サッカー場、配偶者が隣のオッサンにハグされる。

2009/05/11 - 2009/05/11

エジンバラから、列車でジリジリと南下。
ニューカッスルの町で降りる。
大航海時代は、港町として栄え、産業革命からこっちは、輸出の拠点として大きくなった町だ。

ここに、「ニューカッスル・ユナイテッド」という、サッカーの名門チームがある。
プレミアリーグに所属しているが、今年は絶不調であって、降格寸前なのである。
かのリーグでは、20チーム中、下位の3チームが降格する。
入れ替え戦なんてのはなく、問答無用、キッパリ、おっこっちまうんである。

イギリスのサッカーは歴史が古い。
人口5万、なんてゆう、小さな町に行っても、ちゃんと町にはサッカークラブがある。
プレミアリーグの下に、一部、二部、三部、四部とあって、そのどれかに所属し、町の人たちに愛され、応援されているのである。

エリア ニューキャッスル(イギリス)

駅を降り、徒歩でスタジアムを目指す。
本日のゲームは「ニューカッスル×ミドルスブラ」。
ニューカッスルのすぐ南にある町のチームで、やっぱり、降格圏内にいる。

あちこちで「チケット売り場、どこあるか」と聞きながら、坂道を登る。
売り場にたどりつき、お姉さんに

「今夜のゲーム、二人、一番安い席、欲しいある」

とゆうと、二人で98ポンドの席を渡される。およそ1万5000エン。
いいオネダンである。

が、プレミアリーグは、そのほとんどが「シーズンシート」(年間予約席)である。
このチームもまた、5万人収容のスタジアムの中で、フリーで売り出されるのは2500枚ほどだという。

驚くべし、人口30万人の町で、47,500人が、シーズンチケットを持っているのだ。
であるからして、当日の席がある、というだけでも、フットボールの神様に感謝しなくてはいけない。

午後8時、試合開始。空はまだ明るい。
両チームとも降格圏内にいるから、真剣勝負、なんてものではない。
席はニューカッスルサポーターの真ん中であって、まわりは、レプリカユニで完全武装した、筋金入りのサポーターのオッサンが多い。

で、どどーーーーん、といった感じの声援が、突如起こる。
すべて手拍子と、肉声であって、日本のようにタイコやトランペットなどの鳴りものはない。
それも、日本のような「婦女子を含む若い声」ではなく。
オッサンたちの、しわがれた、しぶーい声が中心である。
腹の底から声が出ている感じである。

配偶者もわしも、そのあまりの声量に、呆然とする。
これがイングランドのサッカーか。
で、周囲のサポーターといっしょに、一生懸命声を出した。

鯨は、Jリーグの観戦歴は長い。
レッズの追っかけをしていたこともあるし、今でも新潟戦などはよく見に行く。
だから、いざゲームが始まってしまえば、周囲がスキンヘッドの怖いーちゃんだろうが、牛だろうが羊だろうが関係なく、ゲームに集中できるのであった。

試合は3-1、見事、ニューカッスルの逆転勝ちであった。
逆転ゴールが決まると、みんなで抱き合って喜んでいる。

横を見ると、なんとわが配偶者が、となりのオッサンとハグしている。

「キャー」

なんていって喜んでいる。
こやつは野球以外の球技は、サッパリ興味がないはずなんだが。
意外に順応性がある生き物だな。

タイに行ったら「セパタクロー」、インドにいったら「ホッケー」なんぞにも、きっと熱狂できるに違いない。

オマケに、おじさんとすっかり仲良くなってしまっているらしく。
ディープキスくらいまでなら、シテしまいそうである。

コラコラコラコラコラっっっっ。
なんだその溶け込みぶりはっっっっ。

でもって、ゲームが終わると、そのオッサンは、配偶者に、サポーター・マフラーを首に巻いてくれたのであった。
どうやら、いっしょに応援してくれた東洋人への、お礼のつもりらしい。

駅までの帰り道は、逆転勝利を喜ぶサポーターの歓声が、夜空に響いていた。
警備の騎馬警官に向かって、

「ハイハイハイハイハイッッッウォーーーーー」

なーんて、兆発している。
そのまま暴動でも起きそうなイキオイである。

でも、基本的に勝ちゲームである。
みんな気分よく酔っ払ってます、という感じで、それはそれで悪くはない。
レッズが勝った時の浦和の町も、この10分の1くらいは騒ぐものね。
騎馬警官は出動しないけど。

