◆伊根～小代～日吉 由良川水系の橋梁等を巡る旅◆その２

2021/10/02 - 2021/10/04

由良川水系等の橋梁等を巡る旅、後半です。
天橋立からは海沿いの道を進んで伊根へ。海沿いに舟屋が並ぶ独特の街並みは一度は観てみたいものです。更に国道178号等で日本海沿いに浜坂へ。小代温泉で泊まり、帰りは和田山等内陸の橋等を巡って京都へ至るルートです。
由良川水系からは大きく逸れますがお許しください。

その１はこちら⇒　https://4travel.jp/travelogue/11715366

エリア 香住・余部(兵庫)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0
• ホテル: 5.0
• グルメ: 5.0

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: レンタカー 私鉄 徒歩

【伊根の舟屋】

舟屋は船を海から引き上げて風雨等から守るための建物で、二階には漁具置き場として利用し、住人は道路を挟んで向かいの家に住んでいる人が多いようです。若狭湾に突き出た半島が自然の防波堤の役割を果たす、穏やかな伊根湾だからこその独特な家並みですね。
【重要伝統的建造物群保存地区】

伊根の舟屋 名所・史跡

【国道178号１号スノーシェッド】
2001年(平成13年)竣工。

海沿いの国道を北上、変わったシェッドがありました。谷側柱がトラスになっています！
親不知にある、谷側柱がアーチの向山４号シェッドと双璧をなす格好良さ！

【てんきてんき橋】
1992年(平成4年)竣工、木造タイドアーチ橋他。

弦材や斜材に集成材、対傾構や下横構には鋼材（タイロッド）という使い分けをしています。集成材を使っていない高欄は腐食も進み、木材やプラスチックで更新されている所もありましたが、アーチ橋の各部材は健全に見えました。少したわみが気になりますが･･･

【港大橋】
1967年(昭和42年)竣工、跳開橋他。

以前観てきた東高洲橋と同様、路面上にカウンターウエイトを備えた門構を持つ可動橋。現在は固定して動かしてないようです。

山陰本線【竹野川橋梁】
1911年(明治44年)開通、ラチスガーダー橋＋プレートガーダー橋他。

全国で３例のみ現存とも言われるラチスガーダー桁の内の一つ。ラチスガーダーは1920年(大正9年)架設と言われています。
【土木学会選奨土木遺産】

なぜこの構造にしたのか。『本邦鉄道橋梁ノ沿革ニ就テ』を要約すると、「欧州での戦乱の影響で大型のプレートを輸入する事ができず、国内の製鉄所も未だ大型の物を作るだけの設備が整っていない為、大正七年にプレートの代わりにアングルを格子状に組んだラチスガーダーを設計した」とのこと。
40～70ftの同様の桁は1921年(大正10年)前後に各地の路線に用いられ、特に名寄本線と羽越本線に多数あったそうです。

第4連のラチス桁と橋脚の向こう側の第5連は後から増設したとの事。
ラチス桁の鳥取方橋脚は床石が低い位置に。水害対策として橋脚を嵩上げしたようです。

山陰本線【矢田川橋梁】
1912年(明治45年)開通、プレートガーダー橋。

橋脚の石積みが横幅の広いものと狭いものを１段づつ交互に積む、イギリス積み風の積み方をしています！

山陰本線【余部橋梁】
2010年(平成22年)竣工、エクストラドーズド橋。

強風対策として防風壁を設置、塩害対策としてRC橋脚のかぶりは最大200mm!!

余部鉄橋(余部鉄橋空の駅) 名所・史跡

【旧余部橋梁】
1912年(明治45年)竣工、鋼高架橋（トレッスル橋脚）。

現地に旧橋の写真が展示されていました。
近隣の子供達が岩を運んで新線建設の手伝いをしてくれたそうです。
【土木学会選奨土木遺産】

餘部駅 駅

1986年(昭和61年)最大風速約33m/sの突風により回送中の列車が転落、6名の命が失われる『余部鉄橋列車転落事故』が起き、2010年(平成22年)山側の新線に切り替えられました。
切替後、橋の一部は保存され、事故の慰霊碑や見学用のエレベーター等も設置されています。

餘部鉄橋事故犠牲者慰霊碑 名所・史跡

山陰本線【東下谷隧道】
1912年(明治45年)竣工。

架替に当り、橋梁の起点方に隣接する隧道はそのまま利用した為、S字型の橋桁を油圧ジャッキで移動・旋回する「橋桁移動旋回工法」で架設されました。山側の展望台に行くとＳ字の線形が良く判るようなので、次回は行ってみようと思います。

