2014/03/22 - 2014/04/26
147位(同エリア2824件中)
のまどさん
リラとマツリカが香しい季節になりました。今日はデジカメと図書館で借りた本を持って、ブリュッセルのアール・ヌーヴォー建築を25軒ご紹介したいと思います。いずれも建築家の独創性と依頼人の趣味が融合した個性豊かな作品です。
ブリュッセルには1泊のみの滞在をされる方がほとんどだ思いますが、②楽器博物館あるいは⑱オルタ邸だけでも是非お立ち寄りいただければ幸いです。
本文はカタカナの嵐が吹き荒れておりますが(予めゴメンナサイ)、固有名詞は通名もしくは独断で当人の母語(らしき)に合わせて表記しました。また、開館時間などの情報は2014年5月現在のものです。
<参考資料>
Louis Meers 'Art Nouveau Wandelingen in Brussel' (以下、ミールス)
- 交通手段
- 高速・路線バス 徒歩
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≪第一部 ブリュッセル市街地≫
グラン・プラスや小便小僧など誰しもが訪れる中心街から始めましょう。
アール・ヌーヴォーはフランス語で「新しい芸術」を意味します。1890年から1914年までにヨーロッパで流行した、草花や幾何学模様をあしらった曲線と直線を装飾として用いた造形様式です。
ブリュッセルには500を超えるアール・ヌーヴォー建築があり、世界遺産に登録されています。「アール・ヌーヴォーの街」を謳っているので、バス停の表示もそれらしくしています。残念ながら芸術の都パリ(小写真)に負けていますが。
今回このバス停・地下鉄駅De Brouckereから散策を始めたいと思います。交通機関サイトの路線図が見にくいので、郊外3地区の各起点への行き方も記載しておきます。 -
まずはグランプラスより徒歩2分、バス停より徒歩5分のアール・ヌーヴォーのレストランで早めの昼食を取りながら、私見をお聞き下さい。
①『レストラン・ファルスタッフ』
1904年 ウービオン作
('Taverne Falstaff' Houbion )
・知名度 ★★★
・インパクト ★
・アクセス ★★★
・現在の仕様:レストラン
・入場可否:○
・内装:http://www.lefalstaff.be/gallery/galerij-4/
オムレツとコロッケを食べながら、アール・ヌーヴォーの開花前夜1890年のベルギー情勢を概説したいと思います。ファルスタッフ カフェ
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建国60周年を迎えたベルギーは(アメリカより歴史が浅いんです!)、イギリスに次いで産業革命を成功させ、南部の炭鉱などの工業が堅調に伸びていました。また近代化の父もしくは狂人レオポルド2世の下、アフリカのコンゴを植民地化したことで欧米列強の仲間入りを果たしたと勘違いし、上のような趣味が良いとは言えない新古典主義のモニュメントを次々に建てて国家権力を示していきました。
※上記は史実ですがあくまで個人的な歴史観です。
一方、産業革命で富を得たブルジョワを中心に新しい政治思想が生まれ、民主化運動につながるのもこの頃です。
そんな中、オルタをはじめ巨匠たちの手によって新芸術アールヌーヴォーが華を咲かせていきました。サンカントネール公園 広場・公園
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昔からアール・ヌーヴォーと連想するのが、『接吻』等で有名なクリムトの絵画。クリムトが活躍したのは19世紀末から20世紀初頭。アール・ヌーヴォーの時期と一致します。そして彼の拠点ウィーンで当時流行していたユーゲント・シュティルはアール・ヌーヴォーのドイツ語圏での流派です。
この旅のお伴ミールス先生(以下、敬称略)によるとアール・ヌーヴォーとクリムトの始めた分離主義は相互に影響を与えたようです。あながち私の勘も間違っていませんでした。詳しくはフランス語圏に広まったアール・ヌーヴォーは草花のアラベスクが主役である一方、ユーゲント・シュティルは幾何学模様を多用したという違いがあるようです。
両者に共通するのは憂う夕暮れ時にまどろみに落ちたような気怠い官能美。それが世紀末という不安定な時代に生きた人々の求めた美なのでしょう。 -
ガレ、ティファニーなどのガラス工芸もアール・ヌーヴォーの流れを汲みます。
館めぐりに出かける前にもう一点、アール・ヌーヴォーと日本について特筆させて下さい。アール・ヌーヴォー流行前の1860年代から80年代にかけて、北斎や広重などの版画がヨーロッパに出回り、印象派の画家などを中心にジャポニズムが一世風靡します。アール・ヌーヴォーの柔らかな線と淡い色使いもこの系譜を受け継ぎます。
