トラピックス　盛岡つなぎ温泉2泊3日の旅（2）11歳の姪に自慢するため「注文の多い料理店」の光原社へ行き、白龍でじゃじゃ麺を食べる。

2022/09/12 - 2022/09/12

前の晩に早く寝たせいか午前4時には目が覚めてしまいました。部屋から夜明けの風景を眺めた後に御前5時から曲がり屋の湯に浸かり、目を覚ませました。その流れで朝食も午前7時にはスタートしました。午前7時30分くらいからは混み始めましたが、大きな宴会場なので客席も程よく離れていました。ホテルから盛岡駅への送迎バスは午前9時50分なので、食事の後は部屋でゆっくり休むことも出来ました。時間前にロビーに降りてみると混んでいましたが、その多くはトラピックスの別のツアーやクラブツーリズムの団体さんでした。とは言え、送迎バスも満員の状態でした。20分ほどで盛岡駅の西口のロータリーに到着し、夕方まで自由行動が楽しめます。この日は午後5時前の路線バスでホテルに戻りましたが、ツアーの方のほぼ全員は午後3時の送迎バスでホテルに戻られたようです。路線バスを利用の場合は終点の停車場からホテルに電話すれば迎えに来てくれます。
　まずは東口に移動して、市内の巡回バスである「でんでんむし号」の乗り場に向かいます。チケットはバスの運転手さんから買えるので、1日券350円を手に入れます。1回の乗車は120円均一なので、3回乗れば元がとれる感じです。実際1日では3回も乗れば終わってしまうので割安感があるようには思えませんでした。まずは2停留所先の「材木町南口」まで移動します。この通りには宮沢賢治の「注文の多い料理店」を出版した「光原社」やその周辺の店が点在しています。11歳の読書好きの姪とは「エルマーのぼうけん」などについて語り合えるのですが、最近になって「注文の多い料理店」についても話をしていて、これは盛岡に行って自慢してやろうと考えていました。子供向けの物としては宮沢賢治のカルタがあったので、くるみクッキーと共にお土産にしました。そして童話の絵葉書も買い求めて、1枚を姪あてに出しました。続いて1停留所先から巡回バスに乗り、「啄木新婚の家」に向かいます。特に石川啄木が好きなわけではないのですが、函館の立待岬の手前で石川啄木の墓に参拝したせいか、その後も釧路の「港文館」で76日の滞在での女性遍歴を知り、6月に行った小樽でもその足跡を知ることが出来ました。盛岡では新婚の家で自分の結婚式に現れなかったということをその家で詳しく知ることが出来ました。27歳の若さで夭折するわけですが破天荒な生き方に共感は出来ないながら憧れるものも感じます。さらにバスに乗り「中央通り1丁目」の近くにある裁判所の「石割桜」も見てきました。そろそろお昼の時間なりましたが、ホテルの朝ご飯を食べ過ぎたせいか、予定していた「白龍（ぱいろん）」のじゃじゃ麵を素通りして、「桜山神社」を参拝して、「盛岡城址公園」で一休みしてから戻りました。お昼時は空いていましたが午後1時を過ぎたら逆に混んでいましたが、無事に店に入ることが出来ました。サイズは大中小ありましたが、小にして正解でした。麺を食べた後に生卵を落としてかき混ぜ、追加50円の「ちーたんたん」もいただきました。元気が回復したところで午後の観光に移ります。

エリア 盛岡(岩手)

• 旅行の満足度: 4.5
• 観光: 4.5
• ホテル: 4.5
• グルメ: 4.5
• ショッピング: 4.5
• 交通: 4.5

• 同行者: カップル・夫婦（シニア）
• 一人あたり費用: 3万円 - 5万円
• 交通手段: 高速・路線バス 新幹線 徒歩
• 旅行の手配内容: ツアー（添乗員同行なし）
• 利用旅行会社: 阪急交通社

前の日は午後11時には寝てしまったので、午前4時過ぎに目が覚めてしまいました。歳のせいか最近は長時間の睡眠が出来なくなりました。御所湖の東側が明るくなりましたが、岩手山の上半分は雲の中です。

