![ランタン谷、み~つけた! 1949年、イギリス人探検家ビル・ティルマンによって発見されたランタン谷は、今も地味な存在であり続けています。旅行記も少なく、何がどう魅力的なのか、いまいち伝わってこない。特に個人トレッカー向けの細かい情報が少ないんです。そこで遅ればせながら、私が5年前に行った旅行記を書くことにしました。今思えば、私がトレッキングのイロハを学んだのは、このランタン谷かもしれません。<br /><br /><br />**情報は2009年11月後半のもの。1ルピー=1.2円で計算 <br /><br />==近くて遠いランタン谷・トレッキング シリーズ一覧==<br />① 山のグルメ紀行 <==<br />http://4travel.jp/travelogue/10931674<br />② キャンジンゴンパ滞在記<br />http://4travel.jp/travelogue/10975208<br />③ ランシサカルカという世界一美しい谷<br />http://4travel.jp/travelogue/10977467<br />④ ふれあい各駅停車の旅<br />http://4travel.jp/travelogue/10931988<br />⑤ 雲海カフェへようこそ<br />http://4travel.jp/travelogue/10931949<br />⑥ ゴサインクンドへの聖なる旅<br />http://4travel.jp/travelogue/11170693](https://cdn.4travel.jp/img/thumbnails/imk/travelogue_album/10/93/16/650x_10931674.jpg?updated_at=1479585220)
2009/11/10 - 2009/11/12
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ランタン谷、み~つけた! 1949年、イギリス人探検家ビル・ティルマンによって発見されたランタン谷は、今も地味な存在であり続けています。旅行記も少なく、何がどう魅力的なのか、いまいち伝わってこない。特に個人トレッカー向けの細かい情報が少ないんです。そこで遅ればせながら、私が5年前に行った旅行記を書くことにしました。今思えば、私がトレッキングのイロハを学んだのは、このランタン谷かもしれません。
**情報は2009年11月後半のもの。1ルピー=1.2円で計算
==近くて遠いランタン谷・トレッキング シリーズ一覧==
① 山のグルメ紀行 <==
http://4travel.jp/travelogue/10931674
② キャンジンゴンパ滞在記
http://4travel.jp/travelogue/10975208
③ ランシサカルカという世界一美しい谷
http://4travel.jp/travelogue/10977467
④ ふれあい各駅停車の旅
http://4travel.jp/travelogue/10931988
⑤ 雲海カフェへようこそ
http://4travel.jp/travelogue/10931949
⑥ ゴサインクンドへの聖なる旅
http://4travel.jp/travelogue/11170693
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[目次]
イントロ
カトマンズの味
ランタン谷への道
シャブルベシ
バンブーへの道
リムチェの夜
ランタン村への道
ランタン村
まとめ -
[イントロ]
ガイドブックなどでは、ランタン谷はエベレスト、アンナプルナと並ぶネパールを代表する三大トレッキングエリアとして紹介されています。実際のところ、景色も人気も半端ない二大巨頭から、ず〜っと格落ちしてのネパールNo.3。日本で例えるなら、東京(エベレスト)、大阪・京都(アンナプルナ)に対する名古屋的なポジションです。
地図: カトマンズ(青)からの距離。赤い丸は、左からアンナプルナ、ランタン、エベレスト。 -
そのせいか、ネットで探してもワクワクするような旅行記は見つかりません。旅行者の母数が少ないのか、ランタン谷自体がつまらないのか。それとも名古屋が悪いのか...。私の経験では、ランタンは素材は平凡だけど、料理の仕方によっては十分楽しめる、そんなタイプの場所だと思います。
写真: ランタンリルン(7234m) -
