Pakistan　短編映画シリーズ②　他人の庭は自分の庭

2006/08/05 - 2006/10/04

まさかお向かいの空き地を舞台にした短編映画を
シリーズにすることになるとは思いませんでした（笑）

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エリア カラチ(パキスタン)

おや？
こんどは若者達が中にはいっていくぞ。

いとも軽々と乗り越えて

何か引き抜いてます。

そういえば雨季になってから
角っこにトーモロコシみたいな植物がワサワサ
生い茂ってたのよね。

根っこのまま

あらかた収穫した

「まだ残ってるよ。」
「またくりゃいいさ。もっと伸びてから」

彼の顔の真下あたりには
白いバスタブがふたつ転がっている。
え？どうして知ってるのかって？
へへへ。

彼らはここに種をまいたのでしょうか？
それともたまたま捨てられてた
穀物が発芽したのでしょうか？

そうだとしてもここは人の土地のはず。

そこで私は遠い昔を思い出す。

インドネシアのマカッサル（スラウェシ島）に住んでいた時のこと。
私達は庭付きの一軒家を借りて住んでいました。
我が家は角家で、そこはベチャ（足こぎトゥクトゥク）のたまり場でした。
フェンスが低く裏門は開けっ放しだったので庭の水道栓は彼らの使い放題。

え？
なぜ彼らを締め出さなかったのかって？
当然私はムカついて門を閉めましたよ。
でも塀が低いからいくらでも入ってこられる。

たまりかねて知り合いの女医さんに相談したら
「うちも同じ。
でもあまりきついこと言うとどんな嫌がらせされるかわからないし。
まあ、お互い様だから。」

そう。
私がベチャに乗ってもボラれることは全くないし
重い荷物も運んでくれるし。
そのうち私は彼らの存在をむしろ楽しむようになっていました。
丁寧に石鹸ぬりたくってシャツを洗濯する様子を家の中から眺めたりして。
何度もなんどもすすぎ洗いして冷たい水の感触を楽しんでる。

常連の中に胡麻塩頭のじーさんがいました。
誰もがオラン・トゥア（じーさん）と呼ぶ。
毎日リヤカーでやってきて
オートバイ相手にビン入りのガソリン売ったり
ベチャのタイヤ修理をしてます。
我が家の裏門前で。

それはいいんですけどね
板切れやガソリン入りのビンを
我が家の寝室のすぐ裏手の椰子の茂みにつっこんで帰るのよね。
これって結構恐ろしいと思いません？

「もって帰ってよ。ぜ～～んぶ。」
「へいへい。」
でも一週間もするとまたどっかに隠してる。
「もって帰ってよ。ぜ～～んぶ。」
「へいへい。」

我が家のお庭にはバナナの木がありました。
たわわに実ってきた大きな房。
もうすぐ収穫だと楽しみにしてたら盗まれてしまいました。
「誰が盗ったのかしら？」
「オラン・トゥアだよ。」
「じゃあ返してって言ってよ。」
驚いたことに本当にオラン・トゥアが返しにきたのです。
そのバナナは今までに食べたことがないほど美味しいバナナでした。
甘酸っぱくて珍しいことに黒い丸い種が何個かはいってるのです。
種ありバナナなんて初めて！

「どうしてオラン・トゥアは盗ったのかしら？」
「もしかして彼がバナナを植えたのかも。そうだよきっと！」
多くのベチャの運転手は田舎からの出稼ぎです。
乾季になると作物が育たないので。
その田舎では家のまわりに柵などないし
空いてる土地を利用させてもらう、利用させてあげる、なんて
当たり前のことなのかも。

ある時、着たきりスズメのオラン・トゥアを気の毒に思って
夫のお古のＴシャツやらワイシャツをあげました。
無地やストライプの。
「えっ？！」
とおどろくオラン・トゥア。
次の日、彼はいつもと違う「格子柄の」シャツを着てきました。
その翌日にはまた別の「格子柄の」シャツ。

