2009/12/21 - 2009/12/22
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世界攻略者さん
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カグベニは、ジョムソン街道で最も印象的な村。古い街並みの中、スローに生きる人々。さらにこの村には、知られざる素敵な展望ポイントがあります。ただ、そこへ行くには、先の見えないジグザグ道を進んでいく勇気が必要だった。
**情報は2009年12月のもの。1ルピー=1.2円で計算。
最速のアンナプルナ シリーズ:
①アンナプルナ・ベースキャンプの一日 (A.B.C.)
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album/10444950/
②みんなのプーンヒル (ゴレパニ)
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album/10445604/
③新時代のジョムソン街道 その1 (バス、ジープ)
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album/10445981/
④新時代のジョムソン街道 その2 (ムクティナート)
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album/10448794/
⑤あのジグザグの先にあるもの (カグベニ) <==
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album/10449248/
⑥ムスタン 各駅トレック (トゥクチェ、マルファ他)
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album/10451421/
⑦ダウラギリ・アイスフォール - はじめての遭難 (ラルジュン)
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album/10570147/
⑧自転車 vs トレッカーの巻 (カロパニ、ガサ)
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album/10570153/
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[目次]
カグベニ
旧市街
レッドハウス・ロッジ
ゴールデン・ヒルへの道
ゴールデン・ヒル
帰りの道
まとめ
[カグベニ]
ムクティナート観光を終え、カグベニに向かいます。谷沿いの台地のような場所を下っていく道で、村の直前までカグベニを見ることはできません。最後、村を見下ろす斜面に来て初めて、カグベニの集落が目に飛び込んできます。高台から見下ろしたその風景は、恐らくムスタン一の美しさでしょう(写真)。
その美しさの理由はいくつかあります。川の交差点という立地で周りが開けていること。そして、フラットな村の農地とは対照的な険しい裏山、この二点が大きいと思います。
このかっこいい裏山、よく見ると何か登山道のようなものが上に向かって伸びています。ムスタンの山々では、地図にも載っていないような道をよく見かけます。それらは、現地の人が放牧に向かう道だったり、村と村を繋ぐ近道だったり、薪を集めに行く道だったりします。しかし、このジグザグ道の場合、そのどれにも当てはまりません。一体、どこに続いているのでしょう。 -
カグベニはカリ・カンダキ川沿いの村。そのような村は他にも沢山ありますが、ここは一風変わっています。川の下流はジョムソン方向へ、上流はアッパームスタンを経てチベットへと続いていきます。カグベニの集落は川に突き出すように形成されているため、そこだけ広い川原が狭くなっています。この北を見ても川、南を見ても川という立地がカグベニの景色をユニークなものにしています。
この村はチベットとの商品取引を通して発展してきました。チベットからは、砂漠で採られた塩やウール、カグベニより南の村からは主に穀物が運ばれ交換されました。関税事務所も置かれ、その繁栄は塩取引の中心がトゥクチェに代わる1850年代まで続きました。カグベニは歴史ある村なのです。 -
カグベニを上から見てみましょう。村の中心にあるのがジョン・コーラ。ムクティナート谷から流れる小さな川で、ここでカリ・ガンダキ川に合流しています。村はこの小川で二分されており、川の北側(写真左)にあるのが昔からの旧市街。その反対側、川の南(写真右)には新しい集落が形成されています。旧市街のランドマークがゴンパと宮殿。写真の茶色い建物がゴンパで、すぐ近くに放棄された宮殿跡があります。
