1977/08/06 - 1977/08/19
338位(同エリア433件中)
おくさん
自転車の旅 おーい北海道(7)
出発から9日目、トラピスト修道院の朝。
真面目に早朝ミサに与る。トラピストのミサともなると、やはりひと味も二味も違う(こういう表現はおかしいが、つまりそういうことです)。祈りも歌も流れるように美しいのだ。勿論、私はそう言うのは分からないからボーッと聞いてるだけ。
朝飯はパンと本場のトラピストバター。ホントに産地直送以上の産地直売か。うーん、直売じゃないよな、じゃぁ産地直食かね。それとコーヒーに牛乳と、昨日の大ご馳走からすると質素なものだった。だが本当は修道院の食事って凄く質素なんだろから昨晩みたいのは食べてないんじゃないのかな。あれはきっと来客用メニューだと思う。
食後、神父さんがトラピストの内部を案内してくれると言う有りがたい申し出があった。うへー、それは想像もしてなかったです、有り難いでごわす。修道院内部へは聖堂の奥に入り口があって、こっから先は女性のシスターも入れないという中に入って行く。なんか凄い経験してるぞー。あちこち案内してくれ、院内で仕事をしている他の修道士さん達には「私の故郷から自転車で来てくれました」なんて紹介までしてくれるてるよ。そんなに丁寧に紹介されるほどのモンじゃないんですよ、すみませんねぇ。舞い上がってしまって作業内容を良く見てなかったが、トラピストバターやクッキーを作っていたんだろうか。
トラピストの中には病者のための部屋まであって、そこには神父さんのお兄さんが入院して、その人にも丁寧に紹介してもらう。お兄さんはブラザー(修道士)だった。
歴史の感じられる重厚な造りの建物はさすがだった。印象的だったのは、海に向かった扉から本州の島影が見えたこと。「あれが津軽半島で、天気がいいと下北半島も見えます」とのこと。神父さんのお陰でとても貴重な体験をさせてもらった、一生の思い出になりますです。ありがたいありがたい。まことに感謝感謝であります。
塀の外の宿泊施設は料金が決まってるらしいが、中に泊めた場合の宿泊費は決まっていないらしいので、3千円差し出したところ千円しか受け取ってくれず、あとは貴方の食事代に充ててくれとのこと。折角そう言ってくれるのでありがたくそうさせてもらう。おまけに、後で食べてと桃の缶詰まで貰える。
トラピストの正式名称は「厳律シトー会灯台の聖母大修道院」というそうだが、その名の通り厳しい戒律があるんだろうに、中にいる人たちはみんな親切で柔和な感じを受けた。きっとみんな自分に厳しくひとには優しい立派な人たちなんだろう。神父さんが自転車を転がしたいと言うので、その様子を記念写真に撮ってトラピストを後にする。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 5万円 - 10万円
-
上記2枚の写真は実際のトラピスト修道院内部の写真ですが、函館を紹介する「るるぶ」や「じゃらん」でも流石にトラピストの中を取材することは叶わないでしょう。なので超レアな写真ですよ皆さん。
-
ここから次の目的地の大沼公園に行くには国道を湾沿いに函館まで戻り、それから別の国道に乗り換えて大沼公園に向かえば分かりやすくていいのだが、それだと三角形の2辺を走ることになり不経済だ。だもんで、道は分かりづらいが三角形の1辺を突っ切って、近道を行くことにする。
大ざっぱな自動車用道路地図だから、国道以外は余り当てにはならない。でも、大沼公園のそばの駒ヶ岳はこっからもよく見えているので、それを目指していけばいいわけだ。海の航海での北極星が見えてるのと同じ理屈だね(そうか?)。
地元の人しか通らないような道を走りながら、道の先が駒ヶ岳方向から遠ざかり出すと次の角を駒ヶ岳方面に曲がって修正するを繰り返しながら走って行くが、何だかもの凄く無駄な走り方をしてる気がして嫌気がさしてくる。それでも何とか国道5号に出られたのでホッとする。大きな道に出さえすれば案内板も出てくるので安心だ。 -
