2025/11/30 - 2025/11/30
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たっくん&ゆうすけさん
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京都の友人K君が,当尾(とうの)の浄瑠璃寺(じょうるりじ)に秘仏『吉祥天女像(きちじょうてんにょぞう)』の開扉を見に行くというので,近鉄奈良駅で拾ってもらって車に便乗。浄瑠璃寺の拝観は,本堂堂内への入場のみ有料です。カネを払わなきゃ一歩も境内に入れないような,あるいは境内で非課税事業として茶房(喫茶店)を営んでいるような「ビジネス寺」とは大違い。浄瑠璃寺前の民間駐車場の料金は,1回300円でした。
浄瑠璃寺や岩船寺(がんせんじ)を含む「当尾の里」へのアクセスをまとめておきます。紅葉のシーズンでも比較的観光客は少なく,インバウンド客もあまり見かけない地域です(K君は,ホームのめっちゃ狭~い東山区の「東福寺駅」で,紅葉の時期に観光客がホームから溢れて線路に転落する事故が起こらないか,いつも心配(いや,期待?w)しています)。
[浄瑠璃寺へは奈良を起点とするのが便利]
京都なのに奈良? 浄瑠璃寺は,京都府 木津川市 加茂町にあります。最寄駅はJR関西本線の加茂駅。加茂駅までは,
■JR大阪駅から「大和路快速」で70分程度,
■JR京都駅から奈良線の「みやこ路快速」+木津で「大和路快速」に乗換えて60分程度,
■JR奈良駅からは「大和路快速」で14分程度です。
木津川市は京都府の一番南,奈良市は奈良県の一番北にあり,木津川市と奈良市は接していますから,浄瑠璃寺へ行くにも奈良を起点とするのが便利です。
★[加茂駅からは「木津川市コミュニティバス」で]
加茂駅東口から当尾の岩船寺や浄瑠璃寺前へ,通年で「木津川市コミュニティバス・当尾線」が運行されています。JR大和路快速に連絡する形で,毎日8往復程度。
★[奈良駅からは「木津川古寺巡礼バス」(季節運航)]
季節・曜日限定ですが,JRと近鉄の奈良駅から奈良交通による「お茶の京都 木津川古寺巡礼バス」があります。2025年秋の例では,10月11日(土)から12月7日(日)までの土日祝日に限り,1日5往復運行されました。
★[奈良駅からは「定期観光バス」も(季節運航)]
また,JRと近鉄の奈良駅から奈良交通の定期観光バス「岩船寺・浄瑠璃寺~当尾2ヶ寺秘仏めぐり~」もあります。直近の例では,2025年10月1日~12月12日の月・水・金曜日と2026年3月6日~27日の金曜日に運行されます。JR奈良駅14:30発,17:20頃着の午後からの3時間弱のコースです。
★[岩船寺~当尾石仏めぐり~浄瑠璃寺]
浄瑠璃寺と岩船寺の両方を訪ねる場合は,徒歩で「当尾の石仏巡り」をするのも一般的な観光コースです。
ルートにもよりますが,岩船寺から浄瑠璃寺まで2.0~2.4km,「一願不動・わらい仏・カラスの壷二尊・あたご灯籠・藪の中三尊磨崖仏」などを巡る40~50分の行程。全体として緩やかな下りとなる,岩船寺から浄瑠璃寺へ向かうルートがよいようです。
木津川市観光協会のHPから『当尾石仏map』をダウンロードすることができます。
https://www.0774.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2024/03/sekibutsumap2024.pdf
表紙写真は,苑池越しに望む『国宝・浄瑠璃寺本堂(九体寺本堂)』。23年前の前回訪問時(2002年2月23日)に撮影したものです。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.5
- グルメ
- 4.0
- ショッピング
- 4.0
- 同行者
- 友人
- 一人あたり費用
- 1万円未満
- 交通手段
- 私鉄 自家用車 徒歩
-
【真言律宗 小田原山 浄瑠璃寺】
京都南山城・当尾(とうの)の里は,平安時代には「小田原」と呼ばれ,南都(奈良)に近いことから興福寺の「別所」として仏教文化が花開きました(小田原別所)。浄瑠璃寺は,1047年に僧・義明(ぎみょう)により創建されたと伝えられます(西小田原寺,本尊は薬師如来)。
1107年には,現在の本堂である九体阿弥陀堂が造営されます。1150年には僧・恵心(えしん)が入寺して寺観を整えました。1157年には本堂を苑池(宝池)西岸の現在の場所に移築,1178年には三重塔が京都一条大宮より移されます(どの寺の塔であったかは不明)。
苑池を巡って,まずは三重塔に向かいましょう。写真左手の建物は鐘楼です。浄瑠璃寺 寺・神社・教会
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【国宝 浄瑠璃寺三重塔(九体寺三重塔)】
苑池の東に西面して建つ『国宝 浄瑠璃寺三重塔』。いかにも貴族好みの繊細な和様の塔は,播磨の『国宝 一乗寺三重塔』などとともに,平安後期における三重塔の優れた遺構です。
