東欧諸国周遊（2018/8/21～9/24）9/7

2018/08/21 - 2018/09/24

一ヶ月以上に渡る旅も今日で折り返し地点となる。
昨日のアウシュヴィッツ見学からの流れでオスカー・シンドラーの博物館を見学する。その後、かつてヨーロッパでも最大級のユダヤ人地区だったカジミエシュに行き、旧市街のヴァヴェル城周辺も歩く。一日を振り返り、カジミエシュという一度は寂れたものの今また栄えつつある地区を見つけられたことは大きな収穫。

8/21　福岡～上海
8/22　上海～モスクワ～プラハ
8/23　プラハ
8/24　プラハ～チェスキー・クルムロフ
8/25　チェスキー・クルムロフ
8/26　チェスキー・クルムロフ～ウィーン
8/27　ウィーン
8/28　ウィーン
8/29　ウィーン～ブラチスラバ
8/30　ブラチスラバ～ブダペスト
8/31　ブダペスト
9/1　ブダペスト
9/2　ブダペスト～ベオグラード
9/3　ベオグラード～ウィーン
9/4　ウィーン
9/5　ウィーン～クラクフ
9/6　クラクフ～オシフィエンチム～クラクフ
9/7　クラクフ
9/8　クラクフ
9/9　クラクフ～ウッチ
9/10　ウッチ～リヴィウ
9/11　リヴィウ
9/12　リヴィウ～ワルシャワ～シュチェチン
9/13　シュチェチン～ベルリン
9/14　ベルリン
9/15　ベルリン
9/16　ベルリン
9/17　ベルリン
9/18　ベルリン～ドレスデン
9/19　ドレスデン～プラハ
9/20　プラハ
9/21　プラハ～チェスキー・クルムロフ～プラハ
9/21　プラハ
9/22　プラハ
9/23　プラハ～パリ～上海
9/24　上海～福岡

エリア クラクフ(ポーランド)

昨日は10時間も歩いたので疲れていたのかぐっすりと眠れた。いつも通り、起きて朝の準備をする。
今日は昨日のアウシュビッツ見学との繋がりで、オスカー・シンドラーの経営していた琺瑯工場へ行く。スピルバーグの『シンドラーのリスト』で世間に認知されたあのシンドラーだ。この工場は今は博物館になっていて、クラクフの旧市街からは少し離れているのに見学者は多いらしい。
ネットの情報によると、この博物館は旧市街から離れていて遠いのでトラムで行ったほうがいいとのこと。グーグルマップで博物館までの距離を調べたところ30分くらい歩けば着くとのこと。何だ、この程度なら歩ける。トラムの利用方法を理解するのも面倒だったので歩くことにした。
旧市街に入り聖マリア教会の横の道をまっすぐに歩いていく。観光ルートからも離れてクラクフ市民の日常を見ながら歩くのは楽しかった。
途中で見かけたのがこれ。トランプ、プーチン、メルケルは世界各国のお土産屋を賑わせているのでびっくりする。

博物館までの30分はかなり長く感じた。途中で何度か道に迷ったので確実に30分以上は歩いた。旧市街から遠ざかるほどに人も少なくなり、この先に本当に博物館があるのか疑問に思った。ひたすら歩いてやっと辿り着いた。博物館の周辺に人が溢れていたのですぐにわかった。

これは、博物館のすぐ近くで見かけた自転車置き場。見ての通り本物の自転車ではなく石で出来ている。

シンドラーファクトリー、日本語に訳すとシンドラーの工場。
戦時中、シンドラーはここでユダヤ人を雇用し従業員リスト（シンドラーのリスト）を作り、彼らが収容所に送られないようにした。その工場が今は博物館になっている。

博物館の中に入る。まだ開いて間もなかったからかそれほど並ばずにチケットを買えた。この写真はチケットカウンターのすぐ近くに飾られていた。映画『シンドラーのリスト』の一場面。右がオスカー・シンドラーを演じたリーアム・ニーソン。左はシンドラーの部下。

