2013/05/21 - 2013/05/21
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YAMAJIさん
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佐倉市の大地は房総半島の北部に位置し、おもに標高20〜30メートル前後の台地である下総台地と、印旛沼や鹿島川沿いの標高5メートル前後の低地である沖積低地から成り立っています。鹿島川や高崎川・手繰川の上流の「谷津」の両側の斜面から湧き水がでており、それが川となり印旛沼に流れ込んでいます。人々の暮らしは谷津を中心に約3万年前から築かれていました。この谷津の自然環境に調和した伝統的な農業が営まれ、様々な野生動植物にとっても豊かな生息・生育環境が保たれています。
印旛沼流域の湧き水を、湧出の形態や湧出状況などの地質的観点から分類すると、人間の手が加えられず自然の状態で湧出している自然湧水(浸みだし、流出、根だれ、絞り、墳出)が約80%、湧出している水は自然の地下水ですが、湧出箇所が側溝の割れ目や塩ビ管などの人口構造物から出ている湧水や、盛土や切土などにより、地下水の流動が断たれた状態から出水する人工湧水(暗渠水抜きタイプ、法面湧水タイプ、側溝タイプ)が約20%に分けられます。また、人工湧水中には、地下水の自然流動を利用するために人工的な手段が加えられた人自湧水(自噴井戸、横井戸)が十数か所あります。
この他、故事来歴がある名跡湧水(権現水;徳川家康が狩りに来て飲んだ湧水、加賀清水;佐倉城主大久保加賀守忠朝が愛飲した水、くもの井;村人がクモに棲み処の藪を残したお礼の湧き水、など)と、弘法伝説や神社仏閣の信仰湧水(御手洗いの池;弘法大師が巡礼の途中立ち寄り手を洗った池、勝間田の池;西行法師がこの池を訪れ池の端に二股のヨシを作った、西行清水:西行法師が遊歴したとき歌を詠んだ、など)あります。
今回訪ねたのは、佐倉市発行の「佐倉の湧き水物語」に掲載されている30ケ所です。このうち「西行清水」と「坂戸の湧水」は、湧水地点を確認するこのが出来ませんでした。「作り坂谷津の湧水」については、谷津の入口まで竹藪が繁殖し、荒れ放題で、調査を断念しました。30ケ所以外に、「佐倉城址公園ビオトープの湧き水」と「馬渡馬場の湧き水」の2ケ所を追加してあります。「西行清水」については梅雨時期に再訪したいと思っています。
参考文献他;
佐倉市発行の「佐倉の湧き水物語」、佐倉市谷津環境保全指針などです。
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佐倉市の地形図です。
標高20〜30mの下総台地と、浸食してできた大小の谷津で構成されており、北に印旛沼が広がっています。 -
佐倉の湧水分布図です。
西に手繰川水系の湧水が中央に鹿島川水系の湧水、東に高崎川水系の湧水が広がっています。 -
佐倉の湧き水30です。
平成18年佐倉市発行の「佐倉の湧き水物語」には、佐倉市で確認されている約570ケ所の湧水の中から、代表的な30の湧水が紹介されています。 -
井野の加賀清水公園です。
国道296号線の井野交差点近く、セレモ志津ホールの真向かいの道路を北に入った所に、加賀清水公園があります。この加賀清水公園の国道よりの南端から、今も「加賀清水」が湧き出ています。 -
NO1.加賀清水(名跡湧水)です。
江戸時代に佐倉城主「大久保加賀守忠朝」が江戸参府の際、ここを通るとき、この清水を愛でて飲んだことから、この清水の名前が由来します。 -
上座総合公園です。
上座地区のほぼ中央、国道296号線の南側にあり、総合グラウンドやプール、交通公園、児童公園などがあります。この上座公園の一番奥(交通公園の奥)の崖に沿って「上座の湧水群」があります。 -
NO3.上座の湧水群(自然湧水)です。
手繰川に注ぐ谷津を埋めて造ったのが上座公園で、この湧水は谷津田だった頃の貴重な灌漑用水だったのでしょう。洞穴から流出する湧水や小さな池底に噴出する湧水などが見られます。 -
清水台団地下の用水溝です。
上志津地区のほぼ中央、県道四街道上志津線の西側の台地上に清水台団地があります。この団地の斜面から谷津を通って流れ出る湧き水が用水溝に流出しています。これが「清水台の湧き水」です。 -