盛岡つなぎ温泉 ホテル紫苑 宿・ホテル

午前5時になって「南部曲り家の湯」に向かいます。

宴会場のロビーから温泉までに長い廊下がありますが、このアプローチがなかなか良いと思います。

立派な木組みの待合いです。左右に風呂が分かれています。

昨晩とは違ってこの日は「大岩の湯」です。

屋内の湯船も素晴らしいですが、露天風呂も野趣にあふれていい雰囲気です。浴槽の奥に大岩が置かれ、百日紅の花がきれいに咲いていました。

合掌造りの軒裏の様な屋根が架かって、雨や雪が防げるようになっています。しばらく貸し切り温泉を楽しみました。

部屋に戻っても午前6時前です。朝ごはんには午前7時くらいに行く予定なので部屋でくつろぎます。

ようやく起きてきた妻はこれから温泉で目を覚まします。

岩手山に朝日が当たってとてもきれいでした。雲が取れないのはちょっと残念です。望遠レンズで覗いてみても”烏の義勇艦隊”（宮沢賢治：鳥の北斗七星）の姿は見えませんでした。

前の晩は午後6時からの食事で12時間以上何も食べていないので異様にお腹が空いていました。普段は朝ご飯を食べなくても大丈夫なのですが、温泉に泊まると何故かお腹が空いてきます。地産のメニューも多いのですが、何となくお腹に溜まる料理を選んでしまい、妻に笑われてしまいます。

小岩井乳業のヨーグルトにリンゴのピューレ、アイスクリームも3種類、フルーツもいただいてしまうとお腹がパンパンです。昼にはじゃじゃ麺を食べる予定ですが…。

静岡県の富士宮市出身の妻にとって曽我兄弟は縁のある人物です。実家から帰るときは必ず「曽我漬け」をお土産にしています。

朝食を食べても午前8時前でした。フリーツアーの2日目は自由行動なので、盛岡市内へ戻る予定ですが、ホテルの送迎バスは午前9時50分の出発です。初日と最終日は無料ですが、2日目は有料で200円になります。路線バスだともっと早い時間に出られますが630円、タクシーだと4,000円くらいかかるようです。

路線バスとは違うルートを走るのですが、御所湖を眺めるには左側の席がおすすめです。湖畔にキバナコスモスがきれいに咲いていましたし、湖面に写り込む雲も絵になります。

御所ダムは奥羽山脈から流れ出る雫石川をせき止めて造られ、北上川の五大ダムのうちもっとも新しく、昭和56年10月に完成したそうです。このダムの完成により、周辺にあった600ヘクタールの土地が水没し、520世帯が移転しています。

このダムは洪水調節や発電が行われるほか、盛岡市の上水道や紫波町の農業用水などさまざまな目的に使われているそうです。

「鹿妻穴堰（かずまあなぜき）頭首工」の横も通過しました。鹿妻穴堰は今から約400年前の1599年に当時の南部藩経営のための水田耕作地域開発を計って鉱山師鎌津田甚六の設計により、盛岡市西側より流れ来る雫石川のせり出した岩山に長さ約6間（約11メートル）、巾約1間（約2メートル）の隧道を掘削し、雫石川の流れを導入し開削されたものだそうです。鹿妻穴堰の開削により、北上川よりも25メートルも高い平坦地であり、また冷害と水害が常襲していたこの地域に安定した農業用水を供給することが可能となり、地域の発展に大きく寄与したそうです。

そのお陰で盛岡市内に向かって美しい田園風景が続いているのだと感じます。

送迎バスは盛岡駅の西口ロータリーに停車しました。この場所は春の三陸の旅の最後に3日間お世話になった観光バスとお別れした場所です。

そのまま駅構内を抜けて東口のロータリーに出ると盛岡市内を巡回する「でんでんむし号」が停車していました。運転手さんからも1日乗車券が買えるということなのでそのまま乗車します。1日乗車券が350円で1回の乗車は120円なので、3回以上のらないと損してしまいます。8の字状に巡回するバスは左回りと右回りがあり、右回りのバスに乗りました。