今日ヨーロッパで日本文化がブランド価値を確立しているのはジャポニズムが礎となっているためとして間違いないと思います。ジュ ド バル広場 広場・公園
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話を切り上げて、そろそろ出かけましょうか。まずは中心地から丘を上ってすぐの名所です。
②『オールド・イングランド(楽器博物館)』
1899年 サントノワ作
('Old England' P. Saintenoy)
・知名度 ★★★
・インパクト ★★★
・アクセス ★★(De Brouckereよりバス38・71番 Royal下車)
・現在の仕様:楽器博物館
・入場可否:○
・内装:http://chambredescouleurs.france-i.com/5296
元々国王の所蔵品を保管していた建物をサントノワが改築。オールド・イングランドという愛称はその後に入ったデパート名。現在は楽器博物館になっていて、最上階のテラスの眺めが最高。 -
≪第二部 アンビオリクス周辺≫
富豪や貴族などが挙って新建築様式を採用した高級住宅街。現在はEU機関が集中。ただし、⑦、⑧、⑨辺りは若干治安が悪い。
<行き方>
乗車:De Brouchkere駅(バス停裏建物地下) 地下鉄M1 Stockel/M5 Hermann-Debroux行き
下車:Schuman駅 -
③『ストクレ宮』
1911年 ホフマン作
('Palais Stoclet' J.Hoffman)
・知名度 ★★
・インパクト ★★★
・アクセス ★(地下鉄、同じ路線でSchumanより2駅Montgomeryで乗り換え。トラム39、44で2駅LeopoldII下車)
・現在の仕様:個人邸宅
・入場可否:×
・内装:http://girot.arch.ethz.ch/old/research-theorylab-general/stoclet-house.htm
依頼人ストクレは滞在経験ゆえにウィーンへの思い入れが強く、この邸宅はウィーン建築家によるユーゲント・シュテルという異色の作品。線対称、幾何学模様が多用され、何とクリムトが内装を手掛け絵画も数点提供している。ミールスはユーゲント・シュティルは人間味がないとバッサリ。確かに近寄りがたい(特に中)。ストックレー邸 現代・近代建築
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④『コーシー邸』
1905年 コーシー作
('Maison Cauchie' P.Cauchie)
・知名度 ★★★
・インパクト ★★★
・アクセス ★★
・現在の仕様:ギャラリー
・入場可否:○(ただし期間限定。 詳しくは http://www.cauchie.be/cauchie-house/contact )
・内装:http://www.cauchie.be/cauchie-house/house-total-art/furniture
画家、デザイナーであったコーシーが自ら建てたアトリエ兼邸宅。3つのドアが据え付けられた玄関ポーチと音楽の神を描いた上部のフレスコ画が特徴的です。彼はベルギーのアール・ヌーヴォーよりスコットランドのグラスゴー派を好んだそうです。
異端派2作品を紹介したので、正統派を見に行きましょう。メゾン コーシー 建造物
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⑤『サン・シル邸』
1903年 ストローヴァン作
('Maison Saint Cyr' G.Strauven)
・知名度 ★★★
・インパクト ★★★
・アクセス ★★★
・現在の仕様:個人邸宅
・入場可否:×
・内装:http://www.immorp.com/Documents/Biens/ambio.htm
ミールスいわく「最も幻想的でまるで御伽噺の中の家」。門から屋根の上までの装飾は表情豊かで大変意匠に凝っています。彼の客は今で言えば街中で真っ赤なフェラーリを乗り回すような(←偏見その1)見てくれにこだわる小金持ちが多かったので、記憶に残りやすい作品が多い。幅はわずか4メートル。いつも疑問に思うこと、どうやって中で生活できるのか。 -
⑥『ヴァン・エートフェルデ邸』
1897年 オルタ作
('Hotel van Eetvelde' V.Horta)
・知名度 ★★★
・インパクト ★★★
・アクセス ★★★
・現在の仕様:個人邸宅
・入場可否:×
・内装:http://www.irismonument.be/nl.Brussel_Uitbreiding_Oost.Palmerstonlaan.2.html
