2007/09/11 - 2007/09/11
14位(同エリア47件中)
ぶどう畑さん
2007.9.11(火)リューネブルガーハイデ、リューネブルク観光
リューネブルク発リューネブルガーハイデのツアーに参加するため、ハンブルク中央駅から乗った電車は、リューネブルクに停まらないICEでした。
ツアーは、リューネブルクに住んでいる、会社の後輩のイトコのAさんが予約してくれ、駅に迎えに来てくれることになっていたのにどうしよう…。
とにかく、列車の中からAさんに連絡。ハノファーからリューネブルクへ引き返すと、信じられないことに、ツアーに途中から参加できるとのこと。合流地点まで車で送ってもらい、あこがれのエリカの里へ行くことができました!
ツアーに戻ってきてから、リューネブルクを案内してもらい、ビールの醸造機のある店で夕飯を食べ、ハンブルクに戻ってきました。
奇跡の1日でした!
(旅行期間:2007年9月8日〜9月16日)
- 交通手段
- 鉄道 観光バス
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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7時少し前、起床。今日はリューネブルクから出発するツアーに参加して、エリカの草原を見る日。何が何でも、ハンブルク中央駅8:28発の電車に乗らねばならぬ。
わかっているのに、時差ボケに観光の疲れが加わり、頭にカスミがかかっているよう。サクサク行動できない。リューネブルクに行きさえすれば、あとはツアー任せなのも緊張感を削いでいる。 -
朝ごはんを途中で切り上げ、焦って地下鉄に乗り、8:10、ハンブルク南駅到着。通勤客に混じって小走りに階段を上がり、中央駅のチケットセンターへ。
切符を簡単に買えると踏んだのが甘かった。いくつも並ぶ機械の前に立ったけれど、操作がわから〜ん!近くにいたバイトのオニイサンに声をかける。
「予約をしてあるんですか?」「いいえ。」「行き先は?」発音が悪いのか、リューネブルクを聞き取ってもらえず、自分で駅名のアルファベットを押す。電車の一覧が出て、8:28のICを選ぶとA4サイズのプリントアウトが出てきた。オニイサン、紙をつかんで別の機械に移り、なにやら操作。11ユーロの表示が出る。お金を入れ、ようやくチケットが手元に。
難しすぎるー!紙は要らなくなってクシャクシャ。もっと簡単に切符を買える機械、あるんじゃないの…? -
まだ、10分近くある。少し気持ちに余裕。番線を確認しようと通路脇の小さいディスプレイを見るが、なぜか見つけられず、再び焦る。
そうだ、黄色い時刻表を見ればいいんだ。ハンブルク中央駅を発着する全列車の書かれているポスターのような時刻表でチェック。あった!
急いでホームへ降りると、もう入線していた。乗り込んだ車両は結構混んでいるうえ、ほとんどの座席に予約の表示。ハノーファーから先が予約されている席をどうにか見つけて座る。 -
すぐに列車は発車。ホッとしながら眺める窓の外、港近くの倉庫街が現れた。
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その向こうには教会の尖塔。わーい!思いがけなくて、嬉しくなる。頭の上は青空。エリカ・ツアーにぴったりのお天気に、ルンルン気分が盛り上がってきた時、車内放送が入った。
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「この列車はICEです。次の停車駅はハノーファーです。」えぇぇ!ICじゃなくて、ICE??次はハノーファー???リューネブルクに止まらない…。違う列車に乗ってしまった…。どーしよー。
聞き間違いじゃないよね。自動ドアの外のディスプレイを確認に行くが、次の停車駅はハノーファーで、9:38到着の表示。リューネブルクへ戻ったとして、10時のツアーには間に合わない。ガ〜〜〜ン! -
リューネブルガー・ハイデに興味を持ったのは、何年か前、ガイドブックのコラム記事を読んだのがきっかけ。“一面のエリカ”という記述に惹かれた。
リューネブルクのページに紹介されていたため、リューネブルクへ行けばエリカを見れると思い込んでいたが、改めて読み返せば、ハイデは交通の便が悪い場所にあり、ツアーかタクシーを利用するのがよいと書いてある。
ツアーはドイツ語だろうし、行くならタクシーかな。軽く考え、情報収集を始めたものの、肝心の、エリカの咲いている場所がわからない。それが一番大きな問題として立ちふさがってきた。
リューネブルガー・ハイデと呼ばれている場所はかつて森だったが、塩を採るために木が切り出され、荒野になってエリカ(ヒース)が生えたとのこと。環境保護地域に指定され、車の乗り入れは禁止。馬車で周るのが観光の目玉になっているらしい。
一体それはどこ?なぜ地名が書いてないの?環境保護地域にタクシーで行けるの?行けたとして、帰りはどうしたらいいの?せめて運転手さんに「どこどこへお願いします」と言える情報が欲しい。花の時期になったら、リュネーブルガー・ハイデ観光局のホームページにアクセス方法が掲載されるだろうと待っていた。 -
会社の後輩に旅行の予定を話すと、リューネブルクに住んでいるイトコのAさんが6月末に一時帰国するので、ハイデのことを聞いてくれることになった。グッド・タイミング!
