2019/04/21 - 2019/04/22
16位(同エリア1110件中)
かっちんさん
北信州渋温泉に佇む「歴史の宿 金具屋」は、様々な時代の建物によって構成されています。
昭和11年(1936)に完成した木造四階建ての「斉月楼(さいげつろう)」と「大広間」は、宮大工の粋を尽くしたもので、国の登録有形文化財に認定されました。
金具屋の客室は全部で29室。当時の宮大工が思い思いに手がけ、すべて異なる造りに仕上げています。
館内を歩いてみると、一つひとつの客室が独立した家屋に見立てられ、飾り窓の細工や水車の部品を使った階段の手すりなど、宮大工の遊び心が各所に見られます。
今回案内された部屋は豪農の家に見立てた斉月楼3階の「高砂の宿」。
源泉かけ流しの温泉は、3つの大浴場と5つの貸切風呂があり、八湯巡りができます。
夕方には宿泊者に「館内文化財巡り」が毎日開催され、金具屋の歴史を聞き、館内を歩きながら宮大工の粋と遊び心の建築物を確認できます。
また、夕食、朝食とも地元の幸が味わえ、申し分なしです。
なお、旅行記は下記資料を参考にしました。
・歴史の宿 金具屋パンフレット
・歴史の宿 金具屋HP「金具屋の歴史」
・きゅうだいめの道ブログ「金具屋大広間の歴史」「武田と上杉と渋温泉と金具屋」
・旅ぐるたび「あのジブリ映画のモデル!?渋温泉の老舗旅館「金具屋」は楽しみどころ満載だった!」
・まったり生活「渋温泉とお猿さん、小布施旅行 金具屋」
・茅葺き職人ブログ「0414 刈り込み」
・渋温泉九湯めぐりHP
・ウィキペディア「長野電鉄」「湯田中駅」「日本交通公社」
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 5.0
- グルメ
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 新幹線 私鉄
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
湯田中行きの特急「スノーモンキー」
長野電鉄長野駅から特急に乗ります。
この特急は、JR東の253系「成田エクスプレス」で使用されていた車両で、2011年より長野電鉄の2100系特急「スノーモンキー」になりました。
左側に停車しているのは東急からやってきた8500系。
何だか首都圏の駅にいるみたいです。 -
長電フリー乗車券
湯田中に1泊するので、長野~湯田中往復運賃より安い「長電フリー乗車券(2日用)」を利用します。
特急券はこれまた安い「100円」です。 -
スノーモンキーの車内
-
イチオシ
りんご畑の広がる景色(翌日の写真)
途中の信州中野~湯田中間は30~40‰の急勾配を登っていきます。
この一帯はりんごの花と桜の花が満開。明日、訪れる予定です。 -
湯田中駅に到着
長野電鉄最高地点(標高599.76m)にある湯田中駅。
駅周辺には湯田中渋温泉郷があり、志賀高原へ行くバスの連絡駅になっています。 -
湯田中渋温泉郷の案内図
今晩の宿のある渋温泉は一番奥(地図では右側)にあります。
駅前に金具屋のマイクロバスが迎えに来ているので、乗せてもらいます。 -
渋温泉街
石畳の道の両側に旅館・ホテルが所狭しと並んでいます。
道が狭く路線バスも入れず、土地がなくて立て直すこともできない渋温泉は、古い時代の旅館が残ります。 -
歴史の宿「金具屋」に到着
正面に昭和の面影の残る建物「斉月楼(さいげつろう)」、左横に「鎌倉風呂」があります。 -
金具屋 斉月楼(国登録有形文化財)
斉月楼は六代目館主「西山平四郎」と小布施の宮大工・名匠「三田清助」によって、昭和11年(1936)に完成した木造4階建。
映画「千と千尋の神隠し」の湯屋のモデルではと言われています。 -
玄関ホール(金具屋)
玄関を入ると落ち着いた雰囲気の玄関ホールがあります。
以前は洋風の玄関・ロビー・フロントだったこともあるのですが、江戸時代の蔵の部材を使用した和風の趣に改造しました。 -
フロントではなく「帳場」(金具屋)
ここで宿泊の手続きをやります。 -
池のある中庭(金具屋)
-
だるまが見てる・・・(金具屋)
商売繁盛祈願のだるまが、お客様をお迎えしてくれます。 -
客室と風呂の案内図(金具屋)