大沼公園は、一面水浸しの中に、小島が無数に点在している公園で、背後に奇怪な形の駒ヶ岳が控えており中々の風景だった。まるで水墨画の世界のよう。ここで既に昼を回ったが、まだ腹は減っていないので走り続け、3時になってからパン3個と缶ジュース、それに神父さんから貰った桃缶でお昼にする。神父さんありがとう、ここでご馳走になりました。
-
その後は駒ヶ岳の横を通りすぎて内浦湾沿いの国道を走り続けたが、後ろを振り返ると必ずその奇怪な形の駒ヶ岳が見えているのには閉口した。走れど走れど湾沿いの道は道路の様子が同じだし、後ろを振り返ると必ず駒ヶ岳があるので、いつまで経っても駒ヶ岳から離れられない錯覚を感じて、ちっとも前に進まないでいるようだ。まるでお釈迦様の手の平から逃れられない孫悟空の気分がして、まさか感じの悪い山だった。やっぱり北海道はスケールが違うと思い知る。本土ならどこを走っても1時間同じ風景は覚えがないが、ここはもう何時間走っても同じ風景から脱出できない異様な時間だった。
-
夕飯にカレーを食べて、8時過ぎ長万部駅に到着。今日はもうこれ以上走っても寝られそうな所はないと思うので、予定通りこの駅で泊まるべく構内を偵察に行く。案の定、バックパッカーやオートバイの兄ちゃん達がベンチに何人も座っている。なぜ案の定かというと、彼らは鉄道会社のお客様ではなく、これから朝まで単に待合室にいるだけの連中なのである。私もベンチに座ってみんなの仲間入りをし、最終電車が出るのを待つことにする。駅に泊めて貰う者の仁義として、最終電車が出る前にベンチに横になったり、寝ちまってはいけないのである。
暇つぶしに近くのパチンコ屋に遊びに行くが、宿賃ほど負けるともの凄い矛盾を感じなくてはならないので早々に引き上げ、通りの自販機で缶ビールを飲んで駅に帰る。「駅に帰る」って何だか寂しい言葉だな。
ここのベンチは一人掛けが数個連なっている方式なので、ベンチの上に寝るのは無理だ。ベンチは諦めてコンクリートの床の上に新聞紙を敷いて寝ることにする。最初はシュラフがコンクリの硬さを多少和らげてくれていたが、朝までとなるとそうはいかなくて、時々寝返りを打ってコンクリとの接地面を変えなくてはならない。痛くて目が覚めると寝返りを打ってまた眠り続ける。 -
出発から10日目、長万部駅の朝。
まだ朝の5時だというのに構内が賑やかになってくる。でも、他の連中もまだ寝ていることだし、私も寝られるときに寝とけとしらばっくれていると、駅員さんがホウキ片手に「もうそんじすっから起きねかや」と起こしに来てしまう。仕方ないのでシュラフからモゾモゾと這いだし外の水道で歯磨きをする。
外にはバックパッカーが4人もシュラフの中でぐっすり眠りこけていた。ここらは屋根ナシなので夜露でかなり濡れ、ひどい有様だった。私が起きてる内は、この人たちが来たのに気づかなかったから、真夜中にここまで辿り着いたのだろう。私が寝たのは終電車のあとだから、勿論、電車で来たのではない。歩いてここまで来たのだ。たまにこの手の連中と挨拶を交わすことがあるが、さすがに私もこの連中には頭が下がる。何しろ徒歩旅行なんだから。秋田を走っているときにも、道のはるか向こうからやってくる徒歩旅行者とすれ違いながら挨拶を交わしたことがあるが、リュックを背負い真っ黒に日焼けした顔で真っ白な歯を出した笑顔ががやけに印象的だった。向こうは歩いているのに、こっちは自転車なもんだから「すいませんねぇ自転車なんか乗って」なんて言っちゃいそう。本当に徒歩旅行者には頭が上がらなく、いつも尊敬のまなざしで見ていた。
このおよそ40年後に自分も一度の徒歩旅行に出かけると1500キロも歩くようになるとはこのときは夢にも思わなかった。人生なにがどうしてどうなるかまるで分からないので面白い。姉妹品「歩く歩く歩く」シリーズも宜しくね。てへ f(^.^;