これも飾られていた。右側に写っているのは世界的映画監督のスピルバーグ。その先に写っているのはリーアム・ニーソンら『シンドラーのリスト』のキャスト。

さて、そろそろ博物館見学を始める。まず最初に入った部屋ではナチスに占領される前のクラクフの人々の様子が写真やポスター、映像で紹介される。
この写真を見る限り、クラクフは古都と言われるだけあり今とそう変わらないと感じた。
この部屋でしばらくの間過ごしていたら日本語が聞こえてきた。日本語の話せるポーランド人ガイドと数名の若者だった。皆、ガイドの説明に聞き入り軽い気持ちでここに来た僕とは大違いだった。

次の部屋以降はナチスによるクラクフ占領について知ることができる。
ポーランド軍もドイツ軍に必死に抵抗したが圧倒的な戦力差により占領は食い止められなかった、とのこと。たしかに展示されていた戦車等を見ると弱そうだ。
そして、占領以降のクラクフのあちこちに貼られたユダヤ人への通達文等見応えがあった。

展示とは関係ないけど、この部屋に入ったあたりから見学者が凄まじい勢いで増えだした。だから落ち着いて見学するのが難しかったし、展示物は見応えがあるものの見落としたものも多々ある。今振り返ると残念だ。

更に進むと『シンドラーのリスト』で有名なオスカー・シンドラーに関する展示がある。
映画でも語られたように、戦時中にシンドラーはユダヤ人を自分の経営する工場で雇用することで収容所送りを防いでいた。
この写真が本物のシンドラーのリストだ。

ユダヤ人の収容所送りを防ぐ為のシンドラーの取り組み。

シンドラーの経営する工場で作られていた容器。

展示の終盤はナチスによる占領が終わってからのポーランドの紹介。スターリンの肖像画が目の前に飛び込んでくる。ナチスによる占領から解放されたと思えば、ソ連の支配化に置かれ30年前の冷戦終結まで共産主義国家としてポーランドは歩んでいく。
全体を通して、ナチスによる占領前、占領後、そしてその後を凝った演出と多くの資料により伝える優れた博物館だと思う。シンドラーの人となりを知りたくてここに来たので期待したものと若干違うと感じたけど、これだけ充実した展示物を見られればもう何も言うことはない。
もっと写真を撮っておけば良かった。見学者が多くて通路を歩くのがやっとでそれどころじゃなかった。

博物館の見学を終えて外に出る。シンドラーの功績を伝える展示。

見学を終えて外に出ると行列が出来ていた。さっきまでの混雑もまだましなものだったのかもしれない。
この後、今朝歩いた道をまた戻ることにした。途中でスーパーを見かけたのでパンを買ってそれを昼食にした。
さて、これから何処に行こう。旧市街にでも行ってみるか。『地球の歩き方』をぱらぱらと捲り、この近くにカジミエシュ地区というかつてのヨーロッパで最大級のユダヤ人地区があることを知った。昨日のアウシュヴィッツ見学、今朝のシンドラーの博物館見学、と一連の流れが出来ていたのでここに行くしかないなと思った。いつも通りグーグルマップを頼りに歩いていく。

グーグルマップは目的地までの道程を教えてくれた。目的地付近まで歩いたけど、目的の場所まで歩いたという実感がない。そもそもわかりやすいシンボルではなくカジミエシュという街を目指して歩いた。今いる場所がカジミエシュなんだろう。
またしばらく歩くと賑やかな広場に出た。蜂蜜をテーマにした催し物が行われていた。

蜂蜜をテーマにした音楽でも奏でるのかステージが組まれていた。

テントの前を通るとおじさんに声をかけられた。蜂蜜はお土産にすると喜ばれるかもしれない。ただ、まだまだ旅は続くので重たい蜂蜜を鞄に入れたまま歩きたくはない。だから結局何も買わなかった。