コンゴの事務長官、エートフェルデ男爵の最初の依頼。この邸宅が気に入られ、オルタは更にもう1軒隣接した邸宅の設計を任される。光をもインテリアとして捉えていたオルタの発想が裏目に出て、窓が大きすぎるために太陽光で木製の床がすぐに傷んでしまうそうです。ヴァン・エトヴェルド邸 建造物
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⑦
1898年 ヴァン・ワースベルヘ作
(A. van Waesberghe)
・知名度 ★
・インパクト ★
・アクセス ★
・現在の仕様:個人邸宅
・入場可否:×
ヴァン・ワースベルヘはマイナーな建築家です。ゴシックの直線美とアール・ヌーヴォーを組み合わせる試みをしました。上の出窓3つは彼がよく用いた様式です。レンガは最も安価な資材であったため、中流階級の邸宅建設に多く使われました。砂岩、石灰岩、御影石、大理石の順番で高くなります。 -
⑧『ヴァン・ダイク邸』
1903年 ストローヴァン作
('Maison Van Dyck' G.Strauven)
・知名度 ★★
・インパクト ★★
・アクセス ★★
・現在の仕様:個人邸宅
・入場可否:×
2階部分から上が斜めに奥まっていくところに建築家の遊び心が見える。上に高く伸びるのはゴシック風。ストローヴァンはオルタの弟子で、採光に配慮した丸みを帯びた窓やバルコニーの曲線装飾などに師匠と共通する特徴が見られる。中を覗くとリフォームをしているようだった。 -
⑨『ブラーク邸兼アトリエ』
1901年 オルタ作
('Maison-Atelier du sculpteur Pierre Braecke' V.Horta)
・知名度 ★
・インパクト ★★
・アクセス ★★
・現在の仕様:個人邸宅
・入場可否:×
オルタが友人の彫刻家の依頼で建てた家。オルタの依頼人は貴族や富裕層が大半だったが、ブラークの予算は限られていたため、最低限のコストで建てられた。そんな中でもオルタの閑雅な特徴が出ているとミルズは評価している。なるほど、こじんまりした佇まいの中にもオルタ作品特有の貫禄があります。 -
⑩
1901年 ストローヴァン作
(G.Strauven)
・知名度 ★
・インパクト ★★
・アクセス ★★
・現在の仕様:個人邸宅
・入場可否:×
「ガラス窓の館」と呼ばれる華美な邸宅。ベルギーの画家フォロンの作品を髣髴とさせる鳥がガラスのモチーフになっています。恐らくは改装済みだと思いますが、レンガの色使いも洒脱です。ストローヴァンの作品として、⑤サン・シル邸、⑧ヴァン・ダイク邸を既に紹介しましたが、どれも6年という極めて短い建築キャリアの間に燃え上がった情熱が伺えます。 -
≪第三部 イクセル区≫
イクセルには現在も外国の大使館が並び、ステータスを感じる住宅街です。特に池の周りは一等地です。
<行き方>
乗車:De Brouckereよりバス38番
下車:Vleurgat -
⑪『ソルヴェ邸』
1893年 オルタ作
('Hotel Solvay' V. Horta)
・知名度 ★★★
・インパクト ★★★
・アクセス ★★★
・現在の仕様:イベント会場
・入場可否:△(団体予約のみ)
・内装:http://cityzenart.blogspot.be/2010/09/lhotel-solvay.html
オルタの傑作の一つ、大胆な曲線に沿って立体感が際立っています。彼の偉業は専ら基盤材料として使われていた鉄を初めて装飾に使ったこと。鉄の曲線についてミールスはテラスの欄干等を「蛇状線」、それを支える細かな支柱等を「鞭のしなる線」と表しています。それにしても、ヘビにムチって…。杉本彩が出てこないうちに(←ありえない)先に行きましょう。ソルヴェイ邸 城・宮殿
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⑫『ステルネ邸』
1904年 ドリューヌ作
('Atelier du maître-verrier Sterner' L. Delune)
・知名度 ★★
・インパクト ★★
・アクセス ★★
・現在の仕様:個人邸宅
・入場可否:×
・内装:http://magical-art-nouveau-johannel.blogspot.be/2013/09/maison-delune.html
丸窓のガラスには赤い花が描かれています。建築家ドリューヌの名前はフランス語で月という意味があり、多彩な窓についてミールスは「その名の通り、三日月、半月、満月、変幻自在な月の姿を俯瞰できる」と半ばポエムな説明をしています。この建物には何となくアール・ヌーヴォーの後に流行するアール・デコの兆しがあるように思います。 -
⑬
ドリューヌ兄弟作
(Les freres Delune)
・知名度 ★
・インパクト ★★
・アクセス ★★
・現在の仕様:大使館関係?