Aさんは最近、副業にガイドの仕事を始め、ハイデに行ったことがあるそうだ。そりゃあ、心強いと頼りにしていたが、後輩からほとんど話が出来なかったと連絡が来る。
なんとかしなくちゃ…。あちこちの観光局にメール。まず、ハンブルク観光局から返事が来て、リューネブルガー・ハイデか、ウンデローの観光局に聞いてくださいとURLを教えてくれた。
ウンデロー?初めて聞く地名。早速、ホームページにアクセスして驚いた。なんと、茅葺き屋根のホテルが載っている。泊まりたい!夕暮れ、朝もやのエリカの草原って素敵だろうなぁ。興味津々である一方、ドイツ語しか通じなかったら…。躊躇する。それにどうやって行くの?ホームページには、車での行き方しか書かれていなかった。
リューネブルク観光局は、リューネブルク発の土曜日のツアーを勧めてくれたけれど、滞在中の土曜日は、到着日と帰国日。ダメだぁ…。リューネブルガー・ハイデ観光からは返事なし。 -
インターネットでひたすら情報収集するうち、少しずつ、少しずつ、ハイデについてわかってくる。一面のエリカが見られる場所は1ヶ所でなく、リューネブルガー・ハイデと呼ばれる広〜い地域の中に点在しているようだ。
見つけた旅行記には、リューネブルクからバスで40分の“アメリングハウゼン”でエリカを見たとあった。公共の交通機関を利用して行けるんだ!
検索を続け、ハイデへの入口となる村はいくつかあり、そのなかでも、観光的に最も開けているのがウンデローという情報を掴む。
ウンデローから“ヴィルゼーデ”なる場所へ往復馬車が頻繁に出ていて、ヴィルゼーデにはカフェやショップもあり、かわいらしいハイデ羊のぬいぐるみや、香りの良いエリカのハチミツも買えるらしい。 -
早速、グーグル・マップで場所を確認。航空写真に、草原の中、ウンデローとヴィルゼーデをつなぐ一本道が見えた。雲間から日が差して来たぞ!
ドイツ国鉄の時刻表検索で、出発地をハンブルク、到着地をウンデローと入力すると、バスの停留所“ウンデロー・オルトミッテ”が出てきた。ドイツ国鉄って頼りになる!
ウンデロー観光局のホームーページはドイツ語のみだったが、ヴィルゼーデへ行くにはこのバス停で下車すればいいのか英語で問い合わせてみる。
しばらくして、とても暖かい返信メールを受け取った。メールには、オルトミッテで下車すること、9:55に観光局の前からヴィルゼーデ行きの乗り合い馬車が出ることが書かれていた。ウンデロー・オルトミッテは、ハンブルクから電車とバスを乗り継いで1時間程度。安価な乗合馬車を利用して、自力でエリカを満喫できる! -
ハイデでの宿泊はいろいろ考えて見送ったが、リューネブルガー・ハイデに行くことがとても楽しみになっていった。
そんな時、ドイツに帰ったAさんから、「9/11にリューネブルクのホテルが催行するツアーがあるので、申し込むかどうか聞いて欲しい」というメールが後輩に届いた。
ツアーの行き先はアメリングハウゼンで、馬車に乗って観光するそうだ。用事があって、その日は同行できないが、たいした説明もないのでひとりで参加しても大丈夫でしょう、とのこと。
ウンデローとアメリングハウゼン、両方のエリカを見たい!ひとりはちょっと不安ながら、面識のないAさんに1日中付き合ってもらうのも悪いし、気兼ねなく写真も撮りたい。申し込んでもらった。
当日の朝、駅に迎えに来てくれ、出発まで付き合ってくれるというお言葉に甘え、電車の時間を知らせておいたのに、こんなことになるなんて…。 -
とにかく、Aさんに連絡しなくちゃ。席を立ち、通路に出て電話する。「おはようございます!」何も知らないAさんの明るい声。あぁ、言い出しにくい。「あの…、すっごいドジしちゃって…、ICEに乗っちゃったんです。」「えっ?」電話の向こうで絶句してる。
「次の停車駅はハノーファーで、着くのが9:38なんです。」「…ハノーファーからリューネブルクまで1時間かかるから、ツアーには間に合わないですね…。」「もう、どーしよー。大変申し訳ないのですが、キャンセルの連絡していただけますか。今日はリューネブルクを観光するか、自力でアメリングハウゼンへ行こうと思います。途中からツアーに合流するのは無理ですよね。」
するとAさん、怒りもせずに「リューネブルクへ戻ってきます?なんだったら、ハノーファーを観光しちゃえば。」提案してくれるが、ハノーファーは、1年前の10月に観光したばかり。それにツアー代金を払わなければ。戻ることを伝えると、「とにかく連絡してみますね。9時5分頃、もう一度電話ください。」となった。