帰国後のこと。
ニューカッスルは、最終ゲームで、0対1で負けてしまい。
あの日戦ったミドルスブラとともに、プレミアリーグからの降格が決まった。

配偶者は、かなしそうに、そのスポーツ新聞の記事を見ていた。

この旅行記へのコメント （3）

• ペコリーノさん 2009/11/04 15:53:07

  失礼しました。

  あ〜、また「距離をおく」なんて失礼をお許しください。
  
  シェイ・ギブン、マンチェスター・シティーにいるみたいです。すいません勝手に盛り上がり、勝手に納得し。
  ニューカッスルの観客席を見るたび、「こんな私が一人で観戦なんてムリ、絶対ムリ！」と（ほとんど鯨の味噌汁さんと同年代なのですが。）乙女の心は揺れ、ＴＶ観戦のみで我慢していたのです。シティーなら、なんとかなる（のか？）いや〜、やっぱ無理かも。
  
  全く話は変わりますが、
  いつかはイギリスをレンタカーで、と思っておりました。カーナビ付きもあるのですね。頑張ってみよう、という気持になりました。
  

  鯨の味噌汁さん からの返信 2009/11/06 14:10:18

  RE: 失礼しました。

  こんにちは、コメントありがとうございます。
  
  ニューカッスルを観戦に選んだ理由は、
  
  ・サポーターが比較的穏やか
  ・入れ物が大きいので当日券が手に入る
  
  との情報を事前に入手したからなんです。
  オーウェンは日韓WCのベルギー戦の時に見て以来、ファンではありましたが、彼もオヤジになりましたし・・・
  
  > いつかはイギリスをレンタカーで、と思っておりました。カーナビ付きもあるのですね。頑張ってみよう、という気持になりました。
  
  はい、日本から予約するさいにカーナビも指定できます。
  ただし日本語じゃないので私は苦労しました。
  
  ランドアバウトさえ慣れれば、イギリスのドライブは快適ではないかと。
  
  なにしろ「英語ダメ・運転ヘタ・方向オンチ・地図読めない・海外運転未経験」の私めが、無事生還したんですから・・・
  
  
  
  
  
  
  > あ〜、また「距離をおく」なんて失礼をお許しください。
  >
  > シェイ・ギブン、マンチェスター・シティーにいるみたいです。すいません勝手に盛り上がり、勝手に納得し。
  > ニューカッスルの観客席を見るたび、「こんな私が一人で観戦なんてムリ、絶対ムリ！」と（ほとんど鯨の味噌汁さんと同年代なのですが。）乙女の心は揺れ、ＴＶ観戦のみで我慢していたのです。シティーなら、なんとかなる（のか？）いや〜、やっぱ無理かも。
  >
  > 全く話は変わりますが、
  > いつかはイギリスをレンタカーで、と思っておりました。カーナビ付きもあるのですね。頑張ってみよう、という気持になりました。
  >

• ペコリーノさん 2009/11/04 14:59:41

  シェイ・ギブンの運命は・・・。

  >帰国後のこと。
  >ニューカッスルは、最終ゲームで、0対1で負けてしまい。
  >あの日戦ったミドルスブラとともに、プレミアリーグからの降格が決まっ
  >た。
  
  そ、そうだったのですか。そりゃマイケル・オーウェンもマンＵ行きますよね〜。あぁ。ＧＫのシェイ・ギブンはどうしてるんだろう。
  
  突然で失礼しました。あまりの衝撃的な事実に。ま、遠くから時々テレビで見るぐらいのファンなのでそんなことも知りませんでした。シェイ・ギブン、あの前へ出てくるアグレッシブなＧＫが大好きです。てゆうか、チーム弱いんで、マンＵとの対戦の時なぞ、とっても良くＴＶに映るんです。で、大活躍な訳で。そうですか、これで当分テレビでも見ることもかなわなくなったわけですね。ファン・デル・サールや、カシージャスで我慢することにします。
  
  あ、すいません、初めまして。文章とても面白く拝見しております。でも、ちょっと距離を置いた方がいいかな〜、と思ってましたが、上記の事実に興奮してしまい、コメントしてしまいました。