・入場可否:×
⑫ステルネ邸の裏の通りにドリューヌ3兄弟は10件以上の家屋を設計しました。そのうち一番大きな邸宅が池に面したこの邸宅です。依頼主は恐らく貴族だったのでしょう。ガラス窓には⑫と同じ赤い花が描かれています。 -
⑭
1904年 ブレロ作
(E. Blerot)
・知名度 ★★
・インパクト ★
・アクセス ★★
・現在の仕様:個人住宅
・入場可否:×
・内装:http://www.immoweb.be/en/buy.Estate.cfm?IdBien=4659917&xgallery=&xpage=1 (お早めに)
現在売りに出されています。290万ユーロは1ユーロ=140円のレート換算で約4億円です。2年前のレートであれば3億円でした。こちらの物件、居住面積は650平米、中はきれいにリフォームされています。アール・ヌーヴォーのお値打ちもの、池に面した一等地は現在地価が上昇する一方です。いかがです、今がお買い得ですよ。(←アンタ、誰?) -
⑮
1903年 ブレロ作
(E. Blerot)
・知名度 ★
・インパクト ★
・アクセス ★★
・現在の仕様:個人住宅
・入場可否:×
ブレロ作品が続きます。こちらも4年ほど前に売りに出されていました。ドアの花モチーフが特徴的です。ブレロは、家の内装を画一化して前面だけ顧客の要望に合わせてオーダーメイドにしてコストを抑えたので料金が安く、オルタに次いで受注の多い建築家でした。 -
⑯
ブレロ作
(E. Blerot)
・知名度 ★
・インパクト ★★
・アクセス ★
・現在の仕様:個人住宅
・入場可否:×
無名ですがブレロの鷹揚な優美さが感じられる邸宅。構造的には⑪ソルヴェ邸に似ていますが、3階部分の凹凸のデザインはオルタの内装設計に見られます。池を眺められるように窓が全面に付いています。 -
⑰
ブレロ作
(E. Blerot)
・知名度 ★
・インパクト ★★
・アクセス ★
・現在の仕様:個人住宅
・入場可否:×
・内装:http://magical-art-nouveau-johannel.blogspot.be/2013/09/rue-belle-vue-trois-maisons-dernest.html
青色の使い方とドアの花のモチーフが印象的です。左隣2軒もブレロの作品です。彼はヨーロッパの聖堂の尖塔に見られるようなゴシック様式を作品に取り入れたため、保守層からの支持を得られたらしいです。 -
≪第四部 サン・ジル区≫
サン・ジルは今日も文化人が多く住んでいます。アンティーク家具など興味深い店が並びます。(25)の辺りは治安が悪いので要注意。
<行き方>
乗車:De Brouckereよりトラム3 Churchill行き/4 Stalle行き
下車:Hortaより徒歩5分
※第三部と隣接しています。三部で下車したバス停で本部が終わるように地図を描きました。 -
だいぶ歩いたので、一まず休憩しましょうか。
ラ・カンカエリー
http://www.quincaillerie.be/
1903年に金物屋として建てられました。アール・ヌーヴォーではありませんが、中の大時計を中心にレトロな雰囲気の店です(サイト参照)。生カキなどの海鮮も食べられます。
私は白ビールとオマールえびのスープにします。ラ カンカユリー 地元の料理
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⑱『オルタ邸』
1901年 オルタ作
('Maison Horta' V.Horta)
・知名度 ★★★
・インパクト ★★★
・アクセス ★★★
・現在の仕様:博物館
・入場可否:○
・内装:http://www.hortamuseum.be/uploads/japon.pdf
この期に及んで紹介するとオルタはベルギー・アール・ヌーヴォーの父です。繁忙期には年間17件もの依頼を受けるほど人気でしたが、彼は内装まで徹底的にデザインしたので予算オーバーすることが多々。自身の邸宅もローンの返済に10年以上費やしたそうです。どの分野でも現実問題に頓着せずに至高を求められる人は天才なのでしょう。オルタ美術館 (オルタ邸) 博物館・美術館・ギャラリー
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⑲
1905年 ド・レスター作
(B. De Lestre de Fabribeckers)
・知名度 ★
・インパクト ★★
・アクセス ★★★
・現在の仕様:個人邸宅
・入場可否:×
ミールスはこの邸宅の完成年1905年をアール・ヌーヴォーの転換期として捉えています。ド・レスターはこのドアや窓に見られる、重厚なユーゲント・シュティル風の幾何学装飾を継承しながらも新古典主義に回帰していったようです。 -
⑳『アンカル邸』
1893年 アンカル作
('Maison Hankar' P. Hankar)
・知名度 ★★
・インパクト ★★
・アクセス ★★
・現在の仕様:個人邸宅
・入場可否:×
42歳という若さで亡くなったアンカル。彼の作品についてミールスは「冷淡だ」とお気に召さないようですが(←人情派?)、精緻で怜悧という定評があります。左側部分の張出窓の格子や金色を背景に描かれる鳥やアジサイなどの花にジャポニズムの影響が見られます。 -
(21)『キアンベルラーニ邸』
1897年 アンカル作
('Hotel Ciamberlani' G. Strauven)
・知名度 ★★★
・インパクト ★★★
・アクセス ★★
・現在の仕様:個人邸宅
・入場可否:△(http://en.hotelciamberlani.com/contact.html に事前連絡。ガイド料500ユーロ!!)
