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庚申信仰は、中国の道教の説く三尸(さんし)説が母体となって生まれました。三尸は人間の体内にいるという三体の精霊で、人間の罪科を監視し、庚申の晩に人が寝静まると体内から抜け出して天に上り、天帝にその人間が60日間に犯した罪科を報告し、その人の命を縮めます。しかし、庚申の晩に徹夜をすれば、三尸は天に上って天帝に人の罪科を告げる事ができず、早死にを免れて長生きをすることができるのです。これが仏教と融合してわが国に渡来し、古来の天つ神を祭るおこもりの習慣と結びつきました。<br /> 江戸時代に、特に盛んになった 民間信仰 で、庚申の夜は 講 の当番の家に集り、般若心経を唱え、和やかな話合いで一夜を過したそうです。<br />台東区内の区民文化財台帳に登載されている庚申塔は六十基で、多くが江戸時代の造立、近代の造立は二基だとか。<br />庚申塔は地域に根ざした民衆の信仰を明らかにする一次資料と同時に庚申講の講員名が刻まれている場合が多く、江戸時代の風俗習慣、信仰を具体的に知る上で貴重だと言います。<br />                   (台東区、文京区の記述を参照)<br /><br />その1では、谷中天王寺と不忍池聖天島の庚申塔を訪ねてみました。<br /><br />                  2020.11.1 記<br /><br /><br /><br />

「谷根千界隈の庚申塔」 その1/谷中天王寺と不忍池聖天島

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2020/10/14 - 2020/11/01

81位(同エリア563件中)

旅行記グループ 谷根千界隈

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35

紅映

紅映さん

この旅行記のスケジュール

2020/10/14

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庚申信仰は、中国の道教の説く三尸(さんし)説が母体となって生まれました。三尸は人間の体内にいるという三体の精霊で、人間の罪科を監視し、庚申の晩に人が寝静まると体内から抜け出して天に上り、天帝にその人間が60日間に犯した罪科を報告し、その人の命を縮めます。しかし、庚申の晩に徹夜をすれば、三尸は天に上って天帝に人の罪科を告げる事ができず、早死にを免れて長生きをすることができるのです。これが仏教と融合してわが国に渡来し、古来の天つ神を祭るおこもりの習慣と結びつきました。
 江戸時代に、特に盛んになった 民間信仰 で、庚申の夜は 講 の当番の家に集り、般若心経を唱え、和やかな話合いで一夜を過したそうです。
台東区内の区民文化財台帳に登載されている庚申塔は六十基で、多くが江戸時代の造立、近代の造立は二基だとか。
庚申塔は地域に根ざした民衆の信仰を明らかにする一次資料と同時に庚申講の講員名が刻まれている場合が多く、江戸時代の風俗習慣、信仰を具体的に知る上で貴重だと言います。
                   (台東区、文京区の記述を参照)

その1では、谷中天王寺と不忍池聖天島の庚申塔を訪ねてみました。

                  2020.11.1 記



旅行の満足度
4.0
同行者
一人旅
交通手段
徒歩

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  • 天王寺 山門<br /><br />日暮里駅から上がってくるとすぐの、大仏様の見える山門です。<br /><br />

    天王寺 山門

    日暮里駅から上がってくるとすぐの、大仏様の見える山門です。

  • 天王寺 向唐門と番小屋<br /><br />

    天王寺 向唐門と番小屋

  • 天王寺 毘沙門堂<br />放火された五重塔の焼け残った下層部の残材を使って昭和36年に再建され、四谷安禅寺に避難して無事であった毘沙門天を安置しています。<br />

    天王寺 毘沙門堂
    放火された五重塔の焼け残った下層部の残材を使って昭和36年に再建され、四谷安禅寺に避難して無事であった毘沙門天を安置しています。

  • 谷中/天王寺(台東区谷中7丁目)<br />日蓮宗寺院として鎌倉時代に創建され、不受不施派に対する禁令により天台宗に改宗。享保年間には富くじ興行で賑い、湯島天満宮、目黒不動龍泉寺とともに江戸の三富と称されるほどに賑わっていました。<br />上野戦争の折り、当寺に彰義隊の分営が置かれたことから、本坊と五重塔を残して堂宇を全て焼失、さらに昭和32年の放火心中事件で五重塔を焼失。現在に至ります。<br /><br />本堂<br />戦後、鉄筋コンクリート造りで建て替えられたようです。<br /><br />釈迦牟尼如来坐像<br />露坐、元禄3年(1690)、銅像、通称「元禄大仏」<br />

