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 神奈川県中郡大磯町高麗2にある高麗寺慶覚院は天台宗のお寺で鶏足山雲上院別当高麗寺慶覚院という。鶏は旧字を当てている。高麗寺の子院として慶長18年(1613年)に創建された。元は北下町にあったが、明治23年(1890年)8月に大磯町南下町に大火があり、現在地にあった地蔵堂に移った。そのために、檀家の墓地は境内にはない。<br /> 高麗山(標高168m)山頂には高来(たかく)神社(上の宮)があり、その麓に高来神社(下の宮)がある。古くは高麗権現社または高麗神社といい、このあたりを高麗村といった。丘陵部には横穴墓がたいへん多く残っている(大磯町には善福寺横穴墓群、前谷原北横穴墓群、王城山横穴墓群、後谷原南横穴墓群、楊谷寺谷戸横穴墓群がある)。また、高麗という地名からもわかるように、古代には朝鮮からの渡来系の人々が多く住んだところである。現住職は秦良淳氏であり、秦氏は記紀の応神紀にみえる朝鮮からきた弓月君(融通王)を始祖をとする氏族集団である。<br /> 江戸時代までは高麗山山頂とその麓に高麗権現社があり、その別当寺として高麗(こま)寺が中腹の登山路脇にあった。元々高麗寺は行基が養老元年(717年)に創建し、千手観音を本地仏と定め、神仏習合の聖地となっていた。<br /> 明治初年の神仏分離・廃仏毀釈で高麗寺は廃寺となったが、観音堂本尊の千手観音像(高麗権現本地仏)と地蔵堂本尊の地蔵菩薩像(建治4年(1278 年)銘。鎌倉扇ヶ谷在住の法橋勘解由仏師作像)は慶覚院に伝来している。<br /> 慶覚院はもと大磯駅の南の方にあり、高麗寺の子院であったらしい。近代に火事にあい、現在地すなわち高来神社のすぐ斜め前で、もと高麗寺の地蔵堂のあった場所に移転してきた。本尊の千手観音像は旧高麗寺観音堂本尊で、12年に一度、子(ねずみ)年の春に開帳される秘仏であり、普段は前立ち観音と両脇侍が屋根を取り払った厨子の前に立つ。次回の開帳は平成32年(2020年)(東京オリンピックの年)の予定である。<br /> 山門の仁王像は江戸初期の仏像で、廃寺となった高麗寺のものである。<br /> この山門と本堂は平成19年(2007年)に地蔵堂を建替えて完成し、翌年に竣工(落慶法要)した。本堂は間口8間の広さで、欅の丸柱はとても太く、12寸あるという。よくも平成になってこれほどの木材を集められたものだ。<br /> 本堂の向かって左には大きな地蔵菩薩坐像(4尺9寸の半丈六仏)がおいでになる。2007年から2008年にかけて修理が行われ、その際に後補の金箔を取り去って旧に戻した。また、両脇の像も色を落として旧に戻している。1体の微笑みを浮かべたお顔ともう1体のひょうきんなお顔は見ていると微笑ましい。<br /> 本堂の向かって右には天海大僧正像を中心に、不動尊像、白山大権現像、毘沙門天像などが並んでいる。天海大僧正が住職を務めた川越・喜多院、新田郷世良多・長楽寺などには像が伝来しているが、そうではないこの寺に像が残されているのは上野・寛永寺との交流が深かったからだという。<br /> 秘仏である本尊を除けば、伽藍の中でこれほど間近かに多くの素晴らしい仏像を拝める寺は国内でもそうはない。本堂で住職夫妻と話が弾み、結果5時間もお邪魔してしまった。<br /> 大磯宿の探索に出掛けた私であるが、国指定重要文化財のお坊さんの木像(伝了源坐像(寺伝では親鸞聖人像))と横穴墓(横穴古墳)がある善福寺と、国指定重要文化財になるであろう地蔵菩薩像等がある高麗寺慶覚院と、たった2寺を廻っただけで1日が暮れてしまった。大磯、恐るべし。<br />(表紙写真は高麗寺慶覚院本堂)