ところで、ランタン谷の主峰ランタンリルンはカトマンズから見えてます(写真)。直線距離で65キロくらいか。ということは、名古屋から見た琵琶湖。京都から見た神戸みたいなもんです。距離は近いし、トレッキング・ルートも初心者向け。楽勝だがや〜、と準備もせずふんぞり返っていた私は、連日のように痛い目に遭うのでした。
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[カトマンズの味]
出発前夜、とりあえずボリュームがありそうな食事をしてトレッキングに備えます。まず真っ先に頭に浮かんだがロータスの日本風カツカレー。
期待を胸に店を訪れてみると...この日はすでに閉店してました。いまさらですが、カトマンズの夜は早い。夜8時過ぎたら、いつ店を閉められても文句はいえません。
写真: ポークカツカレー(220rs=265円) -
普段ならサンドイッチ屋直行ですが、この日はなぜか向かいにある中華料理屋を試してみることにしました。これまで怪しい外観だから避けてたんですけどね。中華料理にハズレはないし、新しいお店も開拓しておきたい。
写真は、その時注文した回鍋肉。気になるお味は塩分過多で、使いまわされた油をソースに食べてる感じ。本人味見したのか? ってほどひどい料理です。でも、食べれなくはない。頑張って半分ほど食べた結果、下痢で2日間寝こむはめになりました。慣れないことはするもんじゃない。こういうのを魔が差したというのでしょう。 -
[ランタン谷への道]
あれから2日。何とか歩ける程度まで回復し、ランタン谷へと向かいます。この日は移動するだけなので、余裕でしょう。ランタン谷入口に位置するシャブルベシ村へは、カトマンズから毎朝2-3本のバスが出ています。ガイドブックによると、6:30AM,7:30AM,8:00AMの3便。乗り場は少々わかりにくく、中央バスパークから外に出てリングロードを左に。橋を渡って少し歩いた右側にあります(青い線)。
早朝、タメルでタクシー(300->150rs=180円)を捕まえ、バス乗り場へ。道路脇の小屋でチケット(220rs=265円)を買い、そこで座席を指定されます。6:30AM、やっと空が開け始めた頃、定刻通りに出発です。同じバスには、ネパール人に混ざって西洋人トレッカーも3組ほどいました。 -
バスのルートはこんな感じ。カトマンズ盆地の北西にあるバスパークを出発し、すぐにナガルジュン森林保護区に入ります。ここは舗装路でヒマラヤの眺めもいいのですが、山腹ならではのくねくねしたカーブが続きます。その後、トリスリ・バザール(9AM)で小休憩。ここから先はジープ道で、トリスリ川にそって道が続きます。除々に山を登り始め、カリカスタン(10:30AM)で食事休憩。チェックポイントの後、ドゥンチェ(12:45PM)を経てシャブルベシ(2:20PM)に至ります。シャブルベシはカトマンズのほぼ真北にあるものの、西に大回りするため、道路だと117キロほどかかります。
というわけで、直線距離65キロの話は忘れて下さい。実態はオンボロバスで8時間。日本なら東京から大阪まで移動できちゃいます。よく考えてみると、エベレスト(飛行機で30分)やアンナプルナ南部(ポカラからバスで1.5時間)より、ずっとアクセスが悪いんですよね。 -
俺パッカーだから長距離バスなんて慣れてるもんね〜、と余裕こいてるそこのあなた! あま〜い! これはポカラ行きのツーリストバスなどと違い、ずっと拷問度が高いのです。実際、私はこの日生き地獄を味わっていました。
説明しよう。このTATA製のバスは、シートピッチが無茶苦茶でフットスペースは嫌がらせのように狭い。なぜか頭の位置に扇風機(写真)があるため、ろくに景色も楽しめない。そして極めつけは、レーサーのように荒いドライバーの運転です。出発直後から出てくる山腹の道では、ブレーキもかけずにS字カーブをターン、ターン、高速ターン! 10秒置きに私の胃袋は揺さぶられ、病み上がりの私は10分でKOされてしまいました。 -
通路に仰向けになり、必死で胃袋を守る私。恥も外聞も捨てて、今はただ耐えるしかありません。2時間ほどで森を抜け、やっとカーブ道ともお別れ。トリスリバザールに着いた時には、すっかり元気になっていました。ここから先は未舗装のジープ道。運転手もそれほど飛ばさないでしょう...あま〜い!
後半のジープ道では、左右ではなく上下の揺れが私を襲います。バスが路上の石やデコボコを踏むたびに、乗客は数センチ飛び上がるのです。何となくイメージできますよね、その様子。 しかも、3秒置きに! 運転手よ、どこまで私をいじめれば気が済むのか..。前半はジェットコースター、後半はロデオバス。今日は休息日と考えていたのに、なんて日だ!
