2019/06/29 - 2019/07/06
10位(同エリア191件中)
ウェンディさん
- ウェンディさんTOP
- 旅行記382冊
- クチコミ2269件
- Q&A回答130件
- 2,390,456アクセス
- フォロワー354人
2019年の夏に友人と7日間を過ごしたインドのラダック。
一応、女子旅♪と銘打った旅でしたが、その内容は女子旅特有のラグジュアリーさや華やかさとは全く無縁で、ラダックに到着して最初の5日間で湯で体を流したのはたった1回だけで、それもバケツに貯めたお湯を柄杓にとり、体を流す行水でした。
ラダックでは風呂という習慣がないのか?
宗教の教義で、体を水に濡らすことが禁忌とされているのか?
そんな風に思われるかもしれませんが、ラダックでは“水”というものが非常に貴重な資源で、大きなインダス川やザンスカール川という水源があるにも関わらず、州都のLeh(レー)ですら各家庭への水道管の普及率は低く、水は共同水栓へ汲みに行くのが一般的です。
ですから、浴槽に湯を張るお風呂は究極の贅沢な行為となります。
州都ですら水道施設が普及していないのに、それが州都を離れた田舎の村で更に川から離れた山沿い地区ともなると地域に水道配管すら無く、そのまま直に飲める井戸水は貴重品であり、村人同士での水の取り合いが発生してしまうほど。
体を洗うための水を確保するということすらラダックではなかなか大変な行為なのです。
「でも、灼熱地獄の真夏のインドでシャワーすらできないだなんて、汗臭くて、体も痒くなるのでは?」と懸念されるかもしれませんが、ラダックではそんな心配は無用でした。
ラダックがあるのは標高が4000m近い高山エリアなので日本のジメジメ蒸し暑い夏とは同一視できない場所です。
ラダックは夏でも朝晩はフリース素材のジャケットが必要で、4000mエリアでは雪もチラチラするような土地。
夏は日中の気温が30℃近くまで上がる時もありますがそれは稀なことで、日陰で過ごすならば真夏でも長袖でシャツ十分過ごせてしまう気候です。
真夏は大気も非常に乾燥していて、少し運動して汗をかいたとしてもその水分はあっという間に蒸発してしまい衣服がべたつくということも少なく、基本は濡らしたタオルで体を拭くことさえ出来れば例えシャワーが週に1度だとしても、そんなに気にはならない気候でした。
とはいえ、女性として気になるのが髪の毛のべたつき。
頭皮は手足の皮膚よりも汗の蒸発が遅いうえに、強い紫外線を遮るために帽子を被っていたので、1日が終わるころにはなんとなく頭から蒸れた匂いが漂ってくる事態に…。
だから、小川が近くにある宿に宿泊する時はラダックの村人に倣い、私たちも小川の水で髪の毛をジャブジャブ。
シャンプーもリンスもない冷たい水だけの素洗いですが、地肌の汗を落とせるだけで、髪の毛も気分もすっきり♪
豪華さは全くない、どちらかというと野性的なラダック女子旅でしたが、現地で出会った人たち、目にした光景、そして友人と二人で経験した全てのことは、一生の宝物となりました。
★2019夏 インドの秘境ラダック ホームステイ&トレッキング旅 日程★
□6/29 NRT11:15-DEL17:00 AI307
□6/30 DEL6:45-IXL8:20 AI445 ホームステイ
■7/1 下ラダックのゴンパ巡り ホームステイ
サスポールの洞窟壁画 アルチ寺院
ティンモスガン村でホームステイ
■7/2 下ラダックのゴンパ巡り ホームステイ
カル寺院 リゾン寺院 チュリチェン尼僧院
スムダチュン寺院
チリン村でホームステイ
□7/3-7/5 Ganda la Passトレッキング(2泊3日)
□7/ 6 IXL 11:15-DEL 13:30 AI446
DEL 21:15-8:45(7/7)NRT AI306
☆ラダック内の手配(ガイド+運転手+宿泊):Hidden Himalaya
★2019夏 インドの秘境ラダック ホームステイ&トレッキング旅 旅行記★
【1】 旅の序章 -高山病・e-VISA・旅行準備
https://4travel.jp/travelogue/11515809
【2】 ガンダ・ラ トレック Day1 -秘境の料理教室@4138m
https://4travel.jp/travelogue/11517166
【3】 ガンダ・ラ トレックDay2 -酸素50% 海抜5000mの絶景へ-
https://4travel.jp/travelogue/11519590
【4】 ガンダ・ラ トレック Day2&3 -宿無し旅人、濁流の川を渡る-
