
2019/03/11 - 2019/03/12
17位(同エリア154件中)
旅猫さん
薩摩を離れ、4日目の宿泊地、肥後日奈久温泉に向かう。
水俣の鶴の湯温泉にしようか悩んだのだが、旅程の都合で、八代の日奈久に落ち着いたのだ。
宿は、日奈久温泉でも老舗の金波楼にした。
風格漂う外観に少し臆したが、過ごしてみると、とても心休まる宿だった。
温泉街も鄙びていて、街並みにも風情があり、訪れて良かったと感じた。
- 旅行の満足度
- 3.5
- 観光
- 3.5
- ホテル
- 4.0
- グルメ
- 3.5
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 5万円 - 10万円
- 交通手段
- 新幹線 JRローカル 私鉄 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
鹿児島中央駅から乗った『さくら404号』を新八代駅で降り、13:56発の鹿児島本線の普通列車に乗り換える。
そして、3分で隣の八代駅に着いた。八代駅 駅
-
八代駅からは、14:19発の肥薩おれんじ鉄道の一両編成の列車に乗車した。
この肥薩おれんじ鉄道は、元JR鹿児島本線を引き継いだ路線だが、電化されているにもかかわらず、列車は気動車である。 -
八代駅を出た列車は、10分余りで日奈久温泉駅に到着した。
ホームでは、眼鏡を掛けた怪しい人形がお出迎え。
怪しいと言っては失礼だが、実は、かの有名な漂泊の俳人種田山頭火その人である。
山頭火は、日奈久温泉を気に入り、三泊もしたそうだ。日奈久温泉駅 駅
-
温泉街は、駅から少し離れた場所にある。
地図を頼りに歩いて行くと、途中から旧道へと入った。
この道は、薩摩家中の参勤交代のために整備された薩摩街道だそうだ。
民家の塀には、木戸門跡を示す標識もあった。 -
その先には、旧細川家御用焼の上野窯の窯元があった。
高田焼と言うらしい。
外から見て気になるものもあったが、入ると買ってしまいそうなので通り過ぎる。
すると、店の脇から入った場所に、手足荒神と言う社が建っていた。
祭神は、肥後国人一揆に参加して敗北した甲斐親英(宗立)と父の甲斐宗運とあった。
手足に傷を負った親英が、土地の人に匿われ手厚く看護され、死に際に、魂はこの地に留まり、子々孫々、手足の病に苦しむ者を救うだろうと言い遺したそうだ。
日奈久に祀られているのは、勧請されたもののようだ。 -
さらに歩いて行くと、ヒナグみそと書かれた看板を見つけた。
味噌は好きなので、旅先で見かけるとつい買いたくなるのだが、重いのでいつも諦めている。
今回も通り過ぎたのだが、この後、宿の朝食で味わえたので良かった。 -
のんびり歩いて15分足らずで温泉街の中心に辿り着いた。
そこには、日帰り入浴施設や旅館が建ち、多少人通りもある。
気付けば、周辺には竹輪を売る店がいくつか目に付いた。
駅前にもあり、訊けば、日奈久は竹輪が名産なのだそうだ。
それならばと、夕食に竹輪を購入することにした。 -
竹輪を二種類買った後、今宵の宿である金波楼に向かう。
目の前に現れたその宿は、思ったよりも立派で格式が高そうな佇まいをしていた。日奈久温泉 金波楼 宿・ホテル
-
玄関も広く、土間だけでもかなりの広さがあった。
大きな柱時計も久しぶりだ。 -
とりあえず通された部屋で受付を待つ。
その間、玄関脇にたくさん飾られていた雛飾りを見学。
どれも立派で綺麗だったが、何より、その数の多さにも驚いた。 -
案内されたのは、木造三階建ての本館の三階だった。
部屋は思いのほか広く、居心地も良さそうだ。
窓の障子を通して入る光も柔らかく、とても落ち着いた感じだ。 -
炬燵の上には、女将直筆の挨拶が掛かれた一筆箋が置かれていた。
最近、このようなものも見かけることが少なくなった。
ちょっとした気遣いなどで、その宿の印象は大きく変わる。 -
その一筆箋の隣には、なぜかくまモンが。
老舗の宿にしては、ちょっと似合わないような取り合わせだな。 -
窓の外を眺めると、昭和13年に増築したという大広間が入る建物が見えた。
中庭の奥には、大浴場と露天風呂がある。 -
部屋に荷物を置き、温泉街を散策する。
日奈久温泉は、こじんまりとした小さな温泉街だった。
その街並みは、温泉と人の生活が密接した日常を感じさせるのだ。 -
温泉街には、東湯と西湯と言う公衆浴場があったのだが、西湯の方は平成27年度末に閉館となってしまったそうだ。
立派な温泉センターが出来、利用者が減ってしまったのだろう。 -
そぞろに歩いていると、趣のある建物を見つけた。
明治10年には営業していたという日奈久では最も古い旅館だそうだ。
今は営業していないようだが、柱には、西南戦争の時の艦砲射撃の弾痕が残っているらしい。 -
一階の屋根には、豪華に笑う恵比須様の鬼瓦が載っていた。
-
温泉街を歩いていると、やたらと目に付くのが山頭火の俳句。
放浪した俳人らしい自由律俳句が溢れている。 -
そんな山頭火の俳句を楽しみながら歩いていると、駅で見かけた人形とそっくりな石碑を見つけた。
