2022/11/15 - 2022/11/20
629位(同エリア2301件中)
唐辛子婆さん
唐辛子爺が所用で鹿児島市と霧島市に行くというので
google earthで調べていたらいろんなところに田の神様がいらっしゃる。
田の神様(たのかんさあ)ってなに?
右手にしゃもじ、左手にお茶碗、頭に甑簀(こしきす:餅米などを蒸すときに使う藁製の編み物〕を頭にかぶった神様。
旧薩摩藩(鹿児島県と宮崎県)だけに残されたコメの豊作を祈る神様。
よそから盗んできても、不作の年にいじめても怒らないんですって。
お顔が風化してわからなくなっているのや、顔の真ん中に穴が開いているのや、きれいに塗りなおされてにこやかに笑ってるのやお化粧のどぎついのや、そこらへんのおばちゃんおっちゃんみたいな顔や。
短い鹿児島旅行中に見られたのはほんのわずかなんですけど本当に魅力的でもっとよく調べてみたいと思いました。
キャンピングカーで全国の石像を撮影して膨大な一覧表を作成した方がいらっしゃり、田の神様もいっぱい掲載されているということは分かったんですけどお名前や連絡先が分からないのでここにURLを掲載するわけにもいかず。
そうこうしているうち霧島市の友人MWKさんのご主人様の「本が出ている」を頼りに探した結果、素晴らしい著書にめぐり会いました。
「田の神サァ ガイドブック」八木幸夫著 南方新社(この表紙と下の写真です)
八木幸夫氏は霧島市の診療所の先生です。
午後からの訪問診療に追われる生活の中で目にする田園風景が息抜きになっておりそこで田の神様にであう。
この「田の神サァガイドブック」はお気楽な旅行者用の楽しい案内本というよりは「田の神石像・全記録 南九州の民間信仰」(研究論文!)のダイジェスト版といったカンジでした。息抜きからライフワークへとのめりこんでいくさまが見えるやうな全記録!
なにせ広域!
旧薩摩藩(鹿児島県と宮崎県の南部)全域にいらっしゃるが地元の人からも存在を忘れられていたりして案内してもらうのも一苦労!
さうやって2400体以上の田の神様を撮影して公民館や教育委員会や文化財保護委員会等の文献を調べ続け、住所・作成年・作者・型分類・サイズ等の表を作り、イラスト入りの型分類説明も充実させ・・・。
集会を禁じられている農民たちが講という組織を作りあげ農閑期に米や焼酎を持ち寄ってのお祭りをするために作られたともいわれている田の神様。
なんと1体だけ十字架を持った神様もいらっしゃるし
顔に穴の開いた田の神様は不作の時にぶん殴られたんですって。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- ANAグループ JRローカル 私鉄 徒歩
-
そして一番興味深いのは
豊作だったよその田んぼから盗んできて自分たちの田に据えつけ何年後かに返しに行くという習慣!
盗むときには田の神様からの手紙(2~3年のうちに戻るから取り返したりはしないやうに。)を置いて行くのがルール。
返しに行くときは羽織袴姿で田の神様にも新しい衣装を着せ3年働いてくださったお礼にモミ、餅、料理、焼酎を携えて訪れる。
迎えた方はイヤミひとつ言わず神様の帰還を喜び一緒に酒盛りをする。
豊作実績の豊かな神様は何度も盗まれたみたいですよ。
盗まれないように巨大化した神様もいらっしゃるとか。
姶良市の田の神様地図 -
ここからは他の鹿児島編と重複しますが鹿児島旅行で出会った田の神様をご覧ください。
出水市の干拓地でツルを見に行った帰りに見つけた荒崎の田の神様。
1866年、荒崎新田(干拓地)の完成を記念して建てられたそうです。 -
出水市
上堅馬場の田の神様 -
お顔がかなり風化していました。
-
出水市
野添の田の神様 -
にこやかなお顔でした。
-
いちき串木野市
高見町の田の神様
JR串木野駅から徒歩5分 -
公園の傍らにいらっしゃいましたが公園はもとは田んぼだったのでせう。
-
-
姶良市
玉利の田の神様
お隣の2体は仏像型だったので廃仏毀釈にあってお顔がつぶされています。 -
霧島市の友人MWKさんに連れてきてもらって
-
お目にかかることができました。
-
霧島市
シラス崖中腹 摩崖仏のやうな大出水の田の神様 -
霧島市
下岩穴の田の神様
周知遺跡 -
-
優しいお顔
-
霧島市
祝儀園の田の神様
宝暦12年3月(230年前)の年号が刻まれている。
田植えの時には早苗を、刈り上げの時には稲穂を供え、祭りは顔に米の粉を塗り、目、鼻、口は墨でいろどって豊作を祈願する習わしであった。(霧島市教育委員会) -
お顔がえぐられているのは不作の時に殴られたのか?
