2014/10/02 - 2014/10/09
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さいたまさん
タイの鉄道の将来計画が、また変わろうとしています。
写真は、カンボジアとの国境からバンコク方向に設置されているタイの新しい線路です。従来、カンボジアとの間に鉄道が通じていたのですが、現在は、国境で遮断されています。
タイは、中国の提案するラオスを経由した中国との高速鉄道整備を含めて検討しており、2014年末、中国との覚書に調印しました。
また、バンコクの都市交通システムを充実させるために、日本等の支援のもと路線の延長を図る等の他交通インフラ開発計画を閣議決定ました。
タイの交通インフラ整備は、政権の変わるたびに計画の確定と中止を繰り返しており、計画の実現まで2転3転して、結果として、遅延しているのが実態です。
現在、タイの鉄道は、インドシナ半島及びマレー半島と共通のメートルゲージと言われる1,000mmの線路幅(軌間幅)を採用しています。
中国は、軌間幅が1,435mmの軌間幅を採用しています。
写真のタイの新しい線路のレール幅が、イントシナ共通の1,000mmとなるのか、中国に合わせた1,435mmとなるのか、気になるところですが、レールが敷設されていない現在、知ることが出来ません。
バンコクの新聞には、中国と共同で建設される高速鉄道は、中国の規格の1,435mmとなるとの報道がされています。
タイの鉄道は、約100年前に、当初、北方に向けに敷設されましたが、軌間幅は、1,435mmでした。その後、南方に延伸される際に、マレー半島との連接も考慮して、北方と異なる軌間幅1,000mmとされました。しかし、機関車等の車両保有数が少ない中で、南北の相互乗り入れ等が出来ず、効率的でなく、タイ国内の連接が途切れてしまいました。後年、長年間をかけて、インドシナとマレー半島共通の1,000mmのレールに敷設し直した経緯があります。
シンガポールへの国際縦貫鉄道をはじめとしてインドシナ各国との連接を考慮した将来を考えつつ、どのように判断したのか気にかかる点です。
以下、説明として、タイ観光庁の公刊されている紹介資料等の図に、私が得た情報を書き加えています。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 5万円 - 10万円
- 交通手段
- 高速・路線バス
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
写真は、アジアの鉄道の全般状況を示した図です。
タイから各国の鉄道との連接を見ると、シンガポールまでの区間を除き、線路が途絶えていることが解ります。
中国の鉄道は、緑色となっており、軌間幅は、1,435mmとなっています。インドの鉄道の軌間幅は、旧宗主国の影響もあり、広軌(1,676mm)です。
これらに対して、タイを含むインドシナ半島及びマレー半島内の鉄道は、メートル軌(1,000mm)になっています。
本来、鉄道建設は、長期間の年月と多額の経費を必要とするため、国防上の観点や政治的考慮により左右されるとともに、経済面の影響も大きく受けます。
タイの鉄道建設も政権の交代等の都度、計画が大きく変更されてきた経緯があり、継続性に問題があり、今後の推移に注意する必要があります。
また1990年代後半の通貨危機により、建設工事が中止されたこともあり、建設請負会社とタイ政府との裁判等が現在も続いているのが現実です。
注目しているのは、タイからラオスに点線で延伸されている区間は、青色であり、中国からラオス国内への点線は、緑色になっており、軌間幅が異なっています。 -
写真の図は、タイの主要な鉄道の状況です。
周辺国との連接を見ますと、北のラオスには、列車運行も、ラオス国境を越えて連接されています。
東側に伸びている鉄道がカンボジアに連接されているようにも見えますが、現在は、国境の部分で遮断されています。
南へは、同一の軌間幅のレールで、マレーシアを経由して、シンガポールまで連接しています。
ラオスには、殆ど鉄道が存在せず、カンボジア国内にも、プノンペンからホーチミンへの間の鉄道がありません。 -
タイからカンボジアとの国境を越えると、カンボジアの平原に、鉄道線路が敷設されています。
カンボジア内の列車は、一部、運行されているとのことですが、運転本数が少ないこともあるのでしょうか、走っている列車の姿を見たことがありません。
2014年、カンボジアの鉄道に出資していたオーストラリアの会社が、カンボジアの鉄道路線の復旧が遅れていることを理由に、鉄道の権利をカンボジア社に売却し、鉄道分野から撤退したとの報道がありました。道路建設が進む中、鉄道の役割に疑問を持つ向きが、多いのかもしれません。 -
写真は、タイの鉄道の状況に、ラオスの鉄道の状況を加えた図です。
首都バンコクから東西南北に鉄道が伸びている状況が判ります。
