1977/08/06 - 1977/08/19
795位(同エリア1096件中)
おくさん
自転車の旅 おーい北海道(5)
出発から7日目。十和田湖の民宿の朝。
相部屋の連中が言うことには、昨晩は私が一番先に寝入ってしまい、手がピクピクと痙攣していたと教えてくれた。自分では余り感じたことなかったが、やっぱり連日大した重労働やってるてことだ。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 5万円 - 10万円
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早朝、宿から少し離れた湖へ自転車で散歩に行く。荷物を全部外した自転車は嘘のように軽く、ハンドルがフラフラして逆に危険を感じる。重い荷物を付けた自転車は今ではその方がどっしりと安定して乗っていられる。この写真を帰ってから見返してみたら足の筋肉が凄いことになってたので自分でもビックリ。膝小僧は筋肉に埋まってました。
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もうここには来ないかも知れないので、もう一度乙女の像を今度は裏側からも撮っておく。
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ボートが係留されている前に小島があって、よく見るとその上には小さな石の神社が造られていた。きっと謂われがあるのだろうが、特にそれらしい碑はなかったので分からずじまい。まぁそんな興味がある訳でもないので構いませんが。
今日はいよいよ青森まで行って、北海道へ渡るフェリーに乗る日だ。道内では駅にサイクリストやバックパッカー達が山ほど寝ているという情報を民宿で仕入れたので、まずは泊まるところに苦労はしないで済みそうだ。何と言ってもその日に泊まるところは一番の関心事なので、これには凄く安心する。それなら今日の夜中に函館に着いたとしても寝床の心配はいらないってモンでありがたやだ。きっと昨年の高山駅みたいに、函館駅には節約旅行者がうじゃうじゃ寝ている気がする。特に北海道はサイクリストやバックパッカーの聖地なので、きっと高山駅の比ではないだろう。とても楽しみだ。
昨日、埼玉の粉石鹸を貰って、たんまり洗濯しといたのはボイラー室に干しといたのですっかり乾いている。自転車では荷物をそれ程積めないから、ぎりぎりまでそぎ落として来るので、洗濯も普通の小さな固形石鹸でやっている。民宿の流しでちまちまと洗濯している私を見た埼玉が、車では荷物は沢山持てるので粉石鹸を持参しているからと、分けてくれたのだ。相部屋はありがたいね、旅は道連れ世は情け。私からはあげる物が何もないので済まん。
準備が整ったところで、9時に民宿を出発する。すぐ湖畔に行って絵はがきをいっぱい書く。加茂でお世話になったRちゃんの実家へもお礼の手紙を出しておく。後で分かったのだが、Rちゃんが前橋に戻った実家では、絵はがきを貰っても誰がくれたんだかサッパリ分からなかったそうだ。ぎゃふん。
湖畔沿いの急坂を上っている途中に湖を見渡せるスポットがあったので寄っていくとサイクリストがいた。同じ若者だろうと思って気楽にタメ口で挨拶したら40代ほどのシニアだった。この位の人もサイクリングするんだなぁと認識を新たにした。
坂を上り切ると宇樽部民宿村と言うところに出た。観光地の穴場的な村で、ここだったら宿も空いてるだろうからゆっくり泊まれたか知れないな。私が泊まった休屋と言うところは、十和田でも一番賑やかな所だったから民宿も混んでいたらしい。幸か不幸か、お陰で相部屋も経験できたし、相部屋は予想以上に面白かったから結果オーライだ。それに休屋は乙女の像が近かったので朝の散歩も出来たし。 -
十和田湖の水が奥入瀬渓流へ落ちていく水門がある子ノ口(ねのくち)を見物した後、いよいよ楽しみにしていた奥入瀬巡りだ。大町桂月の有名な「住まば日の本、遊ばば十和田、歩けや奥入瀬三里半」とあるように、ここに来たらどうしても歩かないことには見物したことにならないらしいので、自動車道から一段低くなっている渓流沿いの遊歩道を自転車を転がしながら散策することにする。
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ここは滝が多いのでも有名で、その中でも最大の(と言っても大して大きくない)銚子滝をバックにシャッターを押して貰うことにする。頼んだ人は、格好や機材から見てプロカメラマンらしく助手らしい人まで引き連れていた。私の立つ位置までこまかく指示してくるので、そこまでしなくってもただ簡単に撮ってくれればいいんだけどなー。その割には後でできあがった写真を見ても大したこと無かった気がした。まぁこれは私のカメラのせいだろう。すんませんね、プロのカメラマンさんに安物のカメラ使わせてしまって。
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遊歩道だから、勿論自転車が走れるような道ではない。丸太の橋や木の階段までそこかしこにあるから、時には自転車を担がなくてはならない。そういう訳で、自転車のバックに挟んでおいた腕時計が無くなっているのに気づく。時計は安物だが、旅先で時間が分からなくなるのはひどく不安なので急いで捜しに引き返すが結局見つからずじまい。これから次の町までは時計ナシの旅となってしまった。別にバスや電車で旅行してるんじゃないから時間は分からなくてもいい筈なんだが、ないとどうも落ち着かないし、日記に時間も記入できない。
右へ行けば八戸方面、左は青森への分岐点の焼山という所でカレーの昼飯にする。飯の時間も時計がないと何となく「今食べるのでいいんかなー」なんて思っちゃいそう。でもいつだって適当な時間に食べてるんだから構わない筈なんだけどね。やっぱりどうも時間が分からないというのは落ち着かないものがあり、尻がむずむずしちゃいそう。
これから青森へ抜けるには、あの有名な八甲田山を越えて行かなくてはならない。正確には八甲田山のてっぺんを越える訳がなく「八甲田山の側を越える」なんだが、やっぱり映画になるほど難所の側なんだから一応の覚悟はしていかなくては。 -
十和田湖から焼山まではゆるやかな下りが続いていたが、一転ここからは極端な上りとなる。さすが八甲田という程の勾配で、変速機を一番ロー側にすると、平地ではチェーンが外れたように軽くなるのが、それを使っても満身の力を込めてペダルを踏まなくては自転車は上へ上がってくれない。そして、ペダルの回転を止めれば、瞬時にタイヤの回転も止まり自転車はペタンと横に倒れてしまう程の勾配なのだ。千葉のあんちゃんがくどいていたのはこーいう登りのことだったのだろうか。幸いなことに車は滅多に通らないので、道路の幅をいっぱいに使ってぐねぐねと蛇行しながら上っていく。
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2時間ほどそんな登りで悪戦苦闘をして、頂上近くの睡蓮沼という場所に着く。この辺の景色は最高だ。少し天気が悪いせいもあって、真夏でも肌寒く少し霧もある。高山特有の低い這い松や立ち枯れの景色の中、軽いアップダウンの続く頂上の道は疲れも苦労も吹っ飛ぶ世界だ。できればこんないい場所でキャンプでも出来て景色を満喫できれば最高なんだが、そうもいってらんないので道に従い下りに入る。
千人風呂で有名な酸ヶ湯温泉で、名物の雲谷そばという間の抜けた味のソバを食べて昼飯代わりにする。本当に昼飯代わりという程度のボリュームで情けなかった。ソバ自体も固ゆでの素麺というところだ。これが名物なのか?
