2024/03/21 - 2024/03/21
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mistralさん
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ロマネスクの街ポワティエにやってきて、限られた時間でどこを回ろうかと考えていたのですが、一番の目的地ノートルダム・ラ・グランド教会を後にしてみると、あとは足の向くまま、という気になってきた。
通り過ぎたサン・ピエール大聖堂はあまり見るべきものはなさそうなので(ゴシック様式の大きな教会堂)通り過ぎたその先、路路の向こう側に見えてきたのはサント・ラドゥゴンド教会だった。
路路越しには細身の教会堂で、なにやら形はちぐはぐな印象だったけれど、不思議に惹かれるものがあって行ってみることにした。
(表紙写真はサント・ラドゥゴンド教会の内陣)
- 旅行の満足度
- 4.5
- 同行者
- カップル・夫婦
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
歩くと暑くなってくるような陽気の中
-
ノートルダム・ラ・グランド教会から歩いてほどなく
通りの先に見えてきたのが
(この辺り、サン・ピエール大聖堂近くを通過中) -
細身な印象のサント・ラドゥゴンド教会。
この教会についてはあまり事前チェックしておらず
行ってみての印象が強く残り、旅行記を書きながら
聖ラドゥゴンドのことを調べているうちに一篇の旅行記と
なりました。
ラドゥゴンドによって560年ごろ建設された教会。
彼女はサント・クロア修道院の創設者でもある。
587年に亡くなると、この教会堂は「サント・ラドゥゴンド」
と呼ばれるようになり、9世紀半ばに再建された。
(サント・クロア修道院は現在は近隣のサン・ブノワに移設、
創設時の修道院の跡地には、ミュゼ・サント・クロアが
ある。) -
正面入り口の扉は固く閉ざされているような印象を抱いてしまい、
押してみることもせず
横手に回ってみることにした。
鐘楼ポーチの高さは33メートルあるそうだ。
入口以外はロマネスク様式。
11世紀初めに地上階と2階が、11世紀末に更に上階が
建設された。 -
正面ファサード
1455~57年にフランボワイヤン様式で作成されたそう。
先ほどみてきたノートルダム・ラ・グランド教会とは
だいぶ趣の違うもの。
タンパンの彫像は19世紀に制作されたもの。
フランボワイヤン様式といえば、<炎の燃え上がるような>
との意味があり、スペインやポルトガルでずいぶん
華やかな装飾を見てきたような記憶がある。 -
ドイツ、チューリンゲンの王の娘だったラドゥゴンド。
531年、その王国は、フランク族の王クロヴィスの息子クロテール
によって滅ぼされてしまい、彼女は人質として弟と共に
フランスに連れてこられたそう。
深い教養ゆえか、クロテールに気に入られたラドゴンド。
自身の意に反して?彼と結婚させられ王妃となり、やがて
聡明な彼女は皆から愛される王妃となった。
しかし乱暴な夫によって彼女の弟は殺され、そのことから
王家から逃げ出していった。
その後司教の聖メダールによって、女性ながら聖職の地位
を与えられポワティエにやってきた。
そこで彼女は女性の為の修道院をつくり、35年間を過ごした。
ビザンツ皇帝は彼女にキリストの聖遺物を送り、今でもその
修道院には保存されているそうだ。 -
「サント・ラドゥゴンド教会」小冊子より
表紙に使われている像は、ファサード中央のマリア像の左側の
ラドゥゴンドの像です。
587年8月13日彼女は亡くなり、遺骸は彼女の修道院近くの
教会に埋葬されたが、現在彼女のお墓はここのクリプトにある。 -
ファサードの
ラドゥゴンド像。
右側は聖母子像。 -
後陣方向へ移動中
-