    谷中/天王寺(台東区谷中7丁目)
    日蓮宗寺院として鎌倉時代に創建され、不受不施派に対する禁令により天台宗に改宗。享保年間には富くじ興行で賑い、湯島天満宮、目黒不動龍泉寺とともに江戸の三富と称されるほどに賑わっていました。
    上野戦争の折り、当寺に彰義隊の分営が置かれたことから、本坊と五重塔を残して堂宇を全て焼失、さらに昭和32年の放火心中事件で五重塔を焼失。現在に至ります。

    本堂
    戦後、鉄筋コンクリート造りで建て替えられたようです。

    釈迦牟尼如来坐像
    露坐、元禄3年(1690)、銅像、通称「元禄大仏」

    天王寺 寺・神社・教会

  • 天王寺 客殿<br />

    天王寺 客殿

  • 天王寺の庚申塔<br />大仏様の御前の左の塀沿いに八基の庚申塔が並んでおり、更に大仏様の近くに一基、表の地蔵堂に一基あります。どれも江戸初期から中期にかけて造立されたもののようです。<br /><br />中央のひときわ大きな庚申塔<br />「妙法」文字庚申塔、寛文三癸卯年(1663) とあります。<br />

    天王寺の庚申塔
    大仏様の御前の左の塀沿いに八基の庚申塔が並んでおり、更に大仏様の近くに一基、表の地蔵堂に一基あります。どれも江戸初期から中期にかけて造立されたもののようです。

    中央のひときわ大きな庚申塔
    「妙法」文字庚申塔、寛文三癸卯年(1663) とあります。

  • 天王寺/左側に4基の庚申塔が並べられています。<br /><br />

    天王寺/左側に4基の庚申塔が並べられています。

  • 天王寺/庚申塔<br />右:日月・文字・三猿。元禄五年壬申 (1692)<br /><br />左:日月・文字・三猿。元禄ニ己巳歳(1689)<br />

    天王寺/庚申塔
    右:日月・文字・三猿。元禄五年壬申 (1692)

    左:日月・文字・三猿。元禄ニ己巳歳(1689)

  • 天王寺/庚申塔<br />右:日月・文字・三猿。貞享四丁卯歳(1687)<br /><br />左:日月・六手青面金剛・三猿。造立年月等不明。

    天王寺/庚申塔
    右:日月・文字・三猿。貞享四丁卯歳(1687)

    左:日月・六手青面金剛・三猿。造立年月等不明。

  • 天王寺/そして右側には3基の庚申塔が並んでいます。<br /><br /><br />

    天王寺/そして右側には3基の庚申塔が並んでいます。


  • 天王寺/庚申塔<br />日月・六手青面金剛・三猿。元禄ニ己巳年(1689)<br />

    天王寺/庚申塔
    日月・六手青面金剛・三猿。元禄ニ己巳年(1689)

  • 天王寺/庚申塔<br />日月・文字・三猿。元禄五壬申歳(1692)<br />

    天王寺/庚申塔
    日月・文字・三猿。元禄五壬申歳(1692)

  • 天王寺/庚申塔<br />日月・文字・三猿。貞享五(元禄元)戊辰歳(1688)<br />

    天王寺/庚申塔
    日月・文字・三猿。貞享五(元禄元)戊辰歳(1688)

