2009/12/27 - 2009/12/29
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世界攻略者さん
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アンナプルナ・サーキットの西側で最も存在感のある山 - ダウラギリ(8167m)。最寄の村からアイスフォールへの道は、最もタフな日帰りトレックとされています。これを各駅トレックの最終章と位置づけ、ラスボス・ダウラギリに挑みます。何度も迷いながら歩き、長くつらい登りを経て、ついに展望ポイントのある高台へ。そして、そこで私を待ち受けていたのは、「絶景」の裏に隠れた「絶望」という新たな敵だった。
**情報は2009年12月のもの。1ルピー=1.2円で計算。
最速のアンナプルナ シリーズ:
①アンナプルナ・ベースキャンプの一日 (A.B.C.)
http://4travel.jp/travelogue/10444950
②みんなのプーンヒル (ゴレパニ)
http://4travel.jp/travelogue/10445604
③新時代のジョムソン街道 その1 (バス、ジープ)
http://4travel.jp/travelogue/10445981
④新時代のジョムソン街道 その2 (ムクティナート)
http://4travel.jp/travelogue/10448794
⑤あのジグザグの先にあるもの (カグベニ)
http://4travel.jp/travelogue/10449248
⑥ムスタン 各駅トレック (トゥクチェ、マルファ他)
http://4travel.jp/travelogue/10451421
⑦ダウラギリ・アイスフォール - はじめての遭難 <==
http://4travel.jp/travelogue/10570147
⑧自転車 vs トレッカーの巻 (カロパニ、ガサ)
http://4travel.jp/travelogue/10570153
変更:
2014/10/04 写真追加・拡大
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[目次]
ダウラギリの見え方
ラルジュン村
麓のビューポイント (コパン村、ナウリコット村、サウル村)
ダウラギリ・アイスフォール
- ヤク・カルカへの道
- ビューポイントへの道
- はじめての遭難
- 真のビューポイントを探して
まとめ
写真: ムクティナートから見たダウラギリ連峰。左: ダウラギリ、中央: トゥクチェ。 -
[ダウラギリの見え方]
ダウラギリ(8167m)は世界で7番目に高い山。北はムクティナートから南はゴレパニまで、いろんな場所から見ることができ、それぞれ違った表情を見せてくれます。例えば、北東(ムクティナート)から見ると、正三角形。南東(プーンヒル、写真)から見ると、正六角形風に見えます。
写真: プーンヒルから見たダウラギリ連峰。 -
トレッキング・ルート上では、すぐ東側にあるコバンとラルジュンの集落が、最も間近にダウラギリを見られるポイントになります。ここからの眺めは、中央に流れるアイスフォールが一番の特徴。北からやってきた人は、コバン村に入った瞬間、突然現れる巨大な雪山とアイスフォールに驚くことでしょう。
写真: コバン村(厳密にはカンティの集落)とダウラギリ。 -
[ラルジュン村]
残念ながら、多くのトレッカーはこれらの村をそのまま通過して、宿の多いカロパニ辺りまで行ってしまいます。実にもったいない話です。有名ではありませんが、ここには大きな見所がひとつあります。それは、ダウラギリ・アイスフォールのビューポイント(3900m)。そこからの景色はアンナプルナ・サーキットで1,2を争う絶景と言われています。そこに狙いを定めた私は、ラルジュン村に滞在することにしました。 -
この村には宿が5軒ほどあります。私が泊まったのは、ラルジュン・ロッジの二階の部屋。この部屋が唯一、窓からダウラギリが見えるからです。だだ、手前にある丘が邪魔でアイスフォールが一部見えないんですよね(写真)。
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[麓のビューポイント]
==コバン村==
それではこの村にいる価値が半減するので、ダウラギリがよく見える場所を探しに出かけることにします。まずは、少し道を戻って隣のコバン村へ。ここは比較的開けているので、農地を散策すれば、丘に視界を邪魔されることなく、ダウラギリが望めます。 -
==ナウリコット村==