写真: カリカスタンで昼飯休憩するロデオバス -
ただ、ある程度山道を登った後は、雪山が見えて景色も良くなります。写真は帰りのバスから撮ったもの。不思議なことに、同じルートを走っているのに帰りは酔うこともなく、特に大きな不満もありませんでした。私がたまたまハズレのバスと運転手を引いただけかもしれません。
ランタン国立公園の境界線であるラムチェを過ぎてからは、民家の外観も人の服装も、よりチベット色の強いものになっていきます。
写真: ガネッシュ山脈と段々畑。黄色い畑はマスタード畑か。 -
12:30PM、 ドゥンチェ手前のチェックポイントで下車。トレッカーはここで入山料(1000ルピー=1200円)を支払います。私はカトマンズでTIMSを取得しておきましたが、ここでも申請可能なようです。写真は、室内に張られた登山者の統計。毎年1万人弱来ていると言うことは、エベレストやアンナプルナ3分の1くらいか。思ったより多いですね。名古屋扱いしてすいませんでした。
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その後、ドゥンチェで30分ほど停車した後、目的地シャブルベシ(写真)に到着です。ここから更に15キロほど北上すれば、そこはもう中国国境。バスは少し休憩した後、チリメという集落に向かって走っていきました。
これで8時間に渡る拷問が終了。2:20PMという早い時間ながら、今の私にトレッキングをする余裕はありません。まずは、宿を探して休みたいと思います。
写真: 右奥に見えている谷がランタン谷の入口。 -
[シャブルベシ]
シャブルベシ(1460m)は、ランタン・トレッキングの拠点と同時に、電気も来ている普通の村。通りに沿って商店や宿が並びます。トレッカー向けのロッジも数軒あり、まだ登山道にも入っていないのに、部屋代や食事代の値段設定は山小屋そのものです。つまり、宿泊費(100-200rs=120-240円)は安いけど、食事代が高い。ここには温泉らしきものもあるのですが、主に現地人洗濯用で、しょぼいものでした。
**Syaburu-村、Besi-下の方の意。 -
翌朝、休養を優先したため朝10時という遅い出発。この時間だと学校の登校時間と重なるため、生徒達と共に橋を渡ります。対岸には小学校と古い集落。それにロッジが1,2軒。ここからランタン谷の登山道が始まります。
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[バンブーへの道 - 川沿いルート]
ランタン谷トレッキングとは、基本的にこのシャブルベシから再奥のロッジ街キャンジンゴンパへのトレッキング。川沿いに歩くシンプルなルートで無駄なアップダウンも少なめ。最大標高が3860mと富士山程度で、登りの所要時間は2.5-3日。歩き方のモデルコースによると、
1日目 シャブルベシ(1460) - ラマホテル(2340) 5.5時間
2日目 ラマホテル(2340) - ランタン(3500) 5.5時間
3日目 ランタン(3500) - キャンジンゴンパ(3800) 4時間
ま〜余裕でしょ(何度目のセリフだ!)。無理すれば1日でランタン村(25km)まで行ける可能性さえあります。そして、ろくに地図も見ずに出発した私は再び痛い目に遭うのでした。
地図:黄色い点は、左からシャブルベシ、バンブー、ラマホテル、ランタン、キャンジンゴンパ。赤い点は、左からトゥルシャブル、リムチェ、チェックポイント。 -
まずは目安となるバンブーのロッジ街を目指します。古い集落の後、少し歩いてから川の南側へと橋を渡ります。川沿いの道なので迷いようがない..はずなのですが、1%でも可能性があるかぎり、マーフィーの法則は発動します。 実は、山の上に続く分岐が一本だけあるのです。
地図: 赤い点 - 川を南側に渡ってから1キロほどで分岐あり。 -
たっぷり睡眠をとった私は快調そのもの。心地よい天気と歩き易い土の道で、ぐんぐんペースを上げていきます。しかし..ある時点から登りばかりの道になり、川から随分と離れていました。どうも私は道を間違えたようです。でも、分岐なんてあったかな...。あっ、あれか! 実は少し前に日本人らしき若い女性が地べたにへたり込んでいた場所がありました。
2人の若いネパール人ガイドも一緒だったので、邪魔しちゃ悪いと思い半ば無視するような形で横の道をスタスタと登っていきました。今思えば、彼女とガイドが塞いでいた道が川沿いの道だったのです。ふざけんなよ! 分岐に気づけば、間違いなく地図を確認していたでしょう。