山陰本線【田君川橋梁】
1912年(明治45年)開通、1919年(大正8年)頃増連、ラチスガーダー橋＋プレートガーダー橋。

こちらは迷わず近くへ行けました。獣害避けの柵があって、残念ながらこれ以上は接近できません。竹野川橋梁は色んな桁が使われていましたが、こちらは全く同じ高さのプレートガーダーとの２種類でスッキリしています。一部プレートの腐食やリベットの脱落も見られますが、塗装はしっかりとされているようで、これからも頑張ってくれそうです。
【土木学会選奨土木遺産】

【和田口めがねトンネル】（鉄道側名称不明）
1912年(明治45年)開通、アーチ橋。

山陰本線が和田川と道路を跨ぐ２連アーチ。2004年(平成16年)に道路の盤下げ等の改修が施行され、現在の姿に。それまでの路面は、中央の橋脚の上から２段目の石の下辺りの高さでした。（笠石を除く）
橋脚の石積みはこちらもイギリス積み風。

中佐屋旅館

新温泉を横目に見つつ、更に内陸の小代温泉へ。昨日は早朝主発・撮影重視で宿を選びましたが、２晩目は食事重視です♪
少々無理な行程をこなしてきた甲斐があるというものです。お風呂はもちろん温泉です♪

小代温泉　中佐屋旅館 宿・ホテル

『【但馬牛すき焼】一泊二食付≪温泉≫プラン』、というプランを選びました。まだ蟹の季節ではないしすき焼のプランだし、蟹は出てこないものと決めつけていましたが、『香住ガニ』というのが捕れるらしく、出てきました♪
すき焼だけでも一人で食べきれない位の量なのにカニまで付いてきて大満足。建物はかなり年季が入ってますが、お刺身も前菜も超美味しかったし、お値打ちなので皆さんも泊まってあげて下さい。

こちらは朝食。
鍋は湯豆腐。朝食は割と控えめでした。
ですが、帰りがけに大きな栃餅を沢山戴きました！

【旧矢田川橋】（廃）
1918年(大正7年)頃製造、ボーストリングトラス橋。

洲本市洲本川に架かる塩屋橋として６連架橋、1958年(昭和33年)に移設。1974年(昭和49年)に新橋が架設され、歩行者用になり、いつからか通行止めになったようです。

残る５連は1958年(昭和33年)新温泉に戸田橋として移設され、1983年(昭和58年)架替に伴い撤去。1986年(昭和61年)淡路島公園に塩屋橋として３連が再度移設・保存され、有形文化財に登録されています。

山陰本線【和田山駅機関庫】
1911年(明治44年)開通、1912年(明治45年)築。

豊岡機関区和田山支区の所属。煉瓦の付柱等を部分的に黒色で塗り分け、ポリクロミーのような演出をした機関庫。すばらっ！
屋根が無くなり廃墟のように荒廃していますが、何とか活用して保存されることを期待しています。

和田山駅機関庫 名所・史跡

播但連絡道路【虎臥城大橋】（とらふすじょう）
1999年(平成11年)竣工、12径間連続充腹アーチ橋。

「天空の城」竹田城址から見下ろすと、さぞかし良い眺めでしょう。

情報館 天空の城 名所・史跡

【神子畑鋳鉄橋】（みこばた）
1885年(明治18年)頃竣工、1983年(昭和58年)復元、上路アーチ橋。

橋梁史上貴重な全鋳鉄製！
明延鉱山から神子畑選鉱所や生野精錬所へ鉱石運搬の為に五つの橋が架設されました。（一つは吊橋）
【重要文化財】【日本遺産】

神子畑鋳鉄橋 名所・史跡

鋳鉄と聞くと、刻印を探したくなるのが人情。『Glasgow』と刻印があるらしいです。床組の木材に焼印は見つけましたが、刻印は見つかりませんでした...orz

【羽渕鋳鉄橋】（はぶち）
1885年(明治18年)頃竣工、1995年(平成7年)復元、上路アーチ橋。

こちらは２連のアーチ橋。両橋共に1887年(明治20年)竣工との説もあるようです。
【日本遺産】

羽渕鋳鉄橋 名所・史跡

1889年(明治22年)の洪水により流され修復、その後生活道路として使われていましたが、台風災害後の河川改修に伴い、橋台の石積も含め架橋時の姿に復元され移築・保存されています。

