伊予灘ものがたり卒業編【バースデーきっぷで四国豪遊その５】

2018/01/28 - 2018/01/28

　近年、観光列車に力を入れているJR四国。誕生月なら「バースデーきっぷ」を利用できるので、とてもお安く観光列車の旅を楽しめます。そこで誕生月の１月の最終週、四国へ渡り３つの観光列車を満喫する旅に出てみました。

https://4travel.jp/travelogue/11327278
↑卯之町を駆け足で巡り、八幡浜へ。
　JR四国初の本格的観光列車と謳われた、伊予灘ものがたり「道後編」に乗車します。手作り感あふれる、ほっこり観光列車でした。

エリア 松山(愛媛)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0
• グルメ: 5.0
• 交通: 5.0

• 同行者: カップル・夫婦
• 一人あたり費用: 5万円 - 10万円
• 交通手段: JRローカル
• 旅行の手配内容: 個別手配

　八幡浜駅は、三角屋根の小さな駅舎。

八幡浜駅 駅

　コンコース部分は２階分の吹き抜けになっていて、主要駅としての格が感じられます。
　セブンイレブンが入っていて、実用的にも便利です。

　乗り換え時間は40分弱。市街地はやや距離があり、駅近の見どころもありません。
　谷本かまぼこ屋さんの「メセナドライブ」という建物がウェルカムな雰囲気だったので、入ってみました。

谷本蒲鉾店 練技館 グルメ・レストラン

　お客様用ラウンジとかで、昔のかまぼこ製造機の展示もあります。

　なぜか、歴代の飛行機模型がずらり。
　ライト兄弟よりも早く「飛行器」を考案し、大空を目指した郷土の偉人・二宮忠八を記念して、飛行機の歴史の展示を行っている、ようです。

　鉄道ホビートレインや、伊予灘ものがたりの模型も走ってます。

　お客様ラウンジでは、なんとコーヒーが無料！
　自転車旅行の休憩拠点としても歓迎とのこと。サービス精神旺盛な、地元企業の広告塔なのでした。

　と言っている間に、次なる観光列車「伊予灘ものがたり」が八幡浜駅ホームに入ってきました。松山発の「伊予灘ものがたり八幡浜編」で、２時間余りの「ものがたり」がフィナーレを迎えたところです。

伊予灘ものがたり グルメ・レストラン

　八幡浜編到着の15時52分から、道後編発車の16時06分まではわずか14分。窓のブラインドを降ろす間もなく、折り返しの準備が始まります。
　午前中の大洲編、双海編も折り返しの余裕はほとんどなく、４編・２往復の運行中、アテンダントさんたちは お昼ごはんを食べる余裕もないのでは？ちょっと心配になります。

　乗客の余計な心配をよそに、すっかり出発準備を整えた伊予灘ものがたり。出入り口にはマットが敷かれ、歓迎されている感が高まります。

　２号車の後方には、カウンター。伊予灘ものがたりでは、ダイニングバーと称します。
　20食限定の道後編の食事サービス「アフタヌーンティー」の準備が、すっかり整っていました、

　車両は、普通列車用のキハ47系を改造したもの。四国まんなか千年ものがたりと同様、JR四国の車内デザイナーさんの力作で、タネ車の面影を微塵も感じさません。
　こちらは僕らの指定された２号車。伊予灘の景観を楽しめるよう、海側の座席は外向きに、山側の座席は１段高く仕上げられています。

　１号車も、客席のつくりはほぼ同じ。各座席にはクッションが備えられていて、レストランというよりはカフェの雰囲気です。ヨメさん的には、２時間の乗車をくつろげるクッションの評価は高いようで。
　これだけのレベルの席なのに普通列車のグリーン席の扱いなので、八幡浜～松山２時間あまりの運賃・料金合計は、わずか2,260円！ちと安すぎないかい？

　トイレの洗面台は砥部焼。

　各号車のショーケースには…

　工芸品も飾られています。

　八幡浜を発車してほどなく、列車は最徐行。沿線の家から、ワンちゃんのお見送りです。
　「お疲れ様でした」と労われている田中千恵子さんとは、伊予灘ものがたりの立ち上げから関わってこられた客室乗務員さん。「四国まんなか」への異動に伴い、本日この列車が、最終乗務なんだそうです。

　コスモ石油では青鬼さんが、特製横断幕で「田中さん長い間ありがとう！！」「田中さん元気でね！！」とお見送り。どんだけ愛されてんねん！

　さて道後編のお食事は、オプション3,000円の「アフタヌーンティー」。
　ナイフやフォークは、沿線特産の伊予水引に収められていました。目に鮮やかなのはもちろん、いそがしい伊予灘ものがたりの運用では、配膳の手間も少なくて済むメリットもあります。

　じゃーん！これが（たぶん一般人でも手が届く範囲では）本邦初、列車の中で楽しむアフタヌーンティーです。りんごのデニッシュ、チョコレートクリームのシュー、苺のムース、栗のケーキ、クロワッサンサンド、フルーツ、スコーン、媛ベリーのジャム、そして北欧紅茶。
　食レポは不得意なので、「おいしい」以外の言葉がありません。車窓の流れるレトロモダンなカフェでの、優雅な時間でした。ああ生きているうちに、また味わいたい…。