あーははは。
彼はほんとは金持ちだったりして。
「こんなものもらっちゃったよ。」
「やーねーおじーちゃん。毎日おんなじシャツ着ていくもんだから。」

ある日バリ旅行から戻ってみると
お庭の茂みにパイナップルが植わっている！
ま～～たやってくれたわねっ！

ところが
毎日小雨の降り続くうす寒い日、オラン・トゥアの姿がない。
「死んだよ。3日間咳きこんだっきりで。」
その時に感じた喪失感を私は今でも忘れない。

ところで作業は着々と

いっぱい働いて汗かいた

脱いじゃお

これでぜんぶだね

食料にするのかな？
それともロバの好物？

葉を見るとトーモロコシみたいなので
モロコシかと思ったけど穂の形が違う。
ガマみたいなんだけど
粟みたいなツブツブがある。

何でしょうか？
　　　↑
カラチ在住のめんたいこさんからメールをいただきました。
「がまの穂？みたいのは、こちらで、バージラと言われていて
鳥のえさになります。
このバージラを、粉にしたもの
アガスーパーで売られていたりするので、人間も食べるのだと思います、
が、、、にんげん用だったら、実の部分だけ刈り取ればいい訳で、、
たぶん家畜用にお持ち帰りだったのだとおもいます。」

この旅行記へのコメント （8）

• kokonoさん 2008/06/22 08:18:07

  オラン・トゥア

  ひさしぶりに"トンガラシ映画館"へ短編映画を観に来ましたよっ
  なかなかの上出来っ　映写機は時折、電線みたいなものも写すけど・・
  インドネシアのストーリーが活きている　ハクシュ喝采
  
  泣かせるねぇ〜　バナナとパイナップル　移植物語は♪
  このシナリオに清き１票を進呈します
  
  涙に弱い kokono よりです
  
  

  唐辛子婆さん からの返信 2008/06/22 21:24:53

  RE: オラン・トゥア

  kokonoさん
  
  お久しぶりです、こんばんは♪
  
  短編映画館とカラチの工芸士に投票くださってありがとうございました。
  
  短編映画は3篇で終了です。
  3篇目のタイトルはなんだったかな？
  あまりに沢山の旅行記をつくりすぎて何がなんだかどれがどんだか。
  家を建て増しするヤツです。（なんと無責任な紹介の仕方）
  どうぞご覧くださいね。
  
  「けばトラシリーズ」の方も早く完成させたいとどんどんアップしてたら
  未分類画像がでてきてガックシきているところです。
  
  カラチの治安がよくなって「けばトラを見る（またはトラックにペイントする）」ツアーができないかなー、と夢見る唐辛子婆でっす。
  
  
  

• kyokosa-nさん 2008/06/17 18:08:44

  実況放送のようで

  唐辛子婆さん
  こんにちは。お久しぶりです。
  　動画を見せていただいたようで楽しかった。
  映像に良く撮られましたねー。コメントも楽しい。
  お国柄？を心得た上で楽しんでおられる様子に
  一票です。
  辛口のコメントが心地よいです。
  短編シリーズ?も?も動画の世界で遊ばせてもらいました。
  またお訪ねしますね。
  　　　　　　　　　　　　　　kyo-ko

  唐辛子婆さん からの返信 2008/06/18 22:00:16

  RE: 実況放送のようで

  kyokosa-n、こんばんは
  
  すっかりご無沙汰してしまいました。
  昆明編におじゃましたいと思いながらこのところ忙しくて
  ４トラのお友達をお邪魔することが極端に少なくなって
  このままじゃ忘れられてしまうかもと心配してました。
  