NO4.清水台の湧き水(人工湧水)です。
清水台団地下の用水溝は、エクセレントケア志津前の県道を横断して東西約650m続いており、この用水溝に流出する湧き水の量は豊富です。 -
畔田沢の谷津です。
下志津地区と畔田地区の境を流れるのが畔田沢です。(仮称)佐倉西部自然公園のBゾーンに位置しています。下流域は全て耕作放棄地でしたが、市民ボランティアによる再生が進んでいます。中流域は耕作放棄地と谷津田がマダラ模様です。この畔田沢の谷津に広がっているのが「畔田沢の湧水群」です。 -
NO5.畔田沢の湧水群(自然湧水)です。
佐倉市を代表する谷津のひとつが畔田沢です。谷津田へ流れ込む湧き水の量は豊富で、「こんな所から湧き出る水を、このようにして使われているのだ」ということが分る風景が広がります。 -
稲荷台ビオトープです。
地元自治会と市民ボランティアが、稲荷台4丁目の崖と水路で、小川・植物の保護活動や動植物の調査活動を行っています。この稲荷台ビオトープの流れをたどり、京成成田線の線路にぶつかった所が「稲荷台の湧き水」です。 -
NO6.稲荷台の湧き水(人工湧水)です。
ここは線路を敷設するため、大規模な掘割工事が行われた所で、この時に、線路や路肩の下部から大量の水が流出しました。その人自湧水を手繰川へ導水したため、このような湧水の滝ができました。 -
臼井台の宗徳寺本堂です。
臼井氏の後に臼井城主となった原氏の菩提寺で、般若船観世音菩薩を本尊とする曹洞宗のお寺です。宗徳寺本堂南西側の、国道296号線を挟んで宗徳寺の墓地入口に「権現水」あります。 -
NO7.権現水(名跡湧水)です。
徳川家康が狩りに来てこの水を賞味し、京都の「柳の水」に似て美味しいと褒め称えたと、伝えられています。明治22年の道路改修のとき埋没して、今は痕跡だけが残っています。 -
佐倉城址公園ビオトープです。
平成11年3月に生物観察水路・ビオトープとして、佐倉市によって設置されています。佐倉中学校のビオトープ研究会も、活動に参加しています。「佐倉城址公園ビオトープの湧水」は、佐倉城址公園の菖蒲田の奥にあります。 -
番外1.佐倉城址公園ビオトープの湧水(自然湧水)です。
ビオトープは菖蒲田の奥からお堀まで、小川と池が続いています。一番奥のポイントの湧水の墳出は確認できませんでしたが、二番目と三番目のポイントの湧水の墳出はかなりあるようです。ビオトープにはクレソンとセリが繁殖しています。 -
鷹匠清水ビオトープです。
佐倉城址公園の自由広場の斜面下に、流出する湧き水が「鷹匠清水」です。この鷹匠清水を保全するためビオトープが設置され、市民ボランティアが保護・調査活動を行っています。 -
NO8.佐倉城址公園・鷹匠清水(自然湧水)です。
南の出丸跡から城南堤を進み、左側の堤の中(城南堤の2番目の入口)の突き当りの崖下に、湧き水が展開しています。湧き水の量は豊富で、流出が主ですが墳出も確認できました。 -
城内町の中の池です。
佐倉城址公園の三逕亭の斜面を下り、南の出丸跡に通じる小路の左側にある小さな池です。春にはアズマヒキガエルの、産卵でにぎわうそうです。 -
NO9.城址公園南麓・中の池の湧き水(自然湧水)です。
中の池の北端の洞穴に、湧出口が確認できましたが、湧き水の量はわずかです。 -
城内町の舟隠しの堀です。
北の出丸跡の水堀で、佐倉城の裏側にあたり、密かに城の内外を結ぶ舟を置いてあったと言われています。この堀の一番奥に「舟隠しの湧き水」があります。 -
NO10.城址公園西麓・舟隠しの湧き水(自然湧水)です。
北の出丸跡の駐車場から、唯一現存する門をくぐり、すぐに水堀へ下りる石の階段があります。上部の露出しているシルト層の割れ目からの流出は少ないですが、下部の堆積した土壌からの流出はかなりありました。 -
鏑木町のうるし坂下の交差点です。
旧道のうるし坂(国道296号線の権現坂の崖下を並行して走る道)を下り、坂下のT字路の右に「くもの井」があります。 -
NO11.くもの井(名跡湧水)です。
昔、村人が藪を切り開こうとしたところ、そこに住むクモが「ここは私たちの住処です。藪を切らないでください、その代り、日照りの時でも枯れることのない湧き水を差し上げます。」と言ったそうです。そのとおり、ずっと湧きつづけ、今でも災害用の用水として、大切に保全されています。 -
大佐倉の勝胤寺本堂です。
