宇治市、慰霊の旅--36柱の遺徳は金管楽器のごとく空に響き渡る！--

2025/07/22 - 2025/07/22

　今年の8月は80周年の慰霊の日であるが、宇治と奈良は、ここ数年間で、7月が慰霊の日となりつつあるのか。それほど、あの二つの事件は世の中を震撼させました。
　今回は、記憶に新しき「7.8事件」と、6年前の7月18日に起きたあの放火事件、その慰霊の旅です。7月18日は、後述しますが我が北総、佐倉市にとっても、80年前の戦災慰霊の日なのです。他人事と思えません。
　その悲劇、悲しみを乗り越え、あの作品は蘇り、そして、来年には新作映画も公開される予定です。
　今回の旅行は、まさに観光ではなく観影、いや、慰霊です。
ユーフォニアムの音色は、再び宇治の空に響くのだ。この三十六羽の銀の翼のように！

エリア 宇治(京都)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0
• 交通: 5.0

• 同行者: 一人旅
• 一人あたり費用: 3万円 - 5万円
• 交通手段: 新幹線 JRローカル 私鉄 徒歩
• 旅行の手配内容: 個別手配

.　--あなたたちが残した作品は、今も多くの人の心を動かしています。「ありがとう」、「救われました」という声を聞くたびに、あなたたちが生きた意味が確かにあったのだと誇りに思います。あなたたちのことは、これからも決して忘れることはありません--
　　（2025年6月18日、式典での遺族の追悼のことばより）

早朝の新幹線で11時前に京都に到着。新幹線ホーム真下の近鉄京都線京都駅。
15分間隔で特急が出発していく。

京都駅 駅

サニーカーのような歴史を感じる特急車両が多い京都線の特急だが、今回乗車した奈良行は新鋭のACEだった。
この特急でまずは、大和西大寺へ行く。途中停車駅は丹波橋のみ。30分かからない。

近鉄特急「スタンダードタイプ」 乗り物

水量少ない木津川を渡る。この河を渡ると、京都府京田辺市。新田辺駅から木津川台駅までJR片町線とかなり近い距離で併走する。単線区間の片町線も京田辺までは本数が多く、近鉄急行と片町線快速交互の乗り換え客も結構いる。
奈良市は、奈良県の最北部にあり、けいはんなニュータウンの一角である近鉄高の原駅のすぐ北から奈良県奈良市に入る。高の原と平城駅の間に小規模の峠がある。

近鉄京都線 乗り物

大和西大寺駅に到着。自由通路の南側がこのようにガラス張りの展望所になっていて、まさに平面交差で錯綜する京都・樫原線と奈良線のそれぞれの近鉄電車がせわしなく行き来する様を見ることが出来る。
実は反対側（難波、京都側）に「タイムズプレイス西大寺」というカフェコーナーがありそちらのほうが展望施設が充実してるが、そこは駅構内なので有料、こちら側は改札外なので無料だ。

大和西大寺駅 駅

大和西大寺駅はホーム3面、線路5本という規模の大きい駅で、これで1時間当たり12本の奈良線と同じくい時間当たり12本の京都線に平面交差で対応している。
当駅始発の電車も多く、電車は到着前に信号で抑止することも多い。めまぐるしく電車が往来するので鉄道ファンに人気の駅だ。
ただ、今回私が来たのは電車が目的ではなく、この7月で3年たった、この駅の広場に来たのである。

7.8事件の現場を駅のコンコース階段から望む。
あの衝撃の安倍元首相暗殺事件から、早や三年。今月の8日には、この暗殺事件現場に献花台が設けられ、多くの人が訪れ、暗殺された時間の11時31分には黙とうも行われたと言う。

暗殺現場周辺。詳細は昨年の旅行記に記載したが、現在は再開発でこのように広めの歩道と花壇になっている。
献花台はこのあたりに設けられたと思われるが半月たった今は綺麗に片づけられていた。
昨年に訪問した際の旅行記
https://4travel.jp/travelogue/11948301

2025年7月8日の新聞の写真を見ると、追悼に訪れた人々は、こちらから写真中央の花壇に向けて合掌していたようです。
一時、ここに慰霊碑やモニュメントの類を設置する動きがあったようですが、あまりにも事件の影響が大きく、また現在被告の公判すら行われていない状況なので、事件現場ではなく別の場所に碑を建立したようです。
同じ奈良市内の北の方にある「三笠霊園」（若草山の西北、東大寺の真北500mほどの場所）に、モニュメントが設置されたそうです。
また、大阪市住之江区にある護国神社に今年の7月6日、安倍元首相の顕彰碑が建立されたと言います。