ゴシック様式になると取り付けられるようになった
ガーゴイルも見受けられる。 -
後陣。
結局内部へ入れそうなドアは見つからなかったので
入場するには正面ドア以外にはないだろうことがわかった。 -
正面ファサードに設けられていた木製ドア、
固く閉ざされているものと思い込んでいたが
押してみると開いたので、かえって驚いた。
内部に入ると、外見の印象よりずっと明るく
軽やかな感じ。
身廊は一つのみ。
13世紀初めにゴシック・プランタジネット風または
アンジュヴァン風で再建されたそう。 -
内陣はひと際明るく輝いているよう。
他の部分は改修されてしまっているが
内陣はロマネスク様式がそのまま残されているようだ。 -
彩色がかなり残っている様子で、周歩廊がある。
そして周歩廊を取り囲んでいる柱に施された模様、彩色、
天井を彩るフレスコ画などなど
個性的なようだが、全体としての落ち着きが感じられる。 -
天井の中央の「栄光のキリスト」
-
四隅を四福音書記者のシンボルに囲まれている。
-
キリスト像の下の聖母子像
-
天井に描かれたラドゥゴンド(右側赤い衣装の女性)
-
アダムとイヴ
創建時より柱頭は彩色されていたそうだが
19世紀に塗り直されたようだ。 -
教会の番人とされるライオンが人を襲っている。
-
コーナーにある奇妙な生き物の口からは
何やら(舌?)吐き出されていて
それが自身の身体に絡みついている。 -
内陣下にあるクリプトへ降りていけるようだ。
-
右側に一部見えている彫像が
サント・ラドゴンド像。16世紀の制作。 -
メロヴィング朝時代に制作された
サント・ラドゥゴンドの石棺が収められている。
この場所は587年、聖女が埋葬されたまさに同じ場所に
あたるそうだ。 -
両脇の祭室には
サント・クロワ修道院の女子大修道院長
サント・アネスとサント・ディシオルの亡骸も
納められているそうだ。 -
もう一方の祭室。
-
クリプトから身廊へあがっていく石段
-
-
聖ラドゥゴンドとサント・クロア修道院との案内が
あったので、行ってみると -
ここは参事会員の祈祷室として使われていたそうだ。
どうやらサント・ラドゥゴンドの生涯についての
解説板が置かれているようだった。 -
12世紀末から13世紀初めに建てられ
身廊同様アンジュー風のスタイル。
(ここでフランスを訪れると出てくるアンジュー家についておさらい。
アンジュー帝国とまで称された、プランタジネット家ーアンジュー家ー
12~13世紀、ピレネー山脈から現在のアイルランドまでに至る広大な
領土を一時統治したそう。) -
ヴォールトの頂のキリスト像。
祝福のポーズをとっている。 -
アーチの上に何かがいると思ったら
-
鳥?
-
-
何かいわれのありそうなステンドグラスだけれど、、、
-
パイプオルガン
-
側壁アーケード上に、約100ものモディヨンが見られるが
ゴシック期に遡るものだそうだ。 -
サン・ジャン洗礼堂が近くにありそうだが
ガイドブックによると、お昼休みに入ってしまいそう
だったので、私たちもお昼休みをとることにした。
近場には食事が出来そうな場所も見当たらず
再びノートルダム・ラ・グランド教会近くの広場まで
戻ってきた。
テラスでピザパイ、サラダなどをワインと共にいただいた。
テラスでの食事もこんな陽気だと快適。 -
(おまけの写真です)
ミュゼ・サント・クロアの入場券の裏面にいるグラングル。
この赤い竜は博物館のシンボルマークとなっているようだ。
旅行記を書きながら、調べていたら
ポワティエには竜にまつわる伝説があるということがわかってきた。
聖ラドゥゴンドの時代、地下通路にはグラングルと呼ばれる竜が
住んでいて、サント・クロワ修道院の修道女たちをむさぼり
食っていたそう。修道院の創設者、聖ラドゥゴンドはこの竜
に立ち向かい退治したとの言い伝えがあるそうです。
ミュゼ・サント・クロワでその伝説の竜はどこに?