  • 天王寺 <br />大仏様の後ろある小さな祠<br />塀沿いに庚申塔と如意輪観音が見えます。<br /><br />

    天王寺 
    大仏様の後ろある小さな祠
    塀沿いに庚申塔と如意輪観音が見えます。

  • 天王寺/庚申塔<br />左:邪鬼・鶏のある光背型日月・六手青面金剛の庚申塔<br /><br />右:如意輪観音

    天王寺/庚申塔
    左:邪鬼・鶏のある光背型日月・六手青面金剛の庚申塔

    右:如意輪観音

  • 近くに、こんな石碑もありました。こちらもかなり古そうです。<br />

    近くに、こんな石碑もありました。こちらもかなり古そうです。

  • 天王寺/学童守護地蔵尊 <br />

    天王寺/学童守護地蔵尊 

  • 天王寺の表にある地蔵堂 <br />青面金剛像と地蔵立像が安置されています。<br /><br />

    天王寺の表にある地蔵堂 
    青面金剛像と地蔵立像が安置されています。

  • 地蔵堂の地蔵立像<br />

    地蔵堂の地蔵立像

  • 地蔵堂の青面金剛(しょうめんこんごう)像<br />

    地蔵堂の青面金剛(しょうめんこんごう)像

  • 11月1日<br />谷中霊園の桜並木はおそまきながらうっすらと紅葉していました。<br /><br />

    11月1日
    谷中霊園の桜並木はおそまきながらうっすらと紅葉していました。

    谷中霊園 寺・神社・教会

  • その桜並木の中ほどに、天王寺の五重塔跡地が保存されています。<br /><br />谷中霊園内の護国山尊重院天王寺にある五重塔は、1644年に建立されました。1772年に火事の被害を受けましたが、1791年に再建。明治25年(1892年)には幸田露伴の小説『五重塔』の題材になったことから一躍有名になり、地域のシンボルとして親しまれていましたが、昭和32年(1957年)7月6日に焼失。心中自殺を図った男女による放火とされています。(NHKの放送史から)<br /><br />

    その桜並木の中ほどに、天王寺の五重塔跡地が保存されています。

    谷中霊園内の護国山尊重院天王寺にある五重塔は、1644年に建立されました。1772年に火事の被害を受けましたが、1791年に再建。明治25年(1892年)には幸田露伴の小説『五重塔』の題材になったことから一躍有名になり、地域のシンボルとして親しまれていましたが、昭和32年(1957年)7月6日に焼失。心中自殺を図った男女による放火とされています。(NHKの放送史から)

    天王寺五重塔跡 名所・史跡

  • 五重塔は礎石を遺すのみとなっています。<br /><br />地元では再建の動きもあったように聞いていますが、いまだに再建されていません。<br />

    五重塔は礎石を遺すのみとなっています。

    地元では再建の動きもあったように聞いていますが、いまだに再建されていません。

  • 不忍池の聖天島/巳の日に再訪!<br />10月29日、やっと巳の日に訪ねることが出来ました。ご門が開いていて感動です。<br />何十年振りにお邪魔を致しました。<br />小さな島の小さな聖天様ですが、ご常連の人や初めてという人などが数人お参りにやって来ました。<br />

    不忍池の聖天島/巳の日に再訪!
    10月29日、やっと巳の日に訪ねることが出来ました。ご門が開いていて感動です。
    何十年振りにお邪魔を致しました。
    小さな島の小さな聖天様ですが、ご常連の人や初めてという人などが数人お参りにやって来ました。

  • 不忍池/聖天島<br />聖天島は弁天堂ができるずっと前、この辺りで最も古くから祀られていたと言われます。大聖歓喜天(聖天様)が正面に祀られています。聖天様は元々は悪魔で大変恐ろしい力を持っていると言われます。大小どんな願いごとも聞いてくださり、一心に願えばどんな人もご利益に預かれるとされる神様だそうです。<br /><br />聖天さまは秘仏中の秘仏とされ、一般人の目に触れることを許されていないそうです。江戸の昔から、この小さなお社に鎮座されていらっしゃったのでしょうね。<br />

    不忍池/聖天島
    聖天島は弁天堂ができるずっと前、この辺りで最も古くから祀られていたと言われます。大聖歓喜天(聖天様)が正面に祀られています。聖天様は元々は悪魔で大変恐ろしい力を持っていると言われます。大小どんな願いごとも聞いてくださり、一心に願えばどんな人もご利益に預かれるとされる神様だそうです。

    聖天さまは秘仏中の秘仏とされ、一般人の目に触れることを許されていないそうです。江戸の昔から、この小さなお社に鎮座されていらっしゃったのでしょうね。

  • 不忍池/聖天島<br />聖天島の鳥居をくぐって左手にはいろいろな石碑と手水石。<br />モミジが幾分紅葉していました。<br />

    不忍池/聖天島
    聖天島の鳥居をくぐって左手にはいろいろな石碑と手水石。
    モミジが幾分紅葉していました。

  • 不忍池/聖天島 手水石 三猿  <br />正面に「延宝八庚申年」(1680)「四月朔日」とあります。<br />

    不忍池/聖天島 手水石 三猿  
    正面に「延宝八庚申年」(1680)「四月朔日」とあります。

  • 不忍池/聖天島 庚申塔<br />お顔が欠けていますが、舟形光背型(上部欠損)青面金剛像、邪鬼 三猿 二鶏が彫られています。「元禄三庚午年」(1690)とあります。<br />

    不忍池/聖天島 庚申塔
    お顔が欠けていますが、舟形光背型(上部欠損)青面金剛像、邪鬼 三猿 二鶏が彫られています。「元禄三庚午年」(1690)とあります。

