2010/06/26 - 2012/09/07
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ヌールッディーンさん
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2010年の春に修復されたばかりの茨木家中出張番屋が一般公開されたので行って見ました。
地元の人たちが随分見に来ていたようです。中には昔、子どものころよくここに来ていたというおばあちゃんなどもいました。
この建物は茨木家の初代・茨木與八郎によって明治45年に建てられたものです。一般的な鰊番屋では親方家族と漁夫らの住むスペースが土間で区切られていますが、ここでは親方家族は別の本邸に住み、船頭などやや上級の労務者と漁夫らなど下級の労務者が使用していたそうです。
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漁夫らの居住場所。
寝床(「ネダイ」)は3層になっており、仕切りのないカプセルホテルくらいのスペースしかありません。【追記20120519;漁夫たちは壁側に頭を向けて寝ており、100人ほどが寝泊まりできたそうです。】
床は板張りで、天井に張り巡らされている木材は非常に太く、しっかりしたものですが、まっすぐには整えられていないなど、実用本位で作られている感じがします。
なお、窓が横に広いのは、日本の木造建築の西洋の組積造建築に対する特徴と言えます。 -
炊事用の設備や暖房設備もあり、この部分の上方には「煙出し」があります(外観では突き出した屋根に見えるところ)。
私は番屋建築であの突き出した屋根は何なのか疑問に思っていたのですが、今回初めて内部を見てガイドさんたちの話を聞いて、ようやく理解できました。 -
天井の煙出し。
この部分の意味が分かっただけでも、今回訪問してみてよかったと思います。 -
居室内にも煙出し用窓があります。
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煙出しを開ける時に使っていた紐。
天井の他にも窓の上などにいくつも煙出しの穴があり、それらを開閉するのに使っていたそうです。私が訪問した時には機能していませんでした。 -
小屋組は斜めに出た柱で天上を支える「トラス構造」になっています。
西洋風の建築技術(追記20120519;北海道にはアメリカから伝わったようです)で、小樽の木骨石造倉庫などもそうですが、柱を少なくして広い間口を取りたいときに使われた技術だそうです。
純粋な和風建築のように見えますが、西洋由来の技術も使われているのが「いかにも明治」という感じで興味深いところです。 -
板の間の全景。
トラス構造を採用することで柱の少ない広い空間が確保されています。
【追記20120519;柱の位置を中心からずらすことで人がいるスペースを広くとる工夫がなされています。
追記20120929;但し、この柱のズレは柱の部材の長さが足りなかったことが大きな原因と考えられます。この建物は他の建物で使われていた部材を再利用している箇所が多くあり、この柱もそうした箇所の一つかもしれません。】 -
板の間の板は取り外してその下が物置になっているそうです。
とことん合理性を追求している感じです。 -
入口から入ると土間がありますが、玄関の上と土間の上には隠し部屋のようなものがあるそうです。
それらの用途は不明なのですが、食事を作ったりする女性スタッフの部屋ではないかなどとも言われているそうです。そのうちの一つの入口。 -
土間から右側の部屋を見る。
靴を脱いで一段上がるのですが、その下の所が下駄箱になっているそうです。ガイドさんたちも知らなかったことを昔ここに出入りしていたというおばあちゃんが教えていました。 -
入口から右側は畳が敷かれた居室になっています。
今回の修復の前までは手前の部屋にも畳が敷かれており、修復の際に囲炉裏があったことが発見されたそうです。 -
この建物は明治45年に建てられたと考えられていますが、建材の一部は明治9年に建てられた建築に使われていたものを転用したらしいことが、今回の改修で判明したそうです。
その証拠とされるのが、この記述です。普通は見えない場所に隠されているようなので、普段は見せてもらえないものらしいです。ラッキーでした。 -
再利用された部材を活用している箇所の例(2012年9月追記)。
上の梁には戸が入るように溝がありますが、足元は戸とは無縁の床になっています。これは上の梁の部分が再利用されたものであることを物語っています。
(IMG0381) -
【追加20120519】
漁夫のスペースの天井が小屋組みが丸出しになっているのに対して、船頭などが利用していたスペースは天井が張られています。この方が冬なども寒さをしのぎやすく、待遇の違いが建物にも表れており興味深いです。
なお、鰊番屋は親方と漁夫が共同で使用するのが一般的でしたが、茨木家の場合は、すでに本邸が別にあるため、この建物は船頭クラスの労働者と漁夫が使っていたものであるため、上位者の側が通常の番屋と比べてややシンプルになっているそうです。 -
【追記20120929】
畳の間の上方の壁に謎の穴があいています。
ストーブの煙突を通すための穴のように見えますが、煙突の出口の穴はないので、専門家も用途を確定できていないらしいです。
まだまだ分からないことが多くあることも、この建築の面白いところかもしれません。
(IMG0382)
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