と探し、最後のあたりで対面。
残念ながら写真は残っていない。
1677年、サント・クロア修道院長が聖ラドゥゴンドの日の行列に
使う為に、ポワティエの家具職人に作らせたものだそう。
大きな口から毒蛇のような二股の舌を出し、コウモリの羽、
鷲の爪、サソリの尾を持つ怪物だが
現在ではポワティエの人気キャラクターだそう。 -
ミュゼで
ラドゥゴンドの肖像画を見つけた。 -
同じくステンドグラスの聖ラドゥゴンド。
お昼をとりながらひと休みした後、
このあと、再び途中まで引き返してサン・ジャン洗礼堂へ行きます。
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この旅行記へのコメント (7)
-
- マリアンヌさん 2024/05/28 15:05:27
- 聖ラドゥゴンドの伝説
- mistralさん
再びお邪魔します。サント・ラドゥゴンド教会のファサードはゴシックですが、ロマネスクな部分が残っていますね。
そして聖ラドゥゴンドの伝説、mistralさんに物語っていただき、興味深く拝見しました。内陣の周歩廊、とても魅力的です。四福音書記者のシンボルに囲まれたキリストや
聖ラドゥゴンドなど彩色が綺麗に残っていますね。
柱頭の怪物もショーヴィ二ーを思わせて面白いです。
クリプトのメロヴィング朝時代に制作されたサント・ラドゥゴンドの石棺なんて震えますね☆
素敵なレポートありがとうございました。
マリアンヌ
- mistralさん からの返信 2024/05/29 16:27:00
- RE: 聖ラドゥゴンドの伝説
- マリアンヌさん
こんにちは。
一度にお返事ができず、すみません。
> 再びお邪魔します。サント・ラドゥゴンド教会のファサードはゴシックですが、ロマネスクな部分が残っていますね。
ちょっと見にはゴシックですよね。
それで通り過ぎそうになりました。
それでも気になって入ってみたんです。
> そして聖ラドゥゴンドの伝説、mistralさんに物語っていただき、興味深く拝見しました。内陣の周歩廊、とても魅力的です。四福音書記者のシンボルに囲まれたキリストや
> 聖ラドゥゴンドなど彩色が綺麗に残っていますね。
> 柱頭の怪物もショーヴィ二ーを思わせて面白いです。
内部も薄暗いような印象を持って入ったのですが、
内陣は想像以上に明るく軽やかな感じでした。
周歩廊が素晴らしいですよね。
列柱は派手な模様で塗られているけれど、けばけばしくなくて、良い感じでした。
> クリプトのメロヴィング朝時代に制作されたサント・ラドゥゴンドの石棺なんて震えますね☆
> 素敵なレポートありがとうございました。
正面側にクリプトに降りていくための開口部が大きく空いていて
大概はひっそりとクリプトに入っていくイメージがありましたが
予想を覆されました。
サント・ラドゥゴンドさんが大切に守られてきていることが想像されました。
mistral
-
- ryujiさん 2024/04/30 09:00:41
- フランス中世の都市へタイムスリップですね♡
- こんにちは、mistralさん。
フランスご旅行ですか、羨ましい限りです。 私のフランスはパリ&ベルサイユのみの体験です。 ロマネスクの心よい響きに誘われての旅行記拝見です。(10~12世紀に西欧に広まったキリスト教の美術・建築様式だそうです) ポワティエの街、ホント素敵です。 恥ずかしながら初めて知りました。
- ryujiさん からの返信 2024/04/30 09:20:34
- Re: フランス中世の都市へタイムスリップですね♡
- 中途投稿となりました、お許しください。ポワティエはパリよりず~と南西方向を知りました。 正にロマネスクを代表する街ですネ。 mistralさんの旅行記でその素晴らしさ確認した次第です。
素敵な旅行記をありがとうございました。
ryuji
- mistralさん からの返信 2024/04/30 21:17:53
- RE: Re: フランス中世の都市へタイムスリップですね?