事件現場には、この日も、献花とお供えがされていた。献花が絶えたことは無いようである。
以前の記事でも書きましたが、安倍晋三と言う政治家は、信者とも言える支持者が多くいる一方で、毛嫌いする人も多くいる、まさに世の中を真っ二つに分けた政治家でした。
奈良県は、安倍元首相の側近として安倍内閣で閣僚を歴任した、自民党右派の高市早苗のお膝元であり、7月に行われた参議院選挙でも、他の自民候補の負けが目立つ1人区のなかで、自民党現職の堀井候補が当選したことでも分かる通りの保守王国です。
そのこともあり、奈良の自民党議員団はここに何らかの碑なりモニュメントなりを置きたがっているようですが、あの事件には「宗教」がからむセンシティブな要素が多すぎます。また、先述する通り、安倍晋三については嫌う人は徹底的に嫌います。「地獄に墜ちろ」、「神罰だ」、「因果応報だ」とまでSNS等に書かれる有様です。
ここに碑は、時期尚早すぎるのではないでしょうか。
再度述べますが、安倍晋三は山上徹也という自衛隊上がりのネトウヨに殺されました。それが何を意味するのかは今後裁判で明らかになっていくでしょう。

お供え物の後ろに、サンシティのビル。このサンシティの目の前、芝生の敷かれた所に献花台が設けられ、石破首相も参院選さなかの今年7月8日に、ここに献花に来たそうです。
安倍元首相が亡くなってから、日本の政界の絵図面が全く違うものになってしまいました。そういえば3年前も参院選の最中でした。元首相が撃たれたということから弔い合戦となり同情票を集め、自民は改選前をさらに上回る63議席獲得と言う圧倒的勝利を収めましたが、今の所、それが「最後の」勝利となりました。
その後、石破政権下で行われた昨年2024年10月の総選挙では56議席も減らし自公併せても過半数割れと言う歴史的大敗、そして、この夏の参院選でも、13議席も減らし過半数割れすると言う惨敗。
それが全てではないでしょうが、1人の政治家の死でここまで変わるのかと、正直驚きを禁じえません。要するに、殺人によって世の中が変わってしまったのです。なればこそ、山上被告の行為は「テロ」ではないでしょうか？

「身の丈に合わないタカ派の服を着せられて、必要以上に背伸びした人であると私は安倍を思ってもいる」（佐高誠）

「再びこの議場で、あなたと、言葉と言葉、魂と魂をぶつけ合い、火花散るような真剣勝負を戦いたかった。
　勝ちっ放しはないでしょう!　安倍さん...」（野田佳彦）

　安倍晋三の思想と行動原理とは、「オジイチャマに褒められること」、そのただ一点に集約されると私は考えています。そのオジイチャマとは間違いなく母方の岸信介であり、父方の安倍寛ではありません。私の知人に至っては安倍政権を「おじいちゃまボクできまちたよ政権」とまで呼んでいます。祖父である岸政権を超えることが人生の根本であったのではないか。
　安倍晋三という政治家の評価には、長い時間がかかりそうです。

「政治家とは歴史と言う名の法廷で裁かれる被告である」とは故・中曽根康弘元首相の言葉です。ただ、私は、歴史という法廷でも、検事側と弁護士側との言い争いが不毛なまでに続きそうなのが、安倍晋三という存在ではないかとも感じます。

記録をとり、早々に立ち去り、次の目的地である宇治へ行くことにした。
ちょうど京都線急行が来たので、これでまず京都府城陽市の近鉄大久保駅まで行くことにした。

　刑法では「殺人罪」の量刑は幅が広く、死刑になる場合は少数です。永山基準というものがあり、「結果の重大性」も争点になります。「7.8暗殺事件」ではそれが争点になるでしょう。一方で被告の動機や生い立ち等も重要な判断基準になる。
　今回、山上被告には「宗教二世」という悲劇的な背景があり、実際膨大な数の減刑嘆願や差し入れが届いていると言います。
　私はこれは「テロ」だと考えているし、「民主主義の根幹を揺るがす」などと安倍政権がやってきたことを棚に上げて極刑を主張する人も少なからずいます。
　いずれにしろ、長い裁判になるのは避けられません。そして、どのような判決が出ても強い抗議の声は必ず出て、世の中を真っ二つにするでしょう。安倍晋三と言う男の業は、そういう所にあるのです。
　この西大寺と、近隣の秋篠という地は、色々歴史の「影」がある地域のようです。律令時代の権力争いに敗れた者たちの因縁があるとも。千年以上経った令和の時代に、権力側がこのような事態に陥るとは誰も想像しなかったでしょう。