バスは約20分間隔で運行しています。2つ先の停留所「材木町南口」で下車します。ここには「いーはとーぶアベニュー」という通りがあって、観光スポットになっています。

いーはとーぶアベニュー材木町 名所・史跡

「いーはとーぶアベニュー」に入ると最初に目に留まるのが宮沢賢治像と石座（いしざ）のモニュメントです。タブレットを持って自撮りしようとしているおばさんを助けると、我々の写真も撮ってくださいました。

石座（賢治像） 名所・史跡

思い返すと宮沢賢治との出会いは11歳の小学5年生の時で、誕生日プレゼントで「銀河鉄道の夜」を父に買ってもらったときでした。その中でも「グスコーブドリの伝記」が一番心に残っていました。昨年実家の整理をしていて、母が遺してくれていたその本が見つかり、50年振りに読み返していました。

先日11歳の姪と久しぶりに会うと「注文の多い料理店」を読んでいました。姪とは50歳しか違わないので、読んでいる本とかが似通ってるのか話が合うことが多いのです。「エルマーのぼうけん」ではエルマーの持ち物について2人で盛り上がっていると、横にいるママが話に入れなくて悲しそうな顔をします。

寿司屋で「注文の多い料理店」について語り合った後に、盛岡に行って自慢してやろうという気持ちが沸き上がり、今回の旅になったというわけです。

光原社 専門店

「光原社」は大正13年の1924年に宮沢賢治の生前唯一の童話集「注文の多い料理店」を発刊し、社名も賢治の手によって名づけられました。これは賢治と創業者が盛岡高等農林学校で先輩と後輩の縁によるものです。

花巻農学校の教師をしていた賢治を訪ねた創業者は、賢治から膨大な童話の原稿を預かりこれが注文の多い料理店の発端になります。童話名や光原社の社名をめぐって2人の間で楽しいやりとりが交わされたようです2人の夢を乗せたこの童話集は残念ながらほとんど売れず注文の少ない童話集だったようです。

昭和8年に賢治とは早すぎる別れを告げましたが、鉄器の高橋萬治や民芸の柳宗悦、染色の芹沢銈介、版画の棟方志功などの知遇を得ることから、当初の出版の仕事から鉄器、漆器、全国各地の民芸まで扱うこととなったそうです。

「モーリオ」に入ってみるとクルミクッキーがちょうど届けられたところで、この後に袋詰めと箱詰めをするということでした。「お昼前には準備できます。」ということで散歩を続けます。

通りの先には特に見るものは無さそうですが、懐かしい木製の枕木を見つけました。40年程前に「無印良品」が立ち上がった当時は田中一光やスーパーポテトの杉本貴志が関わっていた面白い時代でした。内装の床に枕木を使うということで、日本中から使われなくなった枕木を探した記憶があります。当時は廃棄に困っていたのでほとんどただ同然でもらってきましたが、材が硬いのとカットする際に丸鋸の歯が折れるので大工さんに文句を言われたことなど思い出しました。

チェロのオブジェから賢治の作曲した「星めぐりの歌」が聞こえる「音座」もありました。個人的には高倉健最後の主演映画になった「あなたへ」の中で田中裕子の歌が心に残ります。

https://www.youtube.com/watch?v=gptY8RBKbes

あかいめだまの　さそり
ひろげた鷲の　つばさ
あをいめだまの　小いぬ、
ひかりのへびの　とぐろ。

オリオンは高く　うたひ
つゆとしもとを　おとす、
アンドロメダの　くもは
さかなのくちの　かたち。

大ぐまのあしを　きたに
五つのばした　ところ。
小熊のひたいの　うへは
そらのめぐりの　めあて。

「光原社」の店内は写真撮影は出来ませんでした。久し振りに大量の大鹿田焼きを見ましたが、飛び鉋などが昔に比べて雑になったようです。近いうちに佐賀や大分の窯元巡りをもう一度してみようと思っていましたが、日田は外しても良いかもしれないと思います。やはり近いうちに行きたいと思っている島根県の陶器のミルクピッチャーが素敵だったので買い求めました。