-
霧島市国分
森ノ木の田の神様は道路工事のためなくなっていた。 -
霧島市
湊の田の神様 -
また鹿児島や宮崎に行って魅力的な田の神様にお目にかかりたいと思います。
既に限界集落となり、いくら探しても見つからなかった田の神様もあり
こうした状況を何とかしたいと八木先生は「田の神を守る会」を作っていらっしゃるそうです。
「田の神を守る会」で検索するとものすんごい数の田の神様を見ることができると知りました。
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
旅行記グループ
Japan 薩摩の魅力
-
Japan 薩摩の魅力(2/8) 出水(いずみ)市のツルたち(西干拓地)
2022/11/15~
出水・伊佐
-
Japan 薩摩の魅力(1/8) 出水(いずみ)市
2022/11/15~
出水・伊佐
-
Japan 薩摩の魅力(3/8) 出水市の鳥たち(東干拓地)「二人を選ぶなんてできないわ。」
2022/11/15~
出水・伊佐
-
Japan 薩摩の魅力(4/8) 出水(いずみ)市の素敵なバー&レストラン Virtue Paddy
2022/11/15~
出水・伊佐
-
Japan 薩摩の魅力(5/8) 薩摩英国留学生記念館でカリフォルニアの葡萄王に出会う
2022/11/15~
阿久根・薩摩川内・いちき串木野
-
Japan 薩摩の魅力(6/8) 友人の案内で霧島めぐり
2022/11/15~
姶良・加治木
-
Japan 薩摩の魅力(7/8) 唐辛子爺のミッション
2022/11/15~
国分・福山
-
Japan 薩摩の魅力(8/8) 田の神様(たのかんさあ)
2022/11/15~
鹿児島市
旅行記グループをもっと見る
この旅行記へのコメント (4)
-
- ElliEさん 2023/02/01 09:12:35
- 楽しいたのかんさぁ
- 唐辛子婆さん、こんにちは~。
九州旅で色々と面白いものに出会ったのですね。
そういえば、出水のツルを取材したTrainCruiseをウェブサイトから見ましたよ。
残念ながら、インタビューは放映されてませんでしたが、
ツルの展望台にいた観光客の中に唐辛子ご夫妻がいたのかしら・・・?
たのかんさぁとは、面白いものですね~。
盗んだり返しに行ったり。そんな習慣は初めて聞きました。
鹿児島や宮崎などずいぶん広域に残っているものなのですね。
九州人なら知っていることなのかしら?
だいぶ風化されている神様もいらっしゃるようなので、こういう資料は貴重ですね。
学生時代に信州の道祖神を巡ったことを思い出しました。
夫婦の道祖神があちこちに残っていて、なかにはキスしている道祖神とかもあって面白かったです。
あの時、もっとハマってきちんと調べていたら、私もこういう本を出すことができたかなあ。なんて思ったりして。笑
京都のお地蔵さまも面白いですよね。
こういう地方に残る習俗を訪ねての旅。私の好きな旅行のスタイルです。
これからも面白いものを紹介してくださいね。
- 唐辛子婆さん からの返信 2023/02/01 21:24:19
- Re: 楽しいたのかんさぁ
- ELLiEさん
インタビューはボツになったんですね。
残念ですけどまあそんなとこでしょう。
たのかんさあは夏への扉さんやmistralさんにもゆかりの地ですがご存じなかったようです。田の神様のご本を何冊も出していらっしゃる八木先生も往診の途中で地元の老人にこれは何?と聞いて知ったそうですし。霧島市の友人もとくには関心がなかったんですって。
宮崎の方が「レンタル自転車でまわる田の神様マップ」などあって鹿児島のよりもっとカラフルで面白そうなので次回は宮崎に行って見たいです。
信州の道祖神も面白そうですね。
これからELLiEさんの京都編お邪魔しますね。
唐辛子婆
-
- mistralさん 2023/01/25 17:38:04
- 田の神さま
- 唐辛子さん
こんばんは。
田の神様、総集編!
楽しかったです。
よそにご利益のありそうな神さまがいらっしゃったら
お連れすることがあるんですね。
日頃、情報収集しておかないとダメですね。
盗みに行く時にも、お返しに行く時にもルールがあって、
どんなことがあっても平和に物事が進んでいくようになっている、
とはなんて素晴らしいことなのでしょう。
唐辛子さんが探された本、私も読んでみたくなりました。
旅行記に載せられた神さまを探して歩くだけでも、結構な時間がかかり
ご主人さまの本来の目的は果たせず時間不足になったことがよくわかります。
でもそれが旅の楽しさですね。
mistral
- 唐辛子婆さん からの返信 2023/01/25 21:34:38
- Re: 田の神さま
- mistralさん
読んでくださってありがとうございます。
田の神様がいらしたあたりに置手紙を置く。
「こちらに大変お世話になっているが、自分は食いしん坊で団子とかを腹いっぱい食べたいのでこれから何か国かを回るが3年したら必ず戻るから決して取り戻しに来たりしないように。」
高温多湿の鹿児島で名前ペンもない時代に和紙に墨で書いたものを置いておいたらすぐににじんで読めなくなってしまいそう。場所はたいてい田んぼを見渡せる辺鄙なところで民家から遠い。それに当時の識字率ってどのくらいだったんだろう?置手紙を見た人が読めなかったら盗まれた!とだけ思うのでは?
現実的すぎる唐辛子婆はついそんな風に心配したりしましたが、よそのサイトで村(の長老?)どうしが貸し借りの話をつけていたみたい、というのを見つけました^^。
それにしても素晴らしい風習ですよね。
「田の神を守る会」コンタクトができないのでURLを載せられませんが検索してくださると八木先生も登場しますし文献も写真もこれでもか!というほどいっぱい。ぜひぜひごらんくださいまし。
唐辛子婆
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
鹿児島市(鹿児島) の旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
旅行記グループ Japan 薩摩の魅力
4
21