建物は5つに分かれています。
建物の中央に昭和初期の「斉月楼」、最上部に同時期建築の「大広間」。
他に、明治後期の「潜龍荘」、戦後まもなく改築した「居人荘」、昭和中期の「神明の館」等があります。
いずれの客室も各時代の宮大工が粋を尽くして完成させ、すべての部屋で間取りや細工が異なります。
お風呂は八か所に分かれ、三つの大浴場と五つの貸切風呂があります。 -
今晩泊まる客室は「高砂の宿」(金具屋)
斉月楼3階にある客室は豪農の家に見立てています。 -
客室の土間(高砂の宿)
客室に入ったところは石を敷いたやや広い土間。
障子窓には「蜘蛛の巣」のような細工、素晴らしい。 -
次の間(高砂の宿)
最初の部屋は4畳半の次の間。 -
8畳の本間(高砂の宿)
書院造の部屋です。
床の間は一枚板の框(かまち)。 -
襖のデザインは「イカくん」(高砂の宿)
いや「鞍馬天狗」かも・・・ -
窓からの眺めは(高砂の宿)
温泉街の表通りが見えます。 -
鎌倉風呂(大浴場)
夕食前に大浴場へ。男女交代制で、今晩は男風呂、翌朝は女風呂に変わります。
鎌倉風呂は昭和11年に初代、昭和52年に現在の物が完成し、瓢箪型の形状は縁起と肌ざわりの良さを兼ねています。
源頼朝の伝説にちなんだ鎌倉の建築を模した浴堂です。 -
館内文化財巡り(大広間の舞台前)
毎日17時30分になると、宿泊者に「金具屋文化財巡り(約35分)」が始まるので参加します。
ツアーの案内役は、金具屋九代目(予定)の西山和樹さん。
最初に金具屋の歴史と建物の特徴を伺い、その後、館内の建築物を見学します。
宿泊者がほぼ全員集まっているようです。 -
大広間(国登録有形文化財)
大広間は昭和11年に裏山の山腹に建てた木造二階建ての建物で、広間部分は167畳の広さ。
完成当時は「宿の宴会場」というよりも、渋温泉全体の「会館」として多目的ホールの役割を持っていました。
大広間は8階の位置にあり、階段は下から130段以上。「心臓破りの階段」と言われていたそうです。
昭和41年にエレベーター棟が完成し、大広間や各宿泊棟へやや複雑な通路でつながるようになりました。
舞台の反対側の広間が食事処になっています。 -
イチオシ
折上げ格天井(大広間)
天井と壁の間に「折上げ」と呼ばれるアーチ状の細工は、宮大工の最高級技術です。
昭和20年2月、大雪のため大広間の本間部分が雪の重さで崩れてしまいます。
現在の大広間は、戦後、昭和25年に本間部分が直されたものです。 -
格子を二重に組み込んだ格天井(大広間)
修復時、格天井(ごうてんじょう)の中に入れる1枚板が戦後の材料不足で手に入らず、やむを得ず3枚の板を渡しました。
これではみっともないということで、格子の中にもう一つ格子を入れた、現在の折上げ式二重格天井となったのです。 -
暖房パイプ(大広間)
温泉を利用した暖房器具でしょうか。
では、館内の見学に出発します。 -
水車部品を使った手すり(8階大広間入口)
丸い形の歯車(廃材)が階段上部の欄干に使われています。
まさに宮大工の遊び心。 -
「三つ柏」の素敵な小窓(7or6階)
金具屋の家紋は「丸に三つ柏」です。
これは新潟県長岡藩の藩主牧野家の家紋。
金具屋の元をたどるとその名の通り鍛冶職、金具師。長岡藩の出入りの職人だったことから、この家紋を使ってきたようです。 -
斉月楼(左側)とエレベーター棟(右側)
エレベーターで4階まで下りると、斉月楼最上階と廊下で繋がっています。
斉月楼の建物外観をうまく残しています。 -
大判のケヤキ廊下(4階)
客室への廊下はケヤキ。
奥の客室が「長生閣」、手前左が「香風洞」。 -
客室「香風洞」の入口(4階)
客室玄関に庇(ひさし)の屋根があり、客室を一つの家屋に見立てています。 -
昭和の木造旅館の雰囲気(4階)
ふわふわ雲が浮かんでるような飾り窓も素敵。 -
日本独特の風流な窓(階段の踊り場)
富士山の上には、夕方になるとぼんぼりが灯り、月が上がります。
さらに富士山には二本の横線で雲を漂わせています。 -
茅葺の天井(階段の踊り場)
-
イチオシ
客室「相生の寮」の飾り窓(3階)
飾り窓に遠景や番傘を描き、庇に鮑の貝殻をのせています。
私には花火が下からシュルシュルッと打ち上がり、パッと花開いた瞬間のように見えます。