本佐倉城主の千葉勝胤により創建された、釈迦如来を本尊とする曹洞宗のお寺です。本堂の正面に引水された「千葉水」があります。 -
NO12.千葉水(名跡湧水)です。
佐倉風土記に「千葉勝胤常賞此水」と書かれています。お寺の裏山から今も水が湧き、本堂正面に引水されています。引水された水を受ける石が、かなり苔むしており周囲の樹木や植物と一体となています。 -
大佐倉の地蔵堂です。
勝胤寺から京成成田線をくぐり、本佐倉へ通じる道路の右側に、大佐倉の地蔵堂があります。地蔵堂のすぐ横に「延命水」があります。 -
NO13.延命水(信仰湧水)です。
印旛郡誌には「勝胤寺の東百歩のところの地蔵堂の前にあり」とだけ書かれています。この辺りは本佐倉城や勝胤寺など、千葉氏ゆかりの土地柄です。昔の城は必ず水の備えがありました。この水も、どんな時でも使える水だったのでしょう。 -
大佐倉の本佐倉城跡です。
大佐倉の地蔵堂の前を進むと、左手に大佐倉城の物見台跡と東光寺ビョウが見えてきます。さらに進み坂に差し掛かった左崖下に、「大佐倉の湧水」があります。 -
NO14.大佐倉の湧水(自然湧水)です。
湧水付近は藪になっていますが、掻き分けて確認することが出来ました。大佐倉の3つの湧水に共通する点は、涵養域に貝層があることです。 -
寺崎の集落です。
JR佐倉駅北口側から寺崎集落の坂を上っていくと、左手に寺崎青年館があります。この通りの一本北側の通り、人家の裏手の崖に「室穴の湧水」があります。 -
NO15.室穴の湧水(自然湧水)です。
人家裏手の崖は粘土層で、一面湧水が浸みでています。この粘土層に洞穴を掘り水溜を造っています。写真の塩ビ管から出ている湧水は、洞穴の水溜から引水されています。
この通りを北側に回り込むように下り、県道佐倉停車場千代田線に出る手前、左側に「横づき」と呼ばれる湧水があります。崖の粘土層の帯水層に、筒を差し込んで水が湧くようにしています。 -
六崎の弁天様です。
六崎地区の南東に、樹齢200年のスギ木立に囲まれた、弁天神社があります。弁天様の祠は、池の中に浮いているように建てられています。この池に湧き出ているのが「弁天池の湧き水」です。 -
NO16.弁天池の湧き水(自然湧水)です。
弁天池にはかなりの湧水が溜っていました。弁天池の奥では、流出する湧水が確認できました。 -
太田の山王小学校ビオトープです。
太田の集落がある台地の崖下、鹿島川沿いの低地にあたるところに、山王小学校ビオトープがあります。このビオトープの水源が「太田の湧き水」です。 -
NO17.太田の湧き水(自然湧水)です。
山王小学校ビオトープに湧き出る水の量は豊富です。その昔は炊事や洗濯などの生活用水として使われていたそうです。 -
大篠塚の錦鯉養殖場です。
大篠塚地区の中央を貫く市道を、大篠塚橋側から国道51号線に向かって進み、左手に麻賀多神社に入る道路があります。このT字路の人家の庭に錦鯉養殖場があり、「大篠塚の湧水」が湧いています。 -
NO18.大篠塚の湧水(自然湧水)です。
この湧水は、東関東自動車道の高架工事により、一時枯渇しましたが、最近再び復活した貴重な湧水です。この湧水の持つ主は、この水と、ご自身で上総掘りにより揚水した地下水とをブレンドして錦鯉を養殖しています。 -
小篠塚谷津の湧水池です。
小篠塚城址の裏手から南部浄水場の下に、広がる谷津が小篠塚谷津です。上流域は耕作放棄地が広がりかなり荒れていますが、下流域は市民ボランティアによる保全・調査が行われており、湧水池や植物園が整備されています。 -
NO19.小篠塚谷津の湧水群(自然湧水)です。
小篠塚谷津には1周4kmの散策路があり、下流域の湧水池(メダカの繁殖地)や上流域のカモ狩場(湧水溜り)を見ることができます。小篠塚谷津からの湧き水の量は大変豊富です。 -
馬渡の山王谷津(佐倉フィールドアーチェリー)です。
佐倉フィールドアーチェリーは、佐倉の地酒旭鶴が経営しています。谷津の地形を利用して、的が24箇所設置されており、打ち上げや打ちおろし、短距離や長距離と変化に富んだコースとなっています。 -
NO21.馬渡の湧水(自然湧水)です。
佐倉フィールドアーチェリークラブからシーダーツリーゴルフプラザに向かって進むと、左へ入る道があります。その道を下ると山王谷津ですが、アーチェリー場の中なので厳重な注意が必要です。深い谷津の頭から水が湧き出ています。 -