  • 不忍池/聖天島  お社近くの左手に男根<br /><br />

    不忍池/聖天島  お社近くの左手に男根

  • 不忍池/聖天島 役小角(えんのおづの)<br />その男根を外側から見ると、人の姿をしています。髯地蔵こと修験道(山岳信仰)の開祖・役小角という行者だそうです。少し風化していますが、高下駄と錫杖が確認できます。役小角とは富士山に初めて登頂し、自在にその魂を飛ばすことができたという妖術師の頂点に立つ伝説の人物だそうです。<br />

    不忍池/聖天島 役小角(えんのおづの)
    その男根を外側から見ると、人の姿をしています。髯地蔵こと修験道(山岳信仰)の開祖・役小角という行者だそうです。少し風化していますが、高下駄と錫杖が確認できます。役小角とは富士山に初めて登頂し、自在にその魂を飛ばすことができたという妖術師の頂点に立つ伝説の人物だそうです。

  • 不忍池/聖天島 お社の右には小さな狐さん<br /><br />

    不忍池/聖天島 お社の右には小さな狐さん

  • 不忍池/聖天島 狐さんのさらに右に石で出来た稲荷社?<br />お参りに来ていらした方が、お社の右側がお稲荷さん、左側が庚申塔と言っておられましたが・・・<br /><br />

    不忍池/聖天島 狐さんのさらに右に石で出来た稲荷社?
    お参りに来ていらした方が、お社の右側がお稲荷さん、左側が庚申塔と言っておられましたが・・・

  • 不忍池/聖天島 石碑<br />さらに右には清水浜臣碑、鶏図碑、般若心経碑が建っています。<br /><br /><br />

    不忍池/聖天島 石碑
    さらに右には清水浜臣碑、鶏図碑、般若心経碑が建っています。


  • 不忍池/聖天島<br />聖天島は、境内(?)から一段下がった部分がぐるりと歩道になっていますが、その周りはぐるっと蓮の葉で覆われています。<br />

    不忍池/聖天島
    聖天島は、境内(?)から一段下がった部分がぐるりと歩道になっていますが、その周りはぐるっと蓮の葉で覆われています。

  • 聖天島/歩道<br />ずっと以前、門がなかった頃、朝早く蓮の花を描きに来たことがありました。<br /><br />ご近所の散歩でお寺さんを回っているうちに、庚申塔が目につきましたので、2,3回に分けて纏めてみたいと思います。<br /><br />思い付きのご近所の備忘録ですが、いつもお訪ね下さいまして誠にありがとうございます。<br />最後までお付き合い下さいましてありがとうございました。<br /><br />                   ・・・☆紅映☆・・・<br /><br /><br /><br />

    聖天島/歩道
    ずっと以前、門がなかった頃、朝早く蓮の花を描きに来たことがありました。

    ご近所の散歩でお寺さんを回っているうちに、庚申塔が目につきましたので、2,3回に分けて纏めてみたいと思います。

    思い付きのご近所の備忘録ですが、いつもお訪ね下さいまして誠にありがとうございます。
    最後までお付き合い下さいましてありがとうございました。

                       ・・・☆紅映☆・・・



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この旅行記へのコメント (2)

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  • pedaruさん 2020/11/03 05:38:47
    庚申塔
    紅映さん おはようございます。

    庚申塔の由来、興味深く拝見しました。今でも由来を知ってか知らずか、庚申塔にはお水や花が上げられているところがあります。
    昔は科学的知識もなく、病気なども神頼みの所がありましたから、人々は本気で神に祈ったりしていたのでしょうね。
    谷中界隈もたくさんの庚申塔があって昔が偲ばれます。いつもすてきな企画の街歩き、楽しみにしています。

    pedaru

    紅映

    紅映さん からの返信 2020/11/03 13:44:04
    RE: 庚申塔
    pedaruさん  こんにちは〜♪

    目に触れた手近な題材での記録となり、旅行記とはほど遠い内容となっておりますが、興味を持って頂き、嬉しい限りです♪
    題材を選んでネットで調べてみると、六地蔵にしても庚申塔にしても本格的に、徹底的に調べ歩いている人が大勢いることに気づかされます。
    人々が庚申信仰を心底から信じていた時代に思いを馳せてみると、そういう時代も、それなりに面白かったのではないかと思ったり致します。

    いつもご訪問頂き、コメントを頂きまして誠にありがとうございます。

    次の旅行記は、お寺さん関係をひと休みして、以前pedaruさんもお歩きになった薮下通りの散策を考えております☆^▽^☆

    森鴎外旧居以外は余り見どころはないのですが・・・

                       ・・・☆紅映☆・・・



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