https://4travel.jp/travelogue/11521283
【5】サスポールの洞窟壁画に魅せられて
https://4travel.jp/travelogue/11606651
【6】初めての農家ホームステイ
https://4travel.jp/travelogue/11610553
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 4.5
- ホテル
- 5.0
- 同行者
- 友人
- 一人あたり費用
- 15万円 - 20万円
- 交通手段
- レンタカー 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
友人と二人で旅したラダックは、インドというよりも地理的・文化的にはチベットそのものの場所。
旅前半の3日間は酸素濃度が薄い環境に体を慣らす高度順応、そして後半はちょっとワイルドに5000mの峠へトレッキングを組み入れ、無謀にもおばちゃん二人でヒマラヤの懐へと飛び込んでみた。
ラダック入りした初日は、高山の洗礼でもある山酔い(高山病)に襲われ、この先どうなることかと案じたのだが、ダイアモックスの薬効あらたかで翌朝にはその症状もケロリと回復し、元気にサスポ―ルの崖を登り、11世紀に描かれた石窟壁画もじっくりと見学することができた。
旅行記-6は、そのサスポール石窟を出たところからスタート♪ -
サスポール石窟の次の目的地は、アルチ・ゴンパ。
アルチ・ゴンパがあるのはインダス川の川向うなので、まずは川沿い低地まで車で下る。
(写真を横に流れる緑色の川がインダス川)インダス川とザンスカール川の合流地点 滝・河川・湖
-
アルチ・ゴンパのあるエリアのインダス川の色は濁流のような茶色。
これは、上流で合流したザンスカール川の影響で、崖の壁を削りながら流れてくるザンスカールの強い雪解けの水流の色だ。
インダス川には橋がかかり、橋の欄干にはこれでもかというほどの5色のタルチョ(旗)が巻き付けられていた。
-
タルチョの5色はチベット仏教世界を構成する5要素であり、旗の青・白・赤・緑・黄の色は、それぞれに意味があり天・風・火・水・地を表している。
皆がそれぞれの祈願をこめて、橋にタルチョ巻き付けたということだが…。
こんなにグルグルに巻き付けたら、願いを聞き届ける役目の仏様もその解読に大変な苦労をしているのだろう。 -
この日の私たちの動きをラダックの地図に入れてみた。
旅行記-5で紹介したのがレーからサスポールまでの道中で、旅行記-6ではアルチ村と農家ホームステイをしたティンモスガン村での様子を紹介する。
この日の行程で宿泊地をガイドブックでも紹介のないティンモスガン村としたのには、理由が2つある。
理由の1つ目は高度順応のためで、下ラダックの中でも少しでも標高が低いエリアで夜を過ごし(寝ている間は呼吸が浅くなり、標高が高いと体内への酸素供給量が低下して高山病が一気に悪化しやすい)、高山病の発症を予防する目的があったからだ。
そして、もう1つは信頼できる農家ホームステイ先を確保するため。
ラダックの田舎にはいわゆるホテルと呼ばれるものはほとんどなく、旅人が宿泊できる場所は一般のご家庭の空いている部屋での民泊。
だから、いきなりその村を訪れて「一晩の宿をお借りできませんか?」と聞くことも可能なだが、その場合は宿泊する家の衛生状態やベッドの状況(南京虫の存在など)は事前にはわからなく、それなりのリスクを伴うことが多い。
しかし、私たちがこの日の宿に選んだのは、私たちの車のドライバーであるドジンさんのご実家で、お父様が住むティンモスガン村の自宅をホームステイができるように改築し、ある程度の衛生状態が保たれている宿だ。
私達が現地手配をお願いした現地旅行会社(Hidden Himalaya)では、そのような事情も考慮して運転手さんを配備してくれた。 -
アルチ・ゴンパ(ゴンパ=寺院)があるのはアルチ村のはずれで、ここはラダックだけではなくチベット文化全体から見ても仏教美術の宝庫と言われているゴンパだ。
特にエントランス近くのお堂:三層堂(スムチェク)は、私自身も「こんなのは初めて見た!」というほど美しいものばかりで、薄暗いお堂の中に浮かび上がる仏像壁画や立像の姿に見入ってしまったほどだ。 -
アルチ・ゴンパのお堂の中は撮影禁止なので、実際に撮った写真ではなくお堂の前にあったポスターからの紹介になるが、この写真はお堂の南壁に描かれていた緑色ターラー菩薩。
