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 「武家の古都・鎌倉」と銘打った鎌倉世界遺産の構成資産は、暫定リスト掲載時から今般の暫定版推薦書ではかなり変貌して来ているように思える。しかし、暫定リスト掲載から20年も経てば変貌するのは当たり前というほど、世界遺産のテーマや構成資産には普遍性が乏しいということはないはずだ。<br /> 2011年9月22日にユネスコ世界遺産センターへ推薦書を提出することに決定するまでの20年間は関連する国史跡を単に羅列しているのに過ぎない風にも見える。MAPに掲載されている「武士の神社信仰と鎌倉」と「鎌倉武士の仏教信仰」などのお題目はそうしたことの表れであろう。「鎌倉武士の仏教信仰」に対比するなら題目は「鎌倉武士の神社信仰」となるだろうし、「鎌倉武士」と「武士」は別のものなのか、統一されるべきものである。また、「鎌倉時代の寺院跡」に続くのが「武家の館跡」と「最古の築港跡」で、「鎌倉時代」が「最古」に代わり、「武士」も「武家」になっている。最後に「切通など」とあり「鎌倉時代」が消え、一升桝遺跡(非公開)をねじ込んでいる。MAPからも「鎌倉世界遺産登録推進協議会」がどれほどの成果を挙げてきたのかは想像に難くない。あるいは、単に構成・チェックができるほど訓練された人材が誰もいなかっただけかも知れない。<br /> 20年間は24構成資産で普遍だったようだが、暫定版推薦書では1から10の構成資産になっている。その区分方法は不明であるが、24構成資産が10構成資産に減った訳ではなく、これまであった一升桝遺跡を削除し、残りの23構成資産は残り、22項目(仏法寺跡が極楽寺に含まれるとし、2項目(重複)ある)になっている。しかし、良くみると、「朱垂木」、「百八」、「まんだら堂」の各やぐら群が新たに追加されて26構成資産に増えたようにも思える。他にも「鶴岡八幡宮(若宮大路、上宮、摂社若宮)」とあり、史跡に指定されている若宮大路と史跡に指定されている境内でも重要文化財に指定されている上宮、摂社若宮が記載され、丸山稲荷本殿(重文)は除かれている。また、「円覚寺(庭園、舎利殿)」とあり、境内が史跡に指定されている寺院でも名勝・史跡や重要文化財、国宝に指定された箇所(庭園や伽藍)に限定しているようにも見受けられるが、「寿福寺」や「浄光明寺」、「極楽寺」、「称名寺」は()がなく(、()内は「内包される記念工作物」とある)、この()の真意は正直なところは分かり兼ねるが、穿った見方をすれば、円覚寺では鉄筋コンクリート製の仏殿(本堂)は除外するということかも知れない。また、鎌倉中を中心として中世(鎌倉時代〜室町時代初期)に造営されたやぐらが20年以上掛かってようやくその特色に気付いてこれまでの構成資産にこれまたねじ込んだようにも思われる。やぐらややぐら群を吟味して記載されている様子は覗われないからだ。「朱垂木やぐら群」は建長寺塔頭裏山にあり、「百八やぐら群」は覚園寺裏山にあり、纏めるのには理があるが、「まんだら堂やぐら群」は名越切通に隣接しているために史跡として一括して指定されているが、街道と墓地が一緒というのは違和感を禁じ得ない。<br /> 永福寺跡の公園化工事が始まり、盛り土されてススキのない平地に整地され出した。京都・宇治平等院を見て、平泉・毛越寺を見て、さらに横浜金沢・称名寺を見て、もう1箇所あるという永福寺跡に駆けつけた時に、どのように思うであろうか。平泉を参考にして世界遺産登録を目指すとする鎌倉も平泉の二の舞を踏む(誤用であるが)ことは確実であり、2013年夏に落選(登録延期か)して、初めて鎌倉市民も落ちてしまったみっとも無さとその悔しさから真剣になって鎌倉の世界遺産登録を願うようになってようやく本当の鎌倉の世界遺産登録の推進運動が始まることになるのであろうか。<br />(表紙写真は天園ハイキングコースの十王岩から見た「武家の古都・鎌倉」) 

「武家の古都・鎌倉」(世界遺産の構成資産)