はぁぁぁ。スイスではホームを間違えたしなぁ、慣れも良し悪しだなぁ。落ち込んでいるところに検札。ギクッ!持ってるのは、ハンブルク〜リューネブルクの切符だ。不審に思われる前に「リューネブルクへ行かなければならないのに、別の電車に乗ってしまったんです。」言いながら切符を見せる。
「次の停車駅はハノーファーで、リューネブルクには止まりません。」と言う車掌さんの胸の機械を指し、ずうずうしくも「戻りの電車の時刻を調べてもらえませんか。」お願いする。その言葉にあきれたのか、ハノーファーで聞いて、と行ってしまった。ICEの追加料金も、リューネブルク〜ハノーファー間の運賃も取らずに。 -
あ、9時過ぎてる。電話しなくちゃ。ところが携帯がつながらない。何度やってもダメ。操作は間違っていない。圏外に入ってしまった。Aさん、かかってくるのを待ってるだろう。またまた、どーしよー。
もしかして、新幹線のように専用電話があったりするかな。コーヒーを売りに来たオニイサンに、電話をかけたいと言うと、充電できる場所を聞かれたと勘違いしているよう。
携帯を見せ、つながらないことを訴えると、「この辺は電波の状態が不安定だから、ボクの携帯もつながらないこと多いよ。ハノーファーに着いたらつながるんじゃない?」言われてみれば、回りは畑だの、林だから当然。Aさんのほうがドイツ事情詳しいんだし、わかってくれるだろう。
オニイサン、「久しぶりに英語しゃべって緊張しちゃったよ。」なんて言ってるが、上手な英語だった。“お仕事邪魔してゴメンナサイ”の意味を込め、コーヒーを買った。
気がつけば、近くにいる人達は英語をしゃべっている。私と車掌さん、車内販売のオニイサンとのやり取りを耳ダンボにして聞いてただろう。ヤダなぁ。ため息をつきつつ、コーヒーを飲んだ。 -
ハノーファーにだいぶ近づいた頃、やっと携帯がつながった。「今どこですか?」「もうすぐハノーファーです。」「ツアーを催行しているホテルに電話したら、バスは集合場所へ向かった後で、ドライバーさんと直接話してくれってことなんです。まだ連絡取れてないんですが、とにかくハノーファー9:59のICに乗ってください。10:58に着きますので、駅で待ってます。」「お時間は大丈夫なんですか?」「用事は午後だから大丈夫ですよー。」言ってくれるけど、なんだか申し訳ない。
ハノーファーに遅れることなく到着。ホッ。去年利用した駅は勝手知ったるもの。まず、お詫びの紅茶を買う。それから切符。リューネブルクまで24ユーロもした。 -
戻りのICは定刻どおりにやってきた。何度もホームの表示を確かめ、乗りこんでからもう一度車内のディスプレイを確認。間違いない。
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20分ほどで、木組みの街並みが可愛いというツェレに停車。その次は、変わった駅舎のウェルツェン。ちょっとガウディっぽいデザインのエレベーターもあった。
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ありがたいことに、この電車も遅れることなく、10:58、リューネブルク到着。
恥ずかしくてあわせる顔がない…。伏し目がちに出口へ向かうと、「こんにちはー!」Aさんが迎えてくれた。後輩に似てる。
「本当に済みません…。」「いいえー、ドライバーさんと連絡が取れて、ツアーに合流できることになったんですよ!」「えっ?」奇跡のような展開なのだが、あまりにも予想外で言葉が出ない。最初に電話した観光局の対応がトンチンカンだったことを聞きながら、駅の外へ向かう。
合流できるといっても、アメリングハウゼン行きのバスはすぐにあるのだろうか?言い出す前に、駅前に止めていた車へ案内された。 -
車をスイスイと運転するAさんから、「ドライバーさんがとってもいい人で、せっかくだからって言ってくれて。リューネブルクの郊外に湖があるんですが、11時半にその湖近くの駐車場で落ち合うことになりました。」こうなった経緯を聞いても実感がわかず、通り一遍の返事しかできないのがもどかしい。
「今日はアメリングハウゼンじゃなくて、ウンデローへ行くんですって。11時半まで、アチコチの村に寄って、時間を調整してくれるみたいです。」ほかのツアー客に迷惑かけてないかな。心が痛む。
