行きの連絡船があった。

巖流島 自然・景勝地

雨も止んだし時間の余裕もある。
ちょっと足を伸ばしてみようか。

巖流島渡船 乗り物

宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘が行われた巌流島は無人島。

巖流島 自然・景勝地

二刀流で知られる武蔵と、物干し竿と呼ばれる長い刀を扱う小次郎の決闘は吉川英治の小説と、NHKラジオでの徳川夢声の朗読で昭和20年代には誰もが知っている物語だった。
決闘に敗れた佐々木巌流の碑があった。

巖流島 自然・景勝地

高い位置が武蔵。
巌流島に乗ってきた舟の櫂を削った木刀が武蔵の武器だ。

巖流島 自然・景勝地

大勢の敵と戦うとき武蔵は両手に刀を持つが、一対一の戦いで使はない。

巖流島 自然・景勝地

三日目は帰京日。
朝ゆっくりと起きだし、下関駅に隣接した大丸に店を開いている春帆楼。

春帆楼茶寮 下関大丸店 グルメ・レストラン

遅めの朝食はふぐ刺しと茶碗蒸しだ。
ひれ酒もつけてしまおう。

春帆楼茶寮 下関大丸店 グルメ・レストラン

小倉にやってきた。

小倉城 名所・史跡

ふぐ刺しだけでは少ないかなと思い、
うどんを食べに。

資さんうどん 魚町店 グルメ・レストラン

北九州を代表するうどんのチェーン店、資さんうどん。

資さんうどん 魚町店 グルメ・レストラン

カウンターに座ると圧倒的存在感のとろろ昆布。
このチェーンはほかに天かすやつぼ漬けも入れ放題だ。

資さんうどん 魚町店 グルメ・レストラン

ごぼ天うどん。
ごぼうが拍子木なのがこの店の特徴。

資さんうどん 魚町店 グルメ・レストラン

旦過市場は、なんだか昭和の臭いがする。

旦過市場 市場・商店街

旦過駅からモノレールで小倉駅。

旦過市場 市場・商店街

そこからバスで北九州空港に出て羽田にむかった。

北九州空港 空港

羽田ではアカシアのロールキャベツとハイボール。
これにて下関の旅終了。

アカシア 羽田空港第２ターミナル店 グルメ・レストラン