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旅の四日目。<br />目指すは「ハドリアヌスの壁」である。<br />北部イングランドに、えんえん、100キロ以上築かれた、ローマの遺跡だ。<br />カーライルから、ニューカッスルまで、ほぼ全土を横切っている、といってよい。<br />地図を例によってジックリ眺めると、おあつらえむきに、B級国道が、ハドリアヌスの壁ぞいに走っている。<br /><br />が、朝から激しい雨。<br />しかも風も吹いてきて、観光、といった風情ではなくなってしまう。<br />ふたりとも、折りたたみ傘は持ってきているのであるが、トテモトテモ、それで足りるような雨風ではない。<br />クルマのライトを、点けなくてはいけないくらいの暗さだ。<br /><br />しかし、と前向きに考えることにする。<br />きょうでイギリス四日目であるが、終日雨、ということはなかった。<br />天気は短いサイクルでクルクル変わる。<br />特にクルマで走っていると、ほとんど5分おきに、晴れたり曇ったり雨が降ったりする。<br />であるから、一喜一憂してはいけない。<br /><br />イギリス人は、多少の雨では傘をささない。<br />であるから、全体的に、ハゲの方々が、多いように思われる。<br /><br />ちなみに、この国では、ハゲることを「悪い雨に当たった」とゆうそうである。<br />なんと、奥ゆかしい表現であろうか。<br />日本においても、ただちに採用し、公用として扱うべきである。<br /><br />さて、豪雨・強風の中、クルマは東に向かって、ジリジリと移動する。<br />国道沿いに、壁は、あるときは離れ、あるときはくっつき、続く。<br />いや、続く、というよりは、現れたり消えたりを繰り返す。<br /><br />なぜかとゆうと、ローマ帝国衰退後、この壁は、近所の人たちが、石を持って行っちゃったのである。<br />で、家づくりに使ったり、牧柵がわりに積んだりしたのである。<br />そんなことが2000年ほど続いたので、壁はあちこちで、トケているのであった。<br />いまは、牧場の柵代わりに使われているのである。<br /><br />ふと「風の谷のナウシカ」を思い出す。<br />古代の戦争「炎の七日間」の遺跡が、風の谷のあちこちにあり。<br />その兵器の残骸に、やはり、ひとびとが住みついていたんである。<br /><br />ここにやってきたローマ人もまた。<br />長い駐屯生活のうちに、地元民と混血し、トケて、いなくなってしまった。<br />つまりは、壁といっしょの運命をたどったわけだ。<br /><br />国道沿いに遺跡が点在するので、クルマの移動はラクである。<br />雨はやんだ。<br />しかし、風が相変わらず強い。<br />丘から丘へ、雲が影を作りながら、飛んでいく。<br /><br />観光客は少ない。<br />ツアーの方々はあまりおらず(フランスからの1組しか見なかった)、ほとんどは個人のトレッキングである。<br />みんな、雨と風の中、黙々と歩いている。<br /><br />あるポイントで、駐車場にクルマを入れていると、壁のかげに、風を避けて避難しているバックパッカーがひとり。<br />しゃがみこんで、つらそうである。<br />なにしろ、会話が困難なくらいの横風なのだ。<br /><br />近づいていくと、向こうから挨拶される。<br />60代の、白人のご婦人であった。<br /><br />「コンニチワ」<br /><br />と、日本語で話しかけられて、びっくりする。<br /><br />「私はハワイからきました」<br /><br />「ひとりで来ました」<br /><br />ニューカッスルから、この風雨の中を、ずっと歩いてきたらしい。<br />そして、ずっとずっと先の、カーライルまで、歩くらしい。<br /><br />ここは四国か!<br />お遍路さん、という言葉すら浮かぶ。<br /><br />「私のおじさいん、ここで生まれました」<br /><br />ハワイアンの彼女にとって、ルーツを探る旅なのだろう。<br />彼女の遠い遠い祖先が、この壁を作ったのかもしれない。