・内装:http://www.dayoff.be/en/the-ciamberlani-house
王室ご用達の画家だった大の大人の住宅設計を依頼したのは彼のママというのがいかにもイタリア人(←偏見その2)。どこかで見たなと思った方が多いと思いますが、④コーシー邸に先駆けて、ブリュッセルで初めてダイナミックなフレスコ画を住宅に採用したのはこの作品です。向かって右隣の家もアンカルの作品。建築家ヴィクトール・オルタによる主な邸宅群(ブリュッセル) 現代・近代建築
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(22)『ゴブレ・ダルヴィエッラ邸』
1882年 ライセルベルヘ作
('Hotel Goblet d'Alviella' O. Rysselberghe)
・知名度 ★★
・インパクト ★★
・アクセス ★★
・現在の仕様:個人邸宅
・入場可否:×
あれれ、1882年は早すぎるぞ。ミールスは①ライセルベルヘがこの後に本格的なアール・ヌーヴォー建築を手がけること、②この邸宅がギリシア・ローマ風の伝統的装飾を一個人の住宅に早くに取り入れたことを理由にアール・ヌーヴォーの先駆的作品と位置づけたかったようです。依頼人の伯爵は大学教授で芸術にも造詣が深かったようです。 -
(23)『オトレ邸』
1898年 ライセルベルヘ作
('Maison Paul Otlet' O. Rysselberghe)
・知名度 ★★
・インパクト ★★★
・アクセス ★★
・現在の仕様:個人邸宅
・入場可否:×
・内装:http://www.irismonument.be/fr.Bruxelles_Extension_Sud.Rue_de_Florence.13.html
鉄道建設で一儲けした父ちゃんの資産をつぎ込んだ夢想家の息子オトレ(26歳、ニート疑惑)の依頼。ミールスが人柄と実力をべた誉めするライセルベルヘはイタリア文化の影響を受けていたため、ルネサンス様式のお城のような構えになっています。彼は画家であった弟のために同じ通りにもう1軒邸宅を設計しています。 -
(24)『タッセル邸』
1894年 オルタ作
('Hotel Tassel' V. Horta)
・知名度 ★★★
・インパクト ★★
・アクセス ★
・現在の仕様:会社事務所
・入場可否:△ (http://www.arau.org/ に事前予約が必要)
・内装:http://19thcentury.wordpress.com/2007/11/18/victor-horta-architect-of-the-art-nouveau/
ミールスが「マニフェスト」と息巻くブリュッセルで最初のアール・ヌーヴォー作品。目立たないように⑪ソルヴェ邸に見られるような派手な装飾は外装に使われていません。ただし、中央の弓形の張出窓、特に3階部分の長さは目を引きます。入り口を建物の中央に配置したのは斬新な構想。中の階段は写真でも眩暈を覚えるような幻想的な美しさ(サイト参照)。タッセル邸 建造物
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<行き方>
乗車:De Brouckereよりトラム3 Churchill行き/4 Stalle行き
下車:Porte de Halle
(25)
1903年 ブレロ作
(E. Blerot)
・知名度 ★★
・インパクト ★
・アクセス ★
・現在の仕様:カフェ・レストラン http://www.laporteusedeau.be/
・入場可否:○
第二部で紹介したブレロの作品が最後を飾ります。入り口を正面に見て、真ん中を垂直に伸びる塔はブレロのゴシック風スタイルの象徴です。砂岩とレンガが交互に使われ、木製の張出窓とバルコニーの上にある飾り絵が規則正しく調和しています。
中に入りましょうか?ここは珍しいベルギービールの種類が豊富です。ラ ポルトゥーズ ドー 地元の料理
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お疲れ様でした。これでブリュッセルの主要なアール・ヌーヴォー建築を回れました。もちろん、まだ紹介していない館もたくさんありますが。
25軒のうちどこか気に入った館はありますか?ビールを飲みながらご意見を伺えれば幸いです。
また、常時フランス語・英語でアール・ヌーヴォーのガイドツアーもありますので、ご参考までに。
http://www.arau.org/en/tours/art-nouveau