11世紀にカシミール(パキスタン)で修業をしてきた32人の僧侶が描いたといわれている。
後世に修復の手は入ってはいるが、その美しさは当時から変わっていないそうだ。
ターラー菩薩のターラーとは観音の瞳を指す言葉で、観音様の瞳から生れ出たとされるターラー菩薩は万能の救済者であるとも言われている。
三層堂内には様々な顔のターラー菩薩像が描かれていたが、私の一押しはこの絵。
慈愛と妖艶さを秘めたその姿は、一度目にしたら忘れることができない。妖艶な緑色ターラー菩薩は必見/三層堂(スムチェク) by ウェンディさんアルチ チョスコル ゴンパ 寺院・教会
-
そして、お堂の西龕の観音菩薩(アヴァローキテーシュヴァラ)立像もなかなか衝撃的なお姿で、肘から先が二股に分かれ、手の数が4本。
これは千手観音の原型ともいわれるお姿で、肘から下に垂れ下がる輪のようなものはカシミール地方の様式と取り入れた法衣だそうだ。
アルチ・ゴンパのアヴァローキテーシュヴァラは日本仏教の一般的な観音像よりも圧倒的に個性が強い顔立ちで、慈悲の眼差しというよりは、何かを挑まれるような強い視線に私には感じられた。 -
アルチ・ゴンパにはお堂がいくつかあるが11世紀のお堂は三層堂のみで、その他のお堂は16世紀ころの建築で、その壁画も緻密というよりもデザイン化され漫画チックなものが多かった。
このアルチ・ゴンパで私がいいな♪と感じたのは、参拝にいらしている方と僧侶の距離の近さ。
木陰に腰を下ろした参拝者と僧侶の方が、気さくにお話をされている姿が印象的だった。 -
イチオシ
そして、ランチの支度をする僧侶の方の姿もちょっと新鮮だった。
チベット仏教では僧院は僧院と尼僧院が完全分離されていて、僧院のお坊様は男性のみ、尼僧院では女性僧侶のみで生活していて、アルチ・ゴンパは男性僧院なので、食事の支度をするのも男性僧侶の仕事。
ゴンパ内ではチビッ子僧侶さんの姿もたくさん見かけたのだが、実際にお料理を担当していたのはお若い方ではなく、それなりの年齢の僧侶の方たち。
いわゆる20代・30代の僧侶の姿というのは殆ど見かけなかった。
子供のころは僧侶の修行をしていてもお年頃になると拝金主義の現実世界を見てしまい、僧侶の道をあきらめる若者もそれなりの数がいるのかもしれない。 -
アルチ・ゴンパの敷地内にはストゥーパ(日本語:卒塔婆)の仏塔がある。
日本の卒塔婆は木製の板でお墓の背後で見かけることが多いが、アレはチベット仏教が日本に伝わった際に中国で少しずつ形が変わってあのような形になったとのことで、チベット仏教のストゥーパは白い仏塔である。 -
ストゥーパの内部にも入ることができ、その天井の絵が面白かった。
面白いのは絵の内容ではなく絵画技法。
実際は平らな天井に描いているのだが、遠近法を利用して、あたかも天井がその中心に向かってアーチ状構造で積まれている(隅三角持送技法)かのように見せるような絵画技法で、この描き方は、その昔、西チベットの寺院で流行した天井の描き方だそうだ。 -
アルチ・ゴンパには僧院だけでなく、ちょっとした昔のラダックの生活風景を紹介するミュージアムもあり、おばあさんがその店番をしていた。
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様々な錫細工の家庭用品がある中で目を引いたのが、藁で作ったザル。
ザルと言えば竹笊を思い浮かべるが、藁で作る笊の編み方を知っていれば、非常時には役立ちそうな気がする。
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アルチ・ゴンパの参道はお土産屋さん通りで、地元のおばさんたちがその店番。
そんな方の一人に写真をお願いしたら、はにかみながらもポーズをとってくれた。 -
イチオシ
こちらのおばあさまたちは、店番というよりも日向ぼっこモード。
昔ながらのラダックの民族装束がとても似合っていらした。
女性の座り方は片膝を立てて座るのがラダック流とのことだが、これって部族間の争いが多かった時代の名残なのだろうか。
その昔、戦場の傭兵や兵士たちは、眠るときは背中を樹に持たれかけ片膝を立てて敵の夜襲の際にはそのまますぐに立ち上がれる姿勢で寝ていたそうだが、同じような状況がかつてのラダックにはあったのだろうか…。
(笑顔がチャーミングな赤い装束のおばあちゃま、どことなくS.Wのヨーダに似ているよね) -
村のレストランで昼食を食べた後は、小さな川を渡り、集落の高台にある小さなお寺のツァツァプリ・ゴンパへと向かう。