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2011/12/04 - 2011/12/04

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ドクターキムル

ドクターキムルさん

 「武家の古都・鎌倉」と銘打った鎌倉世界遺産の構成資産は、暫定リスト掲載時から今般の暫定版推薦書ではかなり変貌して来ているように思える。しかし、暫定リスト掲載から20年も経てば変貌するのは当たり前というほど、世界遺産のテーマや構成資産には普遍性が乏しいということはないはずだ。
 2011年9月22日にユネスコ世界遺産センターへ推薦書を提出することに決定するまでの20年間は関連する国史跡を単に羅列しているのに過ぎない風にも見える。MAPに掲載されている「武士の神社信仰と鎌倉」と「鎌倉武士の仏教信仰」などのお題目はそうしたことの表れであろう。「鎌倉武士の仏教信仰」に対比するなら題目は「鎌倉武士の神社信仰」となるだろうし、「鎌倉武士」と「武士」は別のものなのか、統一されるべきものである。また、「鎌倉時代の寺院跡」に続くのが「武家の館跡」と「最古の築港跡」で、「鎌倉時代」が「最古」に代わり、「武士」も「武家」になっている。最後に「切通など」とあり「鎌倉時代」が消え、一升桝遺跡(非公開)をねじ込んでいる。MAPからも「鎌倉世界遺産登録推進協議会」がどれほどの成果を挙げてきたのかは想像に難くない。あるいは、単に構成・チェックができるほど訓練された人材が誰もいなかっただけかも知れない。
 20年間は24構成資産で普遍だったようだが、暫定版推薦書では1から10の構成資産になっている。その区分方法は不明であるが、24構成資産が10構成資産に減った訳ではなく、これまであった一升桝遺跡を削除し、残りの23構成資産は残り、22項目(仏法寺跡が極楽寺に含まれるとし、2項目(重複)ある)になっている。しかし、良くみると、「朱垂木」、「百八」、「まんだら堂」の各やぐら群が新たに追加されて26構成資産に増えたようにも思える。他にも「鶴岡八幡宮(若宮大路、上宮、摂社若宮)」とあり、史跡に指定されている若宮大路と史跡に指定されている境内でも重要文化財に指定されている上宮、摂社若宮が記載され、丸山稲荷本殿(重文)は除かれている。また、「円覚寺(庭園、舎利殿)」とあり、境内が史跡に指定されている寺院でも名勝・史跡や重要文化財、国宝に指定された箇所(庭園や伽藍)に限定しているようにも見受けられるが、「寿福寺」や「浄光明寺」、「極楽寺」、「称名寺」は()がなく(、()内は「内包される記念工作物」とある)、この()の真意は正直なところは分かり兼ねるが、穿った見方をすれば、円覚寺では鉄筋コンクリート製の仏殿(本堂)は除外するということかも知れない。また、鎌倉中を中心として中世(鎌倉時代〜室町時代初期)に造営されたやぐらが20年以上掛かってようやくその特色に気付いてこれまでの構成資産にこれまたねじ込んだようにも思われる。やぐらややぐら群を吟味して記載されている様子は覗われないからだ。「朱垂木やぐら群」は建長寺塔頭裏山にあり、「百八やぐら群」は覚園寺裏山にあり、纏めるのには理があるが、「まんだら堂やぐら群」は名越切通に隣接しているために史跡として一括して指定されているが、街道と墓地が一緒というのは違和感を禁じ得ない。
 永福寺跡の公園化工事が始まり、盛り土されてススキのない平地に整地され出した。京都・宇治平等院を見て、平泉・毛越寺を見て、さらに横浜金沢・称名寺を見て、もう1箇所あるという永福寺跡に駆けつけた時に、どのように思うであろうか。平泉を参考にして世界遺産登録を目指すとする鎌倉も平泉の二の舞を踏む(誤用であるが)ことは確実であり、2013年夏に落選(登録延期か)して、初めて鎌倉市民も落ちてしまったみっとも無さとその悔しさから真剣になって鎌倉の世界遺産登録を願うようになってようやく本当の鎌倉の世界遺産登録の推進運動が始まることになるのであろうか。
(表紙写真は天園ハイキングコースの十王岩から見た「武家の古都・鎌倉」) 

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  • 天園ハイキングコースの十王岩から見た「武家の古都・鎌倉」。若宮大路が由比ガ浜まで一直線に延びる。