大和西大寺駅 駅

近鉄京都線急行も特急と同じく1時彼方り4本の運転。停車駅は結構あり、大和西大寺、高の原、片町線との乗換駅新祝園、京田辺市の中心新田辺、城陽市に位地する大久保、桃山御陵前、京阪との乗り換え丹波橋、地下鉄乗換竹田、東寺、そして京都。特急より7駅多い。
京都発は特急の１分後に出るので西大寺まで逃げるが、上りは大久保駅で特急に追い抜かれる。

近鉄大久保駅に到着。このように急行は特急に追い抜かれる。
大久保駅は、実はJR奈良線の新田駅から直線距離で300mしか離れておらず、乗り換えが可能。なので歩いてここからJR新田駅へ向かう。

大久保駅 駅

大久保駅。高架の２面４線の立派な駅。

一方、JRの新田駅は、この通り古風な駅舎の屋根のない跨線橋方式の相対式の駅。結構、JR西日本の近畿地方の駅には、このような感じのレイアウトの駅が結構残っている。
このように見えて、この路線は最近、京都から城陽まで複線化され、普通電車も１時間当たり４本（１０分間隔と２０分間隔交互の３０分パターンダイヤ）、快速が３０分毎に運転する。この駅には快速は停まらないが、普通の本数も多いので不便は感じない。普通電車の半数は隣の城陽駅始発で空いている。また、奈良始発京都行の普通は２２１系転換クロスシート車が多く充当され、次の駅である宇治駅で快速と接続する。

新田駅 駅

新田駅構内。城陽行普通が停車中。元東海道・山陽線普通用の２０５系、国鉄末期に製造された車両だ。

JR奈良線 乗り物

城陽市発京都行が到着。
元阪和線用２０５系。昭和６３年に製造されたJR世代車。
これで２駅先の宇治駅まで行く。

新田駅 駅

宇治駅で下車。
ここから目的地の京阪宇治駅周辺まで行くのだが、京阪の宇治駅は、宇治川を挟んだ北側、途中で宇治橋を渡る。両駅の間は７００mほど離れてるが、実は京阪バスが結構な本数で両駅を結んでいる。

宇治駅 (JR) 駅

宇治川に渡る、風情豊かな宇治橋。なんか鍍月橋に似てる。
１０００年以上の歴史を持つ最古の橋の一つと言われている。
現在の橋そのものは平成になって架け替えられたものだが、古来の伝統工法を活かした桧造りの橋である。

宇治橋 名所・史跡

この橋のすぐ下流側を、JR奈良線が走り、宇治川橋梁で川を渡っている。
古いガーダー橋で、最近まで単線であり、この橋梁は上下線供用だった。複線化工事により、下流側に新しいガーダー式橋梁を建設、従来の橋は奈良方面行、新しい橋を京都方面行に使っている。

宇治川 自然・景勝地

新しく建設された上り線用橋梁を渡る普通電車。下流の京阪宇治駅付近で撮影。

京阪宇治駅。平成の中期に改築され、駅舎と京阪ホームとの間にJR奈良線が通っている。反対側は宇治川沿いで、そこからもホームに入る通路はある。

宇治駅 (京阪) 駅

反対側から見た京阪宇治駅ホーム。
この、京阪の駅と宇治川の間に、新しく公園が出来た。

京阪駅と宇治川の間に挟まれた地に出来た、「お茶と宇治のまち歴史公園」
主に宇治茶について展示している施設で広い敷地には茶畑もある。
ただ、今回、ここへ来たのは宇治茶が目的ではない。
昨年夏に、ここに建立された一つの碑を見に来たのである。

お茶と宇治のまち歴史公園 公園・植物園

公園建物前の広場に、昨年建立された、「志を継ぐ碑」。
この碑は、36羽の鳥が翼を広げて、宇治の大空に飛び立つ姿をデザインされて創られた。
36という数字、そして京都府宇治、分かる方には分かると思います。
2019年7月18日、あの忌まわしき事件。京都アニメーション第一スタジオ放火事件......