その後はずーっと下りばっかりの道を30Kmも堪能して5時頃(時計がない)青森に着く。30キロずっと下りの道を自転車で下るって想像つきますか?夢の世界ですよ。
青森市内に入ったので早速時計屋を探し、旅の途中なので一番安いのを下さいと頼んだ所、5千円以内のを3つ見せてくれる。さすがにディズニー時計は遠慮して、普通のを買う。3800円というところを300円まけてくれた。この時代はまだデジタル時計がないので、極端に安い時計というものはないのだった。今の時代なら(2022年)中国製が百均で売られてますがね。
青函連絡船のことが頭にあったので、青森駅へ行って駅員さんに北海道への渡り方を尋ねたら、自転車ならフェリーだと3キロ離れたフェリー乗り場を教えて貰う。街から離れたフェリー乗り場は薄ら寂しいところで、最果ての地という感じがした。なんだかイメージと違うなぁ。 -
フェリーターミナルの玄関にキャンピング仕様の自転車が2台置いてあった。私と同じく、これから北海道へ渡る2人組は会社を辞めて関西からはるばる来たそうだ。特に予定はないが、日本一周したいそうだ。知らない人は自転車で日本一周なんて滅多にあるものではないと思うだろうが、この手の旅をしているとたまにはお目にかかれる。話をしてみて共通するのは、どいつも無職ってこと。そりゃそうだろな、自転車で日本一周ったら1週間や十日じゃできる訳ない。半年や一年も休ませてくれる会社は日本にゃないぞ。
フェリーは東日本フェリーで、運賃は自転車込みで1350円。夜8時の出航のに決まる。まだ2時間もあるので、ターミナルビルで豚カツ定食と瓶ビールで北海道上陸の前祝いをする。カメラのフィルムも終わったので、ここで交換しておく。
それでもまだ出発には時間があるので見物がてら待合室に行ってみたら、な、なんと十和田の民宿で相部屋だった宮城のあんちゃんと再会できた。既に津軽半島最先端の竜飛岬まで行って来て、これから北海道へ渡るそうだ。さすがに車は速い。フェリーはキャンセル待ちなので夜中になってしまうらしい。私も予約はしてなかったが、自転車ならいつでもフェリーの端っこに置くことができるのですぐに乗れる。しかし車はそうはいかないってことだ。待合室のベンチに座り、あれこれ話をする。牛乳をおごってもらい、私はアイスをおごってやる。道内でも会えるといいが、ペースが違いすぎる。これで今生の別れになるだろう。宮城県人らしく素朴でいい奴なので寂しい気がする。お互いの健闘を祈って一足先にフェリーに乗り込む。 -
大きな口を開けた薄暗いフェリーの中へ恐る恐る自転車を漕いで入っていき、係員の誘導で船体の端っこに自転車を立てかけ、ロープで固定して貰う。これから函館まで4時間の船旅だ。二等席のカーペットの上に座り、いよいよ北海道だなーと考えると興奮して寝るどころではないが、体力回復を考えて横になり目をつむる。
本日の走行距離たったの59Km。痛快丸かじりの下り30キロ!
自転車の旅 おーい北海道(6)へ続く
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この旅行記へのコメント (2)
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- 万歩計さん 2022/04/04 23:42:59
- 古い旅の記録
- おくさん、こんばんわ。
半世紀近く前の旅の中身を、よくここまで書けるものだと感心しています。「旅の途中ではこまめに日記を書く」とお聞きしたことがありますが、若い時からそうだったのですか。そうであったら、その記録が今でも残っていることに2度感心します。
万歩計
- おくさん からの返信 2022/04/05 00:06:29
- Re: 古い旅の記録
- 万歩計さん、こちらにもコメントありがとうございます。
どっかで書いてると思いますが、当時ボランティアしていた所で会員向けの冊子を出していたのですが、毎回サイクリング旅日記を載せていました。
ブログはそれに加筆しています。
でも、最初のころのや短期物は未発表なのでブログ用に書き下ろしたものです。
相当前の事なのに、写真を見ると後から後から思い出してきます。
新しい事は覚えられないけど古い事は覚えているって奴でしょうか!w
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