出発の際、朝飯を仕入れたいと思っているところへ、運良く長万部名物の蟹飯弁当の駅弁屋が商売し始めたので、まだ作りたてで暖かいのを仕入れる。こいつは朝から縁起がいいわい。節約旅行の私がカニを食べられるとは想像してなかったので、これはとてもラッキーな気がする。レストランのカニ料理は手が出ないが、弁当なら私でも買うことが出来るぞ。
少し走り、町を出たところの道ばたで早速食べてみる。カニの弁当なんか初めてだ。この弁当は下のご飯が見えないほど蟹がたっぷり載っていて実に旨い。あぁ、カニってのはこんなに旨いもんだったんだぁと感激してしまった。それに暖かい駅弁ってのも中々食べられるものではないぞ。いつかまた長万部を通ることがあったら、必ず食べるぞと心に誓う。(おおげさ) -
本日の予定では、洞爺湖経由札幌なのだが、走っていくと道ばたに「有珠山噴火のため洞爺湖方面全面通行禁止」の立て看板があった。マジですか!!ガビーンだ。山形県辺りで噴火のニュースを見たときは、私が行く頃は噴火も収まっているだろうとタカをくくっていたのだが、まだ絶賛噴火中だったとは予想外で困ったことになった。嫌な山だねホント。
洞爺湖と支笏はタダの湖だから珍しくもないだろが、昭和新山は是非見たいと思ってたので残念だ。でも、立て看板にはあのように書いてあるんだから、しらばっくれて行ったら追い返されたなんてことになりかねない。ここは謙虚に従うことにして、地図を広げて別のルートを検討する。大分遠回りになってしまうが、国道5号で小樽経由で札幌に行くことに決める。
海岸線を離れ内陸に入っていくと、さすが北海道で牧場だらけだ。何だこっちの道も北海道っぽくって満更でもないじゃないか。水戸黄門の歌通りだ。じーんせぇ~。
小樽経由だと今日中に札幌に着けないかも知れないな。そしたら小樽にでも泊まるかなー、などと考えながら走っていくと、ニセコからはどうも中山峠経由で札幌に行けるらしい。札幌まで火山灰が到達しているのに、途中の中山峠ルートは通れるのもおかしな話だが、通行止めにはなっていないらしいのでまたルートを変更する。これなら最初の予定と距離的には大差ないので今日中には札幌に着くだろう。何時にサッポロに着いたとしても、駅にさえ行けば泊まれるんだと思うと気楽になれる。北海道の駅はありがたいねー。 -
11時、蝦夷富士で有名な羊蹄山の横を通る。頂上には小さな笠雲まで引っかかっていてホントに富士山そっくりだ。これは記念写真を撮らねば。しかし自分の立つ位置が遠すぎたため、走っている後ろ姿になってしまった。まぁこれも記念にはなるか。
1時、ドライブインがあったのでカツ丼のお昼にして中山峠に登るためのスタミナを補給しておく。ドライブインでは、火山灰だらけになった車が、みんな洗車していた。この辺りでは火山灰を浴びせられるのを覚悟してきたが、今のところはまだ大丈夫のようだ。でも車の様子を見るとそろそろヤバイのかなー。火山灰の中を走るには鼻と口を覆うタオルしか持ってないが、これで行くっきゃない。
昼飯後、中山峠へアタック開始。この峠は三国峠程度の難易度のようだが、疲れが蓄積されているらしく三国峠よりしんどい。車も滅多に来ない寂しい峠なので、あの林とか、こっちの笹藪の中から熊がガオーッなんて飛び出してきたらどうしよう。登りだと自転車は鈍いから追いつかれて食べられてしまうし、下りなら早いけどそれじゃぁ逆戻りになっちゃって札幌に行けなくなっちゃうしなーなんて、しょーもないシュミレーションを真剣に考えながらペダルを漕ぐあたり、北海道ならではのサイクリングではなかろうか。それに、火山灰が降り注いできたらポンチョでも大丈夫なんかなー?熊と火山灰という珍しい取り合わせの心配をしながらエッチラオッチラ上っていく。 -