型絵染で宮沢賢治の童話を描いた絵葉書を買い求めて、両親と姪に送ろうと思います。姪へのお土産には宮沢賢治のカルタにしました。

ああ、マヂエル様、どうか憎むことのできない敵を殺さないでいいように早くこの世界がなりますように、そのためならば、わたくしのからだなどは、何べん引き裂かれてもかまいません。）という「烏の北斗七星」の一部が碑になっています。夜明け時に見た岩手山に掛かる低い雲の光景が思い出されます。

応接室として使われている「ゑげれす館」の扉は閉ざされていますが、その文字が芹沢銈介のデザインではないかと思えました。

細長い敷地の一番奥まで進むと視界が広がり、北上川の流れが見えました。百日紅の赤い花がきれいに咲いていました。

一対の石塔は卒塔婆の姿のようです。お店の方に尋ねてみましたが詳しいことは分からないようです。春に高野山の奥の院で学んだ五輪塔の姿に似ています。五輪塔は上から宝珠型の「空輪」、半円型の「風輪」、台型の「火輪」、球型「水輪」、長方形の「地輪」の5つの形によって構成されています。古代インドにおいて宇宙は5つの元素（空・風・火・水・地）によって構成されると考えられてきました。

建物に使われた石は十和田石のように思えました。宿泊している紫苑の風呂もこの石が使われていました。十和田石は石板として、また、内装壁材や擁壁 、石塀や敷石などの建築素材として使用されます。防滑性や保温性、保水性に加えて美しい青色を呈すため、浴室の床材として利用されます。

南側に大きく開口を設けた本店には興味深い商品が並べられています。特にインドやメキシコの雑貨を見ているとスリランカの雑貨店巡りをしたことを思い出します。

この辺りの雰囲気はコロンボにある「パラダイスロード」という雑貨店の様なセンスの良さを感じます。

ジェフリー・バワの設計したホテルに置かれたラキ・セナナヤケのオブジェのようにも見えます。

クレア・トラベラーという雑誌などでも紹介されており、長く来たいと思っていたところに来ることが出来て満足です。

「マヂエル館」として使われた建物は「賢治に捧ぐ　柚木沙弥郎　新マヂエル館」として平成18年4月2日に再生したようです。創業者の及川四郎が賢治と共に世に出した「注文の多い料理店」の初版本や、関係資料を中心に賢治直筆原稿、写真、書籍などが展示されていました。

ここに展示された柚木沙弥郎（ゆうきさみろう）の型絵染が素晴らしかったので絵葉書を買い求めたわけです。迷いましたが、「注文の多い料理店」の絵葉書は両親宛に、「ドングリとやまねこ」の絵葉書を姪に送りました。

「材木町南口」のバス停へは戻らずに「啄木新婚の家」までぶらぶら歩いてしまいました。中央通りの駐車場越しにトタン屋根が見えたので位置はすぐに分かりました。

啄木新婚の家 名所・史跡

元々は茅葺屋根だったのだと思いますが、維持管理しやすいトタン屋根に変えたのは日本全国で見られることです。住宅街の中に時間が止まってしまったような一角がありました。

玄関から屋敷の左半分が公開されています。

オリジナルではないでしょうが、表札も掛かっていました。

明治38年の1905年6月4日から、妻の節子と啄木の両親、妹と共に暮らした家です。その後、わずか3週間に中央通三丁目から中津川のほとり加賀野一丁目に転居してしまいます。

建物の右半分は事務室のようで、係員の男性が応対してくださいました。

啄木が盛岡中学（現在の盛岡第一高等学校）2年生の時に後に妻となる堀合節子と出会います。やがて2人は恋心を深めて、明治37年の1904年2月に結納します。
第一詩集「あこがれ」の出版のため上京中の啄木に代わり、明治38年の1905年5月12日に父親が婚姻届を提出し、5月30日にこの家での結婚式となります。

5月20日に東京から岩手・盛岡へと向けて出発した啄木ですが、途中の仙台で下車して友人たちと1週間ほど過ごしてしまいます。その前に友人から結婚式用の借金もしていますが、多分ここで使ってしまったのだと思います。5月29日に仙台をやっと出発します。