--2019年7月18日、京都アニメーションの第1スタジオにおいて、放火事件が発生し、36名の尊い命が奪われました。
　「志を繋ぐ碑」は、2024年夏、被害に遭われたご家族、京都アニメーション、彼らを応援される方々により、本事件と本事件で遭難した故人らの存在、世界中から寄せられた祈りと支援、それらに対する感謝や願いなど、本事件に関わったすべての人々の志を繋ぎ、長く記憶に留める象徴として、制作されました--
　　（京都府宇治市公式ホームページの紹介分より）

宇治市としては、この碑は、
「慰霊碑ではなく、本事件に関わったすべての人びとの志を繋ぎ、長く記憶に留める象徴として設置するものです。永くこの歴史公園で皆様に親しんでいただくためにも、献花やお供えはご遠慮いただきますようお願いいたします」。
よって亡くなった方の芳名等も刻まれていないし、献花もされていない。ただ、公園の広い空が見える所に燦然と屹立している。
惨禍の悲しみを超えて未来を目指そうと言う京都アニメーションと宇治市の強い意志の現れである。
宇治市がこのような碑を築いた理由は明快。
京都アニメーションは、宇治市内に本社屋（宇治市木幡）とスタジオ（宇治市木幡と京都市伏見区、宇治市との境界付近）などがあり、まさに宇治市の地場産業なのである。
京都アニメーションは20年前より「ご当地アニメ」製作が主なのは広く周知されているが、ここ、宇治市、京阪宇治駅も舞台としたアニメーションも製作していた。
「響け！ユーフォニアム」である。

碑文。市とスタジオの願い.....

.　京アニ放火事件の青葉被告が行った行為を数字的規模で表現します。
今年は我が千葉県佐倉市、佐倉駅空襲から80年。昭和20年7月18日、グラマンF6Fによる攻撃、あの犠牲者が14名です。佐倉市では、戦時中の戦闘による犠牲者としてはこれが最大です。
　青葉被告によって焼き殺された方は、戦争中に起きたこの空襲や1日の空戦による戦没者,例えば、我が伯父が散華した昭和19年9月13日のフィリピン、ネグロス空戦での陸軍飛行31戦隊の搭乗員戦没者16名、その倍以上なのです。
　それだけでなく貴重な文化資料やデータ、機材なども灰になりました。
　そして、、「涼宮はるひ」の個性あふれる闊達なキャラクター、「響け！ユーフォニアム」のまさに現在を活きる女子高生キャラクター、それらの「母」である、キャラクターデザイナー、池田昌子さんはじめ多くの宝玉のごときスタッフが、ただ1人の身勝手な妄想により、灰に、なりました....

園内にある茶畑と保存建築。

事件のあらましを書きます。
2019年7月18日午前10時半、佐倉市にとっては空襲慰霊（艦載機により佐倉駅が攻撃されたのが午前11時頃です）の日に、京都府伏見区にある「京都アニメーション第一スタジオ」に中年の男が侵入、バケツ2個に入ったガソリンをばら撒きライターで着火。爆発的に火は燃え上がり20秒もかからず建物全体に火が燃え広がった。スタジオは全焼、中にいた70人中69人が被災。翌日までに36人が死亡、うち22人が焼死、10人が窒息か一酸化炭素中毒死だった。生存者も火傷や骨折などの重傷者が10人発生。
そして、放火した容疑者、青葉真司自身も火傷により瀕死の重傷を負った。容疑者はその後医療スタッフの懸命の努力によって一命は取り留め、その後、不自由な身体の状態で裁かれ、そして死刑判決が確定した。典型的な「拡大自殺」である。

京阪の駅と公園全景。

ガソリンは揮発性が高く、ある程度密閉された空間で燃焼させると、爆発に近い燃え方をします。だから、発動機の燃料になるし、爆薬の原料になるのです。
今年は終戦80年ですが、その80年前に日本の都市に投下された米軍の焼夷弾やベトナムで使われたナパーム弾、あれ、洗剤とガソリンを混ぜたものと言ってもいいんですよ。洗剤の原料になるパーム油とガソリンを分溜する前の状態であるナフサ、その二文字を足して「ナパーム」と言ってるのです。
ガソリンと言うものはそういうものなのです。

