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 朝からの秋晴れで、富士山も綺麗に見えている。こんな日には北鎌倉駅で途中下車して富士山を見て、一電車遅らせて鎌倉駅に向かうのであるが、今日は湘南新宿ラインで電車に遅れが出ており、鎌倉駅から目的の吉屋信子記念館までは徒歩で30分程度を見込むと時間に余裕がないと思い、途中下車して富士山を眺めるのは断念した。<br /> 鎌倉市長谷1にある吉屋信子記念館までは20分程度であった。結果、公開開始時間までは40分近く空いてしまった。時間の見積もりに失敗してしまった。前の見学者は一家3人で、次の時間の見学者は私一人で、15分前に入場すると、時間前から見学できるという。庭で前の見学者とお話したが、一条恵観山荘(https://4travel.jp/travelogue/11303017)は行ったという。それではと、春と秋に公開される扇湖山荘(https://4travel.jp/travelogue/11475988)は素晴らしいことを伝えた。しかし、帰ってから鎌倉市のホームページを見ると春に引き続いてこの秋の公開も中止になっている。<br /> 吉屋信子記念館は作家 吉屋信子さんの遺志により土地・建物などが鎌倉市に寄贈されたもので、ありし日のままに保存されているとされる。表門や築地塀などの建物は、吉田五十八氏(近代数寄屋建築の第一人者)により設計されたもので、公開中の3LDK部分、おそらくは4LDKの平屋建ての住居は鐘に糸目を付けなかったと言われ、扇湖山荘に多少は似ている。吉屋信子氏は同性愛者であり、50年以上パートナーの千代と共に暮らしたという。書斎の奥、寝室の向かいに公開されていない部屋があるのだが、4LDKの平屋建てであったのであろう。<br /> 南の芝生の庭に面した縁側は幅が4尺で、庇部分に当たる。この天井は傾斜している。全ての部屋の天井は五十八氏の意匠で全てが異なっている。また、建物の柱は角を落としてあり、玄関の基石も同じように角を落としてある。柱の角を落とすのは平カンナで簡単にできようが、柱を載せる石の角を落とすのは大変であろう。すなわち、お金が掛かっているということだ。<br /> 居間と一段高い畳敷きの座敷には4尺の縁側が付いているのだが、間が仕切られており、違和感を感じた。それに居間から庭に下りるところには敷石が置かれ、和風な感じがする。しかし、居間は洋風で鎌倉彫のテーブルや椅子は五十八氏が見繕ったものだという。<br /> 台所などは団地のような設計ではある。しかし、居間の障子は4尺で台所の障子は3尺であり、同じデザインの障子でそれぞれ南側の庭と北側の庭を切り取っている。こうしたことはこうした注文建築ででもないとできないことであろう。<br /> 書斎の棚はまるで一条恵観山荘(https://4travel.jp/travelogue/11303018)で見た棚に似ている。おそらくは、近代数寄屋建築には17世紀にあった数寄屋建築も取り入れられているのだろう。<br /> 建物をゆっくりと見学して、表から見える表門や築地塀の板張りが五十八氏の設計であることが理解できた。<br />(表紙写真は吉屋信子記念館)