とはいえ、山の中腹から見下ろす谷筋とシャブルベシはなかなかいい景色。村の上のあんな斜面にまでジープ道が伸びてますね。 -
もうかなり登っているので、今さら元の道には戻れない。というか、戻りたくない。私は損切りできない人間なのです。この後、意地を張ってトゥルシャブル村まで行ってみましたが、遠かった! 地図では近いように見えますが、この村と川とは標高差600メートル以上あるのです。
着いてみると、トゥルシャブル(2250)は山間の村としては大変大きな集落。村へと続く道がトレッカー向けの道より立派なのはある意味当然です。居心地よさそうなので、30分ほどお茶しちゃいました。 -
時刻は12時半。ここから挽回すべく上流へと続く道を下って、メインルートに戻ります。これがまた段差の大きい道で、力まかせに飛ばしまくる私は、ここで膝を痛めることになりました。初日から飛ばしちゃだめだって〜。これは、マーフィーのせいでも妖怪のせいでもなく、自業自得です。
600メートル登って、400メートル下りる。それぞれに1時間...。スカイツリー往復分の体力を無駄にしました。 -
なんとか川沿いのメインルートに合流し、少し歩いてランドスライド(写真、1810)と呼ばれる場所に到着です。ここには茶屋が1軒。
いまさら気づきましたが、深い谷を歩くこのルートは、景色がそれほど良くありません。高い場所から下りてきた今、特にそう感じます。 -
ならば、より景色のいい上流へ急ぎましょう。50分ほどかけて次のロッジ街バンブー(1970)へ。ここにはロッジが3軒。すぐ隣に川が流れ、比較的明るいロッジ街です。感じのいいところですが、私には時間がない。さらに先に進みます。
この時点で私の膝はすでにガクガク。体は完全にガス欠。もう一日でランタン村まで行くという野望はとっくに消えています。ただ、少しでもスケジュールの遅れを挽回しておきたい。 -
[リムチェの夜]
しかしバンブーの先、橋を渡った後は登りの道が続き、一向にペースが上がらない。歩くこと1時間、私の膝が限界に達しようとしたころ、たまたま声をかけられたのが、リムチェ(2420)にある小さな茶屋(写真)でした。
ここは、森の中にポツンとある現地人向けの山小屋。他のロッジ街にありがちな、「ソーラーシャワーありますよ〜」とか「国際電話できますよ〜」的な看板は一切ありません。いちおう二部屋あるのですが、言われなければわからない。そんな、いつもなら通りすぎてしまうような貧相な山小屋です。
**Rimche = Rim(ヤク) + che(場所)の意。 -
時刻は4:30PM。正直私も疲れていた。ミルクティーをいただき、しばし体を休めます。この茶屋を切り盛りするのは、近くのタマン族の村に嫁いだ30代の女性。子供らの学費を稼ぐため、ひとりで茶屋を営んでいます。英語もそれなりに通じ、ダイニングを兼ねたキッチンは、とても居心地がいい。まだ日没まで時間があるけど、今日はここで一泊することにします。それほど彼女とは波長が合うのです。
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他に客はいないしカマドは目の前にある。ということは、私が普段食べている料理がどうやって作られるのか、見学できるわけです。夕食時間が近づくと、これはと言ったメニューを注文し、すぐ横で調理作業を見つめます。
写真: 公共電気のないこの場所では、冷蔵庫などありません。卵ケースが野菜置き場。 -
==キッチン・レポート==
突然ですが、キッチンレポートの始まりです。まずは定番のチャウメン(焼きそば)から。生麺は流通していないので、それ用の乾麺を茹でて使用します。写真は、上がスパゲティの麺、下がチャウメン用の乾麺。茶屋によっては、より入手しやすいスパゲディ用の麺を使うところもあります。 -
具はキャベツ、ニンジン、玉ねぎ、溶き卵など。ここまでは日本とあまり変わりません。ネパールのチャウメンは中国醤油ベースのものとケチャップベースのものをよく見かけます。ハズレの多い後者と違い、ここでは醤油ベース。麺と野菜を炒め、醤油で味付け、最後に塩、にんにく、味の素などを加えて味を調整します。同時に投入されるマサラパウダーがネパールっぽい味の特徴ですかね。
写真: ミックス・チャウメン(210rs=240円) -
続いて、ネパールの町中ではそれほど見かけないけど、山小屋には必ずあるピザです。私も経験ありますが、ピザは大変手間のかかる料理です。簡易なカマドしかないこの場所で、どうやってピザをつくり上げるのでしょう。