続いて、「邪魔」な丘の上にも登ってみます。ここにはナウリコットと呼ばれる素朴な村があり、ラルジュンから20分ほど坂道を登れば行けます。写真は、村の南側から見たダウラギリ。とても爽やかな眺めですが、手前に障害物やオブジェクトがないと、逆にシンプルな眺めになっちゃうんですよね。
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集落の少し手前、同じ丘の上には、ロッジ・タサン・ビレッジというハイエンドな山小屋があります。わざわざこの場所を選ぶとは、いいセンスしてますね。
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写真は、ホテル中庭からの眺め。木が少し邪魔ですが、全体的に開けていていい感じです。聞くところによると、このロッジのオーナーの奥さんは日本人。私が訪問した時も日本人グループが宿泊していました。立地は最高なのですが、宿泊料金もハイクラス。一人部屋でも一泊90ドル(当時)と、とても手が出る料金ではありません。
写真: ロッジ中庭。ヘリポートもあり。 -
ついでに建物の中に入ってみると、受付ロビーは暖炉とソファーまであり、まるで高級スキーリゾートのよう。何から何まで田舎に不釣合いな高級ロッジです。景色だけ堪能して、おいとますることにします。
タサン・ビレッジ - http://www.lodgethasangvillage.com/ -
==サウル村==
ナウリコットからの景色はまずまずですが、少し近すぎる気がします。距離が近いと逆に、山のスケールが実感しにくいのです。私がイメージしているのは新幹線から見た富士山のような壮大な風景。この要求を満たす場所はどこだろう。少し考えた結果、対岸にあるサウル村(黄色い点)に行ってみることにしました。 -
幅広の河原を越え、村の上にあるゴンパまで登ると、そこからの風景はまさに私のイメージした通りでした。鳥が両翼を広げたような、ダウラギリ-トゥクチェの見事なスノーラインです。
ここは小さな集落ながら、農地があり、学校があり、ゴンパがある。村の人が毎日この景色を見て生活していると思うと、羨ましい限りです。 -
[ダウラギリ・アイスフォール]
さて、麓からのビューポイントを攻略したところで、本題の「ダウラギリ・アイスフォール」です。アイスフォールとは、氷河の滝ようなもので、土砂だまりも少なく、たいてい白く輝いています。ダウラギリの場合も、山頂の下に大きなアイスフォールがあり、下の氷河に連なっています。このアイスフォールをすぐ近くで見れる場所、それが今回の目的地「ダウラギリ・アイスフォールのビューポイント」 です。
このビューポイントを見に行くトレッカーは、実はそれほど多くありません。理由はいろいろあるでしょうが、恐らく、一日で往復するのがしんどい、というのが一番の理由だと思います。そのため、ガイドブックの情報は少なく、目安時間も情報源によりバラバラ。平均すると、往路5時間、復路3時間、休憩1時間で、計9時間といったところでしょうか。 高低差は約1200m。 -
[ヤク・カルカへの道]
まずは中間地点の「ヤクの放牧場」までの道を紹介しましょう。
1. ラルジュンからジープ道を南下。カリ・ガンダキにガッテ・コーラが流れ込む場所まで歩きます。30分。
2. 河原を対岸に渡ります。角材の橋を使った近道ルートが2,3あり、横断に約15分。
3. 森に入っていく道(標識あり、写真#1)があるので進みます。
4. 25分ほど歩いて平地1を通過。そのまま森を下ると5分ほどで小川に。
5. 小川にある標識に従い、森の奥へ進みます。
6. 小川から30分ほどで、石垣に囲まれた平地2(写真#2)に出ます。
7. 平地に入らず、左上に繋がる道を登ります。
8. 30分ほど歩くと平らな場所に出ます(平地3, 写真#3)
9. さらに登り道は続き、30分後、シェパード小屋1に出ます(写真#4)。ここがヤクの放牧場(Yak Pasture)と呼ばれる場所です。
宿からヤク放牧場まで2時間45分。
写真: ピンクの点 - 下から、登山口、平地2、平地3、小屋1(ヤク放牧場)。本文中の#番号と対応しています。 -
朝7時前に宿を出発。ジープ道を歩き、河原を渡り、登山道から森に入ります。写真は、森の入口とその標識。前日下見に行ったら、枯れ草を背負った住民が山から降りてきました。男性がバングラを着ているところを見ると、グルン族の人ですね。
この先、山の中に集落はありませんが、ヤクの放牧地などがあるため、道ははっきりしています。ところで、この草の束、半端無く重いんですよね。私は背負って立ち上がることができませんでした。 -
山道を歩き、平地1を通過。少し下り小川を越え、平地2の地点まで到着しました。ここまで1時間強。でも順調なのはここまでで、この後、想定外の困難が続きます。実は、先のルート情報は、あくまで私が後知恵で書いたもので、ガイドブックの説明はかなり大雑把なのです。