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アルチ・ゴンパからツァツァプリ・ゴンパへは村の中を通って徒歩15分くらいの道のりなのだが、特に看板などはないので、地元の方やガイドの先導がないと辿り着くのは難しいかもしれない。
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村の中の小川では、村の女性がお洗濯をしていた。
ラダックに電気が通ったのは1980年代と、それほど昔の話ではない。
州都のレーや主要幹線沿いの町では電線が空を渡り、電気が供給されているが、アルチの村では電気が来ている場所はほんの一部分だけで、村人の大多数は政府から供給される電気は使用できなく、もちろん電気洗濯機なんてものは使わない。
洗濯はすべてが川で手洗いだ。 -
川で洗うのは洗濯物だけでなく、髪の毛だって洗う。
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村の中には小さな家畜小屋があり、今年の春に生まれたばかりの仔牛とそのお母さん牛の姿を見つけた。
ラダックは牛肉を食べる文化圏ではないので、牛の姿も日本で見かける肉牛よりも小振りサイズ。
獣舎の屋根上には、牛の糞が天日干ししてあった -
電気も都市ガスも水道もない村の生活では、牛糞は大事で貴重な燃料源。
人の排泄物は有機肥料に、牛糞は燃料に利用し、ラダック人の生活サイクルには無駄がない。 -
ツァツァプリ・ゴンパは村人が管理する僧院なので、その扉の鍵を管理するのも村人。
ガイドのトクテンさんが管理人の村人から鍵を借りてきてくれた。 -
ゴンパの中には光源がなく、入口の開かれた扉から入る光が唯一の灯り。
初めは堂内の暗さに目が慣れなくその様子がよく分からなかったのだが、目が慣れてくると、壁一面の装飾がクリアに見えてきた。 -
アルチ・ゴンパの別院であるツァツァプリ・ゴンパの建築は13世紀ごろ。
曼荼羅の絵の雰囲気は、アルチ・ゴンパの16世紀の僧院に似ていた。 -
描かれたのが16世紀ということで、千手観音像のお顔の雰囲気はアルチ・ゴンパの三層堂の観音像よりも日本の仏像に近づいた感じだ。
アルチと同じ時代の壁画・仏像が納められた寺院で写真撮影OK by ウェンディさんツァツァプリ ゴンパ 寺院・教会
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アルチ・ゴンパは堂内撮影禁止だったがツァツァプリ・ゴンパは、フラッシュを使わなければ僧院内の撮影がOKだったが、暗い室内での手持ちカメラでの撮影は難しい。
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左手に髑髏杯、右手に曲刀をもつ絵は、口が耳まで裂けたその恐ろし気な表情から最初は悪魔を描いたものかと思ったのだが、実は、そのお堂を様々な災厄から守護する仏の姿を描いてあるとのこと。
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ツァツァプリ・ゴンパは村のお堂なので、修復は完ぺきではなく、まだまだこれから…という部分もある。
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お堂の中には小さなストゥーパがあり、その前にはダライ・ラマの写真が飾られていた。
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アルチ村から今晩の宿があるティンモスガン(Tingmosgang)村までは車で1時間弱。
15時過ぎに今晩の農家ホームステイ先である運転手さん(ドジンさん)のご実家へと到着した。 -
ゲスト用の部屋は2部屋あり、1つは2面が窓の採光が良い部屋で、もう1つがトイレ付きの部屋。
女子旅として映えるのは2面ガラス張りの部屋だが私たちは実を取る派なので、トイレ付の部屋を使わせてもらうことにした。 -
部屋に荷物を入れたら、さっそく1階のリビングでお茶タイム。
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今回、私たちのお世話をしてくださるのは、ドジンさんのお父さんとお姉さんで、お姉さんは普段は尼僧院で生活をされていて、実家に宿泊ゲストがある時には帰省して料理を担当しているそうだ。
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そして、お父さんが入れてくれたラダック式のお茶がこちら。
