１０９日間ユーラシア大陸横断　第５部　音楽・歴史の巻（Musik,Geschichte） その５　壁の消えたベルリン編ほか

1990/09/19 - 1990/09/24

　９月19日～20日　Ｂｅｒｌｉｎ
　やって来ました。ベルリン！　フランクフルトは国境なのでポーランドから来る列車は車内の入国審査が終わって乗車する手順。何とか乗り込んで（持っていたチケットでは乗れないらしく、車掌に10DM要求された）列車が走り出すと、車内のあちこちで椅子の下やコンパートメントの上のネジを外してゴソゴソ。大部分がポーランド人の運び屋だったのです。

エリア ベルリン(ドイツ)

• 旅行の満足度: 5.0

旧東ベルリンのアレクサンダー広場に行けば、このようにして運び込まれたタバコなどを持っている人がズラリ。

　ブランデンブルク門は化粧直しの最中。くぐるのが夢だったのですが…。周辺には壁もほとんど無く、壁、ＤＤＲ、ソ連軍グッズを売っている露店がいっぱい。

ブランデンブルク門 建造物

　その後旧友のＴさんのお宅（嬉しいことに親戚の砂布巾英夫ご一家から寄せ書きが届いていた）にお邪魔させて頂き、３日間お世話になることになった。ご主人のフリッツさん、奥さんのヤスコさん、長男の一家３人で1986年７月に広島へ来られた時以来の再会だ。来夏には一家で来日されるとか。今からとても楽しみだ。
　20日にはスパイ小説の舞台ともなった検問所チェックポイントチャーリー近くの壁博物館にも行ってみた。卒業旅行以来２回目だ。前回と違ったのは勿論1989年11月９日の壁の崩壊の様子が詳しく展示されていたこと。ドキュメンタリー風の70分のビデオが流されておりずっと見ていたけど、あの時の驚き、感激、そして信じられない気持ちが蘇り目頭が熱くなった。

チェックポイントチャーリー 散歩・街歩き

　ドイツ統一の日まであと２週間を切ったけど、首都となるベルリンでも祝福ムードのようなものは感じられない。日本だと例えば‘統一まであと○日’といった垂れ幕が見られると思うのですが…。壁が崩壊した時点で統一は時間の問題と思われていましたし、実質的な統一は７月の通貨統合の時点で出来ていたのですから、特にＢＲＤの人の間には、これからが大変だといった思いが強いからではないかと思います。実際、両国民の意識のギャップやＤＤＲ経済の立て直しなど、難問は山積です。でも彼らはきっと乗り切ってくれるでしょう。
＊壁の空き地　遠方がブランデンブルク門

　最後にベルリンの交通機関について少し。ベルリンでは２DM払えば２時間以内であれば地下鉄でもバスでも何度でも乗ることができる。これは便利だ。

　　９月21日　　ポツダム　Ｐｏｔｓｄａｍ
　ベルリン郊外ポツダムを訪れた。卒業旅行の時に半日バスツアーで西ベルリンから訪れていたけど、歴史の転換期に当たる今、もう１度訪れてみたいと思ったからだ。ツェツィーリエンホーフ宮殿でのトルーマン、チャーチル（選挙敗北で途中交替）、スターリンの会談によってソ連の対日参戦やドイツの分割占領が決められ、1945年７月26日のポツダム宣言を拒否したことで原爆投下がなされたのだから、ここには戦後のドイツと日本の出発点がある。
　残念だったのは、制約もありながら４年前には建物の中を一周出来たと思ったのだが、最初の写真が展示されている部屋と何に使われたのかよく分からない次の部屋しか見られなかった。不親切だ。
　最初の部屋には国別の大戦の死者数の一覧もあった。犠牲者の数ではソ連が圧倒的だが、人口に対する割合では２割以上を失ったポーランドが圧倒的。中国の一千万にも驚く。当時中国は1937年７月の蘆溝橋事件をきっかけとする日中戦争の最中。日本はその後フランスの敗北（40年６月　ドイツに降伏）を機にフランス領北部インドシナに進駐し、後の太平洋戦争（41年12月）への道を歩むことになる。進駐とほぼ同時期に日独伊三国同盟を締結しドイツへの依存を一層強めたが、実はヒトラーはアジア人である日本人を軽蔑していた、と言われている。