まず平地2(水色下)の後、そのまままっすぐ進んでしまい、平地2A(赤い点)へ。ここから2つ道があり、1つは竹藪の道。竹林を強引に進むうちに、木のトゲでダウンジャケットが穴だらけになってしまいました。もうひとつは絶望的に急な斜面。地面の雑草をつかみながら登るのですが、10メートルでギブアップ。なぜ間違いに気づかなかったかと言うと、ヤクの鈴が鳴る音が聞こえていたから。次の目的地「ヤクの放牧場」はすぐ近くと思い込んでいたのです。
この時点で、すでに2時間のロス。この調子では今日中にビューポイント往復するのは無理でしょう。今日のところは撤退して、村の人に道を確認することにします。
写真: 青色: 正しいルート。ピンク: 間違って歩いたルート。水色上: ヤク放牧場、水色下: 平地2、赤:平地2A、 -
諦めてラルジュンに戻ろうとすると、偶然、ヤクの放牧場に向かう男性と遭遇しました。これは超ラッキーです。何しろ、登山口に入って以来、今日は誰とも会っていません。了解を得て、彼の後をついていくことにします。
実は平地2の手前から、左上に登り始める道があり、これがヤクの放牧場に続いていたのです。この道に気づかなかったのは私のミスですが、こういう場所にこそ、ACAPに案内看板を立ててほしいものです。私の前を歩く彼は、放牧場にある小屋の管理人。今日は水と食料を荷揚げしに来たようです。男性は、軽く2,30キロはある荷物を持ってスタスタ歩いていきます。私も遅れないよう必死でついていき、40分ほどで「ヤクの放牧場」に到着しました。
写真: 平地3を歩く男性。ここから、さらに手前の緑の丘を登る必要があります。 -
着いてみると、そこには小さな平地と一軒小屋があるだけ。「放牧場」のイメージからはほど遠いちんけな場所です。そして、肝心のヤクはおらず、彼らの鳴き声は、全く別の丘の上から聞こえてくるのでした。全く自由な奴らだ!
小屋の裏の丘は急な斜面になっており、ジグザグの道が続いています。さて、ここからビューポイントまでどれくらいかかるのか。彼いわく、2時間で行けるらしい。時間はすでに12時半を回っています。下りに3時間かかるとして、3時に下り始めればなんとかなるでしょう。折角連れて来てもらった手前、ここで引き返すわけにもいきません。強制帰還タイムを3時と決めて、行ける所まで行くことにしました。 -
ここまでの道を上から見下ろすとこんな感じです。黄色い点は下からシェパード小屋1、平地3、小川、平地1、登山口。写真中央には、ブトゥルチョ湖(左)とセコン湖(右)も見えています。
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[ビューポイントへの道]
続いて、「ヤクの放牧場」からビューポイントまでの道です。
1. シェパード小屋(写真#1)の裏の斜面を登り、45分ほどでチョルテン(写真#2)へ。
2. その後、左にフラットな道が続き、10分ほどで屋根のない小屋2(写真#3)に到着。
3. そこから上を見ると、斜面の上に標識のようなものが見えるので、その方向に歩きます。
4. 途中、標識が出てきて道もはっきりし出します。小屋2から40分で斜面の上(写真#4)へ。
5. ここから正面奥にアイスフォール、すぐ左手に小高い丘が見えます。基本的にこの丘の上を歩けば確実ですが、丘の右下、左下を歩いてもかまいません。30分ほど歩くと丘の稜線の一番奥に到着します。
6. 目的のビューポイントはこの付近。でも正確は場所はわかりません。
シェパード小屋からここまで、2時間強。
写真: ピンクの点 - 青い線に沿って下からシェパード小屋1(ヤク放牧場)、チョルテン、小屋2、斜面の上。本文中の#番号と対応しています。 -
男性に礼を言い、裏の斜面を登り始めます。丘のジグザグ道を30分ほど登ると、チョルテン(写真)が出てきました。この辺りからの景色は格別で、対岸にはニルギリの3つのピークとその右奥のアンナプルナI。さらには、下流のコケタンティやカロパニを含めた麓の村々も見えます。
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これが、左下にあるラルジュン村の眺め。黄色い点は、下からナウリコット村のゴンパ、コバン村のゴンパ、サウル村のゴンパ。ゴンパのように見る丘の端の建物(ピンク)は、前の日に訪問したロッジ・タサン・ビレッジ。ちなみに、私が泊まっているラルジュンのロッジは丘に隠れて見えません。
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チョルテンの先は、フラットな道が隣の丘まで続きます。10分ほどで、屋根のない小屋(写真)に到着。ここから方向転換し、丘の斜面を登っていきます。はっきりした道はありませんが、適当に上がっていくと、ACAPの案内看板が出てきます。