まずは小麦粉を練ってチャパティのような生地を焼くところからスタート。ふっくらとしたところで取り出し、潰したトマトを塗ってツナ(缶)やチーズを載せます。 -
続いて、皿のまま鍋にいれて蒸し上げます。我々が普段食べているピザとは少し違うけど、これなら簡単、15分もかかりません。ピザ作りにも流派があり、山ピザの本場チョムロンやABC(アンナプルナ)では、蒸し器の代わりにフライパンを使います。ご家庭でもできる山ピザ、ぜひ試してみてください。
写真: ツナ・ピザ(240rs=288円) -
ここまで来たら、さらにもう一品注文しちゃいます。メニューの中で気になっていたのが、ヒマラヤ名物のスニッカーズ・ロール。これは確かアンナプルナのチョムロン発祥のはずですが、ここランタンにも普及しています。これは早い話、スニッカーズを砕いて春巻き状に揚げたもの。生地はピザやロティに使うものと変わりません。
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それを餃子の皮のように耳を畳んで、あとは油でこんがり揚げるだけ。簡単でしょ! ちょっと割高なため私はあまり注文しませんが、まー普通に美味しいです。例えるなら、ピーナッツ味のパイ。日本でも縁日の屋台とかでやったら受けると思うんですけどね。
写真: スニッカーズ・モモ(170rs=205円)。使い終わった油をヤカンに戻すのを私は見逃さなかった。 -
いや〜楽しいな〜。カマドの前であれこれ話し込んでいると、荷物をかかえた現地人男性が4人ほど入ってきました。彼らはランタン村の住民で、シャブルベシで買い出しをした後、村まで戻る途中とのこと。なるほど、現地人にとっても荷物ありなら一日で村まで戻れないんですね。
宿の女性は彼らと同じチベット系の出身。外国人客もいないため、ダイニングでお酒をガンガン飲んで我が家のようにくつろぎます。彼らにとっても、ここはとても居心地のいい場所。みなさん、どうもダイニングに宿泊されたようです。
写真: 別棟にある私の部屋(125rs=150円) -
[ランタン村への道 - ホテル街道]
翌朝、のんびり朝食をとり、11時に出発。こんなに遅くなったのは、足の痛みが引かないため、もう一泊するか迷っていたからです。歩いているうちに、痛みが収まればいいんですけどね。歩き方を工夫しながら、上を目指します。
この先、アッパーリムチェ、ラマホテル、ゴラタベラ、タンシャップ....とランタン村までいくつもロッジ街が続きます。そういう場所を比較しながら歩くのは結構好き。今日も行けるところまで歩きましょう。
写真: 商隊のロバ。ついでに俺も運んでくれ! -
==中間点ラマホテル==
リムチェから30分ほど歩き、ラマホテル(現地名:チャンダム、2470)に到着です。ここは、本来なら昨日のうちに到着しておくべき場所でした。宿は数軒あり、森を切り開いた場所に整然と並びます。ちょうどこの辺りから川は北東に角度を変え、これまで見えなかった雪山(ランタン?)の姿が正面に見えてきます。ここから先が、狭義のランタン谷。
リムチェの女性によると、これらのホテル街には縄張りがあるようです。つまり、谷の上の方のロッジ街はランタン村などのチベット系の人がオーナー。逆にアッパーリムチェから下は麓に近い村々(タマン族)の人がオーナー。では、中間地点にあるラマホテルはというと、半々なのでした。 -
==ゴラタベラの無気力感==
ラマホテルの後、500メートルほど高い場所にあるゴラタベラ(2970)を目指します。途中、リバーサイド・ロッジを通過して、2時間ほどでゴラタベラに到着。ついに、ランタンリルン(7234m)がまともに見える場所までやってきました。
ここにはホテルが3軒。とても開けていていい場所なのに、あまりやる気が感じられません。部屋を見学すると、客室には電気が来ておらず。ブラックティー(40rs=48円)を注文したら、出てきたのはただのティーバック! う〜ん、何かが間違っている。もうちょっと手間かけてみませんか? -
そんな味気ない紅茶を飲んでいると、外からヘリの音が聞こえてきました。どうも、足を痛めた外国人トレッカーがギブアップして救助ヘリを呼んだそうです。おいおい、エベレストの高地じゃあるまいし。こんな簡単なトレッキングルートで救助要請してどうする! よく考えると、私もそれに近い状態なんですけどね。
しかし、これは逆に考えればいいアイデアです。ゴラタベラの標高は2970m。少し息は切れるけど、ヘリで直接やってきて2.5日分節約するのは悪くありません。すべては金次第。実際に、ある日本人向けツアーではこの方法を取っています。カトマンズからわずか20分。でも、トレッキング開始の前にいきなり空からランタン山脈を見学しちゃうのは反則です。