サンスーシー宮殿 城・宮殿

　日本は原爆の被害者であることは訴えてもアジアの加害者であることは忘れがちだ。もちろん原爆投下は許されるものではない。ベルリンにはかつての強制収容所が列挙され「決して忘れてはならない」と書かれた看板があった。ヤスコさんから聞いた‘ドイツでは今でも週１回はＴＶでヒトラーがいかに酷いことをしてきたかが放映されている’も印象的だった。ブラウンシュヴァイクに寄った時のニールスがそうだったように、学校での平和学習による訪問も盛んだ。

　ここにはバッハと親交があるなど音楽愛好家としても知られるプロシアのフリードリッヒ大王（在位1740〜86）が造営したサンスーシー宮殿もある。ヴェルサイユを見本とした割に宮殿は大したことはないが、庭園が素晴らしく広大。

　９月22日　宗教改革発祥の地、ヴィッテンベルク　Ｗｉｔｔｅｎｂｅｒｇ
　16世紀に宗教改革を始めたマルチン・ルターゆかりの町ヴィッテンベルクを訪れた。
　彼はヴィッテンベルク大学教授だったが、ローマ教会の腐敗に疑問を抱き、1517年宮廷教会の扉に「95ヶ条の意見書」を張り出し、

以後ヨーロッパを宗教改革の嵐が吹き荒れた。皇帝の説得にもルターは自説を曲げなかったので、彼は法律の保護の外に置かれ、前述のザクセン公の保護の下ヴァルトブルクで新約聖書のドイツ語訳など執筆活動など行なった。宮廷教会でルターは永遠の眠りについている。ゆかりの扉は復元されたものだそうだ。修道院には、彼の部屋や服、指輪も残されていた。
　小生は別にカトリックでもルター派（プロテスタント）でもないから特別な感慨がある訳ではないけど、腐敗した巨大な権力に対して敢然と立ち向かった、その勇気と行動力は賞賛されるべきだと思った。
　宿泊はマクデブルク。明日の移動が容易なため。ユーゲント・ツーリスト・ホテルは駅から歩いて５分。ディスコまである豪華版だが、値段は31DM。ＪＴＨと名が付くと、最低30DMは覚悟しておかなければならないようだ。今度こそユーレイルパスも通用するようになるだろうから今後は観光客も大幅に増加するだろうが、受入態勢の整備がこれからのＤＤＲの課題だ。

９月23日　　Ｂｒａｕｎｓｃｈｗｅｉｇに帰って来る
　朝は歩いて５分のドーム広場へ行ってみる。ここの教会はドイツ初のゴシック様式だそうだ。今年３月のＤＤＲの総選挙の際には、終盤この地を訪れたＢＲＤのコール首相（当時は統一前だったから隣の国の首相が選挙運動を行ったことになる）が東西マルクの等価交換を約束して、選挙はドイツ連合の勝利に終わったのは記憶に新しい。奇しくも、そのコール首相が17時にやって来るとのポスターが貼ってあった。
　マクデブルクからブラウンシュヴァイクまでは急行で１時間半で23.8DM。ベルリン～ヴィッテンベルク～マクデブルクが急行で３時間半、20.8DMだったので、東西をまたぐ場合はやはり高い。駅では愛想のない駅員に‘ブラウンシュヴァイクは外国だ’と言われた。
　到着してフィッシャーさん宅に電話したら、ヴィープケさんが迎えに来てくれた。‘26日にフランクフルトから出発です’と言ったら‘じゃあ３日泊まりなさい’と言って下さった。そこまで甘えても良いのかという思いも過ぎったけど、手持ちの現金が100DMしか残っていないし、そうさせてもらうことにしよう。

９月24日　Ｍｏｎｉｋａが再び下駄を履いてやって来た
　夕方はモニカが例の下駄を履いてやって来た。‘寒くないの？’と聞いたら‘寒い’と言った。だったらちゃんと靴を履いたら良いのに！
　前回家に泊めてもらった恋人ハンスも一緒に３人で改築中の彼女の新しい家を訪れて、食事に行く。彼女の故郷のハンガリー料理が食べたかったのだが、場所が分からず結局中華料理になった。２人は焼ソバしか食べなかったのに、サラダとライス付のホットプレート料理にビールまで飲んで悪かったかな？

＊旅行の時に買った「ベルリンの壁」。長いこと倉庫に眠っていたけど、今日久しぶりに出してみた。値段は15ドイツ・マルクは当時のレートで\1,500。もしかしたらその辺の建築現場で拾ったものかも知れないけど。