- ryujiさん
こんばんは。
コメントをありがとうございました。
ryujiさんのパリの旅行記、ゆっくりと滞在されたご様子で
丹念にパリの街を散策なさっておられましたね。
もしかしましたら全てではないのかも知れませんが
良く覚えております。
最後にパリでも滞在しましたが、パリは観光客で大賑わいでした。
田舎の街のゆったりした感じは、年とともにくつろげるように思えます。
> 中途投稿となりました、お許しください。ポワティエはパリよりず?と南西方向を知りました。 正にロマネスクを代表する街ですネ。 mistralさんの旅行記でその素晴らしさ確認した次第です。
ポワティエはパリから始まる巡礼道沿い(トゥールの道)にある街ですので
古い教会堂が多く残されていて、ロマネスク美術の見どころも満載でもあります。
以前から行ってみたいと思っておりまして、やっと願いがかないました。
マニアックな旅行記が続きますが、どうぞ宜しくお願い致します。
mistral
-
- RON3さん 2024/04/18 10:03:13
- 4年ぶりの海外旅の記録、興味深く読ませていただきました
- mistralさん、おはようございます
昨年までは、国内をあちこち回られて、旅行記をアップされていましたが、今回はフランスですね。「ポワティエ」とか「サント・ラドゥゴンド教会」とか聞いたことがありませんでしたが、mistralさんの旅行記は、ツアーガイドが詳しく説明してくださる以上の内容を非常に簡潔にまとめてくださっているようで、あたかもその場で鑑賞しているかのような錯覚に陥ります。
旅行後数週間で、このような詳細な解説を含めた旅行記は、調べることや、多くの情報を簡潔にまとめる工夫など、さぞエネルギーを費やされていることとお察しします。
私は、この角度のこの写真は、現地のどの部分だっけ?と分からなくなることがほとんどで、その確認にも疲れてしまいます。
そんなあれやこれやの努力と魅力がたっぷり詰まったmistralさんの旅行記のファンの一人です。続きを楽しみにしています。
RON3
- mistralさん からの返信 2024/04/18 11:16:59
- RE: 4年ぶりの海外旅の記録、興味深く読ませていただきました
- RON3さん
こちらにも書き込みいただき、ありがとうございます。
>
> 昨年までは、国内をあちこち回られて、旅行記をアップされていましたが、今回はフランスですね。「ポワティエ」とか「サント・ラドゥゴンド教会」とか聞いたことがありませんでしたが、mistralさんの旅行記は、ツアーガイドが詳しく説明してくださる以上の内容を非常に簡潔にまとめてくださっているようで、あたかもその場で鑑賞しているかのような錯覚に陥ります。
有難うございます。
4年ぶりの海外旅、特にフランスではオリンピックに向けての様々な取り組みがあった?ような印象を受けました。
以前はもっと緩い感じでしたのに、その辺がきっちりしようとの意気込み?が感じられました。
ついつい詳しくなってしまいますのは、もともとの性分?
後々の自分自身への覚書でもあり、くどくなってしまいますあたりは読み飛ばしてくださいね。
> 旅行後数週間で、このような詳細な解説を含めた旅行記は、調べることや、多くの情報を簡潔にまとめる工夫など、さぞエネルギーを費やされていることとお察しします。
ロマネスク美術は私自身、好きな分野で、かねてから本やら講座やら参加などしていまして、あ〜これがあの実物なのね、など、一致したうれしさなどがあります。
> 私は、この角度のこの写真は、現地のどの部分だっけ?と分からなくなることがほとんどで、その確認にも疲れてしまいます。
他の分野ですと、同じようなことが私にも起こりますよ。
>
> そんなあれやこれやの努力と魅力がたっぷり詰まったmistralさんの旅行記のファンの一人です。続きを楽しみにしています。
>
おほめいただきまして、嬉しいです。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。
mistral
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