碑には、『温泉はよい、ほんたうによい、ここは山もよし海もよし、出来ることなら滞在したいのだが、―― いや一生動きたくないのだが、』と刻まれていた。
山頭火が日奈久をとても気に入っていたことがよく分かる。 -
宿に戻り、温泉で汗を流すことにする。
ところが、地元の高校生らしき数人が露天風呂の居座り、内湯だけで我慢。
風呂上がりに、買っておいた竹輪で細やかな夕食を、温泉センターの売店で買い込んで来たビールをお供に。
そのままの竹輪も美味しかったが、サラダちくわと言うポテトサラダを詰めた竹輪を揚げたものがなかなか良かった。 -
竹輪だけでは物足りなかったので、鹿児島の城山ストアで買い込んであった自家製チャーシューも食べてみる。
こちらも程よい味付けと歯応えがあり、麦酒によく合った。 -
ところが、麦酒一缶ではチャーシューが残ってしまい、宿の方にお願いして、300mlの日本酒を部屋に持ってきていただいた。
肥後まで来ると、日本酒があるのが嬉しい。
宿の名が入ったラベルの酒は、すっきりとした味わいだった。 -
夕食の後、宿を見て回ることにする。
まずは外に出て、外観を。
昼間とはまた違った風情があり、老舗宿の風格を感じる。 -
玄関を入ると、重厚だが上品な趣の階段がある。
本館の二階へと上がる階段で、この宿で一番格式が高い造りだ。 -
二階へ上がると、廊下の窓が目に付く。
桟がありが、窓自体はかなり大きい。
上下にも意匠の異なる窓になっていて、なかなか凝っていた。 -
上にある窓の桟は、雲か川流れのような意匠で風情がある。
あまり目立たない場所だが、そんな場所にこそ手を掛けるのが、昔の職人の心意気なのだろう。 -
各階の入口に掲げられている部屋の案内板も趣がある。
-
二階から三階へ。
幅が広く、踊り場も大きく取ってあるので、気持ちが良い。
落ち着いた色合いも好ましい。 -
階段の手すりには、小さな擬宝珠のようなものも付けられている。
ドアノブのような大きさなので、つい握ってしまうのか、そこだけがつやつやしていた。 -
三階の窓際には、可愛らしい人形が置かれていた。
これも細やかなおもてなし。
小さな笑顔が、癒しと寛ぎを与えてくれる。 -
洗面所は、飾り気の少ない造りだが、タイル張りで小奇麗だった。
緑白色のタイルがさり気なく洒落ている。 -
一度部屋に戻り、今度は大浴場へと向かう。
そろそろ地元の若者たちもいなくなったので、寛ぐためだ。
案の定、浴室には誰も居なかった。
戻る時、大浴場と本館を繋ぐ部分が、真っ白な漆喰らしいもので造られていることに気付いた。
夜の闇に沈む本館と対照的に明るい大浴場棟を隔てる門のようなものに見えた。 -
寝静まった館内は、とても風情があった。
こんな時、近代的な宿だと、ただ人気が無いだけで寂しいだけだが、木造の建物には、人気が無くても温もりがある。 -
翌朝、まずは朝風呂をいただく。
昨日は、ゆっくりと浸かれなかったので、先客のいない大浴場が魅力的だった。 -
その内湯の湯船には、晩白柚と言う世界最大の柑橘類が浮かんでいる。
それはバレーボールの球のようで、掴むことが出来ないほどの大きさだった。 -
露天風呂も独り占めで、気持ちが良い。
中庭の中に湯船があるような感じなので、部屋からも見えているようだが、樹も多いので気にはならない。 -
今回の予約内容では、朝食が付いているので食事処へ向かう。
品のある廊下に面した食事処は、なんと個室だった。
部屋の中には、畳敷きに座卓が置かれていたが、掘りごたつになっていて寛げる。 -
並べられた食材は、主菜が太刀魚の焼物。
名産の日奈久竹輪と日奈久みそを使った味噌汁もある。
玉子焼きに海苔と、好ましい朝食の姿がそこにあった。 -
食事の後、時間があったので、館内をもう一度散策。
昨日は回らなかった大広間のある棟にも行ってもる。
その建物の二階部分がひとつの広間になっていて、まさに大広間だった。 -
9時に精算をして宿を辞す。
日奈久駅まで、寄り道をしながら歩いて行く。
途中には、外湯のひとつ東湯があった。
早起きをして、ここに入りに来ればよかったか。日奈久温泉 温泉
-
近くの路地裏には、かつての海岸線を伝える石積みが残っていた。
幕末に干拓されてできた土地と海との境だったようだ。
埋め立てにより、今、海岸線はさらに沖合へと遠ざかり、まったく見えない。 -
日奈久の街では、海鼠壁をいくつか見かけた。
中でも、案内板のあった村津家住宅のものは美しく、見応えもあった。 -
駅へ着くと、改札の脇にニッケ玉が売られていた。
特徴的な香りが漂い、つい買ってしまった。 -
ホームに出てしばらく待つと、9:32発の八代行きの列車がやってきた。
予定では8:02発の列車に乗ることにしていたのだが、宿が気に入ったので、旅程を変更したのだ。
金波楼は、とても寛げる宿だった。
宿の方も対応が丁寧で、いつかまた訪れたいと思わせてくれた。
さて、次は楽しみにしていた天草へ向かうのだが、まずは三角に寄り道をしていこう。
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