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この旅行記へのコメント (10)
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- 尚美さん 2016/05/01 16:20:32
- のまどさんの旅行記を見ていれば良かったのに…。
- のまど様
初めまして。
2014年の年末にブリュッセルとアントワープのアール・ヌーヴォー建築を見て周りました。
その前にのまどさんの旅行記を拝読していれば!と悔やまれます。
初めてのベルギーで、しかも要領の悪いおばさんなので、結構苦労して周ったんです。
今月20日から再びブリュッセルとアントワープ(とドイツ)に行きます。
21日のヴァン・エートヴェルド邸とマックス・アレ邸の特別公開に申し込んでいます。
アントワープもブリュッセルも短い滞在になりますが、前回の旅で見られなかったアール・ヌーヴォー建築も少しは見る予定です。
今度こそ、のまどさんの(地図とルートまで記入して下さっている♪)素敵な旅行記を参考にさせて頂き、右往左往せずに歩きたいと思います。
勝手に参考にさせて頂きます!!
ありがとうございます!
尚美
- のまどさん からの返信 2016/05/04 04:53:34
- RE: のまどさんの旅行記を見ていれば良かったのに…。
- 尚美様
初めまして。コメント、ありがとうございます。
> 2014年の年末にブリュッセルとアントワープのアール・ヌーヴォー建築を見て周りました。
> その前にのまどさんの旅行記を拝読していれば!と悔やまれます。
いやいや、そんなことはありませんよ。ブリュッセルのアール・ヌーヴォー旅行記を拝見しましたが、かなり調べていることが伺えます。私も一番好きな館はド・リューヌ邸です。ルーマニアの旅行記も面白かったです。建築がお好きなんですね。
> 今月20日から再びブリュッセルとアントワープ(とドイツ)に行きます。
> 21日のヴァン・エートヴェルド邸とマックス・アレ邸の特別公開に申し込んでいます。
楽しみですね。今年はまだ少し肌寒いですが、日も伸びていい季節になりました。交通機関が乱れることがあるのでお気を付けください。
> 今度こそ、のまどさんの(地図とルートまで記入して下さっている♪)素敵な旅行記を参考にさせて頂き、右往左往せずに歩きたいと思います。
参考にしていただいたらブロガー冥利に尽きます。ブリュッセルは色々な旅行記の投稿を考えているのですが、なかなか筆が進まないのが残念です。
私は同じ時期にポーランドに行くので、こちらこそ尚美さんのブログを参考にさせて下さい。
では、楽しい旅になりますように。
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- CHLOEさん 2015/05/10 02:25:06
- これから行ってみます。
- 初めまして。
4月からベルギーに仕事で住んでおります。
アールヌーヴォーに興味があり、これから見て回ろうとしていたので、のまどさんの旅行記に出会えたことは、とても嬉しいことです。
まずは証券取引所の近くから…とても楽しみです。
素敵な情報を、ありがとうございます。
- のまどさん からの返信 2015/05/10 18:32:04
- RE: これから行ってみます。
- CHLOEさん、初めまして。
コメントいただきフォローまでしていただいてありがとうございます。
> 4月からベルギーに仕事で住んでおります。
> アールヌーヴォーに興味があり、これから見て回ろうとしていたので、のまどさんの旅行記に出会えたことは、とても嬉しいことです。
お役に立てて大変光栄です。引っ越して来られてから当地の生活の違いに驚くことが多いと思いますが、ベルギーは文化的に恵まれていると思いますので、楽しんで生活されますように。
今月中にアール・ヌーヴォ旅行記第2弾を投稿するのでまたご訪問いただければ幸いです。
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- milkさん 2015/05/03 01:08:02
- 初めまして。
- のまどさん、初めまして。
milkと申します。
来週からオランダ、ベルギー旅行に行くので下調べをしています。
ブリュッセルではアールヌーボー建築を見たいと思っていましたので、のまどさんの地図付き旅行記が大変参考になります!