【両橋】
1938年(昭和13年)竣工、上路開腹アーチ橋。

由良川水系に戻りました。
竣工年の古い割にライズ比の小さい現代的なアーチ橋。
【土木学会選奨土木遺産】

【日吉ダム】
1997年(平成9年)竣工、重力式コンクリートダム。

隣接して温泉やキャンプ場も備え、ダムを町興しに活用して成功を収めています。
ここからは淀川水系になります。

日吉ダム 名所・史跡

【ふれあい橋】
1999年(平成11年)竣工。

ダムの減勢池脇に架かる、直径75mの円形橋。円形橋はサンブリッジ・北方等、意外とあちこちにあるようですが、実際に観るのは初めて。写真の向こう側の活用にも含みを持たせているのでしょうか。

【スプリングスひよし展望連絡橋】
1998年(平成10年)頃竣工。

主桁と斜めに交差するケーブルが下から主桁を支える変わった構造。上下の違い・アーチとケーブルの違いはありますが、大糸線の除沢川橋梁と似ています。「交差形変形斜張橋」とでも分類しておきましょう。
【土木学会デザイン賞受賞】

道の駅 スプリングスひよし 道の駅

山陰本線【第二大堰川橋梁】
1910年(明治43年)開通、1967年(昭和42年)架替、下路ワーレントラス橋他。

煉瓦／石積みの橋脚が歴史を感じさせます。
石積みは矢田川橋梁と同じイギリス積み風の積み方。

山陰本線【前山隧道】
1910年(明治43年)開通。

アーチが欠円アーチ!!
明神山隧道と同様、電化時に断面拡大の為の改修を受けた結果かもしれません。こちらはアーチと側壁に段差を付けず、コンクリート等で側壁の曲線を延長しています。

【大堰橋】
1935年(昭和10年)竣工、下路カンチレバートラス橋他。

リベットをボルトに更新したり、垂直材下部にプレートを溶接したり、さりげなく補強されています。

桁下を覗くと、縦桁のウェブをチャンネルで挟み、下フランジにプレートを溶接するなど、がっつり補強されていました。狭い幅員ですが、末永く使ってほしいものです。

山陰本線【第91号橋梁】
1899年(明治32年)京都鉄道が開通、煉瓦積ねじりまんぽ（斜拱渠）。

山陰本線にもねじりまんぽがありました。

南側はボックスカルバート、北側はヒューム管に接続して延長されていました。
起点側の側壁脇に７～９段程煉瓦積みがあります。通水時の通路でしょうか。

【旧老の坂隧道】
1933年(昭和8年)竣工。

『京都國道(18號線)改良故事』（高西敬義）によると、「アーチ部は岩質に応じコンクリートブロック２～４枚巻、側壁は現場打ちコンクリート」とのこと。
現在は内側をコンクリートで補強し、歩道として供用しています。

1965年(昭和40年)南側の旧隧道を拡幅した新隧道との間に、北垣国道氏の揮毫による扁額が保存・展示されています。「遠邇之利往来之便」

東海道線【桂川橋梁】上り線
1876年(明治9年)開通、1912年(明治45年)架替、下路ポニーワーレントラス橋。

トラスは1911年(明治44年)アメリカンブリッジと汽車製造の製造。

割れたアメリカンブリッジの銘板が残っていました。一度全て取り外してレプリカを設置してほしいものです。

東海道線【桂川橋梁】下り線
1930年(昭和3年)頃竣工、下路プラットトラス橋。

トラスは1928年(昭和3年)川崎造船所の製造。４パネルで曲弦のトラスは初めて観ました。４パネルだとワーレンとプラットどちらで区分したら良いのか、いつも悩んでしまいます。

今回の旅は以上です。
近鉄のお店でおつまみや酒を買い込んで帰路につきました。
前から観たかった余部鉄橋やラチスガーダーに鋳鉄橋も観られて、充実した旅になりました。その他にも、伊根の舟屋に木造橋、可動橋にねじりまんぽ、イリノイ製鉄の銘板とお腹いっぱい大満足です♪ ちょっとトラスが小粒でしたが、最後にアメリカンブリッジが補ってくれました。

振り返ってみると、神子畑鉱山や日本冶金工業グループの宮津海陸運輸、河守鉱山の貨物輸送を担った北丹鉄道等、鉱山との関わりの深さを感じさせる地域でもありました。

今回観た橋の他にも宮津から伊根にかけては古い石橋の宝庫ですし、舞鶴にも古いトンネルや戦跡が数多く残っているようです。また、浜坂の先の、若桜鉄道の橋梁や千本ダム・惣郷川橋梁等も観に行きたいですね。

トータル　橋38、トンネル９、ＳＬ２、他８　を巡る旅でした。
（重文１、有文１、土木遺産４）