北のラオスには、メコン川にかけられた友好橋に鉄道線路が引かれており、ラオス国境を越えて連接されています。ラオス国内へ連接された部分は、タイのノンカイからラオスのタナレーンに通じている部分として、ちょっと伸びていますが、ラオス内の距離は、約5kmのみです。現在、ラオスが鉄道として保有しているのは、この区間のみです。
ラオスは、鉄道車両を保有していませんので、ラオス国内の区間にもタイの列車がそのまま運行されています。 -
タイから南のマレーシアに続くマレー鉄道を示したものです。
マレー鉄道の先は、シンガポールに続いています。
軌間幅は、現在のタイ国有鉄道と同じ1,000mmです。
シンガポールとマレーシアが同一の国であった時期には、マレー鉄道は、シンガポール駅まで直通で運行されており、鉄道設備もマレーシア鉄道公社が保有していました。
シンガポールが独立後も、マレー鉄道がそのまま運行されていましたが、入出国手続き等の問題があり、マレーシア対岸のウッズランド駅までの運行となり、ウッズランド駅〜シンガポール駅の間の鉄道設備は、撤去されました。 -
図は、タイ国内における鉄道輸送をはじめとして、現在の輸送量実績を示したものです。
タイ国内での鉄道輸送の実績は、全体の輸送量のわずか2%しか占めていません。ほとんどが自動車による陸上輸送です。時刻表はあるのですが、年から年中遅れており、全くあてにできません。線路を含め車両の老朽化が激しく、慢性的な赤字に陥っています。また時刻表どうりに運行されることは、稀です。
タイの国民は、利便性の高いバスの存在もあり、鉄道に信頼を置いていません。
政府の観光庁すら、タイの鉄道の実態を踏まえ、帰国便等が確定している場合は、時間的に不安定な鉄道の利用を避けるように勧めています。 -
写真は、タイの観光庁の公刊資料に将来の高速鉄道車両を紹介したものです。
この写真は、インラック政権当時の写真です。
車両の右上の行き先案内には、バンコク〜チェンマイの間の3.5時間との表示が掲げられています。
チェンマイは、インラック前首相の出身地であり、選挙基盤となっています。 -
インラック政権は、図(タイ観光庁資料)のような2020年までの交通インフラ整備計画を決定していました。重点は、経費の約80%を占める高速鉄道の建設とタイ鉄道の複線化です。
高速鉄道は、図の右下にあるようにバンコクとチェンマイ、ナコンラチャシーマ、マプタプット及びホアピンまでの4線を予定しています。
政府は、2兆バーツの総経費を国内資本からの借り入れで賄い、50年返済に政府保証を与えるとの法案を提出、国会の承認を得ました。
これに対して反タクシン派は、憲法裁判所に訴え、結局、7年間の建設計画を推進する法案は、憲法違反との判決が出され、インラック政権崩壊の一因となりました。 -
タイ観光庁の将来のバンコクについての資料からとった図です。
タイの前政権の目玉であった鉄道の高速化の将来計画についてもいろいろな構想が案出されています。
北線の始点は、チェンマイです。東北線の始点はノンカイです。いずれもバンコクに通じています。
東線は、工業団地のあるマッタプット港に向かい、南線は、マレーシアに連接しています。
現在のタイ軍政府は、これら4路線は、優先度が低いとして計画の推進を停止しています。インラック前首相の出身地チェンマイに高速鉄道を入れることに政治的に抵抗感があったのかもしれません。
現軍事政権は、新たに閣議決定した高速鉄道建設計画から、チェンマイを除外しています。 -
中国は、中国の昆明からシンガポールまでの縦貫鉄道の実現を目指しています。
現在、中国により提案されている経路を、赤の点線で加筆しています。
既に、ラオスに鉄道の建設を提案しており、建設費は、ラオスの鉱物資源での支払いを勧めています。
レールの軌間幅は、いずれも中国鉄道と同じ1,435mmを勧めています。
タイは、従来、タクシン元首相の妹のインラック首相の時代、中国の鉄道の安全性への懸念やタイ国内の鉄道の軌間幅(1,000mm)がインドシナ各国と同じであることの国際共通性を考慮して、軌間幅1,000mmを主に、検討を進めていました。
今回、タイの軍政府が、新たに中国と署名した覚書の内容は、明らかになっていませんが、現地新聞の情報では、建設される高速鉄道の軌間幅は、1,435mmのようです。
タイの輸送量実績では、80%以上が自動車輸送です。タイ国民は、鉄道輸送に信頼を寄せていません。高速鉄道を作っても、乗るのは、南下してくる中国人だけだろうと噂されています。その中で、タイは、国内に2種類の異なる軌間幅の鉄道が存在することになります。タイでは、国有鉄道発足時、2種類の軌間幅の鉄道があり、相互乗り入れができない状態でした。そのため何年もかけ、現在の1,000mmに統一し直した経緯があります。 -
イチオシ
写真の図は、バンコクの英字紙が報じたタイ軍政府の鉄道整備計画図です。
タイ軍政府は、2014年末、図にあるタイ交通インフラ開発8年計画を閣議決定しました。