おしゃべりしているうち、「ツアーは17時にリューネブルクへ戻ってくるんですが、よければお食事どうですか?」言ってくれる。後輩経由でツアーの申し込みができたと連絡をくれた時もお誘いくださったが、気を使わせているようで申し訳なく、その時はお断りした。でも実際に会って、心から言ってくれていることがわかり、喜んでOKの返事をした。
「えーと、ここかな。」時計を見れば、11時半。「あ、アレじゃないですか?」駐車場に1台のワゴン車。脇にピンクのセーターを着た女性が立っていた。その人がドライバーさんだった。
みなさんをお待たせしているから、モタモタしてはいられない。キツネにつままれた気分のまま、車に乗り込んだ。「ツアー代金、彼女に払ってくださいねー。では17時に。」「は〜い、行ってきまーす!」 -
車には、前の座席にご夫婦、隣に女性2人連れ、後ろに男性1人と女性2人の8人が乗っていた。みんな、とってもいい人で、遅れた私を暖かく迎え入れてくれた。
走り出してほどなく、アメリングハウゼンを通過する。ドライバーさんは私のために慣れない英語で村の説明をしてくれ、アメリングハウゼンのエリカが終わってしまったため、行き先がウンデローになったとも言っていたような。
駐車場を出てから10分、田舎道に車が停まる。 -
エリカの里へ行く前に、磁器工房を見学。
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建物に入ると、エリカの花が描かれたお皿やカップ、素敵な陶器がたくさん並んでいた!
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奥の作業所では女性が絵づけ中。
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窓の外には草原が広がり、こんな所で仕事が出来るなんてうらやましい限り。
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ドライバーさんはまったく買い物を勧めないので、思わず、「ここで買ってもいいんですか?」聞いてしまう。ウンデローにも工房の品を置いている店があるとのことで、買い物は見送る。
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再び車に乗り込み、青空の下をひた走る。
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12:20、ウンデローのWitte’s Hotel に到着。
「集合は13:20です。お昼はホテルのレストランでどうぞ。」言われたが、ランチ代は含まれていないんだよね。ドライバーさんに確認していると、夫婦連れのご主人が、「ランチ代は含まれていません。よかったら一緒にどうですか。」申し出てくれた。 -
料理が出てくるまで、少し会話。ご夫婦はフランクフルトの近くに住んでいて、リューネブルクに車で来たそうだ。昨日はハンブルクのハーゲンベック動物園へ行ったという。柵のない、ユニークな動物園らしい。
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明るい陽射しの中、テーブル近くのアジサイや、ホテル前の小さい噴水を眺めながらの食事は気持ちがよい。
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注文した豚肉のソテーのプフィッファリンゲ添えは適度な大きさだったが、付け合せのグリンピースとニンジン、ご飯代わりのジャガイモはすごい量!
メニューには羊の料理もあった。値段が高く、量が多かったらと豚肉のソテーにしたけれど、後日、「エリカとともに有名なハイデの羊の肉だったのでは?しまった、羊にすればよかった」と後悔する。その一方でなんとなく気がとがめ、「食べなくてよかった」と思ったり。 -
13:20、ホテルからすぐ近くの広場へ移動。ツアーを催行したリューネブルクのホテル“ミュンヒェナリン”は、もう1台ワゴン車を出していた。
停まっていた2台馬車に、ツアー客がすでに乗り込んで、空いてる席に座るしかなかったが、ラッキーにも一番前が空いていた。 -
御者さんは女性。二の腕のたくましいこと!
