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 鎌倉市扇ガ谷2にある東林寺跡やぐら群は、鎌倉では最も興味深いやぐら群の一つである。これまでに3、4回ほど東林寺跡やぐら群を目指したが辿り着けないでいた。今回は立ち話をしていたおばさんがいたので道を尋ねた。現在は浄光明寺墓地となっている。この墓地の入口に住んでいる人である。浄光明寺とは予想外に離れていると感じられた。これでは辿り着けなかった訳だ。<br /> 崖のやぐらを見始めると、先程のおばさんがやって来た。「墓地には来たことがなかったのですが、今日は余りに天気が良いものだから。」と言う。そこここのやぐらを巡っているので、「折角ですから、私が説明しましょう。」とやぐらを案内した。「墓の中に入って良いのですか?」「墓を荒らすのではないのですから大丈夫です。」<br /> 20分くらい丁寧に説明し、最後にこの東林寺跡やぐら群の特徴を纏めた。<br /> 「数は10余りしか残っていないが、いずれも造りが丁寧であり、第1に、天井が平らではなく、三角になっているものがある。私が見たものでは3基目であり、とても珍しい。これはお墓ではなく、お堂、岩窟寺院のようなものでしょう。第2に、中央のやぐらは鎌倉では最大級の大きさである。第3に、中の棚が2段になっているものがあるが、他ではほとんど見られない。たとえば、名越切通脇のまんだら堂やぐら群は4階建ての集合住宅のような集合墓地であり、このやぐらにもそうした時代の流れが感じられる。」<br /> しかし、最も特徴的なことは言い忘れた。これほど綺麗になっているやぐら群など皆無であろう。また、革靴でも見学できるようなやぐら群も思い浮かばない。足場が良いやぐら群だからと言って、最初にここを訪れたら、他のやぐら群を巡ることが馬鹿らしくなるかも知れない。<br /> ざっと墓地を見た感じでは、やぐら内などには江戸時代の墓石が多く立ち、墓地の墓石も大正から昭和末のものが多い。それでも平成になってからの墓もあるようで、井上ひさし氏の墓もある。<br /> 鎌倉では寺社などでは説明などをすることはあるが、やぐらで人に出会うことすら稀であり、まして各やぐらの特徴を説明しながら案内したのは初めてのことだ。あのおばさんも今夜はきっとご主人に、自宅の直傍にあるやぐらがどうのこうだと話をするであろう。<br />(表紙写真は東林寺跡やぐら群の左角のやぐらの「がん」(合冠に龍))

東林寺跡やぐら群(鎌倉市扇ガ谷2)

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2012/11/11 - 2012/11/11

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ドクターキムル

ドクターキムルさん

 鎌倉市扇ガ谷2にある東林寺跡やぐら群は、鎌倉では最も興味深いやぐら群の一つである。これまでに3、4回ほど東林寺跡やぐら群を目指したが辿り着けないでいた。今回は立ち話をしていたおばさんがいたので道を尋ねた。現在は浄光明寺墓地となっている。この墓地の入口に住んでいる人である。浄光明寺とは予想外に離れていると感じられた。これでは辿り着けなかった訳だ。
 崖のやぐらを見始めると、先程のおばさんがやって来た。「墓地には来たことがなかったのですが、今日は余りに天気が良いものだから。」と言う。そこここのやぐらを巡っているので、「折角ですから、私が説明しましょう。」とやぐらを案内した。「墓の中に入って良いのですか?」「墓を荒らすのではないのですから大丈夫です。」
 20分くらい丁寧に説明し、最後にこの東林寺跡やぐら群の特徴を纏めた。
 「数は10余りしか残っていないが、いずれも造りが丁寧であり、第1に、天井が平らではなく、三角になっているものがある。私が見たものでは3基目であり、とても珍しい。これはお墓ではなく、お堂、岩窟寺院のようなものでしょう。第2に、中央のやぐらは鎌倉では最大級の大きさである。第3に、中の棚が2段になっているものがあるが、他ではほとんど見られない。たとえば、名越切通脇のまんだら堂やぐら群は4階建ての集合住宅のような集合墓地であり、このやぐらにもそうした時代の流れが感じられる。」
 しかし、最も特徴的なことは言い忘れた。これほど綺麗になっているやぐら群など皆無であろう。また、革靴でも見学できるようなやぐら群も思い浮かばない。足場が良いやぐら群だからと言って、最初にここを訪れたら、他のやぐら群を巡ることが馬鹿らしくなるかも知れない。
 ざっと墓地を見た感じでは、やぐら内などには江戸時代の墓石が多く立ち、墓地の墓石も大正から昭和末のものが多い。それでも平成になってからの墓もあるようで、井上ひさし氏の墓もある。
 鎌倉では寺社などでは説明などをすることはあるが、やぐらで人に出会うことすら稀であり、まして各やぐらの特徴を説明しながら案内したのは初めてのことだ。あのおばさんも今夜はきっとご主人に、自宅の直傍にあるやぐらがどうのこうだと話をするであろう。
(表紙写真は東林寺跡やぐら群の左角のやぐらの「がん」(合冠に龍))