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村の東側、ジョン・コーラ沿いには農地が広がります。他の村同様、作地面積は限定されていますが、村民を養うには十分なようです。暖かい季節に訪問していれば、緑の田畑と共に、また違った美しさが楽しめたことでしょう(写真)。この村では、お米を作らないので、ラクシーなどの地酒も大麦から作られます。
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[旧市街]
桃源郷のような外観とは対照的に、カグベニは非常に泥臭いところです。ムスタンで最も印象的な村といえるかもしれません。旧市街へと渡る橋の周りでは、汚らしい服を着た子供達がたくさん遊んでいます。昭和初期の田舎でも見ているようです。村のお年寄りは、地べたに座り、何をするわけでもなく一日中、道端でくつろいでいます。この村では、大人も含め、誰一人働いている様子がありません。
村で出会うのは人だけではありません。牛、馬、ロバ、犬、ネコ、鶏など雑多な動物が、自由気ままに村の中を散歩しています。この村にいると、まるで100年前にタイムスリップしたかのような錯覚を覚えます。他の村では体験できない、その「濃さ」がカグベニ最大の魅力です。 -
村の中でも、旧市街に古い建物が集まります。迷路のような狭い道の両側には、泥壁と赤い窓枠で特徴づけらられた民家が並びます。旧市街の真ん中にあるのが崩れかけの宮殿。その周りにも人が住んでいて、どこからどこまでがフォートだったのか見分けがつきません。
その旧市街の中にさらに旧市街があり、これがオリジナルのカグベニ村。その旧・旧カグベニ村に入る門には、男性器を強調した門番が立っています(写真)。これらの魔よけは仏教が伝来する以前のアニミスト信仰が由来です。 -
門から中へ進むと、ちょっとした広場に出ます。古い建物に囲まれたこの空き地は、かつての村の中心。現在は、子供や動物の遊び場のひとつに過ぎません。それでもカグベニ一番の見所らしく、ツアー客は必ずこの場所を訪れます。
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その広場を反対側から抜けた先に、茶色いサイコロ型のゴンパ(Thupten Samphel Ling)があります。たまたまドアが開いていたので、勝手に見学させてもらいました。本来なら入場料は100ルピーです。
サキャ派のゴンパで、二階に上がると、ガラスケースに入ったお釈迦様の銅像が祀られていました。お堂のまわりには、保存状態の良い壁画があり、なかなかです。チベット仏教のサキャ派は、どちらかというとマイナーな宗派ですが、ここムスタン、カリガンダキ上流では比較的一般的です。この建物を囲むようにマニ車の通路があり、そこからカリ・ガンダキの上流・下流の広い川原が両方見渡せます。 -
旧市街の北の端、マニ車の並ぶ通り(写真)の先にACAPのチェックポストがあります。カグベニより北はムスタン上域になるので、特別な許可証がないと入れません。アンナプルナの入域料を払って自由に旅行できるのはここまでです。アッパームスタンも旧ムスタン王国、現在はネパールに属していますが、中国国境が近いこともありこのような処置がとられています。
アッパームスタンの入域料は10日間700ドルと高額で、必ず旅行会社のツアーに参加する必要があります。もちろん一人でツアーを作ることもできます。オフィスに掲示されていた統計を見てみると、毎年1000人程度の旅行者がムスタン上域に入っています。なぜか2008年だけ2000人のツーリストがいて、そのうち日本人は24人だけです。 -
旧市街の反対側、新しい集落の方でも村の素朴さは変わりません。ただ、一部、派手な建物もあります。写真はセブンイレブンという名の普通の売店と、どっかで見たような外観の「ヤク・ドナルト」レストラン。
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[レッドハウス・ロッジ]
この前近代的な雰囲気の中、たくさんのロッジが違和感なく共存しています。ほとんどのロッジは新市街側ですが、旧市街にも4軒ほど泊まれる場所があります。
その中で最も特徴のある宿とされているのが、宮殿のすぐそばにあるレッドハウス・ロッジ。70年代開業のカグベニ初のロッジで、貴族の末裔である三姉妹が経営しています。階段を登り、トレードマークの赤茶色の建物に進むと、入り口に羊の頭蓋骨が掲げられていました。これはこの地方では魔よけとして各家の玄関に飾られます。 -