広場から少し歩いたところにある教会。ここは元々ユダヤ人の居住区として栄えたらしいけど、シナゴーグだけでなく教会もある。

街で見かけたポーランドの陶器。

カジミエシュの街角にて。この辺りはあまり栄えていない様子。

しばらくの間、広場を中心にこの一帯のあちこちを歩いてみた。

旧市街の建物とはどことなく趣が違う。クラクフとは別の街として栄えたことがわかる。

多分店名だろうけどヘブライ語で書かれている。街歩きをしてしばらく経ち旧市街とは別の街に来たことを実感しだした。

シナゴーグまで歩いた。

シナゴーグの玄関から歩くとレストランの並ぶ通りに出る。この時点では知らなかったけど、写真に写っているアリエルというユダヤ料理店に『シンドラーのリスト』の撮影中にスピルバーグが通っていたとのこと。メニューを捲ってみたけどどれも高い。この店で最低限の食事をすると1000円はかかる。でも考え方を変えれば、映画界で二番目に裕福なスピルバーグでも食事代はこのくらいなのか、とも思える。

広場の近くの教会にて。

カジミエシュをざっと歩いたので、また旧市街に戻ることにした。観光客で賑わう聖マリア教会の周辺を散策。
それから、織物会館でお土産として安物のチェスを買った。プラハやブダペストで買うよりもずっと安い。

さて、そろそろ歴代ポーランド王の居城ヴァヴェル城まで歩くか。

城門から中に入る。

右側がヴァヴェル大聖堂。

城郭内は観光客で賑わっている。

ヴァヴェル大聖堂を正面から捉える。

ヴァヴェル城の敷地はかなり広い。城郭内の公園から大聖堂を眺める。

ヴァヴェル城には出入口が幾つかあるのでそこから出て行くことにした。

ヴァヴェル城のすぐ近く。クラクフの日常。

またカジミエシュまで歩くことにした。この頃になると旧市街よりはカジミエシュのほうが気に入っていた。
このカジミエシュでは『シンドラーのリスト』のロケが行なわれたこともあるらしい。映画と同じ様に、戦時中にこの地区からユダヤ人が次々に連れ去られたので、戦後はすっかりと寂れてしまったそうだ。それが今では再開発が進み徐々に街も栄えてきている。ユダヤ人街は日本にはまずないし、いい機会だと思いカジミエシュにまた行くことにした。

カジミエシュの中心、ノビ広場。ここはクラクフで一番好きな場所になった。食事もできるし、骨董品や古いレコードを漁ったりもできる。旧市街は観光客で溢れているけど、ここは観光客だけでなくこの辺りの住民の利用率が高いことが伝わってくる。見知らぬ国に行って、その土地の住民の日常生活に溶け込む。旅をしているとそんな瞬間が一番楽しい。

古いレコードが並んでいる。60～70年代の英米のロックのレコードを見かけた。はっきりと言い切るけど並んでいるものはどれもこれも時代遅れだ。
が、昔の共産主義体制のポーランドではこうした西側諸国の音楽を自由に聴くことができなかった。こうして自由にレコードやCDを手に取れるようになったのはわりと最近のこと。その点を踏まえると、ここに並んでいるものは時代遅れとは言えないかもしれない。

昔のお金だとか、用途の不明な首飾りだとか、とにかくいろいろ売られている。

こちらもレコード売り場。

日本では見たことのない形のパン。

ノビ広場はこの建物を中心に成り立っている。中央の建物に並ぶ緑色の窓、ここはそれぞれ軽食を扱う店になっている。その殆どの店で、この時点では名前を知らなかったけどザピエカンカというポーランド名物のピザトーストを扱っている。このザピエカンカ、安くてパンも大きいので節約旅行者にはオススメする！