宇治川を奈良線の電車が走り去る。
京都アニメーションは、そもそも虫プロに在籍していた八田陽子さんが、一旦業界から退いた後、移り住んだ宇治市内で近所の主婦を集め小規模家内手工業で、1981年に創業したのが始まりである。最初は下請け（仕上げや中割り）からはじめ、徐々に事業を拡大、2003年より作品の自社制作を開始、2005年の「AIR」が注目され、2006年の「涼宮ハルヒ」のヒットで一躍有名プロダクションとなった。
東映は大泉、サンライズは杉並区と業界では東京にスタジオを構えることが多い中で、一貫して宇治を離れず製作を行っている。また、萌え起こしだのコンテンツ産業だのと最近は国からも持て囃される反面、製作環境が厳しく、中抜きが当たり前でスタッフや役者が正当な対価を貰えない、いわゆるブラック産業の典型であるコンテンツ産業のなかでも、このスタジオは福利厚生や労働環境の改善などにも力を注いできたと聞く。

京阪宇治駅、電車は12分間隔で発着する。ここから、次は六地蔵駅まで移動する。
が、その前に.....

宇治駅 (京阪) 駅

駅には、この宇治市を舞台にした京都アニメーション制作の「響け！ユーフォニアム」シリーズのイラストが並んでいた。

京都アニメーションの大きな功績に、作品の舞台となる地域を明確にし地域密着型の作品作りを積極的に行う、いわゆる「聖地巡礼」や「作品による街起こし」を盛んに行い地域振興に貢献したことがあげられる。
以下、代表例を２つ紹介する。

宇治駅 (京阪) 駅

埼玉県久喜市鷲宮。
京都アニメーション製作「らきすた」の登場人物、柊かがみ・つかさ姉妹の住む神社が、鷲宮神社をモデルにしていることから、爆発的に参拝者、訪問者が増え、かがみ・つかさ姉妹は久喜市の公式ゆるキャラのモデルにもなった。

この作品と久喜市は、茨城県大洗町とともに「萌え起こし」の成功例として話題になった。
放火事件の犠牲者の一人である武本康弘氏は「らきすた」の監督を勤めたため、久喜市にも動揺が走り、京アニに対する様々な支援策が行われた。事件のあった7月の祭りでは久々に「らきすたみこし」を担ぎ、献花の代わりに神社に追悼や復興の願いを込めた絵馬を多数奉納された。

「涼宮ハルヒ」の舞台となった兵庫県西宮市。現在も原作シリーズは続いているため聖地巡礼を目的にした訪問客は絶えず、このような登場人物を模した「飛出し坊や」看板が点在する地。
何より作品のキャラクターデザインを担当した池田昌子さんも犠牲者であり、また先述した武本康弘氏はこの作品の監督も勤めた。
西宮市では特に舞台となる西宮北口駅周辺を中心に行政や有志による義捐金等の支援を行った。

宇治駅に並ぶ「ユーフォニアム」のキャラクター看板。
「響け！ユーフォニアム」の舞台宇治市。2019年4月にこの作品の劇場三作目が公開され、それが、西尾大志氏、池田昌子さん、武本康弘氏、高橋博行氏をはじめとしたスタッフの、遺作となった。
しかし、悲しみを乗り越え、この作品は2023年に不死鳥のごとく蘇る。2023年8月に新作映画が公開され、亡くなったスタッフの名もクレジットには刻まれた。
さらに2024年に画像のテレビ放映第三期が放送、そして来年には新作映画も上映される。
「親」を失う、その悲劇を乗り越え、金管楽器の音色は再び、宇治に鳴り響くのだ！

主要人物の吹奏楽部高校生が、平安衣装に身をつつむ。

「事件の対象には子供がいる人もいると知ってやったのか」
「青葉真司！聞いているのか！色々な人たちの力によって、あなたはまだ生きている！生きたくても生きられなかった人もいるのに、あなたはまだ生きているんだよ！その意味を、よく考えてください！」
池田昌子さんの夫による、裁判での意見陳述です。その言葉は、被告には届いたのでしょうか？

大阪池田の宅間、秋葉原の加藤、相模原の植松、そして青葉、山上....　彼らに共通しているのは幼少時代からDVやネグレストを受け不幸な生い立ちを送り、更に就職などにも失敗し、自暴自棄か若しくは歪んだ独善な思想にとらわれていることです。
しかし、だからこそ、私は同じく池田昌子さんの旦那さんが述べた次の意見陳述も引用したい。