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この後、少し歩いてチェックポイントを通過。ここまで1日半歩いて感じたのですが、はっきり言ってランタン・トレックは「暗い」です。どういうことかというと、他のエリアと違い、トレイルですれ違う人達があまり挨拶をしないのです。だいたい半分くらいでしょうか。
なぜだろう。人の行き来が少ないから? 地元民がシャイだから? その理由の一部は、トレッカーの客層にある気がします。なぜだか知しませんが、ランタンは無愛想で知られるイスラエル人やフランス人に人気があります。これがドイツ人やアメリカ人中心なら、もう少し違っていたかもね。
写真: 国別の統計。1位フランス、2位イスラエル...5位日本。 -
==タンシャップの見通し==
チェックポイントから先は谷が広く、木々も少なめ。ルートの先にあるタンシャップ(矢印)が遠くに見えるほど前方が開けています。やはり森の中を歩くより、こっちのほうがいいですよね。逆に左側のランタン山脈はどんどん視界から消えていきますが..。
15分ほどでタンシャップを通過。その後、薪を拾いに来ていた現地の女性が唐突に話しかけてきました。次の村の最初の茶屋に妹がいるから、そこで食事するようにと。普段なら無視するところですが、私は「ディスカウント」という言葉にひっかかりました。なぜなら、ランタン谷ではエリアごとに料理の協定価格が決まっており、本来値引きはしてはいけないことだからです。 -
==チャムキ村の誘惑==
さらに15分ほどかけてチャムキの集落まで登ると、確かに茶屋(写真)はありました。茶屋といっても、民家の軒先にテーブルを並べただけのものですけどね。さて、本当に協定破りがあるのかどうか。メニューを頼むと、何年も前のボロボロの共通メニューが出てきました。現在180ルピーのはずの野菜チャーハンが、135ルピー。さらに値引きさせ、結局は100ルピー(120円)で合意しました。原価なんてこんなものです。
写真: 燃料用のヤクの糞を貼り付けた民家
**ゴラタベラからランタン村までは、同じ協定価格です。 -
やはり、こんな個人が片手間でやってるような場所では、協定価格もクソもないのです。注文したはいいものの、チャーハンを選択したのは失敗でした。この家には竈さえなく、床の囲炉裏のような場所に火をたき、圧力釜でお米を炊くことからスタートです。
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調理を待っている間、女性は、ここに泊まってけとやたら薦めてきます。一泊わずか50ルピー(60円)。値段はいいとして、この家には電気がない。そして、私が就寝場所に指定されたのは、右に見えているベット兼テーブルの台の上。これこそ、本物のホームステイかもね。下には下がいるものです。
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そして、30分待った後に出てきたのが、このモチモチのチャーハン。ただ、炊きたてのご飯を少しのキャベツと塩・醤油で炒めたものです。炒飯とは、いかにパラパラに仕上げるかがポイントのはずですが、これは一体...。120円なので我慢しておきます。量も多いしね。
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==グンパ村の押し売り==
チャムキの後、高低差の少ない道を40分ほど歩き、グンバ村に到着。ここはランタン村から橋を隔てた手前の小集落で、村の上にゴンパがあることから、その名がついています。すぐ近くに日本が建てた水力発電施設があり、ランタン村だけでなく、この村の住民も公共電気の恩恵を受けています。
トレイル沿いには3軒ほど売店を拡張したようなロッジがあり、チャムキ同様、少しでも現金収入を得ようとアグレッシブな営業が行われています。特に、個人で行動している私は狙われやすく、相手が若者なのでなおさらタチが悪い。 -
早速、最初の茶屋で売り込みがかかります。部屋代は無料。食事は10%ディスカウント。充電50ルピー。悩んでいると、まだ返事もしていないのに、薪ストーブに火を入れ始める強引さです。オファーはどれも魅力的ですが、彼のセールストークには小さな嘘が混ざっていて見逃せない。「ランタンでは水150ルピーだけどうちは100ルピーで売るよ。(ランタン価格は125ルピー)」「ランタン村までまだ40分。(実際には20分で十分)」「この後、売店だけで泊まるところないよ。(他の売店も泊まれる)」。その辺りの狡猾さが顔にも表れていたため、やんわりと辞退しました。断られた時の彼の仕草が、すべてを物語っていた。