お茶の上に何やら粉が乗っていて、その粉を溶かして葛湯のようにして飲む。
このお茶はミルクティーにトロミをつけたものでラダック語では“オメチャ“と呼ぶ。 -
オメチャは昼食代わりやオヤツとして、そば粉のような栄養価のある粉を紅茶に混ぜることで腹持ちをよくしているそうだ。
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時刻は16時過ぎ。
まだ夕方までは少し時間があるので、友人と私はティンモスガン村の散策に行くことに。
村の中にはあちこちにマニ車があり、通りすがりの方が何気なくマニ車を回しながら通り過ぎる様子が見られた。 -
村の道は細い1本道。
その道を黄色いバスが登ってきた。
バスはスクールバス…
ということは、子供たちが下りてくるかも…。 -
私達の予想通り、村の停留所で何人かの子供たちが下車。
ティンモスガン村には小学校はなく、近隣の村の子供たちとバスに相乗りして学校へと通っているそうだ。
友人が子供たちに声をかけて、下校時の姿を撮らせてもらったのだが、表情が緊張で硬いかな。 -
村の路肩ではネパールからきている出稼ぎの方たちが道路工事の最中。
彼らは家族単位で、子供もつれてひと夏の仕事としてネパールからきていて、話す言葉もラダック語ではなくネパール語。
だから、あいさつは、“ナマステ~(こんにちは)♪ -
近年、ラダックは海外からだけではなく、インド国内からもちょっと異色な観光旅行先として注目を集めていて、今は観光の一大ブームが起きている。
州都のレーの近郊の村ではあちこちに小さなホテルが作られていて、その余波はティンモスガン村にも。
自宅をホームステイのゲストを迎え入れられる仕様に改装中のお宅も多かったが、ガイドさんの言葉によると、そんなに目論見通りにはいかないだろう…という話。 -
私達の運転手のドジンさんのように旅行会社と契約していれば、改装した自宅にゲストを斡旋してもらえるが、ツテのない一般家庭ではなかなかソレは難しいし、近年ではインド本体からの大きな企業がホテル経営に乗り出すという話もあり、辺鄙な場所にある村では「捕らぬ狸の皮算用」となるだろう…と言っていた。
改築中の民家の塀の上からは牛さんが顔を出していた。 -
イチオシ
村散策をしていたら、高台の一軒のお宅から出てくるおばあちゃまと目が合った。
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どうやら玄関に西日の当たる時間で、日向ぼっこをするらしい。
門の外からおばあちゃまを見る私達を見つけた彼女は、こっちへこない?と手招きで私たちを呼んでくれたので、ずうずうしくもゲートの鍵を開けて、玄関先までお邪魔させてもらった。
言葉は全く通じないが、おばあちゃまは、いろいろとお話をしてくれた。
国籍を聞かれた(多分)ので、ジャパンマ(日本人)と答えたら、「遠いところからよく来たね~」みたいなことを言ってくれた。
少しでも私たちがラダック語が分かれば、もう少し仲良くなれるのに…ね。 -
おばあちゃまの家を出た後は、友人は一足先に宿に帰り、私はもう少し村散策。
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イチオシ
そんな私を見つけた村の子供たち。
どうやら、私の大きな一眼カメラが気になるようで、私の方へと駆け寄ってきて、写真撮っての猛アピール。 -
おや、樹の上にいる二人の女の子は、さっきのスクールバスから降りた姉妹。
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写真撮っていい?とカメラを見せたら、にっこりして、さっきよりもずっと良い笑顔。
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イチオシ
くるくると表情が変わる二人は、撮っている私の方が楽しくなってしまうほど。
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どの表情もかわいい、
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いい笑顔だね♪
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18時。
村の中で子供たちとカメラで遊んでいた私が宿へと戻ると、友人はグルグル茶製造の練習中!