活用させて下さい。
取り急ぎご挨拶までに...。
milk
- のまどさん からの返信 2015/05/05 04:13:42
- RE: 初めまして。
- milkさん、初めまして。
もうすぐ出発なのに拙旅行記にお立ち寄りいただき、コメントまで頂いてありがとうございます。
地図が少し見にくいと思いますが、第一部と四部がわりと有名所が多いかなと思います。結構気合を入れて書いた旅行記なので、お役に立てて大変光栄です。
当地は20度を越える暖かい日が続いていますが、雨が降ると10度近くまで下がるので寒さにはお気を付け下さい。もっとも、milkさんはヨーロッパに慣れていらっしゃると存じていますが。
楽しい旅になりますように。
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- jijidarumaさん 2014/10/09 19:07:49
- Art Nouveauアール・ヌーヴォー(Jugendstilユーゲント・シュティル様式)
- のまどさん
こんばんは。
ブリュッセルのアール・ヌーヴォーの館めぐり、素晴らしい館群の数々を楽しませていただきました。私共の普通の観光ですと、見る視点が違っていますから、大変参考になりました。
個人宅が多い所為か、比較的こぢんまりした建物ですね。写真で見た感じは皆新しくみえましたが、これらは第二次大戦で罹災し、再建されたものなのでしょうか?
それに教会とか、公共の建物の中にアール・ヌーヴォー様式は見ることができるのですか?
レストランの口コミで店内のアール・ヌーヴォー様式もみましたが、とても雰囲気があると思いました。
ドイツはもとより、ヨーロッパを旅をしていると、いろいろの町でこの様式の建物によく出会います。ブリュッセルもこうして各所に見ることができるとは知りませんでした。
バルト三国のラトヴィアの首都、世界遺産のリガ市内観光をしたことがありますが、新市街のAlberta&Elizabetesアルベルト・エリザベート通り(金融・官庁街・各国大使館も見られる通り、リガの事実上の中心)には見事なJugendstilユーゲントシュティール様式の建物が並ぶ一角がありました。
19世紀に建てられた、数階建ての建物が軒を競って、その美しい様式で表現されていたのです。
当時、ユーゲント・シュティル様式における、ヨーロッパの中心がこのリガであったとか。町の中心の凡そ三分の一がユーゲント・シュティル様式の建物であったと言われている事から、その凄さが理解できますが、当時のリガの町が豊かに繁栄し『ドイツよりもドイツらしい町』とすれば、それも納得です。
jijidaruma
- のまどさん からの返信 2014/10/09 20:23:15
- RE: Art Nouveauアール・ヌーヴォー(Jugendstilユーゲント・シュティル様式)
- jijidarumaさん、こんにちは。
毎度ありがとうございます。ヨーロッパ通のjijidaruma
さんに気に入っていただき、深いコメントをいただけて大変うれしく思います。
> 個人宅が多い所為か、比較的こぢんまりした建物ですね。写真で見た感じは皆新しくみえましたが、これらは第二次大戦で罹災し、再建されたものなのでしょうか?
ベルギーが世界初を誇るアール・ヌーヴォー建築はほとんどが個人住宅です。時期も弱冠20年と短い間に流行が廃れました。第一次世界大戦後に流行したアール・デコ様式で駅や劇場などが建てられました。
ベルギーは第二次世界大戦で18日間の抗戦の後にあっさりドイツに降伏し、連合軍が上陸したときは諸手を挙げて歓迎したためか、オランダと違って戦地になることはありませんでした。なので、建造物が罹災したとは聞いたことがありません。お察しの通り大半の建物が新しいのは自然劣化した建物の修復結果や邸宅の持ち主の意向でリフォームされたためです。
この旅行記はアクセス数が抜群に多いので、建物の中を取材して第2弾を書く予定ですので、気長にお待ち下さい。
> 当時、ユーゲント・シュティル様式における、ヨーロッパの中心がこのリガであったとか。
リガのユーゲント・シュティルについては聞いたことがあります。「ドイツよりもドイツらしい」というのはとても興味深いですね。
私もjijidarumaさんの伝説に迫ってお城や教会をめぐる旅行記を読んで勉強させていただいていますので、今後の更新を楽しみにしております。
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- captainfutureさん 2014/07/14 13:38:57
- 街中にこんな壮麗な建物がたくさん生きて使われているとは!!