ノビ広場以外の場所も見て歩く。戦前から建っていたのでは？と思わずにいられない古い建物。

建物は古いけど中は新しい。雑貨屋として営業している。

蜂蜜のイベントを開催中のもう一つの広場まで歩いた。おもちゃ売り場まであり日本の花火大会みたいだ。

この車のデザインは好き。
車の向こうのステージで演奏が始まるのか周りに人が集まりだした。

夕食まで時間があるし演奏でも見るか。ギターを抱えた二人の中年の男がけだるいカントリーミュージックを奏でる。それを見て喜ぶ中高年の男女。なんだこれは、退屈すぎる。
我慢してその場に座っていると曲が切り替わる。R.E.M.の『losing my religion』だ。この選曲センスはいいなと思った。ただ、座席に座っている中年の皆さんまで喜んでいたのが引っかかる。
また曲が切り替わる。オアシスの『Wonderwall』だ。この時は食い入るように演奏に耳を傾けた。座席を占領する中年の人たちが退屈そうにしている一方で、地面に座っている若者たちは喜んでいた。若者たちは熱唱しだした。そのうち、ステージで演奏する男も途中で歌うのを一旦止め、若者たちに代わりに歌わせていた。ポーランドの若者は熱いな！それだけでも熱いのに、英歌詞を完全に覚えて口ずさむポーランドの若者の英語力に脱帽。それに比べ日本人は…ノエルが来日した時、観客に英語が完全には伝わらなくて困っていたのを思い出す。

ということで、オアシスの『Wonderwall』を今回の一ヶ月に渡る旅行のテーマ曲にした。この旅行記を読む時に流してほしい。

蜂蜜と車との間に何かしらの関連があるらしい。ポーランド語が読めないのでわからない。

子どもたちが遊ぶ為のスペース。

飲食コーナーもあったのでそこでピエロギを買った。店員の女性にピエロギが欲しいと伝える。すると、この女性は喉の奥を鳴らし「ンフッ」という声を出した。これはここだけでなく、ポーランドの何処でも40代以下くらいの女性は、会話の中で納得した際にこの声を出していた。年老いた女性はこれをやらなかった。やられても困る。
テーブルに着いてポーランドの餃子ピエロギを食べる。日本の餃子よりも水っぽくて味は薄い。そして多分、中身は殆どじゃがいも。途中でピエロギの売り場に戻りケチャップをかけた。この食べ方は多分正しくないけど薄味なのが気に入らなかった。
ピエロギを食べている最中にすぐ近くに日本人らしい人が座ったけど、会話には繋がらなかった。向こうも食事に集中したかったみたいだ。結局ポーランドでピエロギを食べたのはこの一回きりになった。

食後に夜のカジミエシュを散策する。

店名にwarsztatと書かれている。これを見て、大昔のモンゴル軍とドイツ・ポーランド軍らによるワールシュタットの戦いに由来しているのかと思った。でも、後で調べたところそこに繋がる情報は得られなかった。ちなみにワールシュタットはドイツ語で「死体の山」だ。

カジミエシュをざっと歩いてノビ広場に戻ってきた。ここで聴き覚えのある音楽が耳に響いてきた。何と、ここでも路上で男がオアシスの『Wonderwall』を奏でている。蜂蜜のイベント広場からノビ広場までは徒歩圏内だというのに！人気ありすぎだろ！ノエル・ギャラガー偉大すぎだろ！と心の中で突っ込み続けていた。

ピエロギだけでは空腹を満たせなかったのでここでも何か食べることにした。

ポーランド名物のザピエカンカ！これを食べた。ノビ広場にザピエカンカを扱う店が幾つもあり、その中には人気店もあればそうでもない店もある。種類も豊富なのでカジミエシュに住むことになれば毎日ここに通う。

この時間帯にノビ広場に来る人の殆どはザピエカンカを目当てにしている。

ザピエカンカで空腹を満たしたので、そろそろゲストハウスに戻る。スピルバーグの通ったレストランを横切る。

夜の旧市街を通り抜ける。

クラクフにもアンスティチュフランセが。写真を撮っていたら何故か警察官に声をかけられた。

夜遅くまで賑わう聖マリア教会の周辺。

聖マリア教会の傍を通ってゲストハウスに帰る。旧市街の正面の門に向かっては歩かない。この時間帯にはおかしな連中がいるから。

シンドラーの博物館から始まり、カジミエシュという魅力的な地区を発見できた実りある一日。昨日から今日にかけて良い流れができている。明日は、今日はできなかったヴァヴェル城と旧市街の散策をし、またカジミエシュにも足を延ばしたい。