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13:30、広場を出発。
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ウンデローには茅葺きの家がたくさんあった。観光局のページに、茅葺き屋根のホテルを見つけた時にはとても驚いたが、ウンデローへ来る途中、通過した村々でも茅葺きの家を見かけ、ドイツの田舎ではそれほど珍しいものではないのかも、って気がだんだんしてくる。
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規模の大きい茅葺きホテル“ウンデローホフ”の前を通り、しばらくすると舗装道路は終わる。
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昨日の雨の影響で、ぬかるみがひどい場所もあった。
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行き交う馬車が道を譲り合って進むうち、ちらほらと濃いピンクの花が現れだす。エリカだ!
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道の先に緩やかな上り坂が見えて、御者さんが馬車にスピードをつける。つけた勢いで傾斜を駆け上がるためだ。なにせ、乗っているのは体格の良い方ばかり。2頭の馬では“荷”が重過ぎ?
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坂を上ると、左側に草原が広がっていた。そこは一面のエリカ!!想像をはるかに超え、エリカの咲く草原は広い。遠くまで広がるピンクの先にはベージュの部分もあるけれど、またその先にピンクが、といった具合。
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これがリューネブルガー・ハイデのほんの一部だなんて、全体の広さはどのくらいなのだろう…。やめよう、考えたってわかるもんじゃない。目の前の景色をありのままに受け止め、ひたすら感動に浸る。
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ちょっとだけ残念なのは、道端のエリカが盛りを過ぎてしまったように見えること。花の時期は8〜9月。2日前の9月9日、「エリカの女王」を選ぶイベントが開催されたばかりだから、時期をはずしたってことはないと思うけど。
花の見頃ってヤツは、本当に難しい。山梨に桃を見に行けば、梅が盛りだったり、吉野桜を見に行けば、“一目千本”が“一目三本”だったり、プロヴァンスにラベンダーを見に行けば、一面紫になるはずの畑がまだ青々としていたり。花を目的にした旅は、なぜかツイてない。 -
ヴィルゼーデへ続く道には、徒歩の人、自転車の人もいる。みんな一様に、馬車に向かって微笑みかけたり、手を振ってくれたりする。行き交う馬車の人たちも、笑顔、笑顔。一面のエリカがみんなの心を和ませている。
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隣のオバサンは、とても気のいい人だった。左手の草原を撮ろうとすると、大きな体をよけてくれる。「写真が好きなので。」と言うと「私もよ!」でも、カメラは持っていない。
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そのうち唄を口ずさみ始めた。リューネブルガー・ハイデの歌だった。物語になっているのか、何番もあって、歌が途切れそうになると、オバサンがみんなを先導する。歌詞はうろ覚えでも、誰もが知っている唄のようだ。
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やがて、右側にも一面ピンクの草原が見えてきた。青空に浮かぶ白い雲もいい感じ!馬車を降りて、この景色の中を歩きたーーーい!
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とその時、視界に中に、馬のお尻からポコポコと出てくるモノが…。走りながらの排泄に妙に感心。一番前の席は景色がよく見える反面、ぬかるみを走る時、泥が飛んでくるデメリットも。そして、排泄はこの1回だけでなく、ウンデローに戻る間、何度も目撃することに。馬には便秘ってものがないのだろうか。うらやましい。
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ほどなく、林の中にあるヴィルゼーデへ入って行く。
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(羊小屋)
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宿泊を検討した茅葺き屋根のホテル“ヴィルゼーダーホフ”は、とても大きかった。もっと素朴なホテルなのかと思っていたが、かなり観光客向け。
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道を進むにつれ、ヴィルゼーデはその昔、集落として機能していたことがわかる。
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かつての村役場など、古い建物が点在し、そこを見学できるらしい。
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またまた、馬車を降りて散策したーーーい!思っているのに、村の中心部を通り過ぎていく。
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林の中を抜けると、ついさっきまでまぶしかった青空が消え、曇り空に変わっていた。
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気温も急に下がり、上着を羽織る。
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右手遠くにピンク色の丘が見えてきた辺りに、大きな木が生える林があった。
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御者さんの説明はドイツ語で、ほとんど理解できないものの、塩を採るためリューネブルガー・ハイデの木は切り出されてしまい、古い木が残っている場所は少ないと言っているようだった。かつて広大な森だった場所が荒野になってしまったことに複雑な思いが走る。
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とはいえ、その結果生まれたエリカの草原は魅力的。
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遠くのピンクがだんだん近づいて、その中に緑の木立が点在する様子がすごーくいい感じ。
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絵になる景色をもっと近くで見たーーーい!お願い、ちょっとでいいから馬車を停めて!