高麗寺慶覚院

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2015/08/24 - 2015/08/24

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ドクターキムル

ドクターキムルさん

 神奈川県中郡大磯町高麗2にある高麗寺慶覚院は天台宗のお寺で鶏足山雲上院別当高麗寺慶覚院という。鶏は旧字を当てている。高麗寺の子院として慶長18年(1613年)に創建された。元は北下町にあったが、明治23年(1890年)8月に大磯町南下町に大火があり、現在地にあった地蔵堂に移った。そのために、檀家の墓地は境内にはない。
 高麗山(標高168m)山頂には高来(たかく)神社(上の宮)があり、その麓に高来神社(下の宮)がある。古くは高麗権現社または高麗神社といい、このあたりを高麗村といった。丘陵部には横穴墓がたいへん多く残っている(大磯町には善福寺横穴墓群、前谷原北横穴墓群、王城山横穴墓群、後谷原南横穴墓群、楊谷寺谷戸横穴墓群がある)。また、高麗という地名からもわかるように、古代には朝鮮からの渡来系の人々が多く住んだところである。現住職は秦良淳氏であり、秦氏は記紀の応神紀にみえる朝鮮からきた弓月君(融通王)を始祖をとする氏族集団である。
 江戸時代までは高麗山山頂とその麓に高麗権現社があり、その別当寺として高麗(こま)寺が中腹の登山路脇にあった。元々高麗寺は行基が養老元年(717年)に創建し、千手観音を本地仏と定め、神仏習合の聖地となっていた。
 明治初年の神仏分離・廃仏毀釈で高麗寺は廃寺となったが、観音堂本尊の千手観音像(高麗権現本地仏)と地蔵堂本尊の地蔵菩薩像(建治4年(1278 年)銘。鎌倉扇ヶ谷在住の法橋勘解由仏師作像)は慶覚院に伝来している。
 慶覚院はもと大磯駅の南の方にあり、高麗寺の子院であったらしい。近代に火事にあい、現在地すなわち高来神社のすぐ斜め前で、もと高麗寺の地蔵堂のあった場所に移転してきた。本尊の千手観音像は旧高麗寺観音堂本尊で、12年に一度、子(ねずみ)年の春に開帳される秘仏であり、普段は前立ち観音と両脇侍が屋根を取り払った厨子の前に立つ。次回の開帳は平成32年(2020年)(東京オリンピックの年)の予定である。
 山門の仁王像は江戸初期の仏像で、廃寺となった高麗寺のものである。
 この山門と本堂は平成19年(2007年)に地蔵堂を建替えて完成し、翌年に竣工(落慶法要)した。本堂は間口8間の広さで、欅の丸柱はとても太く、12寸あるという。よくも平成になってこれほどの木材を集められたものだ。
 本堂の向かって左には大きな地蔵菩薩坐像(4尺9寸の半丈六仏)がおいでになる。2007年から2008年にかけて修理が行われ、その際に後補の金箔を取り去って旧に戻した。また、両脇の像も色を落として旧に戻している。1体の微笑みを浮かべたお顔ともう1体のひょうきんなお顔は見ていると微笑ましい。
 本堂の向かって右には天海大僧正像を中心に、不動尊像、白山大権現像、毘沙門天像などが並んでいる。天海大僧正が住職を務めた川越・喜多院、新田郷世良多・長楽寺などには像が伝来しているが、そうではないこの寺に像が残されているのは上野・寛永寺との交流が深かったからだという。
 秘仏である本尊を除けば、伽藍の中でこれほど間近かに多くの素晴らしい仏像を拝める寺は国内でもそうはない。本堂で住職夫妻と話が弾み、結果5時間もお邪魔してしまった。
 大磯宿の探索に出掛けた私であるが、国指定重要文化財のお坊さんの木像(伝了源坐像(寺伝では親鸞聖人像))と横穴墓(横穴古墳)がある善福寺と、国指定重要文化財になるであろう地蔵菩薩像等がある高麗寺慶覚院と、たった2寺を廻っただけで1日が暮れてしまった。大磯、恐るべし。
(表紙写真は高麗寺慶覚院本堂)

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  • 高麗寺慶覚院山門。<br /><br />門前に寺号標石が建っていない。

    高麗寺慶覚院山門。

    門前に寺号標石が建っていない。

  • 山門には仁王さまが。

    山門には仁王さまが。

  • 山門には仁王さまが。

    山門には仁王さまが。

  • 山門には仁王さまが。

    山門には仁王さまが。

  • 山門扉の寺紋。

    山門扉の寺紋。

  • 高麗寺慶覚院山門(境内側から)。

    高麗寺慶覚院山門(境内側から)。

  • 高麗寺慶覚院本堂前には回向柱。

    高麗寺慶覚院本堂前には回向柱。

  • 高麗寺慶覚院本堂前の境内の端にはサルスベリの花。

    高麗寺慶覚院本堂前の境内の端にはサルスベリの花。

  • 鐘楼。

    鐘楼。

  • 鐘楼。

    鐘楼。

  • 鐘楼の梵鐘。<br />戦時中に金属供出し、昭和33年(1958年)の銘が入っている。

    鐘楼の梵鐘。
    戦時中に金属供出し、昭和33年(1958年)の銘が入っている。

  • 鐘楼の梵鐘。

    鐘楼の梵鐘。

  • 鐘楼の梵鐘。

    鐘楼の梵鐘。

  • 鐘楼の梵鐘。

    鐘楼の梵鐘。

  • 「開宗1200年慶讃大法会記念 道心の中に衣食あり 衣食の中に道心なし 本堂新築落慶 平成20年4月20日」碑。

    「開宗1200年慶讃大法会記念 道心の中に衣食あり 衣食の中に道心なし 本堂新築落慶 平成20年4月20日」碑。

  • 高麗寺慶覚院本堂。

    高麗寺慶覚院本堂。

  • 高麗寺慶覚院本堂。

    高麗寺慶覚院本堂。

  • 高麗寺慶覚院本堂に掛かる「鶏足山」の扁額。

    高麗寺慶覚院本堂に掛かる「鶏足山」の扁額。

  • 高麗寺慶覚院本堂向拝。

    高麗寺慶覚院本堂向拝。

  • 庫裡玄関。

    庫裡玄関。

  • 庫裡玄関に掛かる「天台宗別当高麗寺慶覚院」の看板。

    庫裡玄関に掛かる「天台宗別当高麗寺慶覚院」の看板。

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