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看板によると、「アイスフォールまで、あと1時間」。例によって、これらの看板は、本当に迷いやすいところには立ってないから困ります。私は小屋の後、そのまままっすぐ歩いてしまい、15分ほどロスしました。 看板の後は道が比較的はっきりしており、丘の上に見えている別の看板を目指して歩き続けます。
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丘の上の看板に到着。ここからは傾斜がなだらかになり、アイスフォールが視界に入ってきます。時刻は午後2時半過ぎ、ダウラギリの山頂付近やアイスフォールはすでに影になってますね。
さて、目的のビューポイントはどこでしょう。恐らく左の小高い丘のどこかだと思いますが、雪を被っていてよくわかりません。とりあえず、雪のない丘の右側を歩いて、上に進みます。25分ほどで丘の端に到着。そこから雪の上を30mほど歩いて丘の稜線に合流しました。
写真: 標識を過ぎた辺りからの眺め。 -
丘の上に立ち初めてわかりましたが、雪が積もっているのは丘の右側斜面だけ。南側に当たる左側斜面は普通に地面が露出しています。この丘の上には、稜線沿いにシェパード小屋やチョルテンなどが点在。季節によっては、賑やかな場所であることがわかります。
ガイドブックによると、ビューポイントがあるのは、最後のチョルテンのさらに先。とりあえず歩けるところまで行ってみたのですが、どうもそれらしくありません。
写真: ピンクの点 - 下から最後のチョルテン、最終到達点。 -
というのも、これらの場所からは、アイスフォールがよく見えないのです(写真)。手前の茶色の斜面があからさまに視界の邪魔をしています。かといって、この先に続く道も見当たらず。さて、どうしたものか。
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[はじめての遭難]
気分を変えて、ニルギリ・アンナプルナ側を見てみます。いつの間にか雲が上がってきており、何とも雄大な景色が広がっていました(写真)。この雲があるため、下の村からダウラギリは見えません。しかし、私は雲の上、逆に絶景を楽しんでいます。 -
バシバシ写真を撮っているうちに、強制戻り時刻の3時になりました。それを待っていたかのように霧が辺り全体を覆い始めます。景色が見えないのなら、ここにいる意味がありません。時間も時間だし、急いで下山することにします。ビューポイントの場所については自信がありませんが、ここまで来れれば十分でしょう。
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下山し始めると、すぐに霧に囲まれ全く見通しがきかなくなりました。視界がきくのは30mくらいまで。山の天気がこうも変わりやすいとは...ちょっと不用心でした。確か雪を避けて上がってきたはずなので、雪と地面の境界(写真)を歩けば帰れるはず。しかし、いくら歩いても標識のある場所に到着しません。何か変なので、一旦ビューポイントまで戻ろうとしますが、今度は登れど登れどビューポイントに辿りつけません。
どこも同じ景色のように見えてきました。トータル40分ほど歩きまわりましたが、最後は、自分がどの辺にいるのかもわからなくなりました。霧が晴れる様子は全くなし。すでに4時になろうとしています。遭難ってのは、こんな形で天から突然降ってくるもんなんですかね。 -
パニックにはなっていませんが、かなり緊急を要する状況です。プライドを捨てて、大声で助けを呼んでみます。「ヘーールプ、ヘーールプ」。十数回叫びましたが、あきらめてすぐやめました。確かに、山は音が良く通るので、麓の民家やシェパード小屋の彼に声が届く可能性はあります。でも、この状況で、誰がどう助けてくれるのか...。叫びは霧の中にむなしく響くだけでした。
これ以上動き回るのは得策ではありません。どうやったら、ここで一晩越せるか考えなくては..。ビューポイントの周りにいくつかシェパード小屋があるのを思い出しました。しかし、どれも屋根がなくほとんど意味がありません(写真)。それ以前に、そこに戻れなくて今困っているのです。 -
洞窟でもあったらなーと思いながら回りを見渡すと、大きな石の下に人ひとり入れそうな穴があるのを発見しました(写真)。この辺りは洞穴があるような地形ではありません。今晩はもうこの穴に賭けるしかなさそうです。ひとつ心配なのは、夜どれくらい寒いのか。氷河の近くとはいえ、ここはまだ3900m程度。一週間前にいたラニパウワ(3700m)では、室温が2度前後だったことを考えると、断熱さえしっかりできればなんとかなるかもしれません。