    天園ハイキングコースの十王岩から見た「武家の古都・鎌倉」。若宮大路が由比ガ浜まで一直線に延びる。

  • 「武家の古都・鎌倉MAP」(鎌倉世界遺産登録推進協議会、2009年3月)の構成資産一覧。古いバージョンのPOWER POINTにはGIFやJPEGに変換するプログラムが入っていないことに気が付いた。

    「武家の古都・鎌倉MAP」(鎌倉世界遺産登録推進協議会、2009年3月)の構成資産一覧。古いバージョンのPOWER POINTにはGIFやJPEGに変換するプログラムが入っていないことに気が付いた。

  • 「武家の古都・鎌倉」構成資産(案)一覧(2011年2月1日)。

    「武家の古都・鎌倉」構成資産(案)一覧(2011年2月1日)。

  • 「武家の古都・鎌倉」推薦書(暫定版)構成資産一覧(2011年9月22日)。2011年9月22日の報道発表内容(http://www.bunka.go.jp/ima/press_release/pdf/sekaibunkaisan_110922.pdf)が2011年12月1日になってようやくWeb(鎌倉世界遺産HP)に掲載されるのがいかにも鎌倉市(世界遺産登録推進担当)らしい。9月に鎌倉の10箇所を構成資産とすると報道されて新聞社と鎌倉市世界遺産登録推進担当に内容を確認したことがある。9月2日に受けた読売新聞社東京本社読者センターの回答では「現在のところ、10か所のうち、以下の5か所が発表になっています。鶴岡八幡宮、建長寺、鎌倉大仏、亀ヶ谷坂、円覚寺舎利殿」とあった。9月5日に受けた鎌倉市世界遺産登録推進担当からの回答ではこの21項目になっていた。<br />鎌倉市世界遺産登録推進担当にも私以外にも多くの人から問い合わせがあり、今回のWeb掲載になったものと思われる。読売新聞社東京本社読者センターの回答内容は間が抜けたものであるが、報道発表の20日前であり、正確な内容までは漏れ伝わってはいなかったのかも知れない。

    「武家の古都・鎌倉」推薦書(暫定版)構成資産一覧(2011年9月22日)。2011年9月22日の報道発表内容(http://www.bunka.go.jp/ima/press_release/pdf/sekaibunkaisan_110922.pdf)が2011年12月1日になってようやくWeb(鎌倉世界遺産HP)に掲載されるのがいかにも鎌倉市(世界遺産登録推進担当)らしい。9月に鎌倉の10箇所を構成資産とすると報道されて新聞社と鎌倉市世界遺産登録推進担当に内容を確認したことがある。9月2日に受けた読売新聞社東京本社読者センターの回答では「現在のところ、10か所のうち、以下の5か所が発表になっています。鶴岡八幡宮、建長寺、鎌倉大仏、亀ヶ谷坂、円覚寺舎利殿」とあった。9月5日に受けた鎌倉市世界遺産登録推進担当からの回答ではこの21項目になっていた。
    鎌倉市世界遺産登録推進担当にも私以外にも多くの人から問い合わせがあり、今回のWeb掲載になったものと思われる。読売新聞社東京本社読者センターの回答内容は間が抜けたものであるが、報道発表の20日前であり、正確な内容までは漏れ伝わってはいなかったのかも知れない。

  • 北鎌倉から見た富士山。報道発表の2項目目にある「富士山」は天気の良い日には鎌倉からも見える。こちらの構成資産は1〜25に纏められた33構成資産が列記されており、その多さに驚く。とても全構成資産に目を通す気にはなれなかった。

    北鎌倉から見た富士山。報道発表の2項目目にある「富士山」は天気の良い日には鎌倉からも見える。こちらの構成資産は1〜25に纏められた33構成資産が列記されており、その多さに驚く。とても全構成資産に目を通す気にはなれなかった。

  • ハイキングコースに案内看板や標識がないと言われている鎌倉にも禁煙看板は立っていた。最近はそれが樹脂ボードになった。ハイカーには世界遺産登録に向けた整備の一環であると思われている。<br />なお、白く塗られた柱の標識も平成になって立てられたものは叩くと金属音がし、木製ではなくなっていることが分かる。

    ハイキングコースに案内看板や標識がないと言われている鎌倉にも禁煙看板は立っていた。最近はそれが樹脂ボードになった。ハイカーには世界遺産登録に向けた整備の一環であると思われている。
    なお、白く塗られた柱の標識も平成になって立てられたものは叩くと金属音がし、木製ではなくなっていることが分かる。

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