しかし、啄木は盛岡駅を素通りして、幼少期を過ごした渋民（しぶたみ）へ行ってしまいます。予定の30日の夜に花婿のいない結婚式が行われます。現れない啄木に対して、6月2日に妻の節子が仲人に気持ちを伝えるために書き綴ったのが「吾れはあく迄愛の永遠性なると云ふ事を信じ度候」という言葉です。

結局、啄木がこの家に到着したのは6月4日のことだったようです。妻の節子は盛岡女学校（現在の盛岡白百合学園高等学校）を卒業し、バイオリンや琴も嗜み、また短歌にも才能を示し、啄木の創刊した文芸誌「小天地」には「こほろぎ」とタイトルを付けた13首を発表しています。座敷には節子の愛用の大きな琴が置かれてありました。

こちらが啄木の書斎であり、同時に夫婦の部屋でもありました。新聞に連載されていた随筆「閑天地」の一編「我が四畳半」には、当時の生活の状況が詳しく書かれています。「閑天地」とは「のどかで静かな場所」を意味し、新婚生活が始まったこの「啄木新婚の家」を指します。

霜ふかき好摩の原の
停車場の
朝の蟲こそすずろなりけり

日当たりの良い座敷の床の間には軸が掛けられ、夫婦の写真の前には水が供えられています。

ふるさとの山に向かひて
言うことなし
ふるさとの山はありがたきかな
啄木にとっての「ふるさとの山」というのは岩手山なのだろうなと個人的には考えます。

我々の来る前にも数組の見学者があったようですが、訪れた時はどなたもいらっしゃいませんでした。根岸の「笹乃雪」で豆富料理を食べた後に立ち寄った正岡子規の家のことを思い出しました。

不来方（こずかた）のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心
不来方城は盛岡城の別名です。今回行く予定にしてはいませんでしたが、ここでこの句に出会ってしまうと行かなければならない気がしてきます。

個人的には特に石川啄木が好きというわけではないのですが、妻と旅した函館の立待岬で石川家の墓を参って以来、釧路の「港文館」では女性遍歴について知り、2か月前の小樽の旅では駅前に「子を負ひて 雪の吹き入る停車場に われ見送りし妻の眉かな」と呼んだ碑を見ました。小樽を出て釧路へ向かう際に佐井氏との別れを詠みながら、釧路でのことを考えると破綻した人生だと思います。ただ27年の人生を考えると思い残すことは無かったのではないでしょうか。

「でんでんむし号」に乗って次は「中央通り一丁目」まで移動しました。特に行く予定はなかったのですが、看板に「石割桜」とあったので裁判所に行ってみました。

石割桜 花見

巨大な花崗岩の割れ目から育った直径約1.35メートル、樹齢360年を越える桜です。現在は盛岡地方裁判所構内になっていますが、寛永年間頃に南部藩主の分家にあたる北監物の庭園であったといわれ、明治初期には「桜雲石」と呼ばれていたそうです。家老の屋敷内の庭にあった巨石が落雷をうけてできた割れ目にエドヒガンザクラという桜の種子が入り込み成長したという伝承も残っています。

隣接する岩手県本庁舎は建築当時は東北で1番、全国でも2番目の高さのマンモス庁舎だったそうです。

県庁の前には「内丸緑地」があり、「桜山神社」への参道になっています。緑地の脇は県庁や周辺の庁舎の方の喫煙所のようで、お昼時ということもあって50人くらいの人が一斉にタバコを吸っていました。県庁所在地のど真ん中で路上喫煙出来るってすごいと思いました。

鳥居を2つ潜ると商店街が広がり、鄙びた風情に魅力を感じます。夜になるとまた違った雰囲気なのだと思います。

お昼を食べる予定の「白龍（ぱいろん）」もこの通りにあります。混雑しているのかと思いましたが、テーブルも空いていました。お昼休みも無く営業されていることを確認して少し時間を潰すことにします。朝ご飯を食べ過ぎてお昼を過ぎてもお腹が空いていません。