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その願いもむなしく、馬車は左へと曲がり、丘から遠ざかっていった。
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木立の中にミツバチの巣箱が並ぶ所を過ぎ、往きに通ったウンデローとヴィルゼーデを結ぶ道にぶつかる。
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天気はだいぶ怪しくなり、幌をつける馬車も出てくる。すっかり冷え込んで、寒くてガタガタしてるのに、御者さんは半袖。鍛え方が違う。
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歩いている人も少なくなった道を走り、15時、ウンデローの広場に到着。1時間半も馬車に乗っていたとは思えないほど、あっという間だった。大満足のエリカ・ツアー!
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15時から16時は自由行動。
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エリカを近くで見れないだろうか。一生懸命、村はずれを目指したが、ウンデローホフまで来て、時間的に無理と断念。
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村の中心へと戻りながら、村の様子をカメラに収めている間に時間はどんどん過ぎていく。
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おみやげも買いたいし、焦るー!
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ようやく、エリカの花柄の陶器を置く店にたどり着き、買ったフォークは工房のほうが安かった。
レジの所でハイデ羊の人形を見つけ、店員さんに羊に出会えなかったと言うと、昼間は色んな場所へ行っているから当たり前、夕方には小屋に戻るけれど、と笑って教えてくれた。そうだったのか、悲しい…。 -
ウンデロー観光局の場所は確認できず、馬車に乗った広場に戻る。
もう全員がそろっていた。そんな気がして早めに戻ってきてよかった。馬車で隣だったオバサンは、ホテル・ミュンヒェナリンのもう一台の車でやってきた人だった。「ここでお別れよ。」肩をたたいて挨拶してくれた。 -
私たちの車はお店に数軒寄ってから、リューネブルクへ向かうそうだ。どの村へ行くのだろうと喜んで車に乗り込んだら、走り出してすぐ、羊飼いの人形があった店の前に停まる。車に乗るほどでもない距離。また車に乗って、今度こそと思ったら、ウンデローホフ近くの広場に停まる。買い物はウンデローでってこと…?
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広場には、ハイデ産のお墨付きハチミツを売る屋台が出ていた。売っている時から白っぽく、容器もかなり大きい。やめておこう。と購入を見送った私は大バカ者。香りのないエリカの花から採れたとはにわかに信じがたいほど、ホントーに香りの良いハチミツだったのだ。この事実を知った時には地団駄踏んだ。
これでショッピングは終わり。近くの店に行った人をピック・アップして、リューネブルクへまっしぐら。
途中、隣の席のオバサンがハイデのハチミツ飴をくれたので、「どこから来たんですか?」聞いてみる。ベルリンに近い、サンスーシ宮殿で有名なポツダムから来たとのこと。ポツダムはいつか訪れたい場所のひとつ。ちょっと親近感。 -
往きとは打って変わり、どんより曇った空のもと、田舎道をひた走る。いくつかの村を通過して、17時、リューネブルクの市庁舎前の広場に到着。
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「お帰りなさい!」Aさんの元気な声に迎えられる。
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そして、「疲れていなければ、食事の前に少し街を案内する」というお言葉にまたまた甘える。
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市庁舎前の広場から、今はホテルになっている製粉所の前を通ってイルメナウ川の堰の上に架かる赤いゼラニウムで飾られた橋に出る。
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古い建物が並ぶ、向こう岸の景色がとても素敵。
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橋の近くではテレビドラマのロケが行なわれていた。ドラマのストーリーはイマイチだけど、リューネブルクを訪れる観光客が増え、木組の街並みが可愛い“ツェレ”をしのいだ、と話すAさんはとても嬉しそう。リューネブルクが好きなんだなぁ。
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川に置かれた色とりどりの魚のオブジェは、キャンペーンの一環とのこと。今、街のいたる所でオブジェを見ることができるそうだ。
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ロケ隊の脇を抜け、木造の古いクレーンの所へ出ると、クレーンにも魚が下がっていた。オブジェは結構な値段がする芸術品で、先日、ひとつ盗まれたとか。
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堰から見た古い建物が並ぶ前、川に張り出して作られたカフェでお茶にする。寒くないよう、お店の人が電熱をつけてくれた。
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カフェは、旧製粉所の建物や古いクレーンを眺められる抜群のロケーション。
