2009/05/10 - 2009/05/11
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鯨の味噌汁さん
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さて、エジンバラ市内のことを、少し。
スコットランドといえばバグパイプである。
もともとは、ユーラシア大陸に広く分布する楽器だったらしい。
それが、辺境ともいうべきスコットランドに残っているというのは、
「文明の原初は僻地に残る」
の法則であろう。
(⇒今勝手に作った法則なので、グーグルなどで検証しないように)
格好からして「動物の胃袋をそのまま使ってます」という愛想のなさだもんね。
映画「史上最大の作戦」の中で、ノルマンディーに上陸したスコットランド軍が、バグパイプを先頭に進撃するシーンがある。
後ろに続く歩兵は、ヘルメットをかぶっている。
が、戦闘に立つバグパイプの奏者は、いわば丸腰なのである。
ヘルメットもかぶらず、キルトを捲き、堂々と足踏みをし、進むのである。
子供のころ、その映像を見た鯨は、驚き怪しんだ。
なぜ銃の前を、楽器が歩いていくのか。
で、そのイメージを持ったまま、オトナになった。
であるからして、鯨にとってのバグパイプは
「銃弾飛び交う最前線、命を張って部隊を先導する」
男どもの楽器なのである。
-
で。
スコットランドの首都・エジンバラにたどりつくと。
駅のBGMは全部バグパイプ。
信号もバグパイプ。
バスのクラクションもバグパイプ。
パトカーのサイレンもバグパイプ。
ベビーカーの赤ん坊ですら、バグパイプ風に泣いているのであった。
・・・全部ウソですが。
とはいえ、町のあちこちに、いわば「辻バグパイプ」の方々がおり、ぴーひゃらぴーひゃらら、と演奏されているのである。
エジンバラ城に登ってゆく、ゆるい坂道を、夕方、配偶者と二人、歩いていると。
高校生らしい二人組が、バグパイプの練習をしていた。
キルトを腰に巻き、格好だけは一人前だが、まだまだ初心者らしく、音は、てんでなっちゃいないのであった。
それでも、ふたりは、顔を真っ赤にして演奏する。
いや、演奏、というよりは、「とりあえず音は出しています、ヘタクソですみません」というレベルである。
しばらく見ていると、パンク風ファッションの若者の一団が通りかかった。やはり高校生くらいだ。
なかの一人が、初心者二人組に声をかけた。
「ヘタクソだなぁ。ちょっと貸してみな」
で、交代してバグパイプを吹く。
さきほどまでの濁った音色ではなく、キーンととがった、鋭い音が響く。
なるほど、弘法は筆を選ばずなのである。
バグパイプを取り上げられた方は、うらやましそうに演奏者を見ている。
観光客もたちまちのうちに参集し、やくやの拍手なのである。
演奏が終わると、ほれ、という感じで、元の持ち主に、バグパイプは返された。
で、二人はこんな会話を交わしたらしい。
「きみ、どこの高校?」
「エジンバラ西高校のバグパイプ部だよ」
「ああ、やっぱりなぁ。音が違うわ」
バグパイプは、胃袋の部分に空気を送り込む。
演奏の間、常にそれを続けなくてはいけないので、肺活量の勝負、という側面もあるらしい。
初心者二人組は、セーネンたちが去った後も、顔を真っ赤にし、路上での演奏を続けている。
スコットランドの伝統は、彼らによって、間違いなく受け継がれていくのである。
ガンバレよ、と鯨は1ポンドを投げ入れたのであった。 -
エジンバラには、結局三泊の滞在であった。
夕方に到着し。
ネス湖ツアーに一日。
街歩きに一日、である。
街はまるごと、世界遺産に指定されている。
街のどこから見ても、エジンバラ城が見える。
城の上には、大英帝国と、スコットランド国旗が、まさに「ヘンポン」と翻っている。
で、夕食は、三日間、同じレストランに通った。
芸がない、といえば芸がない。
三日続けて、キャバクラで同じおねーちゃんを指名するようなものである。
または、三日続けて、パチンコ屋さんで同じ台に、座るようなものである。
せっかく来たのであるから、いろんな店にいくべきである、というのもまた、ひとつの見解であろう。
宿の近くに、飲食店街が集まった「ローズ・ストリート」という通りがある。
その中の一軒に、海鮮レストランを見つけてしまった。
ここであったが100年目、というヤツである。
初日、カキ、サーモン。
二日目、カキ、ホタテ。
三日目、カキ、ムール貝、ホタテ。
なんのことはない、カキを食いにエジンバラに来たようなものであった。
メニューは英語であるから、辞書とつき合わせをすれば大丈夫である。 -
カキは生、チーズ焼き、半生、とそろっている。
鯨は生ガキを食するのが、ジンセーの幸せの33%くらいを占めている、とゆってもいいくらい、カキが大好きなのである。
一ダースのカキをじゅるじゅると食し、安い白ワインを飲み、三日とも幸福なのであった。
さすがに三日目に店に入っていくと、
「この東洋人、また来たよ」
といった顔で迎えられ、生カキとワインが、サッと出てきたのであった。
あとでガイドブックを見ていると(最初に見ろよ)、その店はエジンバラでもメジャーな海鮮料理の店だったらしい。
イギリスとゆうと、魚料理はフィッシュ&チップスの印象が強いが。
北海に面した地方では、海鮮料理もまた、名物なのだ。
鯨も歩けば海鮮の名店に当たる、というヤツなのである。
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