このロッジは、もともと藩主の書庫のような建物だったらしく、各所に歴史が感じられます。ダイニングの壁を見ると、味のある仏画が並んでいます。これは、手前に棚とガラスがあるため額縁の絵のように見えますが、壁に直接描かれた年代物のフレスコ画です。
以前、建物の一部が崩壊してしまったため、奥に見える壁画は数年前に描き直したもの。幸い、右側の壁は崩壊を免れ、今でもオリジナルのままです。 -
昔の雰囲気を残すロッジですが、客室はいたって普通です。一方、食事は少し凝っていて、パスタや炒め物を頼むと、なぜか古風な鉄板プレートで出てきます(写真)。ここのメニューには、村の伝統料理を集めたレッドハウス スペシャルという豪華なコース(600ルピー)があります。私は食べていませんが、ボリュームたっぷりでおいしそうでした。
ペマ、ドルカ、タクリの三姉妹のうち、主にぺマ女史(写真)が宿を切り盛りしています。彼女を慕ったリピーターもいて、写真家の小松健一さんも以前、長期滞在していたようです。ダイニングには、各著者がプレゼントした写真集が大切に保管されていました。
「A Nepalese Journey」2002 Andrew Stevenson
「ヒマラヤ古寺巡礼」2004 小松健一 -
ダイニング壁画のすぐ裏側はミニゴンパになっています。毎朝6:30AM、ぺマ女史がプージャを行うので見学させてもらいました。仏堂は広さ6畳ほどの部屋で、お経の巻物が棚に並んでいて本格的です。祭壇の中心にあるのは高さ3メートルほどのマイトレーヤ像(弥勒菩薩)。300年以上前に造られた立派なものです。ぺマ女史は、仏前にお供え物を置き、順番に線香の火をつけていきます。
彼女がお経らしきものを読んでいる間、幼い息子がタイミングよく太鼓を叩きます。ルーチンは決まっているので、親子の共同作業です。この私設ゴンパ、宿泊客は頼めば、いつでも見学できます。ゴンパを出た廊下(写真)には、マニ車とアンティークショップがあり、王族時代の品々が購入できます。 -
[ゴールデン・ヒルへの道]
朝、村を散歩していると、面白い看板を見つけました。
==SHER DHAK(ゴールデンヒル)==
「この丘に登ると、ムクティナート谷やカリガンダキ上流、チベット国境や川の源流まで見渡せます。頂上までは、ジグザグ道を登って約2.5時間。強風を避けるため午前中に行くのがいいでしょう。道はこちら←」
あの険しい裏山はゴールデンヒルと呼ばれていて、登ってもいいようです。カグベニに来た時、誰もが気づき、驚くあの急なジグザグの道、地元民専用のトレイルという訳ではなかったのです。そうと知っては登るしかないでしょう。さっそく朝食後に行ってみることにしました。 -
この案内看板があるのは、村の中心、旧市街と新市街をつなぐ橋のそば。そこから矢印に従い、カリ・ガンダキ方向に歩くと、すぐに川に出ました。
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つり橋を渡り、対岸の道を北に進みます。このままずっと行くと、ティリの集落があります。ティリはアッパームスタンの村ですが、看板によるとこの村までなら訪問が許可されています。
肝心の登り口は、橋から5分ほど歩いた場所、写真右下の影になっている場所にあります。砂利の斜面にジグザグの道が作られていて、そこから登り始めます。足元が狭くて不安定ですが、ここを乗り切れば、あとは危険なところはありません。 -
5分ほどで砂利の道を登りきると、旗が並ぶ緩やかな場所に出ます。その後、今度は大きなジグザグが始まり。途中から小さなジグザグに変わり、7割ほど登った辺りで、一連のジグザグ道が終わります。ここまで約1時間。ここで初めて北側、アッパームスタン方面の景色が望めます。この斜面に無理やり作ったような道、遠くからだと急に見えますが、歩くには十分な幅があり、それほど危険ではありません。
その後、道は南方向に進み、くの字を描いて頂上まで続きます。カグベニを出発してから1時間40分、ついにゴールデンヒルの頂上に到着しました。私は歩くのが速い方なので、看板の2時間半は、妥当な見積もりでしょう。 -
[ゴールデン・ヒル]
頂上には、4畳半サイズの小屋があります。この白い小屋は、目を凝らせばカグベニからでも発見できます。小屋のすぐ近くに旗やタルチョが立っており、そこが一応の展望ポイント。ムスタンでは、このような村を見下ろす場所には、たいてい縦長の旗が設置されています。観光客用のビューポイントである以前に、村民にとって特別な場所なのです。 -
