「仏像入門」と「鎌倉の仏像」（鎌倉国宝館）

2015/08/11 - 2015/08/11

　鎌倉国宝館で仏像の展示（「仏像入門」と「鎌倉の仏像」）が始まったので初日の7月31日に行くつもりであったが、酷暑のために取り止め、のびのびになっていた。
　常設展示「鎌倉の仏像」には各種の仏像が展示され、千手観音菩薩坐像（建長寺）もあったが、概してバランスは悪くもない。また、初江王坐像なども素晴らしいものだ。また、辻薬師堂にあった十二神将立像も見られた。しかし、県指定文化財止まりのものがあり、国指定重要文化財にならないのは市職員（鎌倉国宝館も鎌倉市立）が怠慢だからだろうと疑いたくなる。万事が世界遺産登録準備のように時間を掛けるが何も実が上がってはいないのではないか？
　鎌倉時代初期の仏師としては余りにも著名な運慶は、運慶工房（運慶一派）の作品を含めても全国に18体しかないのだという。鎌倉周辺には、浄楽寺（横須賀市）に5体、称名寺（金沢文庫）（横浜市）に1体があり、鎌倉にも運慶作と伝わる仏像が数多く存在（光触寺の阿弥陀如来像、杉本寺の十一面観音像、地蔵菩薩像、仁王像、教恩寺の阿弥陀三尊像、延命寺の地蔵菩薩像、補陀洛寺の日光菩薩像、月光菩薩像、材木座来迎寺の阿弥陀三尊像、英勝寺の阿弥陀三尊像、圓應寺の閻魔大王像）するが、運慶の真作として確認されているものは未だ1体もない。
　「吾妻鏡」によれば、源実朝持仏堂の釈迦如来像、大倉薬師堂の薬師如来像、勝長寿院の五大尊像が運慶作であったという。こうした仏像はそれぞれの寺が廃寺になったときに何処に移されたのか？一派を引き連れて鎌倉に下向し、寄木造りで短期間に多くの仏像を作像した運慶工房（運慶一派）の作品はこうした鎌倉市内にある伝運慶作の仏像の中にもあってしかるべきであろう。もしも3代将軍徳川家光奉納の栄勝寺本尊の阿弥陀三尊像が運慶作の仏像の偽物だなどとしたら、徳川幕府の恥晒しになってしまおう。少なくても江戸時代初期までは確実な運慶作として伝来してきた阿弥陀三尊像に違いない。それを考えると鎌倉国宝館の学芸員もかつての鎌倉市文化財課も何も貢献できていないと言える。全てが鎌倉世界遺産の担当部署と同じで長い時間何もやってきてはいないのである。記憶にあるのは英勝寺の伽藍5棟を国指定重要文化財にしたことぐらいか？鎌倉に伝来してきた寺社の仏像や神像を調べて、1体でも運慶仏か運慶工房仏であることが分かれば画期的な成果となることだろう。そういったことも鎌倉国宝館の学芸員には期待されているのだ。
（表紙写真は鎌倉国宝館の看板）

エリア 鎌倉(神奈川)

鎌倉国宝館。

鎌倉国宝館の看板。

鎌倉国宝館入口。

「平常展示「鎌倉の仏像」出品リスト」。

「仏像入門」出品リスト。

「鎌倉国宝館直伝！仏像のキホン」（再版）。今回の「仏像入門」展については触れなかったが、この展示はこの本に基づいている。