吉屋信子記念館(鎌倉市長谷1)-2020年秋

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2020/10/25 - 2020/10/25

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ドクターキムル

ドクターキムルさん

 朝からの秋晴れで、富士山も綺麗に見えている。こんな日には北鎌倉駅で途中下車して富士山を見て、一電車遅らせて鎌倉駅に向かうのであるが、今日は湘南新宿ラインで電車に遅れが出ており、鎌倉駅から目的の吉屋信子記念館までは徒歩で30分程度を見込むと時間に余裕がないと思い、途中下車して富士山を眺めるのは断念した。
 鎌倉市長谷1にある吉屋信子記念館までは20分程度であった。結果、公開開始時間までは40分近く空いてしまった。時間の見積もりに失敗してしまった。前の見学者は一家3人で、次の時間の見学者は私一人で、15分前に入場すると、時間前から見学できるという。庭で前の見学者とお話したが、一条恵観山荘(https://4travel.jp/travelogue/11303017)は行ったという。それではと、春と秋に公開される扇湖山荘(https://4travel.jp/travelogue/11475988)は素晴らしいことを伝えた。しかし、帰ってから鎌倉市のホームページを見ると春に引き続いてこの秋の公開も中止になっている。
 吉屋信子記念館は作家 吉屋信子さんの遺志により土地・建物などが鎌倉市に寄贈されたもので、ありし日のままに保存されているとされる。表門や築地塀などの建物は、吉田五十八氏(近代数寄屋建築の第一人者)により設計されたもので、公開中の3LDK部分、おそらくは4LDKの平屋建ての住居は鐘に糸目を付けなかったと言われ、扇湖山荘に多少は似ている。吉屋信子氏は同性愛者であり、50年以上パートナーの千代と共に暮らしたという。書斎の奥、寝室の向かいに公開されていない部屋があるのだが、4LDKの平屋建てであったのであろう。
 南の芝生の庭に面した縁側は幅が4尺で、庇部分に当たる。この天井は傾斜している。全ての部屋の天井は五十八氏の意匠で全てが異なっている。また、建物の柱は角を落としてあり、玄関の基石も同じように角を落としてある。柱の角を落とすのは平カンナで簡単にできようが、柱を載せる石の角を落とすのは大変であろう。すなわち、お金が掛かっているということだ。
 居間と一段高い畳敷きの座敷には4尺の縁側が付いているのだが、間が仕切られており、違和感を感じた。それに居間から庭に下りるところには敷石が置かれ、和風な感じがする。しかし、居間は洋風で鎌倉彫のテーブルや椅子は五十八氏が見繕ったものだという。
 台所などは団地のような設計ではある。しかし、居間の障子は4尺で台所の障子は3尺であり、同じデザインの障子でそれぞれ南側の庭と北側の庭を切り取っている。こうしたことはこうした注文建築ででもないとできないことであろう。
 書斎の棚はまるで一条恵観山荘(https://4travel.jp/travelogue/11303018)で見た棚に似ている。おそらくは、近代数寄屋建築には17世紀にあった数寄屋建築も取り入れられているのだろう。
 建物をゆっくりと見学して、表から見える表門や築地塀の板張りが五十八氏の設計であることが理解できた。
(表紙写真は吉屋信子記念館)