庇の鮑は、昔から茅葺屋根に鮑の貝殻をのせて鳥除け(気休め)にする風習と関係がありそうです。 -
イチオシ
階段の頑丈な親柱
水車の太い軸が使われています。 -
水車の歯車(2階)
客室「養老の里」入口前の廊下は、木製の歯車や金属製の部品が埋め込まれています。 -
イチオシ
歯車の素敵なデザイン窓(2階)
3つの歯車の歯と歯が噛み合い、ぐるぐる回りそうです。
宮大工の遊び心がにじみ出ています。 -
網代天井
いろいろな天井があります。 -
温泉街を歩いているような廊下(1階)
廊下の両側から庇が出ていて、商店や旅館のたち並ぶ温泉街の雰囲気を出しています。
天井は暗くて見えにくいのですが、青色に塗られて青空を表現しています。 -
旅行会社協定旅館の看板(1階の展示)
日本交通公社(現JTB)、日本旅行の名前はよく知っています。
社団法人ジャパン・ツーリスト・ビューロー(日本旅行協会)は、昭和9年(1934)に任意団体から改組した日本交通公社の前身です。 -
ロビー(1階)
館内には共通施設の売店、バー、レストラン、自販機、ランドリーなどがありません。
温泉街の商店の保護のためになくした経緯があります。
これで館内文化財巡りが終わり、いよいよ夕食です。 -
夕食タイム
かっちん夫婦の夕食会場は6階の「慶運の間」。
ここは善光寺の補修を手がけていた宮大工によって、平成4年に改装されました。
天井は天然木を組み合わせた「船底」と呼ばれる造りです。 -
豪華な夕食
全部で14品が並びます。
食前酒はあんずのお酒、安曇野わさび漬け、胡麻豆腐、凍み豆腐の炊き合わせ、山伏茸の土瓶蒸し、酢の物。
信州お造り二種は、ニジマスとブラウントラウトを交配させた品種、信州サーモンの昆布〆と大岩魚のお造り。
鍋の「しぶのじぶ煮 信州仕立て」は、鶏にそば粉をまぶし煮ることで、そばの風味ととろみを楽しみます。 -
季節の八寸(夕食)
鯉甘露煮、合鴨味噌焼き、小鮎、白子豆腐、バイ貝旨煮、キノコふくさ焼きなど。 -
あげだし木の葉隠し椀(夕食)
オリジナル料理で、木の葉をかたどった器の中に白舞茸など地場のきのこと豆腐を揚げ出し風にしています。 -
岩魚の塩焼き(夕食)
志賀高原から流れる川の冷たい水で育てた岩魚の塩焼き。 -
信州とろろ蕎麦(夕食)
信州の食の中心といえば蕎麦。とろろと冷たい汁でツルリといただきます。
ご飯、汁、デザートも含め、美味しくいただき満腹です。 -
イチオシ
ライトアップされた金具屋
温泉街の通りからの眺めです。
黄金色に輝く建物は、まさに「千と千尋の神隠し」のようです。 -
翌朝の「浪漫風呂」(潜龍荘1階)
斉月楼から居人荘、地下通路を通り、潜龍荘に来ています。
昭和25年(1950)完成の洋風の浴堂です。
形状はローマの噴水を模したもので、濁り湯とステンドグラスが特徴です。
今朝から男風呂になっています。 -
懐かしいタイルの洗面台(浪漫風呂の前)
脇に「温泉エコ湯たんぽ」の説明と湯たんぽが用意されています。 -
レトロタイルの階段(居人荘)
居人荘は、戦後まもなく改築されたため、和洋が混在する建築です。
レトロタイルの階段などにその時代の様子がみられます。 -
朝食
麦飯ととろろの麦とろ御膳です。 -
渋温泉の案内図(温泉街)
温泉街の朝散歩に出かけます。
金具屋は渋高薬師の左隣にあります。
渋温泉には、地元の人が毎日利用する外湯(共同浴場)が九つあります。
宿泊者には、各旅館で外湯めぐり専用の鍵を貸してもらい巡ることができます。 -
渋高薬師
急な石段を登った山の中腹にあります。 -
桜の古木(渋高薬師)
境内に佇む桜です。 -
お隣は金具屋(渋高薬師)
昭和初期の金具屋大広間が多目的ホールだったころ、渋高薬師のあたりから入る入口があったとのこと。
今は撤去されています。 -
九番湯「渋大湯」(温泉街)
-
八番湯「神明滝の湯」(温泉街)
それぞれ源泉や効能の異なる外湯を、祈願てぬぐいにスタンプを押しながら巡り、最後に「渋高薬師」へ参拝して印受すれば満願成就できます。
金具屋は現役の貴重な木造旅館です。
客室がすべて異なる金具屋には、次回は別の部屋に泊まり、外湯の九湯めぐりもやりたいと思います。
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