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  • 民家にあるやぐら。この谷戸の小川沿いの道路に沿って民家が建っている。東林寺跡は高台にあり、その高台の崖にはこのようにやぐらが並んでいるのであろう。

    民家にあるやぐら。この谷戸の小川沿いの道路に沿って民家が建っている。東林寺跡は高台にあり、その高台の崖にはこのようにやぐらが並んでいるのであろう。

  • 浄光明寺墓地手前の崖にあるやぐら。

    浄光明寺墓地手前の崖にあるやぐら。

  • 東林寺跡やぐら群右端にある山道。護国寺の裏山の尾根道であろう。

    東林寺跡やぐら群右端にある山道。護国寺の裏山の尾根道であろう。

  • 右1番のやぐら。

    右1番のやぐら。

  • 右2番のやぐら。

    右2番のやぐら。

  • 右2番のやぐら。

    右2番のやぐら。

  • 右2番のやぐら。<br />

    右2番のやぐら。

  • 右2番のやぐら。<br />天井が平らではなく、三角だ。

    右2番のやぐら。
    天井が平らではなく、三角だ。

  • 右2番のやぐらの左奥天井隅。<br />

    右2番のやぐらの左奥天井隅。

  • 右2番のやぐらの中央奥天井隅。三角になり、柱穴がある。<br />

    右2番のやぐらの中央奥天井隅。三角になり、柱穴がある。

  • 右2番のやぐらの右奥天井隅。<br />柱穴がある。

    右2番のやぐらの右奥天井隅。
    柱穴がある。

  • 右2番のやぐらの右奥隅。<br />

    右2番のやぐらの右奥隅。

  • 右2番のやぐらの右奥の三角天井の「がん」(合冠に龍)。<br /><br />「がん」もやぐらの形に合わせている。

    右2番のやぐらの右奥の三角天井の「がん」(合冠に龍)。

    「がん」もやぐらの形に合わせている。

  • 右2番のやぐらの左奥の四角い「がん」(合冠に龍)。<br />

    右2番のやぐらの左奥の四角い「がん」(合冠に龍)。

  • 右2番のやぐらの左奥角。<br />

    右2番のやぐらの左奥角。

  • 右2番のやぐらの左側壁にある柱穴。<br />

    右2番のやぐらの左側壁にある柱穴。

  • 右3番のやぐら。

    右3番のやぐら。

  • 右側のやぐら群。

    右側のやぐら群。

  • 右4番のやぐら。大型やぐらだ。

    右4番のやぐら。大型やぐらだ。

  • 右4番のやぐら。

    右4番のやぐら。

  • 右4番のやぐら。

    右4番のやぐら。

  • 右4番のやぐら。大型やぐらのために何家もの墓がある。

    右4番のやぐら。大型やぐらのために何家もの墓がある。

  • 右4番のやぐら。右側壁に棚がある。

    右4番のやぐら。右側壁に棚がある。

  • 右4番のやぐらの右奥壁に2段の「がん」が見える。

    右4番のやぐらの右奥壁に2段の「がん」が見える。

  • 右4番のやぐらの左奥壁の「がん」。

    右4番のやぐらの左奥壁の「がん」。

  • 右4番のやぐらの右奥壁の「がん」と棚。

    右4番のやぐらの右奥壁の「がん」と棚。

  • 右4番のやぐらの右奥壁角の天井。

    右4番のやぐらの右奥壁角の天井。

  • 右4番のやぐらの左側壁の「がん」。

    右4番のやぐらの左側壁の「がん」。

  • 右4番のやぐらの左側壁の小さな「がん」。

    右4番のやぐらの左側壁の小さな「がん」。

  • 右4番のやぐらの左側壁の「がん」。

    右4番のやぐらの左側壁の「がん」。

  • 右4番のやぐらの左側壁の2段になった「がん」。

    右4番のやぐらの左側壁の2段になった「がん」。

  • 右4番のやぐらの左側壁の2段になった「がん」。

    右4番のやぐらの左側壁の2段になった「がん」。

  • 右4番のやぐらの左側壁の「がん」。

    右4番のやぐらの左側壁の「がん」。

  • 右4番のやぐらの左側壁の「がん」。

    右4番のやぐらの左側壁の「がん」。

  • 右4番のやぐらの左側壁の「がん」。

    右4番のやぐらの左側壁の「がん」。

  • 右4番のやぐらの左奥壁の天井。

    右4番のやぐらの左奥壁の天井。

  • 右4番のやぐらの左側壁の棚。

    右4番のやぐらの左側壁の棚。

  • 右5番のやぐら。奥に棺座がある。

    右5番のやぐら。奥に棺座がある。

  • 右5番のやぐら。棺座の上にも石仏が安置されている。

    右5番のやぐら。棺座の上にも石仏が安置されている。

  • 右6番のやぐら。奥に棺座がある。

    右6番のやぐら。奥に棺座がある。

  • 右7番のやぐら。奥に棺座がある。

    右7番のやぐら。奥に棺座がある。

  • 右7番のやぐら。奥に棺座がある。

    右7番のやぐら。奥に棺座がある。

  • 右8番のやぐら。