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川面に近いため、オブジェもよく見えた。
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夕飯を食べるのが遅くなってはいけないと、腰を上げ、市内観光を再開。
カフェを出た所にロケ隊が移り、別の道を通って下さいと言われる。 -
リューネブルクの建物の特徴は、階段状になっている破風とドーナツ型の丸いレンガの飾り。
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Aさんの説明を聞きながら路地を歩いて行くと、立派な建物に囲まれたアムザンデ広場に出た。
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大きな広場に面する館にも、リューネブルクの特徴を持つものが多く見られた。段状破風は、フランドル地方独特のものかと思ってたけど、ドイツにもあるんだ。ドイツの家も地域によって特徴が違って面白い。
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ガイドブックの記述によると、リューネブルクは地下水を汲みあげ過ぎたせいで、地盤沈下が起きているそうだ。沈下の影響は建物にも出て、歪んだ段状破風もあった。
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広場近くの大きな教会、バッハが演奏したという聖ヨハニス教会は改築中で見学はできないが、その向こうに見える給水塔は、リューネブルクの街を見渡せるお薦めスポットとの説明に、また来ることがあれば、ぜひ、登ってみようと思う。
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これで観光は終わりにして、美味しいビールの飲める店で夕飯にするはずだったが、地盤沈下に興味を示した私のため、傾いた家並みが見れる旧市街を案内してくれることになった。ツアーだと、アムザンデ広場までがせいぜい。旧市街まで行けないと聞けば、なおさらありがたい。
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にぎやかな所をはずれ、ロータリーのようになった小さい広場に出た時、緩やかな坂の下で、タクシーと自転車の接触事故があった。その坂も地盤沈下のせいと聞いて、びっくりする。
塩の通りを意味する“ザルツシュトラッセ”を歩くうち、民家の屋根に面白いモノを発見!「あそこにブタの風見鶏が。」言ってから、リューネブルクに所縁のあるイノシシに違いないと気づく。 -
塩が採れるとわかったのは、森から出てきた塩まみれのイノシシがきっかけのようだが、塩とハイデの因果関係がイマイチわからない。イノシシの逃げ込んだというのがハイデの森で、木を切り倒して塩を採取したのか?それとも、木は塩の精製のために燃料として使ったのか?ずっとモヤモヤしてた。
「塩はリューネブルガー・ハイデで採れたんですか?」聞いてみる。「ハイデで塩は採れないですよ。」「じゃあ、リューネブルグで採れた塩を精製するため、ハイデの木を燃料に使ったんですね。」「そのとおりです。」モヤモヤが解けた! -
市庁舎の庭にイノシシの像があるというので庭を覗く。1200年頃に建てられた部分があるリューネブルクの市庁舎は、ドイツの現役の市庁舎の中では一番古いそうだ。
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その近くの交差点から先が旧市街だった。傾いた家がたくさんあるという路地に入って行こうとした時、19時を知らせる鐘が鳴った。割れるのを避けるため、冬は鳴らさないマイセン焼きの市庁舎のカリヨンの音色は、良い響きとは言えず…。
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旧市街の路地は、意外にも木組みの家が並ぶ素敵な所。高所得者が住んでいるように見受けられた。“傾いた家並み”の響きから、貧相なイメージを描いていたが、まったく違った。
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でも、よく見れば、木組みは傾いている。地盤沈下はいまだ止まらず、家のメンテナンスにお金がかかるらしい。
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そこでまた疑問が生まれる。「なぜ、地盤沈下するほど地下水を汲み上げたんですか?」「それはですねー、リューネブルクの街の下に岩塩の層があって、塩が溶け込んだ地下水を汲み上げて精製してたんですって。」そうだったのかぁ!地盤沈下のナゾもこれで氷解。
「だけど、どうして岩塩の層から直接採らなかったんだろう。」「でしょー。ガイドの勉強をしてる時、不思議に思って先生に聞きました。でも、返事は“どうしてかなぁ”だったんです。」 -
リューネブルクは、今でも突然地面に穴があき、地下水が湧き出るそうで、おいしい水も有名であると知る。だからビールも醸造するんだ。あれ、その地下水って塩水じゃないよね?この疑問はまだ解けていない。
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19:15、よく来るという、アムザンデ広場近くの“メルツァー”に入る。銅製のビール醸造釜が並ぶ店だった。
店は混んでいたが、階段の上の席が空いていた。「ここでビールを造ってるんですけど、日本料理のほうがよかったかしら?」「とんでもない、すっごく嬉しいです!ひとり旅だと、こういうとこ入りにくいから。」「よかった!そう思ったのでご案内しました。」
座った席から醸造釜を見下ろすことができ、男の人が釜のフタを開けて中をかき回すと、ちょっと不思議な香りが漂ってきた。こうした作業を目にするのも初めて。 -
生地の薄いのドイツ風ピザ“フランメル・クーヘン”、タマネギのキッシュのような“ツヴィーベル・クーヘン”、お酒が強くない私向きの少し甘いレモン風味のビール“アルスター・ヴァッサー”(アルスターの水の意)を注文。まずはビールで乾杯!