なるほど、これがハドリアヌスの壁か。

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2009/05/08 - 2009/05/08

6位(同エリア20件中)

鯨の味噌汁

鯨の味噌汁さん

旅の四日目。
目指すは「ハドリアヌスの壁」である。
北部イングランドに、えんえん、100キロ以上築かれた、ローマの遺跡だ。
カーライルから、ニューカッスルまで、ほぼ全土を横切っている、といってよい。
地図を例によってジックリ眺めると、おあつらえむきに、B級国道が、ハドリアヌスの壁ぞいに走っている。

が、朝から激しい雨。
しかも風も吹いてきて、観光、といった風情ではなくなってしまう。
ふたりとも、折りたたみ傘は持ってきているのであるが、トテモトテモ、それで足りるような雨風ではない。
クルマのライトを、点けなくてはいけないくらいの暗さだ。

しかし、と前向きに考えることにする。
きょうでイギリス四日目であるが、終日雨、ということはなかった。
天気は短いサイクルでクルクル変わる。
特にクルマで走っていると、ほとんど5分おきに、晴れたり曇ったり雨が降ったりする。
であるから、一喜一憂してはいけない。

イギリス人は、多少の雨では傘をささない。
であるから、全体的に、ハゲの方々が、多いように思われる。

ちなみに、この国では、ハゲることを「悪い雨に当たった」とゆうそうである。
なんと、奥ゆかしい表現であろうか。
日本においても、ただちに採用し、公用として扱うべきである。

さて、豪雨・強風の中、クルマは東に向かって、ジリジリと移動する。
国道沿いに、壁は、あるときは離れ、あるときはくっつき、続く。
いや、続く、というよりは、現れたり消えたりを繰り返す。

なぜかとゆうと、ローマ帝国衰退後、この壁は、近所の人たちが、石を持って行っちゃったのである。
で、家づくりに使ったり、牧柵がわりに積んだりしたのである。
そんなことが2000年ほど続いたので、壁はあちこちで、トケているのであった。
いまは、牧場の柵代わりに使われているのである。

ふと「風の谷のナウシカ」を思い出す。
古代の戦争「炎の七日間」の遺跡が、風の谷のあちこちにあり。
その兵器の残骸に、やはり、ひとびとが住みついていたんである。

ここにやってきたローマ人もまた。
長い駐屯生活のうちに、地元民と混血し、トケて、いなくなってしまった。
つまりは、壁といっしょの運命をたどったわけだ。

国道沿いに遺跡が点在するので、クルマの移動はラクである。
雨はやんだ。
しかし、風が相変わらず強い。
丘から丘へ、雲が影を作りながら、飛んでいく。

観光客は少ない。
ツアーの方々はあまりおらず(フランスからの1組しか見なかった)、ほとんどは個人のトレッキングである。
みんな、雨と風の中、黙々と歩いている。

あるポイントで、駐車場にクルマを入れていると、壁のかげに、風を避けて避難しているバックパッカーがひとり。
しゃがみこんで、つらそうである。
なにしろ、会話が困難なくらいの横風なのだ。

近づいていくと、向こうから挨拶される。
60代の、白人のご婦人であった。

「コンニチワ」

と、日本語で話しかけられて、びっくりする。

「私はハワイからきました」

「ひとりで来ました」

ニューカッスルから、この風雨の中を、ずっと歩いてきたらしい。
そして、ずっとずっと先の、カーライルまで、歩くらしい。

ここは四国か!
お遍路さん、という言葉すら浮かぶ。

「私のおじさいん、ここで生まれました」

ハワイアンの彼女にとって、ルーツを探る旅なのだろう。
彼女の遠い遠い祖先が、この壁を作ったのかもしれない。

同行者
カップル・夫婦
交通手段
レンタカー
航空会社
ANA

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  • ハワイからのご婦人に撮っていただきました。

    ハワイからのご婦人に撮っていただきました。

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