馬渡馬場の田園風景です。
馬渡地区の南東、国道51号線を渡った所が馬場集落です。昔は多くの湧き水があったと聞きました。国道51号線の工事によって減り、確認できたのが写真右の崖下にある「馬渡馬場の湧き水」です。 -
番外2.馬渡馬場の湧き水(自然湧水)です。
馬場集落の3軒で使用しており、野菜や農具を洗うのに使っています。年1回3月15日に共同で池の掃除を行なっています。 -
下勝田の八木谷津です。
下勝田坂下から下総和田郵便局の下に展開するのが八木谷津です。下流域には谷津田が広がり、上流域は耕作放棄地ですが、地元の人々が湧水の通り道の泥さらいや下草刈りを行っており、大切にこの谷津を守っています。 -
NO22.下勝田の湧き水(自然湧水)です。
八木谷津の両側の山裾には、湧水の浸みだし水が至る所から出ています。八木谷津からの湧水の量は豊富です。 -
下勝田の道祖神です。
下勝田坂下の交差点を東側に進み、約400m先左手に下勝田の道祖神があります。この道祖神の下に「道祖神の湧水」があります。 -
NO23.道祖神の湧水(自然湧水)です。
以前は、道祖神の下はいつもぬかるみ、水が道路に溢れる状態でしたが、地元の人の手により、水の溜まった地層に竹の筒が差し込まれ、立派な湧水が復活しました。 -
下勝田の佐倉ファミリーゴルフ場です。
下勝田地区の東南、米戸入口から爪坪へ向って進み左手に、佐倉ファミリーゴルフ場に入る道があります。9ホール、893ヤード、パー27の気楽に回れるショートコースです。クラブハウスの前を通過して、坂道を下ると「勝間田の池」です。 -
NO24.勝間田の池(信仰湧水)です。
西行法師が、「みずなしと聞きてふりにし勝間田の 池あらたむるさみだれのころ」の歌を詠んでいます。また、西行法師が食事をして箸の代わりに使ったヨシを地に刺したところ、二股のヨシになったという伝説のある池です。この池は、古来より下勝田村の灌漑用に利用されていました。 -
米戸の田園風景です。
米戸入口交差点を南西、米戸方向に下っていくと水路(米戸沢)があります。水路の上流方向に、細くて長い「ウナギの寝床」のような谷津が展開しています。谷津の斜面に囲まれたいたる処から水が湧き出ています。これが「米戸の湧き水」です。 -
NO25.米戸の湧き水(自然湧水)です。
この湧き水は引水され、種籾を浸す池に注いでいます。この他、3ケ所の湧水溜を確認できました。 -
宮本の御手洗いの池の斜面林です。
国道51号線から宮本地区に入り、すぐ右下が崖になっており、この崖下に「御手洗いの池」があります。 -
NO26.御手洗いの池(信仰湧水)です。
弘法大師が巡礼の折、この地を訪れ、路傍の崖から湧き出るこの水で、手を洗ったことから名付けられました。また、地元の人の話によりますと、佐倉連隊(歩兵57連隊)の兵隊さんが、訓練でこの街道を通ると、ここの水を飲んで休息を取ったそうです。 -
岩富の谷津です。
岩富地区を東西に貫く水路(大流川)があります。この水路をさかのぼり、八街町に近い右側に佛供谷という谷津があり、この谷津から湧き出る水が「岩富の湧水」です。 -
NO28.岩富の湧水(自然湧水)です。
佛供谷には至る処から水が湧き出ています。湧き水の量は非常に豊富です。この谷津には豊富な植物種が生育し、貴重な動物が生息しています。 -
飯塚の田園風景です。
飯塚入口から県道岩富山田線に入り、飯塚橋を渡りすぐ左の水田横の道路に入ると、道路の脇の水田の端に「天上田の自噴井戸」があります。 -
NO29.天上田の自噴井戸(人工湧水)です。
上総掘りの井戸で、地下水が30mの透水層から自噴しています。この井戸は現役で、今でも水田を潤しています。昔は多数の上総掘りの自噴井戸があったそうです。 -
西御門の谷津です。
県道岩富山田線の西御門交差点の手前の、五差路の南側に展開するのが西御門谷津です。この辺りは、古村の風景が良く保たれて、湧き水の多い下総の谷津の代表と言えるところです。 -
NO30.西御門の湧水(自然湧水)です。
下流域から中流域へと谷津田が広がり、上流域は草地があり、林へと繋がっています。谷津の斜面から湧き出る水の量は豊富です。
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