白龍 グルメ・レストラン

通りの先に「桜山神社」がありました。江戸時代中期の寛延2年の1749年に盛岡藩第8代の南部利視により盛岡藩初代信直の遺徳を偲び、盛岡城内淡路丸に神殿を建立されます。

桜山神社 寺・神社・教会

盛岡城が明治政府に接収された後、明治4年の1871年には遷座されてしまいます。この辺りは南部藩が旧幕府側についたことも関係したのではないでしょうか。

桜山神社に参拝した後は背後にある「盛岡城址公園」に向かいます。景観の美しい内堀跡（鶴ヶ池）の木陰を進むことにします。

御台所跡の広場からは本丸の石垣がきれいに望めました。ここに天守がそびえていたらもっと美しいのにと思います。

盛岡城跡公園(岩手公園) 名所・史跡

城内で一番古い野面積みの石垣を歩き、本丸跡に向かってみます。

不来方（こずかた）のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心
啄木の人生には共感できませんが、詠んだ歌は心に伝わります。

本丸跡には「南部利祥（なんぶ としなが）中尉銅像台座」が残されています。南部家42代当主であった南部利祥は明治37年の1904年に日露戦争に従軍し、翌38年に井口嶺攻略戦に参加しています。ともに従軍していた皇族軍人の竹田宮桓久王を守り、その盾となって戦死したと伝えられています。銅像は利祥に功五級金鵄勲章（きんしくんしょう）が下賜されたことを顕彰するとともに、故人の霊を慰めるために建設されたものだそうです。制作にあたっては身体部分を新海竹太郎、馬体を後藤貞行に依頼し、久野留之助が鋳造しています。花崗岩製の台座については、伊東忠太の意匠に基づいて横浜勉が設計し鹿島組が施工し、明治41年の1908年に完成しました。銅像本体と玉垣の鎖は昭和19年の1944年に軍需資材として供出され、現在は台座のみが残されています。

南部利祥（なんぶ としなが）中尉が盾となって守った竹田宮桓久王はIOCの会長で東京オリンピック・パラリンピック副会長であった竹田恆和の祖父に当たる人物です。最近周囲がキナ臭くなってきました。

「白龍（ぱいろん）」に戻ってみると3人ほどの方が並んでいました。小さいお店なのと麵を食べた後にスープを作ってもらうので時間もかかるようです。我々の後にもすぐに5人ほどの人が並びました。

白龍 グルメ・レストラン

並んでいる間に注文してあったので、テーブルに着くとすぐにじゃじゃ麵が出てきました。注文してから茹でる上に15分ほどの湯で時間が必要なようです。サイズは大中小の3種類がありますが、小でも普通のラーメン1玉くらいの量があります。

旧満州に移住していた「白龍」の初代主人である高階貫勝が満州時代に味わった「炸醤麺（ジャージアンミエン）」を元に、終戦後の盛岡で日本の食材を使って屋台を始め、そこで盛岡人の舌にあうようにアレンジをくりかえすうちに、「じゃじゃ麺」としての独特の形を完成させたといわれます。じゃじゃ麺用の独特の平麺に特製の肉味噌とキュウリとネギをかけ、好みに合わせてラー油やおろしショウガやニンニクや酢をかけていただきます。

麺を食べ終わった後の器に卵を割り、かき混ぜたものをお店の方に戻します。肉味噌を加えて茹で汁を注いでかき混ぜたスープを「鶏蛋湯（ちーたんたん）」と呼びます。これは追加50円で楽しめます。これには塩コショウで味を調える必要があります。これだけでも十分にお腹いっぱいになりました。

「盛岡三大麺」を食べる今回のミッションのうち2つを達成しました。後は翌日に帰る前に冷麺を食べれば思い残すことはありません。

お昼を食べた後は「盛岡城址公園」を出て市内散策を続けます。中津川の周辺は緑が多く、美しい花が生けられています。ハンギングされたフラワーポットはロンドンだったり、フランスの地方都市でよく見かけたことを思い出します。ユーミンは「緑の町に舞い降りて」という曲の中で、「MORIOKAというその響きがロシア語みたいだった」と歌っていたことも思い出しました。