初重の内部には,剥落が激しいものの,極彩色で十六羅漢像が描かれています。『三重塔初重壁画(板絵著色)』として国の重要文化財に指定されています。浄瑠璃寺三重塔 祭り・イベント
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三重塔には,秘仏『重要文化財 木造薬師如来坐像』(平安時代)が祀られています。
[秘仏・薬師如来像の開扉日]
毎月8日 / 彼岸の中日(春分の日と秋分の日)
1月のみ1・2・3日と8・9・10日
(ただし好天に限る)
東方浄土(浄瑠璃浄土)の教主である薬師如来は,現世の苦悩を救うべく薬壺を持ち,私たちを西方浄土(極楽浄土)へと送り出してくれる遣送仏(けんそうぶつ)です。浄瑠璃寺三重塔 祭り・イベント
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薬師如来のおられる此岸(しがん)・東方浄土(浄瑠璃浄土)から,阿弥陀如来のおられる彼岸・西方浄土(極楽浄土)を望み,拝んでいます。
西方浄土(極楽浄土)の教主である阿弥陀如来は,私たちに死が訪れたとき,来世の理想郷へと迎え入れてくれる来迎仏(らいごうぶつ)です。
もし,池の向こうのお堂の板扉が開けられていれば,三重塔の下に立つ人々は,来迎する阿弥陀仏のお姿を直接(あるいは水面に映ったお姿を間接的に)目にすることができたでしょう。
1052年(釈迦入滅を紀元前949年とする説による)世は末法に入り(末法思想),人々は来世において極楽浄土に往生することを願うようになります。宇治には,阿弥陀堂である『国宝 平等院鳳凰堂』が建立されました。遠く国東半島の『国宝 富貴寺大堂』は,平安後期における阿弥陀堂建築の全国的分布を示す好例です。
https://4travel.jp/travelogue/11333899
人々は東(此岸)の薬師如来に現世の救済を願い,西(彼岸)の阿弥陀如来に来迎を願ったのです。浄瑠璃寺本堂 名所・史跡
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【国宝 浄瑠璃寺本堂(九体寺本堂)】
『国宝 浄瑠璃寺本堂』は前述のとおり,1157年に現在の場所である苑池の西岸に移築されました。
九体の阿弥陀仏像を一列に安置するための横長の平面をもつ「九体阿弥陀堂」は,平安時代後期に盛んに造営されましたが,浄瑠璃寺本堂は現存する唯一の遺構です。
正面11間・側面4間。当初は檜皮葺きであった屋根は,江戸時代初期に瓦葺きに改められています。浄瑠璃寺本堂 名所・史跡
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23年前,前回訪問時(2002年2月23日)に撮影した浄瑠璃寺本堂。
九体の阿弥陀如来のためにそれぞれひとつずつ板扉が設けられており,中央の中尊の連子窓は特に大きいことがわかります。お堂全体が,九体阿弥陀仏の厨子として作られているのです。浄瑠璃寺本堂 名所・史跡
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【国宝 木造阿弥陀如来坐像(本堂安置)】
本堂に安置される九体の阿弥陀如来座像。平安時代の九体阿弥陀仏として,堂とともに現存する唯一の遺例です(他には,江戸時代の作で,東京都世田谷区奥沢の「九品仏 浄真寺」の一例が存するのみ)。
https://kuhombutsu.jp/
横長の本堂には,
■周丈六(丈六(=約4.85m)の約4分の3)の中尊を挟んで,
■半丈六(丈六の2分の1)の如来像が左右に4体ずつ並びます。
また,
■中尊は右手を挙げ左手を下げる来迎印を結び,
■脇仏8体はすべて腹前で両手を組む弥陀定印を結んでいます。
向かって左端の像(南端の像,北9像)だけ,やや作風が異なり,12世紀末頃の補作とする説があります。
九体はそれぞれ,往生者の機根(精神的資質)に応じて「上品上生(じょうぼん・じょうしょう)」から「下品下生(げぼん・げしょう)」までの九品(くほん)に分けられる,極楽浄土での階位を表しているとも言われます。
ただし,このような解釈は,九体の阿弥陀仏がすべて印相を違えている「九品仏 浄真寺」の九体仏には合致するにしても,中尊以外の八体が同じ印を結んでいる浄瑠璃寺の九体仏には必ずしも妥当しない側面もあります(どの脇仏が,例えば「中品・中生」を体現しているのか,明らかではないからです)。浄瑠璃寺本堂 名所・史跡
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子どもたちが描いた阿弥陀仏・中尊(1)
本堂内には『国宝 木造四天王立像』(平安時代) のうち,持国天と増長天も安置されています(広目天は東京国立博物館,多聞天は京都国立博物館に寄託されています)。
面白いことに,多聞天以外の3像については,途中で像名が取り違えられている可能性があるということです。東京国立博物館に出ておられる現・広目天は,増長天と入れ替わっているとする説もあります。 -
地元の子どもたちが描いた阿弥陀仏・中尊(2)