　紅茶を傾けている間にも、車窓というごちそうも刻一刻と変化していきます。伊予大洲では、大洲城の雄姿が現れました。
　曇り空の下、雪も少し残る城は、少し神秘的なたたずまいです。

大洲城 名所・史跡

　よく目を凝らせば、ノボリを振る武士の姿が。沿線からの歓迎は、JR九州の観光列車でもよく見られるけど、四国はより熱が入っているように感じられます。

　五郎駅では、たぬき駅長がお見送り。「たま駅長」みたいなものを想像していたので、「そう来たかぁ」とのけぞりました。
　そしてここでも客室乗務員の田中さんは、フルネームで労われていたのでした。

五郎駅 駅

　「だんだん」とは伊予の言葉で、ありがとうの意味。田中さん、感極まってらっしゃいました。
　客室乗務員が乗り、食事提供や観光案内を行う伊予灘ものがたりは、四国では初形態の観光列車。走り出しからこれまでの３年間、試行錯誤の連続だったろうと思います。沿線ともしっかりつながって来たことが分かる、田中さんの卒業列車です。

　肱川のゆるやかな流れの先には、重要文化財の可動橋「長浜大橋」があります。車窓からは遠く、今度は降りて歩いてみたい名所です。
　詳しい車窓案内がある観光列車は、次の旅への動機にもなります。

長浜大橋(開閉橋) 名所・史跡

　伊予長浜駅を過ぎると、伊予灘が車窓の友になります。海側の車窓いっぱいに広がる海は、水平線まで車窓を遮るものがなく、まるで船にでも乗っているようです。
　予讃線の通称「海線」に前乗ったのは、高校２年生の時だから…うへー、もう20年前か！しかも夜だったので、初めて見る車窓以外の何物でもありません。

　串の鉄橋では最徐行。足元には、南の島のような海がありました。

　下灘駅到着。青春18きっぷのポスターには何度も使われてきた、海の景色が美しい駅として知られています。棒線駅（列車のすれ違いができない駅）にゆったり10分停車できるのも、幹線ルートを外れたローカル線ならでは。

下灘駅 駅

　ホームから見る夕陽は、それはそれは美しいらしいですが、今日は残念無念の曇り空。それでも海に浮かぶような列車を、満員の乗客は思い思いにシャッターに納めます。

　切妻駅舎の無人駅。昔ながらの駅で、荒れた感じがないのがいいですね。

　木製の長いす。数十年前までは、よく見られました。

　伊予灘ものがたり以外で訪れる人も多い駅で、駅前には移動式のカフェができていました。無人駅のホームで、ゆっくり本格的なコーヒーを傾けるってのも、最高に贅沢なんじゃないでしょうか。
　先週のまったく同じ時間には、出川哲郎が充電バイクで現れたのだとか。そりゃヤバイよヤバイよ。

　夕陽は見られなかったけど、次第に夜の帳が降り始め、車内のムードも高まってきます。
　四国まんなか千年ものがたりでも感じたけど、JR四国の車内デザイナーさん、ライティングもうまいよね。

　アフタヌーンティーは１時間もかからず完食してしまいましたが、伊予灘ものがたり、アラカルトメニューが充実しています。四国まんなか千年ものがたりも同様で、特に生ものはロスも出ちゃうんじゃないかと心配になります。
　ケーキとコーヒーの「デザートセット」が1,000円、キッシュとロゼワインの「夕暮れセット」も1,000円と、比較的お手頃なセットメニューも充実です。

　セットとは関係なく、食べたいものを食べるのじゃ！というわけで、キッシュ（500円）と、オリジナルラベルの梅錦ビール（700円）を頂きます。
　キッシュはちゃんと温めてあり、海を見ながらのバータイムは、これまた最高な気分の第２幕でした。

　伊予上灘駅でも、運転停車中に外出OK。かわいい猫駅長のお出迎えです。本人はちょっと不機嫌そうな所も含め、かわいいです。
　駅長の飼い主さん、田中さんへの花束も準備されてました。週末の度、ふれあいの時間を運んで来てくれた伊予灘ものがたりと田中さん、大切な存在だったんだろうなぁ。

伊予上灘駅 駅

　駅長に見送られ、松山に向けラストスパートです。車窓も闇に溶け、オーダーも少なくなったコース終盤はゆったりした雰囲気。
　田中さんへのセレモニー的なものはなかったけど、乗客グループから感謝の花束もあり、メモリアルな旅路となりました。

　最後には松山市からの観光記念品として、盛りだくさんのパンフレットと道後温泉の入浴剤も頂きました。沿線自治体とのタッグもがっちり、2015年日経調べで人気観光列車１位にもなった観光列車の快走は続きそうです。
　松山駅では、松山市職員さんと客室乗務員さんがお出迎え。伊予灘ものがたり卒業編の、２時間あまりの旅が終わりました。

松山駅 (愛媛県) 駅

　あとかたずけの作業が進む傍ら、お出迎えの客室乗務員さんたちは待っていました。田中さんへのセレモニーでもあるのかな？
　試行錯誤の観光列車を３年間育ててきた「仲間」の卒業式、今日の旅人はおいとまするとしましょう。

　松山駅で感じる、台湾の香り。さあ、四国の松山も楽しみましょう！
　つづく⇒https://4travel.jp/travelogue/11328444