写真: 村のゴンパ -
[ランタン村]
まあ、大きなランタン村がすぐ目の前にあるのに、わざわざお金をケチってここに泊まることもないでしょう。
グンバから吊り橋を渡ってランタン村(3500m)へ。ここは、ランタン谷で唯ーの村らしい村です。これまでの道はトレッカー向けのロッジがあるだけで、、十分な農地や牧草地なんてなかったですからね。写真は、グンバ村から見たランタン村。橋に近い側にロッジ街、その奥に村人の民家が並んでいます。
旅行者の私としては、こういう場所では、素朴な出会いを期待してしまうもの。でも、私がこの日見たものは、全く真逆の体験でした。
写真: ランタン村。奥に見えるは、ツェルゴ・リ(左)とガンチェンポ(右)。 -
今日も足を引きずりながらのトレッキングだったため、ランタン村に着いた時には、すでに5時半を過ぎていました。暗くてロッジの良し悪しがわからない上、全く呼び込みがかからない。ロッジの多くは電気がついておらず、営業しているかどうかさえわからない。とりあえず、ドアが開いていたロッジに入ってみると、宿の主人ではなく、使い走りのような青年が部屋を案内してくれました。
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なんとこの日の宿泊客は私ひとり。ダイニングのストーブに火が灯ることはなく、注文したジンジャースープは全く味がしない。彼にそのことを伝えると、「何か問題でも? コックが外出しているから、初めて作ったのさ。ここに塩と胡椒おいとくね」「...」あまりの接客レベルの低さに呆れてしまいました。ロッジのオーナー家族は、会っても挨拶さえしないし、息子らしき青年は部屋にこもって衛星テレビを見てるだけ。田舎=素朴という方程式が見事に崩れ去った瞬間でした。生活が豊かになるということは、必ずしもいいことではありません。リムチェやチャムキ村での「おもてなし」は、実は大変ありがたいことだったのです。
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翌朝、夕食も朝食も抜きでチェックアウトすることになりました。件の若者は私のルール破りに全くの無関心。まあ、たまにはこういうこともあるでしょう。そもそも、ランタン村は、谷筋の最大集落というだけで、特に景色がいい訳ではありません。北側にランタン連峰の一部が見えるだけ。それなら、カトマンズからの眺めと大差ありません。距離は65kmから5kmにまで接近してますけどね。
写真:一泊150rs(180円) -
[まとめ]
というわけで、いろいろあったけど、カトマンズから3日でランタン村までたどり着くことができました。文句ばかり言っても始まらないので、旅行記のタイトルは「山のグルメ紀行」にしたいと思います。ポジティブでしょ! 思い起こせば、危険な回鍋肉、マサラ焼きそば、蒸しピザ、スニッカーズ春巻き、もっちもち炒飯、味のない生姜スープとかこの3日間色々な物を食べてきました。リムチェでは、レシピまでしっかりレポート。みなさん、つくれぽの方よろしくお願いします。
それにしてもアレだ。食べ物以外に語ることがないということは、それほどこのルートに見どころがないとうこと。ティルマンと違い、私は谷に入って以来、何も発見していません。でもご安心を。見どころがなければ、私はそもそも旅行記など書きません。ランタン・トレックのハイライトはランタン村の先にひっそりと待ち構えているのでした。
[リンク集]
==ネパール・トレッキング==
最速のアンナプルナ 全8作 (2009年秋)
http://4travel.jp/travelogue/10444950
エベレスト・トレッキングのすすめ 全10作 (2011年春)
http://4travel.jp/travelogue/10581163
ポカラ・ザ・トレック 全4作 (2013年春)
http://4travel.jp/travelogue/10759203
トレッキング装備購入ガイド 全2作
http://4travel.jp/travelogue/10571988
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