グルグル茶とは、バターと塩を入れた紅茶のことで縦型の容器に入れたバター、塩、紅茶を思いっきり攪拌して完全に乳白色としたお茶で、ラダックの栄養ドリンク的な感じ。
バターがタップリ入っているのでカロリーはそれなりに高く、年配の方が好んで飲むんだって。 -
ドジンさんの家の台所ではお姉さんが夕食の支度を始めていたので、見学をさせてもらう。
(できれば、一緒に作りたい!と私たちの両の頬っぺには書いてあったはず…) -
鍋の中で煮えているのは高野豆腐みたいにみえるが、チーズだそうだ。
ただ、チーズと言ってもこってりした濃厚チーズではなく脱脂粉乳チーズみたいな感じで触感はボソボソ。
バターやチーズは家で飼育している牛の乳から作られている。 -
今晩のメインのお料理はラダックの田舎料理のスキュー。
スキューはパスタの一種で、和風に表現するならば水団(すいとん)に近い感じ。 -
イチオシ
小麦粉に塩と水を加え捏ね、麺棒で伸ばして、太めの饂飩くらいのサイズに切ったら、私たちの出番。
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麺を手の上で伸ばしたら、丸めて、
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親指で押しつけると、赤血球をつぶしたような貝殻パスタの出来上がり。
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それをスープの中に加えて茹でて、ラダックのローカル・フードのスキューが出来上がる。
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調味料は手造りの石のすり鉢で、いろんなスパイスを細かくすりつぶして加えていく。
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そして、出来上がったのが、こちらのお料理。
高野豆腐風なのが脱脂チーズで、青菜とトマト、玉ねぎが入ったお料理だ。
味付けは比較的薄味なので、日本人にも食べやすいかな。
ラダック人は夏には肉を食べないので、食事は基本はオール・ベジ。
高山病上がりの私でもペロッと完食できる優しいお味だった。 -
夕食後は、ガイドさんがお湯を準備してくれた。
お湯はタンクに貯めた貴重な雨水を、太陽光パネルで温めたものだ。
料理にはプロパンガスの火力を使うが、それはゲストが来ているから。
日頃は薪や牛糞を燃料とすることも多いとのことだった。 -
お湯を運び込んだのは部屋のバスルーム。
お湯の入ったバケツと水の入ったバケツから水を汲んでちょうどよい温度にして体の汗を流し、髪の毛を洗う。
シャンプーの量も極力少なめに。
下水道がないこの村では、排水は基本は垂れ流し。
環境汚染の原因となる化学物質はできるだけ流さないようにしないとね。
そして、行水を終えた私たちはあっという間に夢の世界へ。
ティンモスガン村には電気は通っているが、それは村の平地の部分だけで、ドジンさんのご実家のある丘陵地帯には電気のラインは来ていない。
だから、日中は太陽光発電、夜は自家発電で電気をつけていると聞いていたのだが、私たちが夢の世界へと飛びこんだのはその自家発電が切れる21時よりもかなり早い時間。
初めての経験だらけの刺激的な1日は、その終わりも早かった。 -
翌朝は階下のキッチンの音で目覚め、身支度を整えてキッチンへと行くとお姉さんが朝食用のチャパティを焼いていた。
お姉さんの作業を見学していたら、ガイドのトクテンさんも起きてきて昨晩のことを説明してくれた。
昨晩のことって…なんのこと?…と思われるかもしれないのだが、お姉さんは昨晩は村の共同井戸の脇で寝ずの番をしていたそうだ。
家にゲストが宿泊する日は、ゲスト用水として1日約30Lは確保しなければならないのだが、村人の中には貴重な水を夜中に大量に汲んで独占し朝には水を枯らしてしまう方もいて、そんなことができないように、お姉さんが朝イチで必要量の新鮮な水を汲めるように共同井戸の脇で過ごしたそうだ。