ところが、料理がなかなか出てこなかった。夜のひとり歩きは危ないからと、8:26の電車に乗るよう考えてくれているのに、やっと運ばれてきた頃には、電車の時間も近づいて、少し手をつけただけでタイムアップ。
こんなに残してもったいない。「包んでもらいましょうか?」言ってくれるけど、きっと時間がかかる。「あ、そうだ!こういう時のために…。」ビニール袋を取り出す。用意がいいことに驚かれながら、ドギーバックを作った。
市立劇場の裏口に停めた車の所まで行き、駅まで送ってもらう。駅では、切符の買い方を教わった。
リューネブルクの駅の券売機は2つあり、1つは朝、チケットセンターのオニイサンが操作してくれた機械と同じ。もう1つはHVVの表示があるSバーンや地下鉄の券売機と同じ形で、リューネブルクはこの機械で買うほうが簡単とのこと。DBの窓口で切符を売ってくれなかったのは、ドイツ国鉄のシステムが変わったせいらしい。
売店で、リューネブルクの塩を置いていないか聞いてくれたけれど、リューネブルクのミネラルウォーターしかなかった。残念…。 -
Aさんに見送られ、2階建てのメトロノームでハンブルクへ向かう。本当に、本当に、お世話になりました!
2階の席から暗くなってきた窓の外を眺めながら、今日、エリカを見ることができたのは、叔母が見守ってくれたからではないだろうか?ぼんやり考えていた。
親戚の中で一番の元気者、旅行が大好きだった叔母が春に他界した。千の風になってしまった叔母に北ドイツを見せてあげたい。そんな想いから、この旅行に、デンマークで買ってきてくれた、ヴァイオリンをかたどった金色のカバン用の飾りを携えてきた。
病気にならなかったら、もっともっと旅行に行けたのに…。叔母のことを思い出すたび、いつもやりきれない気持ちになる。だからすぐに別のことを考える。Aさんとの楽しい時間を振り返り、会話を反芻する。
明るさが少しだけ残る西の空にハンブルクの教会のシルエットが浮かび上がり、21時、中央駅に到着。地下鉄をシュテファンプラッツで降り、21:20にはホテル到着。
フランメル・クーヘンとツヴィーベル・クーヘンを冷蔵庫に入れようとカバンから出した途端、フッといい匂いが漂った。急にお腹がすいて、明日になったらおいしくなくなる、今、食べちゃえ!フランメル・クーヘンは全部平らげてしまった。
お風呂に入って23時半就寝。奇跡の1日だった。
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この旅行記へのコメント (2)
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- bergkristerさん 2012/05/31 11:45:06
- 野の花の美しいこと!
- ぶどう畑さま
確り拝見しました。ミシュランGremany/Northwest1:350,000の地図と、トマス.クックの鉄道時刻表を見ながら、ご一緒に楽しい旅をさせていただきました。旅程をこれだけはっきりとお書きいただくのは、あまり例を見ないだけに改めて御礼と感謝を申し上げます。
馬車での登山とはすばらしい。
途中で歌われた歌は ”Auf der Lueneburger Heide" でしょうか。
”Velleri, vellera, und Juchheirassa, und juchheirassa---"
楽しいですね。小生、ドイツの民謡が大好きです。
ミシュラン・グリーンによれば眺望がすばらしいとされるWilseder Berg ではあいにく天候がよくなかったのは残念でしたね。
Gute Reise !
bergkrister
- ぶどう畑さん からの返信 2012/05/31 20:55:34
- RE: 野の花の美しいこと!
- bergkristerさま
旅行記を見てくださってありがとうございました!
馬車には乗りましたが、登山ではありません。
ほとんど平坦で、途中一ヶ所、すこしだけ上り坂があっただけです。
ドイツの民謡はトント不案内なのでわかりませんが、なんとなく、ハイデの歴史が歌われているような気がしました。
またいつか、エリカの里に行ける日を夢見ています。
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