日が暮れるまでの一時間半、万全の準備をして夜に備えます。まず、穴の入り口が狭いので、地面を削って穴を大きくします。次に入り口を塞ぐための石や低木を集めます。さらに、ヤクの糞をかき集め、穴の中に放り込みます。これは少しでも底冷えを避けるためです。最後に持参した服を全部着て、何度か出入りのテストを繰り返します。これが精一杯、あとは根性で乗り切るしかありません。 -
時刻はもう5時。そろそろ穴に入るか、と思い始めた頃、急に霧が晴れて周囲ががクリアーになりました。全く人をバカにした話です。ダウラギリもニルギリも隣の丘も姿を現し、ようやく自分の位置を確認することができました。どうも私は、来るとき「雪の少ない」場所を歩いたのですが、「雪のない」場所を歩いたと勘違いして道に迷ったようです。まあ、そんな反省会は後回し。この千載一遇のチャンスを何とか活用しなければなりません。
このまま穴で過ごすのがいいのか、屋根のない小屋をチェックしに行くべきか、それとも日没までの30分で急いで下るべきか..。瞬時にシュミレーションしてみた結果、急いで下るのが一番生存確率が高いという結論に至りました。
写真: 右下の岩の下が、野宿を予定していた穴。中央左に見えるのが雪を被った丘。 -
そうと決めたら一秒も無駄にできません。アドレナリン全開、全速力で下り始めます。洞穴からわずか35分でヤク放牧場へ(5:40 PM)。ここまでは、道が狭いので、どうしても日没前に到着する必要がありました。ぎりぎりセーフ。試しにシェパード小屋をチェックしてみましたが、予想通り鍵がかかっており誰もいません。
すぐに気持ちを切り替え、先を急ぎます。20分後に平地2を通過。この時点で、すでに真っ暗になっておりライトをつけて森の中を進みます。道を間違えないように慎重に歩き、30分後森を抜け、ついに登山口にたどり着きました。ここから先はジープ道、もう迷うことはありません。遭難からの脱出・成功です。
写真: 5:20PMのニルギリ。不幸中の幸いで、ニルギリとアンナプルナのサンセット・ビューを見ることができました。 -
この後、再びペースを上げてロッジまで歩きます。なぜなら、あまり帰りが遅いと宿の人が心配して地元警察に通報する可能性があるからです。アイスフォールに行くのは伝えてあるので、もしかして、すでに通報済みかもしれません。今日のトラブルは、自分の慢心が原因。どんな状況だろうと受け入れるつもりです。結局、洞穴からラルジュンの宿までわずか2時間で戻ることができました。
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夜7時過ぎに宿に到着。今日は団体客がいるようで、ロッジの人は夕食の準備に大忙し。どうやら、私のことなど、一ミリも気にも留めてなかったようです。部屋に入ると、早速宿の女性がやってきました。「今日、遅かったね。夕飯はどうする?」。私が「今日、大変だったよ...」と話を始めても、「ふーん。で、夕食は..」。彼女は、私が夕食に何を注文するか以外、全く興味がないようです。ここ1時間、私の頭を占有していた心配は、全くの杞憂なのした。よく考えれば、自分が意識しているほど、他人は自分に関心があるわけではありません。いずれにせよ通報されなくてよかった。
写真: 宿のダイニング。 -
[真のビューポイントを探して]
翌日、再度、ダウラギリ・アイスフォールに挑戦することにしました。全く、懲りていない私です。今回のリベンジの目的は2つ。ひとつは早めに到着し、白く輝くアイスフォールを見ること。ダウラギリは、正午を過ぎると山頂付近が影になり、見栄えしなくなるのです。 昨日は到着時間が遅すぎました。もうひとつは、正確なビューポイントを発見すること。この2つです。 -
7:30AMと遅めに宿を出発。すでに三角形の頂上部分には日が当たっています(写真1つ前)。宿から登り口まで30分、平地2まで40分、ヤク放牧場まで40分、最後の案内標識まで1時間、休憩含めて3時間10分でアイスフォールが見える場所に到着しました。昨日の疲れを考えるとまずまずのペースです。
写真: 最後の看板 -
昨日とは逆に、今日は、先に雪のない側に移動し、丘の左側を歩くことにします。この辺りは、丘と氷河の間の部分で、アイスフォールがちょうど正面に見えます。時間はまだ11時を回ったばかり。アイスフォールを含め、周りの雪山も太陽の光を浴び美しく輝いています。アイスフォールの方に向かって10分ほど歩くと、小屋がありました。
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他の小屋と違い、この小屋には半分屋根があり、泊まるのに十分な構造をしています。実際、シェパード小屋として誰かが生活していたようで、小屋の裏にはビール瓶が山積みにされていました。今度遭難したらここに泊まることにしましょう。
