養老旅行記(ブログ) 一覧に戻る
2021年3月30日(火)2時前、養老神社から降りて来て、表参道の鳥居を抜ける。抜けたところの真ん前にあるのが豆馬亭と云う旅館。一部は改築されているが、創業の明治時代の部材の多くがそのまま残っている、すごく趣のある旅館だが残念ながら廃業したらしい。<br /><br />1880年(明治13年)頃に村上旅館として創業。その後昭和になって(昭和11年の案内図ではまだ村上樓)、西本願寺の執行長などを務めた島地黙雷(しまじもくらい)の漢詩を参考に改名した。「馬が一寸ほど、人が豆粒のように見える(ほどの絶景)」という意味の漢詩で、旅館からの景色を見てそう見立てたものと思われる。<br /><br />北原白秋をはじめ、数々の文人墨客や政治家が訪れたそうで、白秋や野口雨情の扁額が掛っているそうだ。隣に資料館がある(下の写真1)ので、そんな資料が展示されていたのかしら?<br /><br />玄関の横に鹿のものと思われる頭蓋骨が飾られていたが、養老山系の猪、鹿を秘伝の味噌出汁で食べられた。2代目から4代目までは亭主が猟師をされてたとのこと。1泊2食付で1人1万円ちょっとからだったようで、廃業は残念だね。<br /><br />豆馬亭の向かいに不老ヶ池があるが、湧水などのきれいな水にしか棲まないハリヨと云う絶滅危惧種のトゲウオ科の小魚が生息している。秋の紅葉が絶景とのことだが、桜とのコンビネーションもなかなかのものだった。池の前には「八丁」の石標がある(下の写真2)。<br /><br />わずかにしか見えないが、不老ヶ池の上(西)には千歳楼と云う江戸中期の1764年に開業した旅館があり、こちらはまだやってるらしい(下の写真3)。1泊2食で1人2万円くらいから。旅館の名前は創業した年が元正天皇行幸から丁度一千年に当たることから命名されたもの。皇太子時代の大正天皇、有栖川宮、山岡鉄舟、横山大観など錚々たる方々がここを訪れている。建物は国の有形文化財。<br /><br />不老ヶ池の北には元正天皇行幸遺跡がある。もともとはここには元正天皇・聖武天皇を祭神とした多芸行宮神社があったが、1907年(明治40年)に養老神社に合祀された。現在は養老神社の大祭にはお旅所となっている。この遺跡前の十字路には「九丁」の道標と「たき道約九丁」の道標が建つ(下の写真4)。<br /><br />豆馬亭前から滝谷左岸に降りて行く坂道の上に瀧護不動明王と刻まれた石標がある(下の写真5)。1903年(明治36年)に養老JCT近くの祖父江出身の草相撲横綱の高木石松が建立したもの。少し下流にある養老寺の境内で行われた地方巡礼で横綱になったことに感謝したもので、養老寺に向かって建てられている。彼は深く不動明王を信仰していた。<br /><br />この石標から坂道を降りると養老孝子坂。多くの土産屋や飲食店が並ぶが親孝行のふるさと会館と云う孝子物語を模型や映像で紹介している施設もある。月曜は休館で、12月から3月の冬期は閉館される。<br /><br />無料なので、入ってみると孝子物語の紹介より明治15年(1882年)から昭和11年(1936年)のものまで5枚掛けられている養老公園の絵図が興味深い。千歳楼は明治15年の絵図から載っている。明治26年のものには村上(後の豆馬亭)も描かれている。大正時代にはこの孝子坂に店や宿が増えている。昭和初めのもの、滝のスケールが凄すぎる。エンゼルフォール以上やね。<br /><br />会館の入口の少し上流側に孝者百行之基碑。戦争中の1944年に孝揚会を主催する日比辰三郎氏によって建立されたもの。それ以上の経緯は不明。碑文は中国の漢の時代の古書「白虎通」の「孝は百行の基(孝行はすべての善行の基本)」を元にしている。入り口脇の孝子の鐘は1988年に大垣中ロータリークラブが寄贈したもの。こちらも詳細は不明。隣には「飛騨・美濃紅葉三十三選の地」の石碑も建つ。<br /><br />孝子坂は養老神社の下に架かる妙見橋から滝谷に架かる7つの橋の一番下流の松風橋までの間を云うが松風橋のそばに横綱鬼面山碑が建つ。1869年(明治2年)に明治初の第13代横綱となった。この時すでに43歳で、現在でも横綱昇進の最高年齢となっている。幕内14年27場所で、優勝(相当)7回、143勝24敗16分8預63休。出身が養老駅周辺辺りの鷲巣で、「孝心厚く郷土を忘れず」と伝えられている。<br />https://www.facebook.com/media/set/?set=a.6827798057290160&amp;type=1&amp;l=223fe1adec<br /><br /><br />孝子坂の途中にあった養老寺の話を飛ばしたが、それは続きに

岐阜 養老孝子坂(Koshi(Dutiful child) Slope, Yoro, Gifu, Japan)

4いいね!