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  • 吉屋信子記念館の表門。

    吉屋信子記念館の表門。

  • 吉屋信子記念館の築地塀。

    吉屋信子記念館の築地塀。

  • 標石に張り紙「吉屋信子記念館一般公開について」。

    標石に張り紙「吉屋信子記念館一般公開について」。

  • 「鎌倉市吉屋信子記念館(吉屋信子旧邸)」。

    「鎌倉市吉屋信子記念館(吉屋信子旧邸)」。

  • 吉屋信子記念館の表門。節を剥き出しにした柱。

    吉屋信子記念館の表門。節を剥き出しにした柱。

  • 吉屋信子記念館の築地塀。

    吉屋信子記念館の築地塀。

  • 表門。

    表門。

  • 表門の柱は節だらけだ。

    表門の柱は節だらけだ。

  • 家屋敷内の通路。奥に建物がある。

    家屋敷内の通路。奥に建物がある。

  • 庭園の門。

    庭園の門。

  • 通路の先に玄関。

    通路の先に玄関。

  • 石灯籠。

    石灯籠。

  • 蹲(つくばい)。

    蹲(つくばい)。

  • 曲がってた通路の先に玄関。

    曲がってた通路の先に玄関。

  • 芝生の庭園。

    芝生の庭園。

  • カシワ(柏)の木。

    カシワ(柏)の木。

  • 枝垂れ梅。

    枝垂れ梅。

  • 吉屋信子旧邸。

    吉屋信子旧邸。

  • 吉屋信子旧邸。

    吉屋信子旧邸。

  • 庭園の端にも石灯籠。

    庭園の端にも石灯籠。

  • 笹藪にも石灯籠。

    笹藪にも石灯籠。

  • 庭園端の木立。

    庭園端の木立。

  • 庭園を囲む木立。

    庭園を囲む木立。

  • 庭園の木立。

    庭園の木立。

  • 吉屋信子旧邸。

    吉屋信子旧邸。

  • 表門までの石畳。

    表門までの石畳。

  • 玄関の石敷。

    玄関の石敷。

  • 玄関の柱と礎石。

    玄関の柱と礎石。

  • 「吉屋信子記念館」のプレート。

    「吉屋信子記念館」のプレート。

  • 玄関の靴箱。

    玄関の靴箱。

  • 玄関。左の4尺分は閉じられている。天井は傾斜している。

    玄関。左の4尺分は閉じられている。天井は傾斜している。

  • 玄関の天井。

    玄関の天井。

  • 玄関の天井。

    玄関の天井。

  • 玄関には丸柱。

    玄関には丸柱。

  • パネルや写真などの展示棚。

    パネルや写真などの展示棚。

  • 「登録有形美文化財」。平成29年(2017年)6月28日に登録された。築50年を経て主屋と門、塀が登録となった。吉田五十八氏の設計だから登録されたのであろう。

    「登録有形美文化財」。平成29年(2017年)6月28日に登録された。築50年を経て主屋と門、塀が登録となった。吉田五十八氏の設計だから登録されたのであろう。

  • 居間の天井と柱。

    居間の天井と柱。

  • 居間の天井と柱。

    居間の天井と柱。

  • 4尺の縁側部分。天井は傾斜している。壁で閉じられており、違和感がある。

    4尺の縁側部分。天井は傾斜している。壁で閉じられており、違和感がある。

  • 4尺の庇部分の天井は傾斜している。

    4尺の庇部分の天井は傾斜している。

  • 居間の庇部分の傾斜した天井。

    居間の庇部分の傾斜した天井。

  • 居間の鎌倉彫のテーブルと設計者・吉田五十八氏が選んだ椅子。

    居間の鎌倉彫のテーブルと設計者・吉田五十八氏が選んだ椅子。

  • 「設計者 吉田五十八」。

    「設計者 吉田五十八」。

  • 居間の縁側部分に網戸、ガラス戸、障子。4尺幅の障子は珍しい。

    居間の縁側部分に網戸、ガラス戸、障子。4尺幅の障子は珍しい。

  • 角を落とした柱。

    角を落とした柱。

  • 居間の縁側からは庭に出られる。敷石があり和風だ。

    居間の縁側からは庭に出られる。敷石があり和風だ。

  • 真ん中に3尺の廊下が通っているが、居間と台所の境には稼働式の仕切り。

    真ん中に3尺の廊下が通っているが、居間と台所の境には稼働式の仕切り。

  • 台所のテーブルと椅子。洋間に障子戸だ。

    台所のテーブルと椅子。洋間に障子戸だ。

  • 団地にも取り入れられたキッチンとの間の扉。

    団地にも取り入れられたキッチンとの間の扉。

  • 台所の障子は3尺幅。

    台所の障子は3尺幅。

  • 北側の庭。藤棚がある。

    北側の庭。藤棚がある。

  • 北側の庭。フヨウが咲いている。

    北側の庭。フヨウが咲いている。

  • 展示ケース。

    展示ケース。

  • 畳敷の座敷。一段高くなっている。団地に採用されたやり方である。

    畳敷の座敷。一段高くなっている。団地に採用されたやり方である。

  • 座敷。団地のように一段高い。

    座敷。団地のように一段高い。

  • 座敷。

    座敷。

  • 座敷。

    座敷。

  • 座敷。縁側との間には障子戸。

    座敷。縁側との間には障子戸。

  • 書斎。

    書斎。

  • 書斎。

    書斎。

  • 書斎の書棚。

    書斎の書棚。

  • 寝室の南側の障子窓。昼でも寝ていられるように窓が小さいのだという。

    寝室の南側の障子窓。昼でも寝ていられるように窓が小さいのだという。

  • 寝室の西側の障子窓。小さい。

    寝室の西側の障子窓。小さい。

  • 寝室の船底天井。4尺の庇部分も寝室に取り込まれてあるので、天井は船底天井になったのか。

    寝室の船底天井。4尺の庇部分も寝室に取り込まれてあるので、天井は船底天井になったのか。

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