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さて、正式なビューポイントを探さなくては。今日は昨日と違い、時間的に余裕があります。まず、丘の上に登り、周りを見渡します。ガイドブックによると、チョルテン(写真)の先にビューポイントがあると書かれています。そうなると私が昨日居た場所付近(ビューポイント1)となってしまうので、やはり何か変です。ガイドブックが間違っている気がしてきました。
そこから丘の稜線に沿って下りていくと、屋根無しのシェパード小屋が4つあります。なんとなくこの道を歩いているうちに、意外なものを発見しました。
写真: 4つの小屋とチョルテン。チョルテンの上にビューポイント1、小屋の先にビューポイント2があります。 -
道のすぐ下に、「ダウラギリ アイスフォール ビューポイント:3900m」と書かれた大きな看板が倒れて放置されてるのです(写真)。ここは屋根なし小屋より少し下、ビューポイント1と下の標識の中間くらいの場所になります。ひょっとして、ここが真のビューポイントかも? ちょっと微妙ですが、確かにこの場所からの眺めは悪くありません。上(西)にはアイスフォール、右(北西)にはトゥクチェまで伸びる尾根、左(南)には氷河と白く輝く尾根、ニルギリ側(東)からは、ガンダキ川沿いの村々が見えます。いわゆる360度ビューで、ここまでバランスのとれた場所は他に見当たりません。ここを真のビューポイント(ビューポイント2)と確信して、山を下りることにしました。ミッション完了です。
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ところで、あれは本当に正式なビューポイントだったのか...。後日気になってネットで調べて見ました。それでわかったのは、どうも、真のビューポイントは私が発見した2つの場所ではなく、そこからさらに奥、手前の茶色い斜面を越えた先にあるらしいのです。
詳しい情報は見つかりませんでしたが、ビューポイントで撮ったと思われる一枚の写真がFlickrにアップされていました。それを見る限り、撮影者はアイスフォールの底に近い稜線まで登っています(写真)。このビューポイント3が正しいとすればガイドブックの説明は辻褄が合います。
実は私もあの場所が怪しいと睨んでいました。ただ、そこまで歩けそうな道は見当たらなかったため、早々と候補から外していたのです。道が雪で隠れていたのかもしれません。非常にくやしいですが、仕方がありません。このことを差し引いても、全体的には満足できるトレックでした。最後に一言、「ACAPの看板係よ、ちゃんと仕事してくれ!」 -
[まとめ]
思い返せば、いつもダウラギリのことを考えていた気がします。プーンヒルでは、雲で山がよく見えず悔しい思いをした。往路バスで通過した時は天気が悪く、ダウラギリの場所さえわからなかった。ムクティナートからは、遠目ながらも美しい写真がとれた。キンガーでは、無名の丘に登り、自分専用ビューポイントを開拓した。ジョムソン滞在中は、先っちょだけみえる山頂の天気をいつも気にしていた。
最後の最後、ラルジュンにやってきて、ダウラギリと真正面から勝負することができました。結果は1勝1敗1分(たぶん)。勝ち負けよりも、この3日間、快晴が続いたことに幸運を感じます。これで、思い残すことなく、アンナプルナ・トレッキングを終えることができそうです。 ありがとう、ダウラギリ。ありがとう、アンナプルナ。
[リンク集]
==ネパール・トレッキング==
最速のアンナプルナ 全8作 (2009年秋)
http://4travel.jp/travelogue/10444950
エベレスト・トレッキングのすすめ 全10作 (2011年春)
http://4travel.jp/travelogue/10581163
ポカラ・ザ・トレック 全4作 (2013年春)
http://4travel.jp/travelogue/10759203
トレッキング装備購入ガイド 全2作
http://4travel.jp/travelogue/10571988
==国内旅行記一覧==
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album?dmos=dm&sort=when
==海外旅行記一覧==
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album?dmos=os&sort=when
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