2021/03/30 - 2021/03/30

102位(同エリア182件中)

旅行記グループ 養老

0

5

ちふゆ

ちふゆさん

2021年3月30日(火)2時前、養老神社から降りて来て、表参道の鳥居を抜ける。抜けたところの真ん前にあるのが豆馬亭と云う旅館。一部は改築されているが、創業の明治時代の部材の多くがそのまま残っている、すごく趣のある旅館だが残念ながら廃業したらしい。

1880年(明治13年)頃に村上旅館として創業。その後昭和になって(昭和11年の案内図ではまだ村上樓)、西本願寺の執行長などを務めた島地黙雷(しまじもくらい)の漢詩を参考に改名した。「馬が一寸ほど、人が豆粒のように見える(ほどの絶景)」という意味の漢詩で、旅館からの景色を見てそう見立てたものと思われる。

北原白秋をはじめ、数々の文人墨客や政治家が訪れたそうで、白秋や野口雨情の扁額が掛っているそうだ。隣に資料館がある(下の写真1)ので、そんな資料が展示されていたのかしら?

玄関の横に鹿のものと思われる頭蓋骨が飾られていたが、養老山系の猪、鹿を秘伝の味噌出汁で食べられた。2代目から4代目までは亭主が猟師をされてたとのこと。1泊2食付で1人1万円ちょっとからだったようで、廃業は残念だね。

豆馬亭の向かいに不老ヶ池があるが、湧水などのきれいな水にしか棲まないハリヨと云う絶滅危惧種のトゲウオ科の小魚が生息している。秋の紅葉が絶景とのことだが、桜とのコンビネーションもなかなかのものだった。池の前には「八丁」の石標がある(下の写真2)。

わずかにしか見えないが、不老ヶ池の上(西)には千歳楼と云う江戸中期の1764年に開業した旅館があり、こちらはまだやってるらしい(下の写真3)。1泊2食で1人2万円くらいから。旅館の名前は創業した年が元正天皇行幸から丁度一千年に当たることから命名されたもの。皇太子時代の大正天皇、有栖川宮、山岡鉄舟、横山大観など錚々たる方々がここを訪れている。建物は国の有形文化財。

不老ヶ池の北には元正天皇行幸遺跡がある。もともとはここには元正天皇・聖武天皇を祭神とした多芸行宮神社があったが、1907年(明治40年)に養老神社に合祀された。現在は養老神社の大祭にはお旅所となっている。この遺跡前の十字路には「九丁」の道標と「たき道約九丁」の道標が建つ(下の写真4)。

豆馬亭前から滝谷左岸に降りて行く坂道の上に瀧護不動明王と刻まれた石標がある(下の写真5)。1903年(明治36年)に養老JCT近くの祖父江出身の草相撲横綱の高木石松が建立したもの。少し下流にある養老寺の境内で行われた地方巡礼で横綱になったことに感謝したもので、養老寺に向かって建てられている。彼は深く不動明王を信仰していた。

この石標から坂道を降りると養老孝子坂。多くの土産屋や飲食店が並ぶが親孝行のふるさと会館と云う孝子物語を模型や映像で紹介している施設もある。月曜は休館で、12月から3月の冬期は閉館される。

無料なので、入ってみると孝子物語の紹介より明治15年(1882年)から昭和11年(1936年)のものまで5枚掛けられている養老公園の絵図が興味深い。千歳楼は明治15年の絵図から載っている。明治26年のものには村上(後の豆馬亭)も描かれている。大正時代にはこの孝子坂に店や宿が増えている。昭和初めのもの、滝のスケールが凄すぎる。エンゼルフォール以上やね。

会館の入口の少し上流側に孝者百行之基碑。戦争中の1944年に孝揚会を主催する日比辰三郎氏によって建立されたもの。それ以上の経緯は不明。碑文は中国の漢の時代の古書「白虎通」の「孝は百行の基(孝行はすべての善行の基本)」を元にしている。入り口脇の孝子の鐘は1988年に大垣中ロータリークラブが寄贈したもの。こちらも詳細は不明。隣には「飛騨・美濃紅葉三十三選の地」の石碑も建つ。

孝子坂は養老神社の下に架かる妙見橋から滝谷に架かる7つの橋の一番下流の松風橋までの間を云うが松風橋のそばに横綱鬼面山碑が建つ。1869年(明治2年)に明治初の第13代横綱となった。この時すでに43歳で、現在でも横綱昇進の最高年齢となっている。幕内14年27場所で、優勝(相当)7回、143勝24敗16分8預63休。出身が養老駅周辺辺りの鷲巣で、「孝心厚く郷土を忘れず」と伝えられている。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.6827798057290160&type=1&l=223fe1adec


孝子坂の途中にあった養老寺の話を飛ばしたが、それは続きに

PR

  • 写真1 豆馬亭資料館

    写真1 豆馬亭資料館

  • 写真2 八丁の道標

    写真2 八丁の道標

  • 写真3 不老ヶ池と千歳楼

    写真3 不老ヶ池と千歳楼

  • 写真4 たき道約九丁の道標

    写真4 たき道約九丁の道標

  • 写真5 瀧護不動明王石標

    写真5 瀧護不動明王石標

4いいね!

利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。 問題のある投稿を連絡する

コメントを投稿する前に

十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?

サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)

報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。

旅の計画・記録

マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?

フォートラベル公式LINE@

おすすめの旅行記や旬な旅行情報、お得なキャンペーン情報をお届けします!
QRコードが読み取れない場合はID「@4travel」で検索してください。

\その他の公式SNSはこちら/

PAGE TOP