お姉さんが頑張ってくれたおかげで、私たちは朝から美味しいお茶も飲めたし、顔を洗ったり歯を磨いたりできたが、私たちのためにそこまでの苦労を掛けたのかと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。 -
朝食はチャパティと卵焼き。
自家製の杏子ジャムが美味しかった。 -
この日は、朝8時にティンモスガン村のゴンパであるカル・ゴンパ(英語名:Tingmosgang Monastery)にお参りに行く。
ティンモスガン村は山沿いの村で、その山の上に村人の菩提寺となるカル・ゴンパがある。 -
イチオシ
ゴンパへの道沿いには五色のタルチョがはためき、その色が青い空に映える。
静かな村の中の昔の王宮/Tingmosgang Monastery(カル寺院) by ウェンディさんティンモスガン修道院 寺院・教会
-
ゴンパから谷を見下ろすと、見えてくるのは、豊かなティンモスガン村の小麦畑。
標高が高く作物が育ちにくいラダックの過酷な環境の中でも、その地理条件を上手に利用し、自給自足で野菜を賄っている。 -
その昔、ラダックは現在のように一つの州として統一されておらず、いくつかの領主がその王国を支配する形で成り立っていて、カル・ゴンパはもともとティンモスガン領主の居城であり、現在でもTingmosgang Castleとして英語名では紹介されていることも多い。
もっとも、現在のカル・ゴンパは20世紀に建て直されたお寺で、王城の名残は今のゴンパの建物には残っていない。
村人の中でも熱心な信者は毎日、1時間をかけて山道を登りカル・ゴンパに参拝していて、この日の朝もゴンパの周囲を巡りマニ車を回す女性の姿があった。 -
マニ車の中には19世紀に作られた木製の古いマニ車もあり、中に収められた古い経典が穴の開いたところから覗き見えた。
-
ゴンパのお堂の内部は蝋燭の灯りのみだが、その薄明かりの中で微笑んでいらしたのはマイトレーヤ(弥勒菩薩)像。
ガイドのトクテンさんはFuture Buddaという表現で説明してくれたので、なかなか和名の弥勒菩薩と同一の仏と気づけなかったが、途中でミットレア(マイトレア)と言い換えてくれたので、やっと仏様の名前と顔が一致した。
弥勒菩薩はFuture Buddaという英語名が示すように5000年後の未来に仏陀の後継者として現れるといわれている救世仏とのこと。
Buddaは唯一神(唯一仏)だがその形には変化形がいくつかあるそうだ。
しかし、今回のラダック旅で更に変化形の多い仏がいることを教えてもらった。
それは和名では観音菩薩、ガイドさんがAvalokiteśvara(アヴァローキテーシュヴァラ)と呼ぶ女性型の仏様で、チベット仏教では100の変化形があるとのこと。
日本でも観音菩薩は33の化身があり有名なのは阿弥陀如来像だが、いかつい顔の帝釈天や毘沙門天も観音菩薩の化身の1つなのだそうだ。 -
カル・ゴンパは観光先としては全くメジャーではないので、お参りに来ているのは地元の方ばかり。
私達が仏様の姿を見ている脇の部屋でも、五体投地をしてお祈りを捧げる女性の姿があった。 -
イチオシ
アルチ・ゴンパのように美しい仏教美術で有名な寺の見学も楽しいが、私が惹かれるのは、地域密着型ゴンパ。
村人に愛されるゴンパは美しいと思う。 -
カル・ゴンパから少し離れた山の上には遺跡と化した昔の領主の居城跡があり、20世紀半ばまでは、あの遺跡がカル・ゴンパだったそうだ。
-
私達が車で下るジグザグの山道を村から徒歩で登ってくる信者の方たち。
毎日、この道を歩いて上り下りしていたら、足腰も強くなるね。 -
ティンモスガン村の平地部分へ降りると、畑ではカラシ菜の花が花盛り。
私達が昨晩の夕食で食べた青菜もカラシ菜だったのかもしれない。 -
朝9時。
ティンモスガン村の子供たちはスクールバスに乗り、学校へと通う。
旅人としてたった一晩だけこの村でお世話になった私達。
短い滞在だったが、村の生活を少しでも知ることができたことで、私にとっての未知の国であったラダックが自分の経験・体験として体の中にとりこまれ、ラダック人に少しだけ近づけた気がした。