中尊に向かって右横には『重要文化財 木造地蔵菩薩立像』(通称:子安地蔵菩薩像,平安時代)が安置されています。 -
秘仏『重要文化財 厨子入木造吉祥天立像(ずしいり・もくぞう・きちじょうてん・りゅうぞう)』
中尊の左横の厨子に納められた『吉祥天立像』。吉祥天は,豊かな暮らしと平和を授ける幸福の女神です。像高は 90cm,鎌倉時代の作(厨子絵は明治期に寺外(東京美術学校)へ流出,1976年に原本を復元模写したもの)。
[秘仏・吉祥天女像の開扉日]
1月 1日~ 1月15日
3月21日~ 5月20日
10月 1日~11月30日
K君は、もうすぐ受ける全身麻酔下での「前十字靭帯再建術」に怯えまくり,この吉祥天女に帰依することに決めたようですw
K君「ボクが全身麻酔から覚めへんかったらどーすんの?」
オレ「覚めへんようになってから言うて」浄瑠璃寺吉祥天女立像開扉 祭り・イベント
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【史跡・特別名勝 浄瑠璃寺庭園】
浄瑠璃寺庭園は,1150年に,興福寺の塔頭・一条院の門跡であった恵心(えしん)が入寺して寺観を整えるべく尽力したことに始まります(『重要文化財 浄瑠璃寺流記(るき)】(南北朝時代)の記述による)。
湧水の苑池を挟んで,
■東岸(此岸・現世・浄瑠璃浄土)には,薬師仏の三重塔が西面して建ち,
■西岸(彼岸・来世・極楽浄土)には,九体阿弥陀仏の本堂が東面して佇みます。
もしこう言ってしまうことが許されるならば,ビジュアル的にも,思惟的にも,極めて単純明快な構造をもつ浄土式庭園です。
まったく私的な見解ですが,薬師如来であれ阿弥陀如来であれ,私が拝むよりも前に,既にもう私のために拝んでくださっていた如来様がいることに気がつくこと,それが仏教の本質ではないかと思います。浄瑠璃寺庭園 公園・植物園
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苑池の中島には,弁才天を祀る祠が設けられています(写真右上および左下)。
また,本堂前(写真左上)と三重塔の前(写真右下)の池畔には,二基の『石燈籠』(重要文化財,南北朝時代)が立っています。それぞれ阿弥陀仏と薬師仏のお灯明です。
三重塔前の燈籠には「貞治五季 丙午 正月十一日為法界衆生 造立之願主阿闍梨祐実」の刻銘があります。貞治5年(丙午)は1366年で,来年(2026年)はそれから660年後の丙午にあたります。浄瑠璃寺庭園 公園・植物園
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浄瑠璃寺の名残の紅葉(本堂裏手)
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浄瑠璃寺の猫(本坊付近にて)
浄瑠璃寺では2009年,三重塔に侵入したアライグマ!によって,塔内が荒らされる被害がありました。本堂の入口・出口にも,(猫が入らないように)都度,引戸を閉めるよう注意書きがあります。 -
猫から鹿にバトンタッチ,ならまちに戻って来ました。ならまちの路地を悠然と闊歩する鹿さん。
ならまち 名所・史跡
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【茶論 奈良町店】
https://salon-tea.jp/
ならまちの茶論(サロン)でティータイム。 -
茶論の「茶事」コース(1)
主菓子(おもがし)・濃茶・干菓子・薄茶の順にいただく「茶事(3,300円)」のコース。日曜日の午後,中庭に面したお座敷でゆったりと過ごしました。
お菓子は同じくならまちの【萬御菓子誂處(よろず おんかし あつらえどころ) 樫舎(かしや)】のもの。
主菓子は葛焼き・栗きんとん・竜田餅からの選択でした。写真は「栗きんとん」。 -
茶論の「茶事」コース(2)
干菓子と薄茶 -
茶論の「茶事」コース(3)
干菓子も【樫舎】さんの小種(こだね,餅米と和三盆糖の煎餅)と鹿の押し物(落雁)です。 -
【中川政七商店 奈良本店】
https://www.nakagawa-masashichi.jp/
茶論 奈良町店に併設の【中川政七商店 奈良本店】でお皿を衝動買い。
ちょっと足を伸ばして【萬御菓子誂處 樫舎】さんで菓子も購入。
https://www.kasiya.jp/
自宅でお皿に盛り付けてみました。樫舎さんでイートインもできます。
(写真左上)
尾形アツシ 作『ヒビ粉引長方皿』(6,600円)
https://atsushi-ogata.com/
(写真右下)
同上(裏面)
(写真右上)
樫舎の生菓子「錦秋(きんとん製, 464円)」と干菓子・紅葉(6個入り, 583円)。
(写真左下)
樫舎の生菓子「竜田餅(外郎製, 432円)」と干菓子・銀杏(6個入り, 583円)。
京都と奈良,「当尾の里」と「ならまち」で過ごした,小春日和の一日でした。
了萬御菓子誂處 樫舎 グルメ・レストラン
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