前政権の計画の2兆バーツを20%も超える総経費2兆4000億バーツで、国家予算の2兆5000億円に匹敵する規模です。
注意すべき点は、建設予定の東線(ノンカイ〜マプタプット港)の建設費の捻出策です。現地メディアの従来の報道では、中国が、建設費の70%を借款等で提供し、タイが米やゴムの現物で返済するとのことでしたが、米生産補助金や洪水対策費等で年間4000億バーツの特別支出を余儀なくされている中、価格変動の激しい農産物での現物返済に懸念を示す意見が多数出ています。これらの建設経費が、どのように算入されているかが不明です。
欧米や日本は、クーデターにより政権を取ったタイ軍事政権への援助には、慎重な態度を取っています。
一方、中国は、欧米が援助を控えていた間に、ミャンマー軍事政権への援助を増加させた例と同様、タイ軍事政権へ積極的に支援の姿勢を示しています。 -
上述の軍政府の図では、複線化の区間が解りにくいかもしれません。
図の中に赤い線で表示された高速鉄道の区間に、併せて複線化を目指す6区間を青色で付け加えてあります。
複線化区間の合計は、887Kmに及びタイ国有鉄道総区間距離4,400kmの20%に当たります。現在の複線化率が約4%ですので、計画期間8年間で5倍に増やすことを予定しています。
既存の複線区間工事83kmに3線化区間工事107kmの合計190kmの工事が、1994年から2004年の11年間を要したことから見ると、40年程度かかるものと予想しても良いかもしれません。それを8年間で実現しようとする計画は、表題通り”チャレンジ”なのかもしれません。 -
写真にある高速鉄道のうち、青い表示の区間が、中国が建設を担当すると英字紙の報道で言われている区間です。ノンカイからマプタプット港の区間及びバンコクに至る区間の2区間です。
タイの軍事政権は、インドシナ半島及びマレー半島への進出を狙っている中国からの援助を引き出すとともに、中国に対抗する欧米や日本へもタイ鉄道開発への参加を呼び掛けています。クーデターに対する慎重な姿勢の欧米に対して、東西経済回廊沿いの鉄道建設に関心を持つ日本には、茶色の区間の鉄道建設に対する支援を求めています。タイにとって、より有利な援助を得るため、関係各国を競わせる等の巧みな駆け引き交渉がなされているようです。
タイの従来の経緯を見ますと、入札で決まった建設主体もいろいろな理由で変更される例は、数多くあり、予断が許されない歴史が続いているようです。 -
写真は、中国からラオスに伸びる国際鉄道の計画を進めている概略経路を示した図です。計画されている主要駅の位置と名称及び総合計キロ数、連接する区間及び軌間幅等を書き加えております。
中国とラオスとの国境から、タイとの国境の町ノンカイに続き、タイの高速鉄道と連接し得る経路となっています。
建設費は、全額、中国が負担し、ラオスの鉱山開発から得られる鉱物資源をもって返済する計画とされています。
鉄道の軌間幅は、1,453mmと中国の規格となっています。
ラオス領にあるタイと共用する5kmの在来鉄道の軌間幅1,000mmとは、異なっていますが、タイの高速鉄道との連接性が、気にかかる点です。 -
写真の図は、JICAのHPの将来のバンコクの新都市交通網の将来姿を記した交通網図です。
現在、運行されている路線を太線で、近い将来の新都市交通鉄道については、矢印で、書き加えてあります。
タイの大型プロジェクト計画は、頻繁に変更され、新たな計画が軽易に提案されます。実際の建設に際しても、計画がしばしば変更され、完成時期が遅れることも少なくなく、中には計画自体が放棄されることもありました。
従って、国としての計画も、あまり確定したものではありません。
バンスー駅からランシット駅へ、北方向にレッドラインという新都市交通線が計画され、日本のODA予算が投入されることとなっています。図に赤い矢印が付いた点線の区間です。この路線は、新都市交通鉄道なのに在来線が乗り入れるため、他の都市交通の軌間幅1,435mmと異なり、軌間幅が1,000mmとなっています。
紫の矢印の付いたパープルラインの軌間幅は、1,435mmとなっています。
タイは、どのように変わろうとしているのでしょうか。 -
写真の橋脚は、バンコクのトーテンポールと呼ばれているそうですが、バンコクの新交通鉄道計画(ホープウェル計画)が工事途中で放棄され、残骸として残っているものです。香港のホープウェル社が受注した工事ですが、工事の遅延と通貨危機の影響で、工事途中での中止となった幻の路線です。3層構造となっており、地上階は、道路と商店街、2階は、在来線と新都市交通鉄道との共用、3階は、高速道路の計画でした。交通渋滞に悩むバンコクとしては、期待されていたものと推測されます。在来線と新都市交通鉄道との共用ということは、軌間幅は1,000mmの予定だったということなのでしょう。幻の計画の残骸です。
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