  7月半ばになればもう少し時間があくと思うんですけどね。
  
  > 映像に良く撮られましたねー。
  
  あ、いえいえ映像に撮ったわけじゃなくて
  定点観測的に撮ったので短編映画と称しただけですぅ（笑）
  
  >コメントも楽しい。
  > お国柄？を心得た上で楽しんでおられる様子に
  > 一票です。
  
  まいどおおきに！
  
  今日はカラチから一時帰国中のお友達二人に会うことが出来て
  久しぶりに盛り上がりました。
  まだまだ未アップの画像が沢山なので
  ぼつぼつ整理してアップしていきたいと思っています。
  気長にお待ちくださいね。
  
  

• kokonoさん 2006/11/04 21:25:15

  お邪魔します

  久しぶりに、覗いてみたら　楽しい裏窓が再開しているではありませんか
  うれしくて　コメントしたくなりました
  
  まず最初に疑問なんです
  どうして、裏窓からのぞけるんですかぁー
  
  相手に悟られませんかぁー　
  昼日中に　太陽が輝いているのに・・
  
  でも、こちらで覗いても面白いです
  なんというかぁ　好奇心が沸いてくる感じがします
  
  楽しみはじっくりと味わいたいのほうなので　ゆっくりと拝見します。
  
  kokono

  唐辛子婆さん からの返信 2006/11/05 16:13:12

  RE: お邪魔します

  kokonoさんおひさしぶりです。
  
  いらしてくださってありがとうございます。
  
  >まず最初に疑問なんです
  >どうして、裏窓からのぞけるんですかぁー
  >相手に悟られませんかぁー　
  >昼日中に　太陽が輝いているのに・・
  
  ３階の表窓のカーテンの陰から撮っているので大丈夫です。
  窓を開けると目立つのでガラスごしです。
  カラチは砂埃がきつくて
  雨が降らないときでも窓ガラスが汚れます。
  なのでカメラの前の窓の部分は４日おきに拭いてもらってます。
  
  >楽しみはじっくりと味わいたいのほうなので　ゆっくりと拝見します。
  
  どうぞごゆっくり。
  
  　　〜唐辛子婆〜
  
  

• sunnyさん 2006/10/25 23:46:37

  短編小説

  唐辛子婆さん、こんにちは！
  
  短編小説１と２、ハラハラしながら写真拝見しました。
  １の爺さんの怪力ぶりにギョッ、２では塀を次々に登る彼らに目がぽぽーん！日本じゃ即、警察へ連行モノです？
  
  先日北京の妹が、丸々と太ったブタの散歩させているガリガリやせ細ったおじいさんの写真を送ってくれて･･･!!でした。
  
  いやあ、まだまだ知らない国が、風習がたくさん、世界は奥が深いです。
  
  ちょうど今、帰国されてるんですね。
  喧騒の中から日本へやってくると成田空港の「先進国の静寂」に非常に違和感を感じます。
  
  シリーズ３、も楽しみにしています。
  
  sunny321
  

  唐辛子婆さん からの返信 2006/10/27 00:45:38

  RE: 短編小説

  sunny321さん こんばんは！
  
  おひさしぶりですね。
  民族衣装のショウ楽しませていただきました。
  一票でっす。
  
  >短編小説１と２、ハラハラしながら写真拝見しました。
  >１の爺さんの怪力ぶりにギョッ、
  
  そうですね。
  じーさんが家に帰るまでに荷崩れおこさないか、
  途中で休みたくならないかとハラハラしました。
  一度座り込んだが最後、自力では立ち上がれないんですからね。
  
  >先日北京の妹が、丸々と太ったブタの散歩させているガリガリやせ細ったお>じいさんの写真を送ってくれて･･･!!でした。
  
  面白そう！
  妹さんは北京にいらっしゃるのですか？
  
  >シリーズ３、も楽しみにしています。
  
  今度行ったらセーターを着るぐらいの涼しさだそうです。
  あの空き地でどんなことが起きるのか楽しみです。
  ＰＳ　もしかして短編映画に投票してくださった？
  　　　ありがとうございます！
  
  　　〜唐辛子婆〜