- こんにちは。
ご無沙汰しております。
>現在売りに出されています。290万ユーロは
あら、お安い、と思って(もちろん冗談ですよ 笑)リンク先を見てみると、内装も見事な世界。
>鳥やアジサイなどの花にジャポニズムの影響が見られます。
ジャポニズムが影響とは本当にあったのですね。
>25軒のうちどこか気に入った館はありますか?
どれもスゴイです。こんな邸宅に住めなくても、家具調度品で一つでも手元にあると何だか心豊かな生活が送れそうな気分になってきました。
最初は、おおお、僕の大好きな番組「ポワロ」の世界だ〜と思ったのですが、ちょっと調べてみるとポワロの時代はその後に起こるアール・デコの時代で、似て非なるものだったんですね。
すっきりした幾何学的な模様もいいですが、アール・ヌーヴォーのこの独特な世界にも憧れます。
学生時代にブリュッセルにも3日ぐらい行ったのですが、こんな壮麗な建築群を見ずに何を見てきたんだろうと、今懸命に記憶を辿っているところです。きっと価値も分からずぼんやりと街歩きをしていたんだろなあ。もったいないことをしました。
グラナダ編の続きも拝見しました。
>命を守るために改宗しても信仰を捨てなかったイスラム教徒たちはモレスコと呼ばれるそうです。
>日本史に例えるなら踏み絵を踏んで生き延びた隠れキリシタンといったところですね。
なんと、ヨーロッパでも日本とは逆のようなことが行われていたんですね!
サービス満点のバルにも魅かれてしまいました。
ノルマンディ編も。
お住まいのベルギーからだと、車でひょいという具合に出かけられるのですね。陸続きならでは。
おお、歴史で習ったド・ゴール将軍、ここに眠っているのですか。
>わずか17歳今で言えば女子高生が田舎から立ち上がり、
そう考えると、感慨深いです。当時の時代の人々が熱望していた人物像にぴったりと合わさった人だったんでしょうね〜。
モネの生家の庭園、ブルーの花がアクセントになって本当にキレイです。最初、これも絵画かと思ってしまいました。
ベルギー在住ならではの陸続きの国へのゆったりした旅、羨ましく拝見しました。
それぞれの続編も楽しみにしております♪
- のまどさん からの返信 2014/07/14 20:28:38
- ポワロとアール・デコ、興味深いです
- captainfutureさん、こんにちは。
調べるのが好きなのでアルハンブラ以来オタク路線に走りつつあるのですが、丁寧に読んで下さって(結構なボリュームなので大変だったと思います)、温かい感想をいただけて本当に嬉しく思います。ありがとうございます。
アール・ヌーヴォー旅行記は今のところ私のオタク最高峰作品です(笑)。ヨーロッパ、特にベルギーの旅行記は自分の関心事にクローズアップして居住者ならではの視点で書きたいという思いがあるので、こんな風になってしまいました。
> 学生時代にブリュッセルにも3日ぐらい行ったのですが、こんな壮麗な建築群を見ずに何を見てきたんだろうと、今懸命に記憶を辿っているところです。
4トラの口コミを拝見したところ、なかなか日本語で網羅的な情報がないようなので「見たけど何がいいのか分からない」という意見が多いので、私の拙い旅行記が取っ掛かりになればと思って書きました。
> どれもスゴイです。こんな邸宅に住めなくても、家具調度品で一つでも手元にあると何だか心豊かな生活が送れそうな気分になってきました。
確かにこういった建築物を見ながら散歩できたり芸術品が身近にあると心が豊かになれます。そういう点では恵まれていますね。
> 最初は、おおお、僕の大好きな番組「ポワロ」の世界だ〜と思ったのですが、ちょっと調べてみるとポワロの時代はその後に起こるアール・デコの時代で、似て非なるものだったんですね。
「ポワロ」は初耳です。去年まで放映されていたんですね。ウィキペディアを読みましたが、ベルギー人の主人公の描き方が面白そうですね。アガサ・クリスティ原作、見てみます♪
アール・デコ、お好きなんですね。今回参考にした本の姉妹版アール・デコによるとブリュッセルにはアール・ヌーヴォーを上回る数のアール・デコ建築があるようです。アール・ヌーヴォーからアール・デコへというテーマもいずれ取り上げられたらと思っています。気長にお待ちください。
captainfutureさんが今年はどのようなところに行かれるのか興味深いです。またスリル満点の旅行記を心待ちにしています。
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