それでは、正面(東側)の景色を見てみましょう。ここからはムクティナート谷が一望できます。眼下のカグベニから最奥のムクティナートまで。昨日歩いてきた道も、途中の村々もわかります。この谷には両側あわせて6つの集落があり、ムスタン側、アッパームスタン側、それぞれジープ道でつながっています。
強風を避け午前中に登れとのアドバイスでしたが、これにはデメリットもあります。あまり早過ぎると、トロン峠のあるトロン・ピーク(右の雪山)やヤク・ワカン(左の雪山)、ムクティナート山脈に日が当たっていないため、景色が見栄えしないのです。そのあたりを考慮すると、11時以降の到着がベストでしょうか。午後になると確かに風が強くなりますが、山の斜面はそれほど強い風が吹くわけではありません。 -
北側の眺めは、荒涼としたアッパームスタンの風景。何もない岩山に囲まれ、カリ・ガンダキ川はチベット国境まで続いていきます。
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南側に見えるのは、ニルギリ・ノース(中央)とその左隣のティリィチョ・ピーク。頂上を除き、これらの山の北壁はいつも日陰で寂しげなものがあります。カリ・ガンダキ川の西側(右)には、ダウラギリやトゥクチェも見えますが、角度が悪いためいまひとつです。
このゴールデンヒルの西側、さらに裏側はどうなっているのでしょうか。小屋の後ろに小高い岩場があり、そこに登ってみましたが、名もない山があるだけで特筆すべきものはありませんでした。 -
風が強くなってきたので、小屋の中に入ることにします。この時、なぜか鍵がかかっていませんでした。この展望小屋には大きな窓があり、中にいながらムクティナート方面(東)、チベット方面(北)、ニルギリ方面(南)の三方向を眺めることができます。床は地面で散らかっていますが、寝袋マットを持参すれば泊まれないこともありません。
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今日は雲ひとつない天気。日中は日が射し、小屋の中は暖かくて快適です。窓際に座り、景色をぼーっと眺めていると、あっという間に一時間が過ぎていました。
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[帰りの道]
十分景色を堪能したので、そろそろ戻ることにします。帰りはカグベニを上から見下ろしながらの楽な下りです。最後、砂の斜面を大砂走り気分で駆け下りて川岸に到着しました。最初は恐る恐るだった急な斜面も慣れれば何ともないのです。
このゴールデンヒル、なぜか知名度はいまひとつ。私の持っている二冊のトレッキング・ガイドにも紹介されていません。せっかく素敵な展望ポイントがあるのに、もったいない話です。
[まとめ]
ジグザグの先にあるもの、それはちっぽけな展望小屋と遠方へと続く道。心はトロン峠を越え、チベットに向かって飛んでいきます。これらの街道を俯瞰できる場所はここ以外にありません。ゴールデンヒルに続く黄金のジグザグ・トレイル。あなたも挑戦してみませんか? -
[リンク集]
==ネパール・トレッキング==
最速のアンナプルナ 全8作 (2009年秋)
http://4travel.jp/travelogue/10444950
エベレスト・トレッキングのすすめ 全10作 (2011年春)
http://4travel.jp/travelogue/10581163
ポカラ・ザ・トレック 全4作 (2013年春)
http://4travel.jp/travelogue/10759203
トレッキング装備購入ガイド 全2作
http://4travel.jp/travelogue/10571988
==ネパール旅行記一覧==
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album?dmos=os&level1=1&level2=771&level3=&sort=when
==海外旅行記一覧==
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album?dmos=os&sort=when&view_mode=list
==国内旅行記一覧==
http://4travel.jp/traveler/sekai_koryaku/album/?dmos=dm&sort=when&view_mode=list
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