    右8番のやぐら。

  • 右8番のやぐらの奥壁に「がん」がある。

    右8番のやぐらの奥壁に「がん」がある。

  • 右8番のやぐらの右側壁にも「がん」がある。

    右8番のやぐらの右側壁にも「がん」がある。

  • 右8番のやぐらの左奥壁の天井。

    右8番のやぐらの左奥壁の天井。

  • 右8番のやぐらの右奥壁の天井。

    右8番のやぐらの右奥壁の天井。

  • 右9番のやぐら。ここから向きは90度変わる。

    右9番のやぐら。ここから向きは90度変わる。

  • 右9番のやぐらの奥壁。隣のやぐらとの壁が抜けてしまっている。

    右9番のやぐらの奥壁。隣のやぐらとの壁が抜けてしまっている。

  • 右10番のやぐら。

    右10番のやぐら。

  • 右10番のやぐらの右側壁。「がん」が見える。

    右10番のやぐらの右側壁。「がん」が見える。

  • 右10番のやぐら。

    右10番のやぐら。

  • 右10番のやぐらの左側壁。「がん」が見える。

    右10番のやぐらの左側壁。「がん」が見える。

  • 右10番のやぐらの右側壁入口の「がん」。2段になっている。

    右10番のやぐらの右側壁入口の「がん」。2段になっている。

  • 右10番のやぐらの右側壁の2段になった「がん」。

    右10番のやぐらの右側壁の2段になった「がん」。

  • 右10番のやぐらの右側壁の2段になった「がん」。<br />2階建てのやぐらは扇ノ井がある本田家やぐらにあるが、この「がん」をやぐらにしたイメージだ。また、名越切通脇にあるまんだら堂やぐら群はこの2段の「がん」を4段にしてやぐらとして並べたイメージである。

    右10番のやぐらの右側壁の2段になった「がん」。
    2階建てのやぐらは扇ノ井がある本田家やぐらにあるが、この「がん」をやぐらにしたイメージだ。また、名越切通脇にあるまんだら堂やぐら群はこの2段の「がん」を4段にしてやぐらとして並べたイメージである。

  • 右10番のやぐらの右側壁の2段になった「がん」。

    右10番のやぐらの右側壁の2段になった「がん」。

  • 右10番のやぐらの右奥壁角。2段になった「がん」が見える。

    右10番のやぐらの右奥壁角。2段になった「がん」が見える。

  • 右10番のやぐらの奥壁の2段になった「がん」。

    右10番のやぐらの奥壁の2段になった「がん」。

  • 右10番のやぐらの奥壁には1段になった「がん」もある。

    右10番のやぐらの奥壁には1段になった「がん」もある。

  • 右10番のやぐらの奥壁の「がん」。

    右10番のやぐらの奥壁の「がん」。

  • 右10番のやぐらの左奥壁角。

    右10番のやぐらの左奥壁角。

  • 右10番のやぐらの奥壁左角。2段になった「がん」は奥壁と左側壁では高さが異なっている。

    右10番のやぐらの奥壁左角。2段になった「がん」は奥壁と左側壁では高さが異なっている。

  • 右10番のやぐらの奥壁左角。

    右10番のやぐらの奥壁左角。

  • 右10番のやぐらの左側壁の2段になった「がん」。

    右10番のやぐらの左側壁の2段になった「がん」。

  • 右10番のやぐらの左側壁の2段になった「がん」。2段目の「がん」が小さく造られている。

    右10番のやぐらの左側壁の2段になった「がん」。2段目の「がん」が小さく造られている。

  • 右10番のやぐらの左側壁入口辺りの「がん」。1段になっている。

    右10番のやぐらの左側壁入口辺りの「がん」。1段になっている。

  • 右10番のやぐらの左側壁入口の「がん」。1段になっている。

    右10番のやぐらの左側壁入口の「がん」。1段になっている。

  • 西側崖に残る東林寺跡やぐら群。

    西側崖に残る東林寺跡やぐら群。

  • 西側崖と南側崖の角辺りに残る東林寺跡やぐら群。

    西側崖と南側崖の角辺りに残る東林寺跡やぐら群。

  • 東林寺跡やぐら群がある浄光明寺墓地にある石祠。

    東林寺跡やぐら群がある浄光明寺墓地にある石祠。

  • 西側崖に残る東林寺跡やぐら群。

    西側崖に残る東林寺跡やぐら群。

  • 東林寺跡やぐら群がある浄光明寺墓地にある銀杏の木。廃寺跡であることが実感できる。

    東林寺跡やぐら群がある浄光明寺墓地にある銀杏の木。廃寺跡であることが実感できる。

  • 南側崖面。やぐらがほとんど見られないが、崩落してしまったのだろう。

    南側崖面。やぐらがほとんど見られないが、崩落してしまったのだろう。

  • 南側崖面。

    南側崖面。

  • 南側崖面。やぐら跡が見える。奥壁にあった「がん」の跡であろう。

    南側崖面。やぐら跡が見える。奥壁にあった「がん」の跡であろう。

  • 南側崖面。

    南側崖面。

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