前の旅行記:サスポールの洞窟壁画に魅せられて
https://4travel.jp/travelogue/11606651
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旅行記グループ
現地人になりきりホームステイ
この旅行記へのコメント (6)
-
- mom Kさん 2020/03/25 11:48:23
- よい旅ですねえ
- 初めまして。「すべてのことが一生の宝物」そう言える旅をされたことに、私もとてもうれしい気持ちにさせてくれました。人の入った写真、一層雰囲気を伝えてくれます。
今日は、とてもいい日になりました。ありがとうございます。
- ウェンディさん からの返信 2020/03/25 22:57:15
- RE: よい旅ですねえ
- mom Kazuko さんさん 初めまして。
旅をするときには、事前に訪れる地域の文化、風習、歴史などを一通り勉強してから行くようにしています。
でも、インド・ラダック旅ではその中へと入ってしまうと、予習した内容はなんて表面的で薄っぺらいものなのかと実感させられました。
旅は体験であり、経験であり、心の成長である・・・と噛みしめた旅でした。
ウェンディ
-
- pedaruさん 2020/03/20 05:48:34
- 中身の濃い旅行記
- ウェンディさん おはようございます。
凄い旅行記になっていますね。引き込まれて熟読してしまいました。
NHKの特番のような旅番組です。説明も詳しくて、すごく勉強になりました。
ストゥーパが日本の卒塔婆だなんて、目から鱗です。
タイムスリップしたような生活体験、一生の宝になりました、とおっしゃる気持ちが
分かります。
pedaru
- ウェンディさん からの返信 2020/03/21 23:38:11
- Re: 中身の濃い旅行記
- pedaruさん こんばんは。
チベット仏教の精神が生き続ける土地;ラダックへの旅行記にコメントをありがとうございます。
ここ2日間、コロナのいない雪山に修業に出ていてPCにアクセスできなく、お返事が遅くなり、ごめんなさい。
水を得るために一晩中井戸のそばで番をしたり、紅茶を葛湯のようにしてランチ代わりに飲んだり、食事の支度(切ったり、練ったり)は床の上でやるのが普通だったりと、ラダックの文化には実際に自分の身で体験しなければ想像もしていなかったことが沢山あり、刺激的であり、かつ色々と考えさせられた旅でした。
ウェンディ
-
- きなこさん 2020/03/20 00:03:36
- 村のゴンパ
- あーー懐かしい
ウェンディさんの旅行記に入り込めるなんて幸せ
私もここのゴンパが一番好き。印象に残っててあの五体投地の場面は今でも鮮やかに覚えてる。
ってことは、、、そう後はこんがらがっちゃっててー恥ずかしい
ほんとティンモスガン村は最高のおもてなしを受けて旅行記拝見してて胸が熱くなって心地いい動悸してます
あ、動悸は更年期ちゃうよ笑
きなこ
- ウェンディさん からの返信 2020/03/20 03:43:05
- Re: 村のゴンパ
- きなこさん こんにちは。
夏のラダックからあっという間に季節が過ぎ、気が付けば次のラダックのシーズンが始まろうとしています。
想い出をなぞりながら旅行記を書いていますが、体験量も情報量もタップリの旅で、新しく降ってくるチベット仏教の知識におぼれそうになりながらも、その不思議な世界観に魅了された旅でした。
観光で有名なゴンパも素敵でしたが、村人たちの手で守られているティンモスガン村のカル寺、あの静けさの満ちた朝の光景は忘れることができません。
今はコロナで世界中が大変なことになっていて、日本ですらこの先の見通しが立たない状態。
旅…なんて言っている場合ではないですが、ラダックのあの世界へまた再び足を踏み入れることができればよいな。
とひそかに思っています。
ウェンディ
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