「あなたも人生で苦労されてきたことは理解できます。ですが、あなた以上に苦しんで生きてきた人は、私のほんの身近にもたくさんいます。人生に苦労する人は、数え切れないほどいることは知ってほしい」
　そう、ほとんどの人間は、どんなに自分が苦境に陥っても、くじけそうになっても前を向き、歯を食いしばって真っ当に生きているのだ！　公職を失った身でもある私だからこそ、改めて言わせてもらう。

京阪の電車は出発する。六地蔵に向かう。

一方で、池田昌子さんの夫は、残された息子さんに対し、このようにも語ったことを述べています。
「『人を恨む』ことを覚えてほしくなかったんです。『お前（青葉被告）のせいでママが死んだ』と思うようになると、今度はお前が青葉被告と同じことをやりかねないと。だから気持ちはわかるんだけど前向きに物事を考えようと....」
恩讐を超えて、憎しみの連鎖を超えて、人は前に進めるのだ。

京阪宇治線 乗り物

京阪六地蔵駅。ここにも献花台などが置かれたそうです。
この駅は、事件のあった第一スタジオからすぐ近く。
この駅の手前に川があるのだが、その川が、宇治市と京都市伏見区の境界になる。
JRの六地蔵駅は宇治市にあり、京阪の駅は京都市にある。

六地蔵駅 (京阪) 駅

事件現場となった第一スタジオ跡。更地にされ、周囲は板塀で囲まれています。
献花や供物を置かないよう注意書きもされ、監視カメラもありました。
物々しい雰囲気の中、周囲の狭い空間に花壇があり沢山の花が植えられていました。
今年は七回忌...　敷地の中で慰霊と追悼の式典が行われたそうです。何らかの碑を建設する予定と聞きますが、当面非公開です。

「そっとしてほしい」
そう、何かが語りかけてくる気がしました。同じようなものは西大寺駅前でも感じました。それだけ、この惨禍は「重い」のです。
京都市も宇治市も、インバウンド需要が凄まじく、多くの外国人がやって来ます。その中には「アニメ」の聖地巡礼を目的にした人たちも少なくはありません。
京都アニメーションの作品は多くの国の人たちに愛されたことは、国連の事務総長やカナダ、台湾の首脳をはじめ幾つかの国の駐日大使からも弔意が寄せられたことからも明らかです。

そっと、合掌して、すぐにこの場を去ることにしました。

花々が美しく咲き、三十六柱の御霊を慰撫してるように感じました。

私は我が国の主軸産業は飽くまでも製造業だと考えています。裾野の広さ、雇用、売上、海外展開、いずれをとってもアニメなどの「コンテンツ産業」や「観光業」よりもはるかに規模が大きいのです。
しかし、例えば自動車や造船一本に頼ることは国全体としてはかえって危険だとも思います。その中で我が国で新たに勃興した「コンテンツ」「観光」も産業として実ってきていることは好ましいことだと思いますし、経済だけでなく文化や国際交流においても有為だと考えています。
だからこそ、西大寺で凶弾に斃れた安倍元首相は、リオの五輪閉会式で、ゲームキャラのコスプレをして突如登場したのでしょう。
そのキーパーソンでもある京都アニメーションが悲劇を乗り越えてさらに雄飛することを願ってやみません。

JR六地蔵駅へ。
山科川。この河が京都市と宇治市の境です。

複線化が完成し、駅もやや移設されたJR六地蔵駅。
京都行の普通電車が来た。

六地蔵駅 (JR・地下鉄) 駅

京都駅。
外国人でごったがえす中、新大阪始発ののぞみで帰途に就いた。

観光というのは、何も光ばかりではありません。影の部分にも光をあてることも紀行文の使命だと私は考えます。しかし、今回のテーマは、あまりにも重すぎた気もします。それでも伝えて行かなくてはならないのかもしれません。

--『叶えたい事が溢れてるから立ち止まってる暇なんてないよね』ーー『響け！ユーフォニアム』のオープニング曲のこの一節のように、３６人のみんなもきっと、作りたいことがいっぱいあったのでしょうね、空の上でもアニメを作り続けているのでしょうね。どんな作品ができましたか？きっと明るくて、楽しくて、素敵な作品なのでしょうね。こちらでも、京都アニメーションのみなさんが頑張って作品を作り続けていますよ--
2025年の追悼式典での遺族代表による追悼のことばです。

　

京都駅 駅

在りし日の安倍元首相。
2012年冬の総選挙の時に、千葉県内に遊説に来た時の画像。

何度も言いますが、私は暴力は嫌いです。故に何度も言います。
「人間なら、話し合いをしてください」.....