中山峠に到達すると、うまい具合にドライブインがあったので一息つくことが出来た。道内では自販機のコーラ類はぜーんぶ350mlなのでとても飲んだ気がする。これに馴れちゃうと、本州で売られている250ml缶を買うのは損する気になってしまうだろうな。でっかいどーほっかいどーと言うCMがあったが、北海道はコーラもでかかった。
さて、気分一新したところで今度は痛快丸かじりのダウンヒルだ。何しろこの下りは道路の真ん中を車の流れに入ってそのまま走っていられるほどの急坂なので定山渓温泉までの16Kmをあっという間に下ってしまった。もうダウンヒル大好き。
これが森進一の歌にも登場する定山渓温泉かと思ったが、見物するほどのモンじゃなかろうと、横目で見ながら離れた所を通過する。しばらく走り続けると、人家がポツポツと見られるようになり、いよいよ札幌が近づいて来たのが分かった。
夕方6時、サッポロ駅に到着~。ここが今回の旅の最終目的地だ。同じような自転車野郎がチラホラいるのも嬉しい。駅前の公衆電話から前橋教会の神父さんと神学校で同級生だった人が居るという北十一条教会に電話してみる。ここに尋ねていけば泊めて貰えるだろうと聞いてきたのだが、当てにしていた人は分からずじまい。それでも何とか泊まるのはOKとのことなので地図を頼りに行ってみる。
この教会は、事前情報で今回のツーリングで一番当てにしていた宿泊地だったのだが、来てみるとツテとなる人はいないし、図々しく明日も泊めてとは言えない雰囲気だった。まぁ明日は明日の風が吹くだろう。一晩泊めて貰えるだけでもありがたやだ。荷物を置かせて貰って、自転車で夕飯を食べに出かける。
この付近は賑やかな札幌市内からは大分遠ざかっているようで、適当な飲食店がなかなか見つからない。余り離れて道に迷うと困るしなーなんて思ってるところへ赤提灯の下がった汚い店が、名物ジンギスカンを食べさせてくれるらしい。ここんちに入ってみる。
鉄カブトのような形の独特の鉄板に肉をのせてたら、店のおばさんが、まず野菜を焼くんだとのせてくれる。なるほど、ジンギスカン鍋ってのは焼くにもジンギがあったのか。ジンギを守らない人はスカンてか。
サッポロはサッポロビールばっかりと本気で思ってたら、出たのはキリンだった。よく考えればそれもそうだ。豊田市にも日産やマツダが走ってるのとおんなじだ。
ジンギスカンは初めて食べたが中々旨い物だった。量もあるしそれに安い。今朝は長万部のカニ飯弁当も食べられたし、晩にはジンギスカンだ。今日は北海道らしいものを食べられて良かった。明日食べようとする名物をメモしておこう。「生ビール、とうきび、ジャガイモ、札幌ラーメン」。
自転車の旅 おーい北海道(8)最終回へ続く
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
旅行記グループ
自転車の旅 おーい北海道
-
自転車の旅 おーい北海道(1)
1977/08/06~
館山・南房総
-
自転車の旅 おーい北海道(2)
1977/08/06~
村上・岩船
-
自転車の旅 おーい北海道(3)
1977/08/06~
男鹿
-
自転車の旅 おーい北海道(4)
1977/08/06~
奥入瀬・十和田湖
-
自転車の旅 おーい北海道(5)
1977/08/06~
奥入瀬・十和田湖
-
自転車の旅 おーい北海道(6)
1977/08/06~
函館
-
自転車の旅 おーい北海道(7)
1977/08/06~
大沼・駒ケ岳
-
自転車の旅 おーい北海道(8)最終回
1977/08/06~
札幌
旅行記グループをもっと見る
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
大沼・駒ケ岳(北海道) の旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
旅行記グループ 自転車の旅 おーい北海道
0
9